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3.町にいってみたけど何か違う
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※ ※ ※ ※ ※
グオゥッ──という唸るような音に、オレはハッと意識を呼び戻された。
寝起きの頭が動かない中で、視界に入ったもの。
それは吹き飛ばされた周囲の様々なものと、何故か目の前で炎を纏って防衛姿勢の団長さんだ。そして、オレの周囲を未だに風が覆っている。
「認可されていない存在の接近を感知しました。迎撃体制に入ります。……認可されていない存在の接近を感知しました。迎撃体制に入ります」
ソファーに横たわっている体勢のオレ。
そんなオレの肩に乗っているセス。
そこまではいつもと変わらないのに、セスの様子がおかしい。──何処か機械的というか、生命を感じないというか。
「セス?………………セス、待機」
呼び掛けにも応じなかった為、思わず口から出た言葉だった。
だがそれはセスに届いたようで、周囲を覆った風の壁はフェードアウトするかのように小さくなり──やがて消えたのである。
現実味のない光景だったが、実際に部屋の中は酷い有り様だ。
壁もその他も傷付き、色々なものが割れたり砕けたりしている。
「………………トーリ様。危険を察知したのですが、お怪我は御座いませんでしたでしょうか」
「あぁ……。セス、オレは大丈夫だ」
パチリと瞬きをしたセスは、何事もなかったかのようにオレに問い掛けてきた。──今のセスはいつもの可愛い白いイタチで、くるくるの丸くて赤い目が愛らしい。
とりあえずこの場はセスを安心させる為にと、頷きながら答える。だが、内心でオレは焦っていた。
何せ、『オレ』以外が大丈夫ではない。
「……団長さん」
「あ、トーリ……。無事で良かった」
「何故……」
「ぅお~、凄い起こし方だ。さすが精霊様だのぉ。さてもう夜も遅いし、トーリは寝室で休むと良い。のぅ、ヴォスト」
「はい。……トーリ。ここは気にせず、奥で休んでくれないか」
「え、いや……」
「頼む」
「………………分かった」
笑顔でいるものの、団長さんに向ける目が笑っていないソロじいさん。
そして柔らかな態度でいるものの、視線が微妙に合わない団長さんだった。
何故団長さんがここにいるのかとか、疑問は尽きない。けれども、このごり押しに耐えられるオレではなかった。
そもそもが被害原因はたぶんオレにあるので、この場に留まる事は邪魔でしかないのだろう。
渋々ではあるが、オレは寝室側の扉内へ退散する事にした。──やっぱり、ここへは来なければ良かったな。
「トーリ様、いかがなさいましたか?」
「あ……、いや………………。何かオレ、迷惑を掛けてないか」
「トーリ様が迷惑を掛けるですって?セスは思いません。トーリ様は間違った事をしていません。非はあちらにあります」
はっきりと答えてくれるセスだ。
何があったか理解出来ていないが、目覚めた時に団長さんが一番近くにいた事は確かである。──あまり考えたくはないが、何かされそうになったのであろうか。まさか、こんなオレが屋敷内にいる事が許せなくて、暗殺しに来たとか?!
オレは脳内の怖い妄想を振り払うように、一度深呼吸をする。
ともかく、ソロじいさんは無事のようで良かった。それもひとえに、団長さんが炎で防御していたからだろう。
「あ、団長さんは炎を使っていたな」
「はい、トーリ様。彼の者は火の精霊と相性が良いようです」
「魔法、か。……凄いな。オレも使えるように、研鑽を積まないと」
「さすがで御座います、トーリ様」
いつもながら手放しで褒めてくれるセスだ。
けれどもオレは、自分の力で大切な者を守れるようにならなくては。
そう思い至った時、不意に精霊と魔法の関係性が気になった。──再度今日の図書館に行けば、魔法の知識が記された書物もあるだろうか。
「また図書館に行きたい」
「はい、トーリ様。ですがセスは、本日はトーリ様のお身体を休めた方が宜しいかと愚考致します」
「あぁ、勿論すぐにではない。オレ達も休もう」
「はい、トーリ様」
そうしてオレはセスと共に、寝具へと身体を沈める。
想像以上にふかふかで、まるで雲の上で寝ている気分だった。丸太小屋の布団もこれに変えようと、睡魔に夢へと誘われながら思う。
※ ※ ※ ※ ※
ふと人の気配に意識が戻った。辺りが明るくなっているので、もう朝のようである。
オレはセスを起こさないようにと、視線だけで周囲を確認した。昨日の事があったので変に警戒してしまったが、とりあえずこの寝室の中には他に誰もいない。
「セス」
「はい、トーリ様。おはようございます」
「おはよう、セス。起こしてすまない。人の気配がする」
「御用がなくとも、いつでもお声掛け下さい。そして侵入者は扉の外です。昨日の修繕をしているようですが、追い出しますか?」
「あ……、いや。襲撃でなければ良い。着替えるから、服を出してもらって良いか?」
「かしこまりました、トーリ様」
危険ではないと分かり、セスに確認を取って良かったと安堵した。
そんなこんなで完全にオレの頭も起きたので、セスにお願いして着替えを用意してもらう。こうしていつも、セスの亜空間から出してもらうのだ。
オレの頭の中で思い浮かべるものが、全て完璧に現物として構築される。不足する点は上手く補われているようで、これは創造神様々だ。
