23 / 53
3.町にいってみたけど何か違う
3-6
しおりを挟む
それからも魔法に関する他の書物を読み進め、結果的に精霊は自然界に当たり前のように存在する自由意思である事を知る。
花も木も、水や炎にすら意思──命があると考える方がオレは分かりやすい。
「……凄いな、異世界」
「はい、トーリ様。前の世界でも御座いましたが、この世界はそれが分かりやすく存在しています」
ポツリと呟いたオレの言葉に、当然のようにセスが返してくれた。
同じ様に本のページに視線を落としてくれているようで、セスにもこの世界の人の文字が読めるようである。──何だか嬉しい。
そして最終的に魔法を使う為に必要なのは、精霊との契約だ。
だからそれを知りたかったのだが、どうやら何処にも──他の何冊も広げて探してみたけれども、契約方法について記されている部分がない。
どういう事か思考を巡らせるが、書き記せないのではないかという結論を出す事しか出来なかった。
「トーリ様。そろそろお食事を召し上がられた方が宜しいかと愚考致します」
「あ……、もうそんなに時間が経ったのか。分かった。もうこれ以上情報を得る事は出来なそうだし、外に出るか」
「はい、トーリ様。あちらに少し開けた場所が御座います」
「分かった」
出した書物を片付け、オレはセスの小声での案内で中庭のような場所へ移動する。
そこは木々に囲まれていて、小さな噴水もある公園のような所だった。
そして見渡した先に、屋根の付いた休憩スペースが目に入る。
周囲にも人がいない為、オレはその場所で休む事にした。
「セス。朝にソロからもらった食事を出してくれないか?」
「はい、トーリ様。異物などは混入しておりませんので、御安心して御召し上がり下さいませ」
「ありがとう、セス」
ソロじいさんがオレに薬を盛るとかしないよなと思いつつ、苦笑を返す。
けれどもセスは、自分が出すもの以外を確認しなければ気が済まないのだろう。そもそも、亜空間に収納していただけでも薬物検査出来ている事が凄かった。
そうしてセスが出してくれたクロスの上に、ソロじいさんからもらった食事を並べる。昨夜食べたような肉や野菜を薄切りパンに挟んだものと、果実が数個だ。
あれから半日程経過しているが、全く劣化していない。どうやら亜空間の中では状態変化すらしないようだ。
それをセスを二人で食べていると、不意に近付く足音に気が付いた。
公共の場である為、オレは我関せずで食事を続ける。
「おい、お前。………………おい、聞いてんのかっ」
だがその何者かは、何やら声量を増して叫び始めた。
そこで漸く視線だけ向ければ、体格が横に主張し過ぎた小柄な男と半歩後ろにいる三人の大きな男達。
その中で叫んでいるのは小さい方で、服装も何というか──ピエロのような奇抜な格好である。
首から肩に掛けてのヒラヒラとか、菱形模様とか。色合いも赤や金銀を使った、見た目からして派手の方向性を間違えてしまった装いだった。
単に目立ちたがりなのか。もしかすると、これがとても凄い有名デザイナーの仕立てかもしれないが。
「そこは俺様の場所だっ」
「………………そうか」
背丈もオレより小柄で、肩くらいだろうか。小学生か、中学生になりたての男の子だ。ふんぞり返っている為に、余計に子供っぽく見える。
その子がこちらに指差しながら、どうやら場所を移動するように言っているようだ。
先客は当然オレなのだが、食事はあらかた食べ終わっている。セスも同じなので、この場を使いたいという子供を無視してまで居座る必要性も感じなかった。
人に指を差すのはどうかと思うが、この世界の細かな常識を知らないので許容する。そんな考えを脳内でしながら、手元を片付けて席を立った。
荷物はとりあえず、肩から下げた帆布製の鞄に押し込んだ。──セスの亜空間収納が、他の目からどう思われるか分からないからな。
「おい、聞いてんのかっ」
「……煩いな」
離席して場所を譲ろうとしているのに、未だにその子は喚き散らしている。しかもまだ声変わり前なのか、甲高い声で一方的に叫んでいるのだ。
オレは思わず、苛つきが口から溢れてしまう。
「何っ!?おいっ、平民っ!俺様が誰だか分かっての事かっ?!」
「………………はぁ」
「溜め息だとっ!この俺様に向かってその態度っ?もう我慢出来んっ!切り捨ててやるっ!」
恐らくオレが何をしても気に入らないのだろうが、もう小型犬のバカみたいなキャンキャン声と変わらないのだ。
実際に何を言っているのか聞き取る気も失せたオレだが、今『切り捨てる』とか言わなかったか?
