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3.町にいってみたけど何か違う
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※ ※ ※ ※ ※
ソロじいさんと共に馬車に乗り、図書館までやってきた。
そうして昨日もいた門番に、ソロじいさんが何やら渡している事に気付いたオレ。建物の中に入った後、オレは若干戸惑いつつも確認してみる。
「ソロ。門番に渡していたものは……」
「あぁ、トーリは気にせんでも良い。貴族たる矜持だ。ここは貴族からの布施でなっているからな。だから無償で使えるのだよ」
「……貴族、か」
「そうだのぅ。貴賤の差は難しいものだが、それがあってこそ成り立っている事柄もあるからな。全ての民が平等などという価値観は、この国ですぐにどうこうとなると難しいのぉ」
「ソロは柔軟な考え方だ」
「褒められてものぉ」
どうやら門番には金銭を渡していたようだ。しかしながらオレにはどうしようもない事で。──そもそもが無職の金無し。
無人の森での生活であれば、神様スキルでオレに不自由はないのだ。勿論セスがいてこそではあるが。
けれども人の多い町などでは、どうしても対価として金銭が発生する。──もしかしたらセスの亜空間にこちら世界の硬貨を想像する事が可能かもしれないが、何だか罪悪感が湧くので出来ればオレは実行したくなかった。
ソロじいさんはオレに要求してこないが、あくまでもそれは昨日の階段で助けた時の謝礼だろう。それは一宿一飯で十分事足りると思えた。
「ソロ。ここまでありがとう。ここからオレは単独行動させてもらう」
「……ふむ、残念だのぅ。トーリならば、ワシの傍にいてもらいたいのだが」
言葉の真意は分からないが、この国では精霊が重要視されるのだから、狙いはセスである気がする。
オレと共にいるセスを手中にという考えであれば、それは頷けない話だ。
「すなまいが、オレは何処にも属する気はない」
「そうか。だがワシは、トーリの意思を無下にするつもりはないのだよ。そうだな。ワシにはもう大して力はないが、これを持っていってくれないかの。困った時に少しは助けになるやもしれぬ」
恐らくは権力者からヘッドハンティング的な言葉を投げ掛けられ、断る者はいないのだろう。
実際にオレも、前世のように柵があれば考えたかもしれない。しかしながら今は自由の身なのだ。
そう思って断ったオレに、ソロじいさんは掌サイズのブローチ状の物を手渡してくる。紋様が入っているところからして、貴族的な何かを象徴する重要な物ではと思えた。
「……悪いが、受け取れない」
「そんな事を言わずにの?」
ギュッと力強く握り込まされるが、年配者相手に手荒に振り払う事が出来ない。
何らかの意図があるのか、オレは探るようにソロじいさんの赤い瞳を見つめた。
「そうだのぅ。もし別の貴族から声が掛けられても、ワシの渡したこれを見せれば、強引な手を使われずに済むかもしれないという御守りだと思ってくれて良いのぉ」
「………………はぁ。分かった、ソロ。では受け取っておく」
「それじゃあ、トーリ。また縁があればのぅ」
強引さに負け、オレは溜め息を吐きつつもソロからそれを受け取る。
金色と赤色で装飾されたブローチは団長さんの色を思い出させるが、団長さんの父親も同じ色彩であった。母親は銀髪と青い瞳だったが、ソロじいさんも赤い瞳なので家系が持つ色彩なのだろう。
模様は大きな鳥と剣だ。家紋かもしれない。落としたり盗られたりしたら、物凄く大変な事になりそうだ。
にこやかに立ち去っていったソロじいさんの背中を見送り、オレは再度内心で溜め息を吐いた。
これ以上繋がりを持ちたくないのに、本当に強引な人である。
「大丈夫ですか、トーリ様」
「あぁ……。セス、魔法関係の書物を探したい。どの辺りか分かりそうか?」
「はい、トーリ様。それですと左側の通路を行きまして……」
多少の疲れを覚えたものの、調べものを済ませて早々に町を出たい。これ以上無駄に誰かから絡まれたくないのだ。
ダメ元で聞いてみたら、すぐにセスは返答をしてくれる。──万能か。
そうしてセスの案内のもと、オレは広い図書館を迷う事なく、目的の物を探し出せたのである。
※ ※ ※ ※ ※
『魔法とは』を紐解くと、何やらこの世界の成り立ち的なものから始まった。
精霊に好かれた者だけが、人の中でも魔法を使える権利を得る。しかしながらその魔法も、精霊の契約者とならなければ使えないのだ。そして契約途中でも、対象となる精霊に嫌われれば全てを失う。──全てが精霊主体の話だった。
それ故、この世界では精霊が崇め奉られる。
何故、誰も違和感を感じないのか。
どうして精霊ありきになっているのか、オレには分からなかった。
「セスは精霊とは違うよな」
「はい、トーリ様。セスはトーリ様と世界を渡った存在であり、唯一無二のトーリ様と起源を同じくする存在です。精霊とはこの世界の根底であり、秩序です。この世界の神が定めた法則であり、規律です」
そうしてセスは、人に力と法を任せない為の存在であると精霊の意義を告げる。
その言葉はオレに、前世の人間社会を思い起こさせた。
魔法はなかったが、科学を使って様々な欲求を満たしてきた人間。その反面自然界を駆逐し、蹂躙する。
その過程で、人間が原因で滅亡した種属はどれ程だったか。
この世界の神は、人にそうさせるだけの強さを持たせない為に精霊を充てたらしい。
良し悪しは価値観の違いによって異なるから断言は出来ないが、オレは丸投げされた精霊が不憫だと思ってしまった。
ソロじいさんと共に馬車に乗り、図書館までやってきた。
そうして昨日もいた門番に、ソロじいさんが何やら渡している事に気付いたオレ。建物の中に入った後、オレは若干戸惑いつつも確認してみる。
「ソロ。門番に渡していたものは……」
「あぁ、トーリは気にせんでも良い。貴族たる矜持だ。ここは貴族からの布施でなっているからな。だから無償で使えるのだよ」
「……貴族、か」
「そうだのぅ。貴賤の差は難しいものだが、それがあってこそ成り立っている事柄もあるからな。全ての民が平等などという価値観は、この国ですぐにどうこうとなると難しいのぉ」
「ソロは柔軟な考え方だ」
「褒められてものぉ」
どうやら門番には金銭を渡していたようだ。しかしながらオレにはどうしようもない事で。──そもそもが無職の金無し。
無人の森での生活であれば、神様スキルでオレに不自由はないのだ。勿論セスがいてこそではあるが。
けれども人の多い町などでは、どうしても対価として金銭が発生する。──もしかしたらセスの亜空間にこちら世界の硬貨を想像する事が可能かもしれないが、何だか罪悪感が湧くので出来ればオレは実行したくなかった。
ソロじいさんはオレに要求してこないが、あくまでもそれは昨日の階段で助けた時の謝礼だろう。それは一宿一飯で十分事足りると思えた。
「ソロ。ここまでありがとう。ここからオレは単独行動させてもらう」
「……ふむ、残念だのぅ。トーリならば、ワシの傍にいてもらいたいのだが」
言葉の真意は分からないが、この国では精霊が重要視されるのだから、狙いはセスである気がする。
オレと共にいるセスを手中にという考えであれば、それは頷けない話だ。
「すなまいが、オレは何処にも属する気はない」
「そうか。だがワシは、トーリの意思を無下にするつもりはないのだよ。そうだな。ワシにはもう大して力はないが、これを持っていってくれないかの。困った時に少しは助けになるやもしれぬ」
恐らくは権力者からヘッドハンティング的な言葉を投げ掛けられ、断る者はいないのだろう。
実際にオレも、前世のように柵があれば考えたかもしれない。しかしながら今は自由の身なのだ。
そう思って断ったオレに、ソロじいさんは掌サイズのブローチ状の物を手渡してくる。紋様が入っているところからして、貴族的な何かを象徴する重要な物ではと思えた。
「……悪いが、受け取れない」
「そんな事を言わずにの?」
ギュッと力強く握り込まされるが、年配者相手に手荒に振り払う事が出来ない。
何らかの意図があるのか、オレは探るようにソロじいさんの赤い瞳を見つめた。
「そうだのぅ。もし別の貴族から声が掛けられても、ワシの渡したこれを見せれば、強引な手を使われずに済むかもしれないという御守りだと思ってくれて良いのぉ」
「………………はぁ。分かった、ソロ。では受け取っておく」
「それじゃあ、トーリ。また縁があればのぅ」
強引さに負け、オレは溜め息を吐きつつもソロからそれを受け取る。
金色と赤色で装飾されたブローチは団長さんの色を思い出させるが、団長さんの父親も同じ色彩であった。母親は銀髪と青い瞳だったが、ソロじいさんも赤い瞳なので家系が持つ色彩なのだろう。
模様は大きな鳥と剣だ。家紋かもしれない。落としたり盗られたりしたら、物凄く大変な事になりそうだ。
にこやかに立ち去っていったソロじいさんの背中を見送り、オレは再度内心で溜め息を吐いた。
これ以上繋がりを持ちたくないのに、本当に強引な人である。
「大丈夫ですか、トーリ様」
「あぁ……。セス、魔法関係の書物を探したい。どの辺りか分かりそうか?」
「はい、トーリ様。それですと左側の通路を行きまして……」
多少の疲れを覚えたものの、調べものを済ませて早々に町を出たい。これ以上無駄に誰かから絡まれたくないのだ。
ダメ元で聞いてみたら、すぐにセスは返答をしてくれる。──万能か。
そうしてセスの案内のもと、オレは広い図書館を迷う事なく、目的の物を探し出せたのである。
※ ※ ※ ※ ※
『魔法とは』を紐解くと、何やらこの世界の成り立ち的なものから始まった。
精霊に好かれた者だけが、人の中でも魔法を使える権利を得る。しかしながらその魔法も、精霊の契約者とならなければ使えないのだ。そして契約途中でも、対象となる精霊に嫌われれば全てを失う。──全てが精霊主体の話だった。
それ故、この世界では精霊が崇め奉られる。
何故、誰も違和感を感じないのか。
どうして精霊ありきになっているのか、オレには分からなかった。
「セスは精霊とは違うよな」
「はい、トーリ様。セスはトーリ様と世界を渡った存在であり、唯一無二のトーリ様と起源を同じくする存在です。精霊とはこの世界の根底であり、秩序です。この世界の神が定めた法則であり、規律です」
そうしてセスは、人に力と法を任せない為の存在であると精霊の意義を告げる。
その言葉はオレに、前世の人間社会を思い起こさせた。
魔法はなかったが、科学を使って様々な欲求を満たしてきた人間。その反面自然界を駆逐し、蹂躙する。
その過程で、人間が原因で滅亡した種属はどれ程だったか。
この世界の神は、人にそうさせるだけの強さを持たせない為に精霊を充てたらしい。
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