24 / 53
3.町にいってみたけど何か違う
3-7
しおりを挟む
この世界の人は、精霊が神様的な扱いになっていた事を思い出す。
精霊とやらは未だに見た事はないが、せっかく魔法が使える世界なのだから、オレもいずれは精霊に会いたいと思っていた。
──自然は好きだな。風の音、炎の揺らめき、木の葉の擦れる軽い音。水の匂いも土の匂いも、田舎育ちのオレには光も闇も全てが身近だった。
目の前の子供を見据えていた瞳を閉じたオレは、自身を包み込む自然を思い浮かべる。
異世界転生してからも、当然のように身の回りにある自然界だ。ここには科学がないからか、前世よりも自然が色濃い。
──自然界は時に怖い面を持つけれど、それはどんな生き物でも同じ。そうか…………。ここでは、更に強く活きているんだな。
オレの中で点と点が繋がった感覚がした。
その瞬間、ふわりと周囲の空気が変わる。
「さすがです、トーリ様」
セスの声に瞳を開ければ、視界にたくさんの小さな光があった。
緑色に赤色、橙色。他にも青色と藍色、黄色に紫色。──それは虹色で、七色の色彩の光の粒である。しかも一色が一つではない為、オレの周囲はキラキラと輝いていた。まるでミラーボール照明に照らされているようである。
『心地好いヒト種』
『気持ち良い魔力』
「……精霊」
オレはそれらの光の中に、指サイズ程の動く存在を見た。
様々な呟きと共に、周囲を飛び回るそれら。形は多種多様で、鳥っぽいのやトカゲっぽいのもいる。厳密に一つの形を取っていないものもいて、それでもそれぞれが意思をもって動いてるようだった。
実在する生物とは明らかに異なるそれを、オレは感動しながら見つめる。
「精霊?!」
「ま、まさか?こんなにも一つの場所に多種類の精霊が集まるなど、見た事も聞いた事もない」
「こんな事って……」
先程の傲慢な子供とそのお供が口々に何かを言っているが、オレの耳にはその音声よりも小さきもののざわめきの方が大きく聞こえた。
けれどもそれに嫌な感じはなく、どちらかというとほのぼの系である。
「セス。これは精霊で合ってるか?」
「はい、トーリ様。この精霊達は全て、トーリ様に惹かれて集まってきました」
セスにも確認してみたが、オレの判断は間違っていなかった。──そもそもセスが全く警戒していなかった為、危険はないと思っていたのである。
そうして暫くワヤワヤとした精霊達を観察していると、その中の一つが目の前に躍り出た。
『ヒト種、契約、する』
黄色いフワフワの、綿毛が積み重なった熊っぽい精霊だ。
これも可愛いなと思ってオレは見ていたのだが、何故か視線上から動かない。パタパタと手足のような小さな突起を動かして、何かをオレに訴え掛けているようだ。
「どうしたんだ?」
『手、魔力』
周囲のざわめきが煩くて、目の前の精霊だけの音声を聞き取れない。
さすがに可哀想だと思い、オレはその黄色い精霊に手を差し出した。あまりに小さいので、とりあえず掌にでも乗って休んでもらえればと思っただけである。
だがそんなオレの考えとは違い、黄色い精霊はクルンと宙返りするように回ってからハイタッチするように掌に突っ込んできた。
オレは危ないと思って驚いて手を引こうとしたが、それよりも精霊が触れるのが早い。そして接触した途端、掌が熱くなった。
思わず凝視すると、オレの掌の上に浮かび上がる魔法陣のような光。そしてその輪の中を通過する黄色い精霊である。
それからは次から次へと様々な色の精霊達が、我先にとオレに触れ、掌の上の輪を潜っていった。
全てがオレの思考を置き去りにした行為である。
「あ……」
「トーリ様っ」
どのくらい続いたのか分からないが、急にカクリと身体から力が抜けてオレは地面にへたり込んでしまった。
慌てたようなセスの声と、ふわりと支えられる感覚。恐らくセスが、例の防御機能を使ってくれたのだろう。
そうしてオレは痛みを感じる事はなく、地面にお尻をついたのだ。
けれども原因が分からず、急に身体の力が抜けてしまって困惑するオレである。
「トーリ様、痛みなどは御座いませんか」
「あ……あぁ、それは大丈夫だ。けど立てない」
「恐らくは急激な魔力欠乏による、一時的な脱力感であると愚考致します」
肩の上から心配そうに問い掛けてくるセスだが、オレとしては痛みや苦痛を感じていないので大きな問題はないと思えた。──それにしても、魔力欠乏とはいかに。
オレはいつ魔力を使ったと言うのだろうか。使い方どころか、オレの中に存在している認識すらなかったのにである。
『ヒト種、トーリ、契約、魔力、美味しい』
「……なるほど」
再び視線の先に躍り出てきた黄色い精霊が、くるくる回りながらオレに告げてきた。
楽しそうで何よりだが、どうやらオレは知らない間に精霊と契約をしたようである。そしてその契約する行為自体に、オレの魔力を必要としたようだ。
美味しいと言われた事に対しては思うところがなくはないが、一連の流れから全てが精霊主体であるという事実も判明した。確かにあれでは、人間が書物に書き記しても意味はないのだろう。
選ぶのは精霊で、人間側に選択肢は契約の拒絶くらいだろうか。──まぁ、それすら出来るかどうかは不明だ。
精霊とやらは未だに見た事はないが、せっかく魔法が使える世界なのだから、オレもいずれは精霊に会いたいと思っていた。
──自然は好きだな。風の音、炎の揺らめき、木の葉の擦れる軽い音。水の匂いも土の匂いも、田舎育ちのオレには光も闇も全てが身近だった。
