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3.町にいってみたけど何か違う
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※ ※ ※ ※ ※
それから五日が経過した。
何故『五日』なのか。──そう。通常ならば二、三日もあれば回復すると言われていた魔力欠乏症である。
それが五日もベッドの住人となってしまったオレだ。
「さすがです、トーリ様。総数、百を超える精霊との契約で御座いました」
「……あぁ、そうみたいだ」
まだ気だるさが抜けきらないオレだったが、何とか室内移動程度ならば自力でこなせる程度までは回復している。
実際にはあの翌日、寝て起きた時には半分程度まで回復していたのだ。
それがここまで長引いたのは、あの後もオレの周囲から離れなかった精霊達が、次から次へと契約を申し込んできたからである。
さすがに起き上がる事すら出来なくなったオレを見て、セスがキレた。
魔力残量が数値で確認出来る訳ではないので正確には分からないが、オレが歩行困難に陥る手前になると精霊を引き離すという、マネージャー的行動に出たのである。──セスがいなければ魔力が枯渇して、オレはミイラのようになっていたかもしれない。
ともあれ、結果的にオレは集まった全ての精霊との契約を完了したのだ。
その数、百六。──これが何故か不思議と、感覚で分かる。七つの種別ごとにそれぞれ、十から三十程だ。恐らく偏りがあるのは、オレ自身との属性的な相性もあるのだろう。
「トーリ様。彼の者が近付いて来ています」
「……またか」
「排除致しますか?」
セスが緊迫したような空気で毛を逆立たせた。これは団長さんが来た時に見せる反応で、オレもこの五日の間に何度となく体験したので知っている。
最低、朝晩の二回はこの部屋にやって来る団長さんだ。表向きはオレの見舞いとしてではあるが、セスがその都度かなり警戒するのである。
あまりにセスが嫌っているようなので、オレとしてもお近づきになりたくなかった。
「ソロは?」
「共にいないようです」
「そうか。それなら扉に近付けないようにしてくれ。今は休みたい」
「かしこまりました、トーリ様」
セスにお願いして、団長さんに会わないで良いようにしてもらう。
風の魔力で壁を作れるので、シールド的なもので扉をガードしてくれる筈だ。
とにかくオレは身体を休めて、魔力を回復させたい。そして早くこの町を出たいのだ。──オレとしては、セス欲しさで暴走した団長さんに暗殺されるのも嫌だし。
セスの態度から好かれていない事を察して欲しいのだが、団長さんは折れない性格らしい。
この部屋に顔を出す度に剣呑な雰囲気のセスを見つめているのに、ここへ立ち寄らないという選択肢は存在していないようなのだ。
オレの気疲れ要因の一つでもある。
そうして団長さんの訪問を拒絶したオレは、再びベッドに身体を沈めた。──やはり、このふわふわ布団は最高である。
※ ※ ※ ※ ※
どれくらい時間が経ったのか、オレはいつの間にか爆睡していたようだ。
目覚めた時には周囲が薄暗く、既に日が暮れている事が分かる。
「お目覚めですか、トーリ様」
「あぁ。セス、今は何時頃だ?」
「はい。この世界の時間で言うなれば、木の時でございます。何度か訪問者が御座いましたが、全て追い払ってございます」
「……そうか。手間を掛けさせたな」
「いいえ、トーリ様。深く御休みになられていたので、セスは邪魔者を排除しただけです。何か御召し上がりになられますか?」
「あぁ……、そうだな。うどんが食べたい」
「かしこまりました、トーリ様」
そうして幾分軽くなった身体を感じながら、近くのテーブルにうどんを出してもらった。
セスの亜空間は本当に便利で、オレの想像する通りの品物を出す事が出来る。温度も大きさも関係なく、更には思うまま某ファストフードのバーガーやチキンも普通に出せるのだ。
当然の事ながらお盆や箸は完備で、定食にしたり漬物を添えたりも出来る。──最高だ。
そうしてセスと二人で海老天うどんを食べた。異世界で衣食住に全く困らないのもセスがいるからで、非常に助かっている。
ちなみにセスもうどんを食べたのだが、さすがに箸は使わず手掴みだった。それ故にか熱いのは好みでないようで、普段からオレが食べるものより少し温度を下げた同じものを食べている。
「あ、セス。あの布団も亜空間に入れておくな」
「はい、トーリ様。どの様なものでも、お気に召した時に御想像下さいませ」
「いつもありがとう」
「セスはトーリ様と共にあれる事が喜びでございます」
食べ終わった食器類をセスが亜空間に戻したところで、思い出したようにオレは言った。
連日ふわふわ布団で寝ていたので、既に手放し難く思っていたのである。こうしていつでもオレの思い浮かべる想像物をセスの亜空間に格納出来るので、この世界の金銭を持っていなくても不都合がないのだ。
「……そろそろここから出るか」
「はい、トーリ様。いつでも出立出来ますので、お声掛け下さいませ」
セスの楽しそうな声音に後押しされるように、オレは身の回りに自分のものがないか確認する。
とはいえ、いつ人が入ってきても良いように、基本的にオレのものは出しておかないようにしているのだ。理由として第一に、この世界のものではないものが多いから。
さすがに電化製品を出したりはしていないが、恐らく発電機を出せば問題なく使えるだろう。燃料すら、オレは用意出来るのだ。
それから五日が経過した。
何故『五日』なのか。──そう。通常ならば二、三日もあれば回復すると言われていた魔力欠乏症である。
それが五日もベッドの住人となってしまったオレだ。
「さすがです、トーリ様。総数、百を超える精霊との契約で御座いました」
「……あぁ、そうみたいだ」
まだ気だるさが抜けきらないオレだったが、何とか室内移動程度ならば自力でこなせる程度までは回復している。
実際にはあの翌日、寝て起きた時には半分程度まで回復していたのだ。
それがここまで長引いたのは、あの後もオレの周囲から離れなかった精霊達が、次から次へと契約を申し込んできたからである。
さすがに起き上がる事すら出来なくなったオレを見て、セスがキレた。
魔力残量が数値で確認出来る訳ではないので正確には分からないが、オレが歩行困難に陥る手前になると精霊を引き離すという、マネージャー的行動に出たのである。──セスがいなければ魔力が枯渇して、オレはミイラのようになっていたかもしれない。
ともあれ、結果的にオレは集まった全ての精霊との契約を完了したのだ。
その数、百六。──これが何故か不思議と、感覚で分かる。七つの種別ごとにそれぞれ、十から三十程だ。恐らく偏りがあるのは、オレ自身との属性的な相性もあるのだろう。
「トーリ様。彼の者が近付いて来ています」
「……またか」
「排除致しますか?」
セスが緊迫したような空気で毛を逆立たせた。これは団長さんが来た時に見せる反応で、オレもこの五日の間に何度となく体験したので知っている。
最低、朝晩の二回はこの部屋にやって来る団長さんだ。表向きはオレの見舞いとしてではあるが、セスがその都度かなり警戒するのである。
あまりにセスが嫌っているようなので、オレとしてもお近づきになりたくなかった。
「ソロは?」
「共にいないようです」
「そうか。それなら扉に近付けないようにしてくれ。今は休みたい」
「かしこまりました、トーリ様」
セスにお願いして、団長さんに会わないで良いようにしてもらう。
風の魔力で壁を作れるので、シールド的なもので扉をガードしてくれる筈だ。
とにかくオレは身体を休めて、魔力を回復させたい。そして早くこの町を出たいのだ。──オレとしては、セス欲しさで暴走した団長さんに暗殺されるのも嫌だし。
セスの態度から好かれていない事を察して欲しいのだが、団長さんは折れない性格らしい。
この部屋に顔を出す度に剣呑な雰囲気のセスを見つめているのに、ここへ立ち寄らないという選択肢は存在していないようなのだ。
オレの気疲れ要因の一つでもある。
そうして団長さんの訪問を拒絶したオレは、再びベッドに身体を沈めた。──やはり、このふわふわ布団は最高である。
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どれくらい時間が経ったのか、オレはいつの間にか爆睡していたようだ。
目覚めた時には周囲が薄暗く、既に日が暮れている事が分かる。
「お目覚めですか、トーリ様」
「あぁ。セス、今は何時頃だ?」
「はい。この世界の時間で言うなれば、木の時でございます。何度か訪問者が御座いましたが、全て追い払ってございます」
「……そうか。手間を掛けさせたな」
「いいえ、トーリ様。深く御休みになられていたので、セスは邪魔者を排除しただけです。何か御召し上がりになられますか?」
「あぁ……、そうだな。うどんが食べたい」
「かしこまりました、トーリ様」
そうして幾分軽くなった身体を感じながら、近くのテーブルにうどんを出してもらった。
セスの亜空間は本当に便利で、オレの想像する通りの品物を出す事が出来る。温度も大きさも関係なく、更には思うまま某ファストフードのバーガーやチキンも普通に出せるのだ。
当然の事ながらお盆や箸は完備で、定食にしたり漬物を添えたりも出来る。──最高だ。
そうしてセスと二人で海老天うどんを食べた。異世界で衣食住に全く困らないのもセスがいるからで、非常に助かっている。
ちなみにセスもうどんを食べたのだが、さすがに箸は使わず手掴みだった。それ故にか熱いのは好みでないようで、普段からオレが食べるものより少し温度を下げた同じものを食べている。
「あ、セス。あの布団も亜空間に入れておくな」
「はい、トーリ様。どの様なものでも、お気に召した時に御想像下さいませ」
「いつもありがとう」
「セスはトーリ様と共にあれる事が喜びでございます」
食べ終わった食器類をセスが亜空間に戻したところで、思い出したようにオレは言った。
連日ふわふわ布団で寝ていたので、既に手放し難く思っていたのである。こうしていつでもオレの思い浮かべる想像物をセスの亜空間に格納出来るので、この世界の金銭を持っていなくても不都合がないのだ。
「……そろそろここから出るか」
「はい、トーリ様。いつでも出立出来ますので、お声掛け下さいませ」
セスの楽しそうな声音に後押しされるように、オレは身の回りに自分のものがないか確認する。
とはいえ、いつ人が入ってきても良いように、基本的にオレのものは出しておかないようにしているのだ。理由として第一に、この世界のものではないものが多いから。
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