現実世界にアウトプットする事はセスを通してしか出来ないが、質量の関係を気にしなくても良いとてもチートな能力である。
グオゥッ──という唸るような音に、オレはハッと意識を呼び戻された。
寝起きの頭が動かない中で、視界に入ったもの。
それは吹き飛ばされた周囲の様々なものと、何故か目の前で炎を纏って防衛姿勢の団長さんだ。そして、オレの周囲を未だに風が覆っている。
「認可されていない存在の接近を感知しました。迎撃体制に入ります。……認可されていない存在の接近を感知しました。迎撃体制に入ります」
ソファーに横たわっている体勢のオレ。
そんなオレの肩に乗っているセス。
そこまではいつもと変わらないのに、セスの様子がおかしい。──何処か機械的というか、生命を感じないというか。
「セス?………………セス、待機」
呼び掛けにも応じなかった為、思わず口から出た言葉だった。
だがそれはセスに届いたようで、周囲を覆った風の壁はフェードアウトするかのように小さくなり──やがて消えたのである。
現実味のない光景だったが、実際に部屋の中は酷い有り様だ。
壁もその他も傷付き、色々なものが割れたり砕けたりしている。
「………………トーリ様。危険を察知したのですが、お怪我は御座いませんでしたでしょうか」
「あぁ……。セス、オレは大丈夫だ」
パチリと瞬きをしたセスは、何事もなかったかのようにオレに問い掛けてきた。──今のセスはいつもの可愛い白いイタチで、くるくるの丸くて赤い目が愛らしい。
とりあえずこの場はセスを安心させる為にと、頷きながら答える。だが、内心でオレは焦っていた。
何せ、『オレ』以外が大丈夫ではない。
「……団長さん」
「あ、トーリ……。無事で良かった」
「何故……」
「ぅお~、凄い起こし方だ。さすが精霊様だのぉ。さてもう夜も遅いし、トーリは寝室で休むと良い。のぅ、ヴォスト」
「はい。……トーリ。ここは気にせず、奥で休んでくれないか」
「え、いや……」
「頼む」
「………………分かった」
笑顔でいるものの、団長さんに向ける目が笑っていないソロじいさん。
そして柔らかな態度でいるものの、視線が微妙に合わない団長さんだった。
何故団長さんがここにいるのかとか、疑問は尽きない。けれども、このごり押しに耐えられるオレではなかった。
そもそもが被害原因はたぶんオレにあるので、この場に留まる事は邪魔でしかないのだろう。
渋々ではあるが、オレは寝室側の扉内へ退散する事にした。──やっぱり、ここへは来なければ良かったな。
「トーリ様、いかがなさいましたか?」
「あ……、いや………………。何かオレ、迷惑を掛けてないか」
「トーリ様が迷惑を掛けるですって?セスは思いません。トーリ様は間違った事をしていません。非はあちらにあります」
はっきりと答えてくれるセスだ。
何があったか理解出来ていないが、目覚めた時に団長さんが一番近くにいた事は確かである。──あまり考えたくはないが、何かされそうになったのであろうか。まさか、こんなオレが屋敷内にいる事が許せなくて、暗殺しに来たとか?!
オレは脳内の怖い妄想を振り払うように、一度深呼吸をする。
ともかく、ソロじいさんは無事のようで良かった。それもひとえに、団長さんが炎で防御していたからだろう。
「あ、団長さんは炎を使っていたな」
「はい、トーリ様。彼の者は火の精霊と相性が良いようです」
「魔法、か。……凄いな。オレも使えるように、研鑽を積まないと」
「さすがで御座います、トーリ様」
いつもながら手放しで褒めてくれるセスだ。
けれどもオレは、自分の力で大切な者を守れるようにならなくては。
そう思い至った時、不意に精霊と魔法の関係性が気になった。──再度今日の図書館に行けば、魔法の知識が記された書物もあるだろうか。
「また図書館に行きたい」
「はい、トーリ様。ですがセスは、本日はトーリ様のお身体を休めた方が宜しいかと愚考致します」
「あぁ、勿論すぐにではない。オレ達も休もう」
「はい、トーリ様」
そうしてオレはセスと共に、寝具へと身体を沈める。
想像以上にふかふかで、まるで雲の上で寝ている気分だった。丸太小屋の布団もこれに変えようと、睡魔に夢へと誘われながら思う。
※ ※ ※ ※ ※
ふと人の気配に意識が戻った。辺りが明るくなっているので、もう朝のようである。
オレはセスを起こさないようにと、視線だけで周囲を確認した。昨日の事があったので変に警戒してしまったが、とりあえずこの寝室の中には他に誰もいない。
「セス」
「はい、トーリ様。おはようございます」
「おはよう、セス。起こしてすまない。人の気配がする」
「御用がなくとも、いつでもお声掛け下さい。そして侵入者は扉の外です。昨日の修繕をしているようですが、追い出しますか?」
「あ……、いや。襲撃でなければ良い。着替えるから、服を出してもらって良いか?」
「かしこまりました、トーリ様」
危険ではないと分かり、セスに確認を取って良かったと安堵した。
そんなこんなで完全にオレの頭も起きたので、セスにお願いして着替えを用意してもらう。こうしていつも、セスの亜空間から出してもらうのだ。
オレの頭の中で思い浮かべるものが、全て完璧に現物として構築される。不足する点は上手く補われているようで、これは創造神様々だ。
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