SEIREI ── せい れい ── 自然に好かれるオレはハッピーライフをおくる

まひる

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3.町にいってみたけど何か違う

3-10

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 ※ ※ ※ ※ ※

 翌朝──あれから風呂に入って再度寝たので、今のオレのコンディションは最高である。

「最後にソロに挨拶をしていこう」
「かしこまりました、トーリ様」

 宿泊先を提供してくれたので、無言で立ち去るのは人としてダメだと思えた。
 そうかと言ってこちらから何かを渡せる訳でもないので、せめて謝辞だけは告げなくてはならない。──オレの手持ちは全て異世界産だからな。

「……あ、トーリ」
「………………団長さん」

 そうして部屋を出たところで、壁に寄り掛かっていた団長さんと目が合った。──というか、何故ここにいる。
 場所はオレが貸し与えられていた部屋の前で、いわゆる客室に値する場所だ。一家の嫡男たる存在は、当然ながら屋敷の上層部に部屋がある筈である。
 まさかと思うが、昨日訪問を感知してからずっとここにいたのでは。

「トーリ、私は……」
「オレは今日、ここを出る」
「っ?!」

 何かを言いたげに口を開いた団長さんに、オレは聞きたくないとばかりに退去の旨を伝えた。すると団長さんは驚いたように目を見開いたが、次の言葉を待つ事なくオレは背を向けて歩き出す。
 内心、背後から襲い掛かってきたらどうしようかと思ったが、セスの防御機能があるからとたかくくっていた。

 そうして無駄に長い廊下を足早に歩き、ソロじいさんがいそうな場所を捜す。
 その間もずっとオレの後方をついてくる団長さんは、何故かこちらより歩みがゆったりなのが若干しゃくさわる。

「トーリ、少し話を……っ」
「話す事はない」

 語気を荒らげた団長さんの言葉に、振り向かず言い捨てる。
 セスを手元に置きたいとか言われても困るのだ。オレはセスがいないと、大袈裟ではなく生きていけない。

 そうして相手をせずに背を向けたまま歩くオレの後ろを、何故か素直に付き従うような団長さんだ。──せぬ。
 隙あらばセスを狙っているのかと内心でびくつきながら、オレは肩の上のセスを感じつつソロじいさんを捜す。──だが、そういう時に限って見付からないはどうしてだ。

 リビングらしき所にもダイニングらしき所にもいない。執務室やソロじいさんの部屋を知らないオレは、これ以上屋敷の中を彷徨うろつけないのだ。──学校サイズの屋敷なので、本気で迷子になる。

「…………………………はぁ」
「お祖父様は今、団員に呼ばれて外に出ている」

 どうしようかと思った足はいつの間にか止まっていて、オレはソロじいさんを見付けられない疲れに大きな溜め息をいてしまう。
 だがそんなオレに、団長さんが告げた一言。
 知っていたならば初めから教えてくれれば良いのにとは思ったが、そもそもオレは誰に用があるのかすら話していない事を思い出した。

 歩き回って誰かを捜している様子から察したのか、その辺りは団長さんに聞かないと分からない。──まぁ、聞く気はないけどな。
 とりあえずソロじいさんがいないとなると、現状で何が最善かと思考を巡らせた。

 オレは単に挨拶をしたかっただけで、ソロじいさんに特別用事はない。それに団長さんと出会ったのだから、無言で立ち去る不義理にも当てはまらないのだ。

「ならば、ソロに伝えておいてくれ。世話になった」
「っ、待ってくれ!」
「話はない」
「トーリっ!」

 そうしてオレは、ソロじいさんと顔を合わせる事を諦める。団長さんに伝えてもらえば良い訳で、何なら初めから気付いていれば無駄に歩き回る必要もなかった。
 玄関口に向かう道筋をはっきりと記憶していないが、ここは一階なのでとにかく外に出ようと手近な扉を開ける。

 それはやたらと豪華な金色の枠をした扉だったが、オレは『外に出る』という感覚で普通に開けたつもりだった。──けれども、それはどうやら普通・・の扉ではなかったようである。

「トーリ様。風の防御膜を構築します」
「セス?」

 オレが扉を開けた瞬間、内側・・から勢い良く風が吹き付けてきたのだ。
 全く予想もしていなかった現象に目を見開いたオレに対し、肩の上のセスは冷静に風の魔力を使って周囲を覆って守ってくれる。

 目に映る光景は白色一色で、光の渦と言った方が正しいかもしれない。
 一瞬感じた風はセスの魔法によって遮られた為、今は白い空間にセスとオレの二人だけだ。団長さんの姿がなくなっている事にも気付いたが、単に後を追い掛けて来なかったのだろうと判断する。
 現状があの時創造神様に出会った場所と同じ雰囲気だからか、自然とこちらの異世界へ来る事になった経緯まで思い出した。

「トーリ様。どちらへ参りますか?」
「…………そうだな。初めの森へ」
「かしこまりました。では、トーリ様。森の風景を思い浮かべて下さいませ」
「森……あぁ、こんな感じだ」

 セスに導かれるまま、この世界に初めて降り立ったあの森を思い浮かべる。
 そうして周囲に反映されるように、オレの思い描いた景色が現れた。──あれ、鳥の声や風も感じる。

「ん?ここは……」
「はい、トーリ様。ここはの地で御座います。どうやら先程の扉は、転移ゲートであったかと思われます」

 『転移ゲート』と聞いてオレが思い浮かべたのは、未来の猫型ロボット的なアニメで登場したような扉だ。
 実際に大きく間違ってはいないようで、扉を抜けた先であるここは明らかに、町の中にあったあの屋敷とは違う場所である。

 後ろを振り返っても続くのは緑の木々だけで、完全に大自然のただ中にオレとセスはいた。──凄いな、異世界。完全にファンタジーだ。
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