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2.異世界人の習性を実際に見てみた
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※ ※ ※ ※ ※
おじいさんの屋敷に到着したオレは、本日何度目かの溜め息を心の中で吐く。
はい、問題。オレが何故落胆しているか、分かるだろうか。とは言っても、敏い者ならば分かるだろう。
「ヴォスト、珍しいな。お前が屋敷に来るとはな」
「御言葉ですが、お祖父様。ここは私の生家でも御座います」
「ふん。どうせマデルナにでも呼ばれたのだろう。お前は呼びつけられでもしないと、ここに近付こうともしないからな」
「母上に呼び出された事は確かです」
正解は団長さんだ。
歩いて到着したおじいさんとオレの前に、何故か黒塗りの馬車が停まったのである。そして出てきたのは鎧を纏ってはいないものの、黒い詰め襟のかっちりした服を着た団長さん。銀色の刺繍が散りばめられ、階級章みたいな装飾品も付いているので全然質素ではない。
オレの方を見て一瞬目を見開いたものの、すぐにおじいさんに話し掛けられて先程のやり取りとなった。
「トーリ……」
「ふん、さっさと行け。マデルナは気が長くはないと、お前でも知っているだろう」
「…………存じています。では後程。御前、失礼致します」
堅苦しいやり取りを交わした後、団長さんは使用人が開けた扉から屋敷内に入っていく。
オレはもう既に踵を返して立ち去りたい気分なのだが、おじいさんはそれを良しとしないようだ。早々に肩へ手を置かれ、セスが不機嫌そうにその手を睨んでいる。
「トーリくんがこの場を去るのでなければ、ワシは何もしないと誓う」
「……また脅し。おじいさん、良い人じゃないのか?」
「ワシか?そうだな、良い人という判断は相手によるな。少なくとも、トーリくんに対しては良い人でありたいと思っているのぅ」
「はぁ。とりあえず寝床を用意してくれるのだろ?快適で安全な寝床であれば良い」
「うむ、それは勿論だの。後は食事と風呂だ。ワシが確約しよう」
にこやかに告げるおじいさんの言葉を受け、使用人の一人が屋敷の奥へ戻っていった。
当然ながら通達されていた訳ではなさそうで、今から一人分追加とは大変そうである。しかしながらオレは招かれた立場だ。──しかも結構強引な感じで。だからもう、それ以上はオレの気にするところではないと割り切ろう。
「さて、トーリくん。行こうか」
「……トーリ、で良い」
「そうかい?おぉ、自己紹介がまだだったね。ワシはヴイド・ ソロ・ツェシェルア。知っての通りヴォストの祖父だが、もう隠居の身でね。地位とか立場とかある程度はあるが、キミには友として接してもらいたいのぅ。そうだ、ソロと呼んでくれて良い」
「………………ソロ、ね」
年配者に何度も君付けされるのは気になったから呼び捨てで良いと告げただけなのに、何故『友』になるのか不明である。
最終的にオレは、おじいさん──ソロじいさんの発言に半ば諦めの境地で呟いた。どうせ長い付き合いをする訳でもないだろう。
そうして案内されるがまま建物に入ると、さすがと言うか日本建築とはだいぶ違った。
これが旅館とかではないなんて、金と土地が有り余ってるから出来るのだろう。狭い島国では無理だ。
玄関を入ると既にそこが学校の教室以上に広い場所で、正面の階段から左右に繋がる通路が見える。──何だか家一軒が学校一つくらいだ。
「どうしたんだ、トーリ。まぁ、リドツォルは小さい町だから、屋敷もそれに合わせて狭くはなるのぅ」
「これで小さいとか……」
「何だ、狭くて驚いているのではなかったのか。それなら安心したぞい」
「広すぎて驚いた」
「ふははっ、世辞でも嬉しいのぅ」
にこやかに笑うソロじいさんに、オレの丸太小屋を見せたら逆に物凄く驚かれるに違いない。おそらく彼にとっては、物置小屋にすら値しないだろう。
若干遠い目になるが、オレの感覚で言うとこのレベルの建物は不要だった。
そして玄関先からは見えなかった、右側の一番奥手の部屋に案内される。
元々ゲストルームなのか一式揃っているようで、更にはスイートルームのように部屋の中に幾つもの扉があった。
了解を貰って探検する。向かって右手からドレスルームにベッドルーム、バスルームとトイレだ。今のこの部屋はリビングルーム的なので、次に小さなキッチンルームと一番左にもう一室小さなベッドルームがある。
これが客室の仕様だとすると、屋敷の主人たる部屋はもっと豪勢なのだろう。──もう、それだけで迷いそうだ。
「ふむ、楽しそうだの。ワシは少し外させてもらうが、何かあれば外の使用人に告げると良い。ではまた後でな、トーリ」
「……分かった。ありがとう、ソロ」
「うむ」
オレがソロじいさんの名前を口にした途端、傍にいた使用人が僅かに目を見開く。
やはりオレみたいな奴が彼を名前呼びなど、烏滸がましいのだ。──初めからそうは思っていたが、ソロじいさんは笑顔で受け止めている。もう今更、呼び方の修正は不可能な気がする。
本当にここの人達は、オレの意思や意見がなかなか通用しない。