目の前の子供を見据えていた瞳を閉じたオレは、自身を包み込む自然を思い浮かべる。
異世界転生してからも、当然のように身の回りにある自然界だ。ここには科学がないからか、前世よりも自然が色濃い。
──自然界は時に怖い面を持つけれど、それはどんな生き物でも同じ。そうか…………。ここでは、更に強く活きているんだな。
オレの中で点と点が繋がった感覚がした。
その瞬間、ふわりと周囲の空気が変わる。
「さすがです、トーリ様」
セスの声に瞳を開ければ、視界にたくさんの小さな光があった。
緑色に赤色、橙色。他にも青色と藍色、黄色に紫色。──それは虹色で、七色の色彩の光の粒である。しかも一色が一つではない為、オレの周囲はキラキラと輝いていた。まるでミラーボール照明に照らされているようである。
『心地好いヒト種』
『気持ち良い魔力』
「……精霊」
オレはそれらの光の中に、指サイズ程の動く存在を見た。
様々な呟きと共に、周囲を飛び回るそれら。形は多種多様で、鳥っぽいのやトカゲっぽいのもいる。厳密に一つの形を取っていないものもいて、それでもそれぞれが意思をもって動いてるようだった。
実在する生物とは明らかに異なるそれを、オレは感動しながら見つめる。
「精霊?!」
「ま、まさか?こんなにも一つの場所に多種類の精霊が集まるなど、見た事も聞いた事もない」
「こんな事って……」
先程の傲慢な子供とそのお供が口々に何かを言っているが、オレの耳にはその音声よりも小さきもののざわめきの方が大きく聞こえた。
けれどもそれに嫌な感じはなく、どちらかというとほのぼの系である。
「セス。これは精霊で合ってるか?」
「はい、トーリ様。この精霊達は全て、トーリ様に惹かれて集まってきました」
セスにも確認してみたが、オレの判断は間違っていなかった。──そもそもセスが全く警戒していなかった為、危険はないと思っていたのである。
そうして暫くワヤワヤとした精霊達を観察していると、その中の一つが目の前に躍り出た。
『ヒト種、契約、する』
黄色いフワフワの、綿毛が積み重なった熊っぽい精霊だ。
これも可愛いなと思ってオレは見ていたのだが、何故か視線上から動かない。パタパタと手足のような小さな突起を動かして、何かをオレに訴え掛けているようだ。
「どうしたんだ?」
『手、魔力』
周囲のざわめきが煩くて、目の前の精霊だけの音声を聞き取れない。
さすがに可哀想だと思い、オレはその黄色い精霊に手を差し出した。あまりに小さいので、とりあえず掌にでも乗って休んでもらえればと思っただけである。
だがそんなオレの考えとは違い、黄色い精霊はクルンと宙返りするように回ってからハイタッチするように掌に突っ込んできた。
オレは危ないと思って驚いて手を引こうとしたが、それよりも精霊が触れるのが早い。そして接触した途端、掌が熱くなった。
思わず凝視すると、オレの掌の上に浮かび上がる魔法陣のような光。そしてその輪の中を通過する黄色い精霊である。
それからは次から次へと様々な色の精霊達が、我先にとオレに触れ、掌の上の輪を潜っていった。
全てがオレの思考を置き去りにした行為である。
「あ……」
「トーリ様っ」
どのくらい続いたのか分からないが、急にカクリと身体から力が抜けてオレは地面にへたり込んでしまった。
慌てたようなセスの声と、ふわりと支えられる感覚。恐らくセスが、例の防御機能を使ってくれたのだろう。
そうしてオレは痛みを感じる事はなく、地面にお尻をついたのだ。
けれども原因が分からず、急に身体の力が抜けてしまって困惑するオレである。
「トーリ様、痛みなどは御座いませんか」
「あ……あぁ、それは大丈夫だ。けど立てない」
「恐らくは急激な魔力欠乏による、一時的な脱力感であると愚考致します」
肩の上から心配そうに問い掛けてくるセスだが、オレとしては痛みや苦痛を感じていないので大きな問題はないと思えた。──それにしても、魔力欠乏とはいかに。
オレはいつ魔力を使ったと言うのだろうか。使い方どころか、オレの中に存在している認識すらなかったのにである。
『ヒト種、トーリ、契約、魔力、美味しい』
「……なるほど」
再び視線の先に躍り出てきた黄色い精霊が、くるくる回りながらオレに告げてきた。
楽しそうで何よりだが、どうやらオレは知らない間に精霊と契約をしたようである。そしてその契約する行為自体に、オレの魔力を必要としたようだ。
美味しいと言われた事に対しては思うところがなくはないが、一連の流れから全てが精霊主体であるという事実も判明した。確かにあれでは、人間が書物に書き記しても意味はないのだろう。
選ぶのは精霊で、人間側に選択肢は契約の拒絶くらいだろうか。──まぁ、それすら出来るかどうかは不明だ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
精霊のお仕事
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
【完結】
オレは前世の記憶を思い出した。
あの世で、ダメじゃん。
でもそこにいたのは地球で慣れ親しんだ神様。神様のおかげで復活がなったが…今世の記憶が飛んでいた。
まあ、オレを拾ってくれたのはいい人達だしオレは彼等と家族になって新しい人生を生きる。
ときどき神様の依頼があったり。
わけのわからん敵が出てきたりする。
たまには人間を蹂躙したりもする。?
まあいいか。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる