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3.町にいってみたけど何か違う
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ところで、これからどうすれば良いのかである。
現状、オレは身体に力が入らない。つまりは立ち上がる事すら出来ないのだ。
そして目の前には傲慢な子供とそのお供達。
オレの周囲には未だ精霊達が浮遊しているものの、人間同士の争い事に興味はないのだろう。全く緊迫した空気はなく、キラキラと輝きながら舞っているだけだ。
「お、お前……精霊と契約してたのか?」
「……まさか、平民がっ?」
「平民にはあまり魔力がないって聞いてたが」
「それは選民意識の高い御偉方の言葉だろ?」
「これだけ魔道具がありふれているんだ。平民だろうが、使えなきゃ不便で仕方がない」
「まぁ、そうだよな」
「おいっ、お前達っ。俺様を無視して話をするなっ」
「あぁ、すみません坊っちゃん」
「坊っちゃんって言うなっ。ってか、近付き過ぎると俺様が小さく見えるだろっ」
お供三人の無駄話に怒鳴る子供。
そのやり取りから、オレは金持ちボンボンの我が儘にしか見えない。異世界だろうが、こういう類いは何処にでもいるのだと呆れを浮かべた。
「お前っ。今、俺様をバカにしたのかっ。クソっ、少し魔力があるからって偉そうにしやがってっ」
そう一人で怒りを露にしながら、地団駄を踏んでいる。──そういう態度が、子供っぽいんだって気付け。
ともかくオレは、現状の復帰と離脱を考えなくてはならないのだ。
端から見たら、傲慢貴族っ子に腰を抜かした間抜けにしか見えない。
「おいっ、何とか言えっ。俺様を無視するなっ」
「何だ。煩いと思ったら、マンピソクテン子爵の孫か」
「っ?……ツェシェルア、元伯爵、様」
「相手に嫌々前の爵位と敬称を付けるのは、親の教育の成果か。情けない。その体つきからして察する事が出来るが、次男坊ならば早々に身の振り方を考えねばならぬのではなかろうか?」
「わ、分かってっ……ます」
「騎士団に入るのならば、ヴォストにワシから声を掛けてやらぬでもないぞ」
「っ?!結構ですっ。保安騎士団になんか入ったら、命が幾つあっても足りないっ。俺さ……私は所用を思い出したので、お先に失礼させて頂きます」
「そうか。……励めよ」
「っ?!」
地面に尻をついて見上げるオレの前で、そんなやり取りがなされた。
ソロじいさんは、意外というか世話焼きの称号をもっているに違いない。大勢の女性陣に囲まれていた昨日のオレを助けた時と同じく、このひねくれ少年にも手を伸ばそうとしているのだ。
「すまないのぅ、トーリ。あやつは魔力の質量が足りず、精霊契約が出来ぬのだ。それを理由にしてか周囲に馴染めないせいで、産みの親である平民出身の愛妾を恨んでいてな」
そう言いながら、ソロじいさんはオレを引き起こす為に手を差し出してくれる。
あのひねくれ方にも、相応の理由があるようだ。──オレには全く関係ないが。
「それよりも……、ワシは凄いものを見たのだが。未だに周囲を離れない精霊様の数も凄いが、一度にあの数と精霊契約をしたとはっ。トーリ、凄いのぉ!」
大興奮のソロじいさんにハグされ、オレは困惑するしかなかった。
今でもオレの両足は小鹿のようにプルプルで、全身に及ぶ虚脱感が半端ない。本当ならばすぐにでも町を出ていきたかったのに、立って歩く事すらままならないとは。
「ところで……抵抗しないのは、魔力欠乏かの?」
「……そうらしい」
「そうときたなら、ワシの屋敷で休んで行こうなっ」
「いや……」
「魔力欠乏ともなると、回復するまでに二、三日掛かるのぉ。だがこうして周囲に精霊様が漂っている状態では、他の貴族にいつ目をつけられて拘束されるかもしれないのぉ。これだけの精霊様に好かれているトーリを見て、見ぬふりをしてくれる権力者は他にはいないからのぉ」
「………………はぁ。ソロ、頼む」
「よし、そうでないとのぅ」
そんなごり押しに負け、溜め息と共に再びオレはソロじいさんの屋敷に舞い戻るはめになった。
フワフワで雲のような布団に再度横になれた事は悪くないが、オレの心境としてはかなり複雑である。
ちなみにオレを屋敷まで運んだのは、仕事に行っていた団長さんだった。
杖を使っているソロじいさんにオレを移動出来るとは思っていなかったが、担架的なものを手配してくれると楽観視していたのである。それが、呼ばれて現れたのは団長さんなのだ。
もう二度と出会う事がないと朝方思っていたオレは、目の前の彼に驚愕を隠せない。それなのに更に、そんな状態のオレを移動させる手段が──あろう事か姫抱きだった。
図書館の中庭からソロじいさんの屋敷まで、公開処刑のオレ。動けない事を良い事に、大人しく抱き上げられて町を歩かれたのだ。
今朝出発した部屋へ連れ戻されたオレは、密かに枕を濡らす。──何だろう。オレの中の何かが、また一つ崩れ落ちた気がした。
異世界転生して悠々自適な生活を送れると思っていたが、どうやらオレは他者が絡むと必然的に流され体質になるようである。──おかしい。オレ、こんなだったか?
現状、オレは身体に力が入らない。つまりは立ち上がる事すら出来ないのだ。
そして目の前には傲慢な子供とそのお供達。
オレの周囲には未だ精霊達が浮遊しているものの、人間同士の争い事に興味はないのだろう。全く緊迫した空気はなく、キラキラと輝きながら舞っているだけだ。
「お、お前……精霊と契約してたのか?」
「……まさか、平民がっ?」
「平民にはあまり魔力がないって聞いてたが」
「それは選民意識の高い御偉方の言葉だろ?」
「これだけ魔道具がありふれているんだ。平民だろうが、使えなきゃ不便で仕方がない」
「まぁ、そうだよな」
「おいっ、お前達っ。俺様を無視して話をするなっ」
「あぁ、すみません坊っちゃん」
「坊っちゃんって言うなっ。ってか、近付き過ぎると俺様が小さく見えるだろっ」
お供三人の無駄話に怒鳴る子供。
そのやり取りから、オレは金持ちボンボンの我が儘にしか見えない。異世界だろうが、こういう類いは何処にでもいるのだと呆れを浮かべた。
「お前っ。今、俺様をバカにしたのかっ。クソっ、少し魔力があるからって偉そうにしやがってっ」
そう一人で怒りを露にしながら、地団駄を踏んでいる。──そういう態度が、子供っぽいんだって気付け。
ともかくオレは、現状の復帰と離脱を考えなくてはならないのだ。
端から見たら、傲慢貴族っ子に腰を抜かした間抜けにしか見えない。
「おいっ、何とか言えっ。俺様を無視するなっ」
「何だ。煩いと思ったら、マンピソクテン子爵の孫か」
「っ?……ツェシェルア、元伯爵、様」
「相手に嫌々前の爵位と敬称を付けるのは、親の教育の成果か。情けない。その体つきからして察する事が出来るが、次男坊ならば早々に身の振り方を考えねばならぬのではなかろうか?」
「わ、分かってっ……ます」
「騎士団に入るのならば、ヴォストにワシから声を掛けてやらぬでもないぞ」
「っ?!結構ですっ。保安騎士団になんか入ったら、命が幾つあっても足りないっ。俺さ……私は所用を思い出したので、お先に失礼させて頂きます」
「そうか。……励めよ」
「っ?!」
地面に尻をついて見上げるオレの前で、そんなやり取りがなされた。
ソロじいさんは、意外というか世話焼きの称号をもっているに違いない。大勢の女性陣に囲まれていた昨日のオレを助けた時と同じく、このひねくれ少年にも手を伸ばそうとしているのだ。
「すまないのぅ、トーリ。あやつは魔力の質量が足りず、精霊契約が出来ぬのだ。それを理由にしてか周囲に馴染めないせいで、産みの親である平民出身の愛妾を恨んでいてな」
そう言いながら、ソロじいさんはオレを引き起こす為に手を差し出してくれる。
あのひねくれ方にも、相応の理由があるようだ。──オレには全く関係ないが。
「それよりも……、ワシは凄いものを見たのだが。未だに周囲を離れない精霊様の数も凄いが、一度にあの数と精霊契約をしたとはっ。トーリ、凄いのぉ!」
大興奮のソロじいさんにハグされ、オレは困惑するしかなかった。
今でもオレの両足は小鹿のようにプルプルで、全身に及ぶ虚脱感が半端ない。本当ならばすぐにでも町を出ていきたかったのに、立って歩く事すらままならないとは。
「ところで……抵抗しないのは、魔力欠乏かの?」
「……そうらしい」
「そうときたなら、ワシの屋敷で休んで行こうなっ」
「いや……」
「魔力欠乏ともなると、回復するまでに二、三日掛かるのぉ。だがこうして周囲に精霊様が漂っている状態では、他の貴族にいつ目をつけられて拘束されるかもしれないのぉ。これだけの精霊様に好かれているトーリを見て、見ぬふりをしてくれる権力者は他にはいないからのぉ」
「………………はぁ。ソロ、頼む」
「よし、そうでないとのぅ」
そんなごり押しに負け、溜め息と共に再びオレはソロじいさんの屋敷に舞い戻るはめになった。
フワフワで雲のような布団に再度横になれた事は悪くないが、オレの心境としてはかなり複雑である。
ちなみにオレを屋敷まで運んだのは、仕事に行っていた団長さんだった。
杖を使っているソロじいさんにオレを移動出来るとは思っていなかったが、担架的なものを手配してくれると楽観視していたのである。それが、呼ばれて現れたのは団長さんなのだ。
もう二度と出会う事がないと朝方思っていたオレは、目の前の彼に驚愕を隠せない。それなのに更に、そんな状態のオレを移動させる手段が──あろう事か姫抱きだった。
図書館の中庭からソロじいさんの屋敷まで、公開処刑のオレ。動けない事を良い事に、大人しく抱き上げられて町を歩かれたのだ。
今朝出発した部屋へ連れ戻されたオレは、密かに枕を濡らす。──何だろう。オレの中の何かが、また一つ崩れ落ちた気がした。
異世界転生して悠々自適な生活を送れると思っていたが、どうやらオレは他者が絡むと必然的に流され体質になるようである。──おかしい。オレ、こんなだったか?
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