セスと二人での気楽な転生生活を送っていただけあって、オレ的に対人間への抵抗力がかなり落ちているのかも知れなかった。──まぁ、単に接した人の我が強かっただけかもしれないが。
おじいさんの屋敷に到着したオレは、本日何度目かの溜め息を心の中で吐く。
はい、問題。オレが何故落胆しているか、分かるだろうか。とは言っても、敏い者ならば分かるだろう。
「ヴォスト、珍しいな。お前が屋敷に来るとはな」
「御言葉ですが、お祖父様。ここは私の生家でも御座います」
「ふん。どうせマデルナにでも呼ばれたのだろう。お前は呼びつけられでもしないと、ここに近付こうともしないからな」
「母上に呼び出された事は確かです」
正解は団長さんだ。
歩いて到着したおじいさんとオレの前に、何故か黒塗りの馬車が停まったのである。そして出てきたのは鎧を纏ってはいないものの、黒い詰め襟のかっちりした服を着た団長さん。銀色の刺繍が散りばめられ、階級章みたいな装飾品も付いているので全然質素ではない。
オレの方を見て一瞬目を見開いたものの、すぐにおじいさんに話し掛けられて先程のやり取りとなった。
「トーリ……」
「ふん、さっさと行け。マデルナは気が長くはないと、お前でも知っているだろう」
「…………存じています。では後程。御前、失礼致します」
堅苦しいやり取りを交わした後、団長さんは使用人が開けた扉から屋敷内に入っていく。
オレはもう既に踵を返して立ち去りたい気分なのだが、おじいさんはそれを良しとしないようだ。早々に肩へ手を置かれ、セスが不機嫌そうにその手を睨んでいる。
「トーリくんがこの場を去るのでなければ、ワシは何もしないと誓う」
「……また脅し。おじいさん、良い人じゃないのか?」
「ワシか?そうだな、良い人という判断は相手によるな。少なくとも、トーリくんに対しては良い人でありたいと思っているのぅ」
「はぁ。とりあえず寝床を用意してくれるのだろ?快適で安全な寝床であれば良い」
「うむ、それは勿論だの。後は食事と風呂だ。ワシが確約しよう」
にこやかに告げるおじいさんの言葉を受け、使用人の一人が屋敷の奥へ戻っていった。
当然ながら通達されていた訳ではなさそうで、今から一人分追加とは大変そうである。しかしながらオレは招かれた立場だ。──しかも結構強引な感じで。だからもう、それ以上はオレの気にするところではないと割り切ろう。
「さて、トーリくん。行こうか」
「……トーリ、で良い」
「そうかい?おぉ、自己紹介がまだだったね。ワシはヴイド・ ソロ・ツェシェルア。知っての通りヴォストの祖父だが、もう隠居の身でね。地位とか立場とかある程度はあるが、キミには友として接してもらいたいのぅ。そうだ、ソロと呼んでくれて良い」
「………………ソロ、ね」
年配者に何度も君付けされるのは気になったから呼び捨てで良いと告げただけなのに、何故『友』になるのか不明である。
最終的にオレは、おじいさん──ソロじいさんの発言に半ば諦めの境地で呟いた。どうせ長い付き合いをする訳でもないだろう。
そうして案内されるがまま建物に入ると、さすがと言うか日本建築とはだいぶ違った。
これが旅館とかではないなんて、金と土地が有り余ってるから出来るのだろう。狭い島国では無理だ。
玄関を入ると既にそこが学校の教室以上に広い場所で、正面の階段から左右に繋がる通路が見える。──何だか家一軒が学校一つくらいだ。
「どうしたんだ、トーリ。まぁ、リドツォルは小さい町だから、屋敷もそれに合わせて狭くはなるのぅ」
「これで小さいとか……」
「何だ、狭くて驚いているのではなかったのか。それなら安心したぞい」
「広すぎて驚いた」
「ふははっ、世辞でも嬉しいのぅ」
にこやかに笑うソロじいさんに、オレの丸太小屋を見せたら逆に物凄く驚かれるに違いない。おそらく彼にとっては、物置小屋にすら値しないだろう。
若干遠い目になるが、オレの感覚で言うとこのレベルの建物は不要だった。
そして玄関先からは見えなかった、右側の一番奥手の部屋に案内される。
元々ゲストルームなのか一式揃っているようで、更にはスイートルームのように部屋の中に幾つもの扉があった。
了解を貰って探検する。向かって右手からドレスルームにベッドルーム、バスルームとトイレだ。今のこの部屋はリビングルーム的なので、次に小さなキッチンルームと一番左にもう一室小さなベッドルームがある。
これが客室の仕様だとすると、屋敷の主人たる部屋はもっと豪勢なのだろう。──もう、それだけで迷いそうだ。
「ふむ、楽しそうだの。ワシは少し外させてもらうが、何かあれば外の使用人に告げると良い。ではまた後でな、トーリ」
「……分かった。ありがとう、ソロ」
「うむ」
オレがソロじいさんの名前を口にした途端、傍にいた使用人が僅かに目を見開く。
やはりオレみたいな奴が彼を名前呼びなど、烏滸がましいのだ。──初めからそうは思っていたが、ソロじいさんは笑顔で受け止めている。もう今更、呼び方の修正は不可能な気がする。
本当にここの人達は、オレの意思や意見がなかなか通用しない。
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