「トーリ様。セスが処理致しましょうか」
「……いや。貴族らしいから、更に面倒事になりそうだ」
小声でセスが話し掛けてきた。
『処理』の意味は深く分からないが、セスの防御機能を使えば軽く吹き飛ばせるだろう。
しかしながらオレに対して『平民』というからには、相手は貴族なのだ。この世界の柵はないが、変に禍根を残すと今後に差し障りが出る。
──穏便にかつ、後を引かない解決策。物理的な力ではない、圧倒的圧力か?あの子がオレに手を出す事を躊躇するようなもの……。
オレは内心の苛立ちを隠し、目の前の子に真っ直ぐ視線を向けた。
花も木も、水や炎にすら意思──命があると考える方がオレは分かりやすい。
「……凄いな、異世界」
「はい、トーリ様。前の世界でも御座いましたが、この世界はそれが分かりやすく存在しています」
ポツリと呟いたオレの言葉に、当然のようにセスが返してくれた。
同じ様に本のページに視線を落としてくれているようで、セスにもこの世界の人の文字が読めるようである。──何だか嬉しい。
そして最終的に魔法を使う為に必要なのは、精霊との契約だ。
だからそれを知りたかったのだが、どうやら何処にも──他の何冊も広げて探してみたけれども、契約方法について記されている部分がない。
どういう事か思考を巡らせるが、書き記せないのではないかという結論を出す事しか出来なかった。
「トーリ様。そろそろお食事を召し上がられた方が宜しいかと愚考致します」
「あ……、もうそんなに時間が経ったのか。分かった。もうこれ以上情報を得る事は出来なそうだし、外に出るか」
「はい、トーリ様。あちらに少し開けた場所が御座います」
「分かった」
出した書物を片付け、オレはセスの小声での案内で中庭のような場所へ移動する。
そこは木々に囲まれていて、小さな噴水もある公園のような所だった。
そして見渡した先に、屋根の付いた休憩スペースが目に入る。
周囲にも人がいない為、オレはその場所で休む事にした。
「セス。朝にソロからもらった食事を出してくれないか?」
「はい、トーリ様。異物などは混入しておりませんので、御安心して御召し上がり下さいませ」
「ありがとう、セス」
ソロじいさんがオレに薬を盛るとかしないよなと思いつつ、苦笑を返す。
けれどもセスは、自分が出すもの以外を確認しなければ気が済まないのだろう。そもそも、亜空間に収納していただけでも薬物検査出来ている事が凄かった。
そうしてセスが出してくれたクロスの上に、ソロじいさんからもらった食事を並べる。昨夜食べたような肉や野菜を薄切りパンに挟んだものと、果実が数個だ。
あれから半日程経過しているが、全く劣化していない。どうやら亜空間の中では状態変化すらしないようだ。
それをセスを二人で食べていると、不意に近付く足音に気が付いた。
公共の場である為、オレは我関せずで食事を続ける。
「おい、お前。………………おい、聞いてんのかっ」
だがその何者かは、何やら声量を増して叫び始めた。
そこで漸く視線だけ向ければ、体格が横に主張し過ぎた小柄な男と半歩後ろにいる三人の大きな男達。
その中で叫んでいるのは小さい方で、服装も何というか──ピエロのような奇抜な格好である。
首から肩に掛けてのヒラヒラとか、菱形模様とか。色合いも赤や金銀を使った、見た目からして派手の方向性を間違えてしまった装いだった。
単に目立ちたがりなのか。もしかすると、これがとても凄い有名デザイナーの仕立てかもしれないが。
「そこは俺様の場所だっ」
「………………そうか」
背丈もオレより小柄で、肩くらいだろうか。小学生か、中学生になりたての男の子だ。ふんぞり返っている為に、余計に子供っぽく見える。
その子がこちらに指差しながら、どうやら場所を移動するように言っているようだ。
先客は当然オレなのだが、食事はあらかた食べ終わっている。セスも同じなので、この場を使いたいという子供を無視してまで居座る必要性も感じなかった。
人に指を差すのはどうかと思うが、この世界の細かな常識を知らないので許容する。そんな考えを脳内でしながら、手元を片付けて席を立った。
荷物はとりあえず、肩から下げた帆布製の鞄に押し込んだ。──セスの亜空間収納が、他の目からどう思われるか分からないからな。
「おい、聞いてんのかっ」
「……煩いな」
離席して場所を譲ろうとしているのに、未だにその子は喚き散らしている。しかもまだ声変わり前なのか、甲高い声で一方的に叫んでいるのだ。
オレは思わず、苛つきが口から溢れてしまう。
「何っ!?おいっ、平民っ!俺様が誰だか分かっての事かっ?!」
「………………はぁ」
「溜め息だとっ!この俺様に向かってその態度っ?もう我慢出来んっ!切り捨ててやるっ!」
恐らくオレが何をしても気に入らないのだろうが、もう小型犬のバカみたいなキャンキャン声と変わらないのだ。
実際に何を言っているのか聞き取る気も失せたオレだが、今『切り捨てる』とか言わなかったか?
「トーリ様。セスが処理致しましょうか」
「……いや。貴族らしいから、更に面倒事になりそうだ」
小声でセスが話し掛けてきた。
『処理』の意味は深く分からないが、セスの防御機能を使えば軽く吹き飛ばせるだろう。
しかしながらオレに対して『平民』というからには、相手は貴族なのだ。この世界の柵はないが、変に禍根を残すと今後に差し障りが出る。
──穏便にかつ、後を引かない解決策。物理的な力ではない、圧倒的圧力か?あの子がオレに手を出す事を躊躇するようなもの……。
オレは内心の苛立ちを隠し、目の前の子に真っ直ぐ視線を向けた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
精霊のお仕事
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】
オレは前世の記憶を思い出した。
あの世で、ダメじゃん。
でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。
まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。
ときどき神様の依頼があったり。
わけのわからん敵が出てきたりする。
たまには人間を蹂躙したりもする。?
まあいいか。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる