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6.ここが魔の森だって知らなかった
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それにしても大きい。──そして、カッコいい。
ザ・ファンタジー的な素敵フォルムに、オレはまじまじと視線を送った。
実際にオレがこの世界に来てからという、それなりに小型の魔物は目にした事がある。けれどもどれも遠目で、更には襲われた事すらないのだ。それこそ、映画などの作り物を見ているのとそう変わらない。
いつもセスの最強防御があるから、オレには危機感なんて全くなくて。
それに、ヒト──丸耳族から敵意や害意を感じた事はあっても。獣人や生物。魔物からも、それを感じた事がなかった。いつも興味や好奇心、好意を向けられる。
だからか、この目の前の強大な竜に対しても。オレは恐れなど一切感じなかった。
しかしながら、首を上げれば真上を向くレベルで近距離だ。
もう少し離れていれば、もっと全体像をまじまじ見られるだろう。──ある意味、残念である。
「それで?」
『……ヒトあらざる者よ』
頭上から見下ろされている状態のオレだったが、黒竜が発した言葉にフリーズした。
ヒトアラザルモノヨ──ヒトではない者よ、か。
オレはヒトではないと判断されたようだ。──え、オレってば人外なのか。マジで?
何を思ってそう声を掛けてきたかは不明だが、そも人外である黒竜からの言葉だ。この場合の『ヒト』とは、どの辺りを指し示すのだろう。
「言っておくが。一応オレは、ヒト種ではあるぞ」
『その強大な魔力と清涼な気配を持つヒトなど存在しない』
ダメ元で否定してみれば、更なる追撃だ。人外から人外認定されたオレって、結構可哀想なのではないだろうか。
魔力が多いのは分かる。精霊たちからも言われているし、なんなら『美味しい』とまでの感想付きだ。でも、『セイリョウな気配』とは何だろうか。清涼か?爽やかで涼しい、との言葉通りのもので合っているのだろうか。──まぁ、創造神再構築の身体だからな。単なる肉の塊でなくとも、それはそれで納得出来てしまう。
そう告げてきた黒き竜だが、オレに向ける視線に嫌悪感などないようで。単に、それが事実なのだとして言っているだけのように感じられた。
人外のトップ的な立ち位置だから、そういう判断をするのだろうか。この竜以上の強者はなかなかいないだろうし。
「どう思われようが、これがオレなのだから仕方ない。とりあえず、オレはトーリ」
『……我は黒竜。この森を統べるもの』
小さな溜め息を吐きつつもオレが自己紹介をすると、素直に応じてくれる事に驚く。
そしてこの黒竜がノヴァと言うのは本当のようで、更には森を自身の縄張りと自認しているらしい。
この森は、ソロからもセスからも聞いているが。結構、広大な敷地を有しているらしい。ヒトはそれを有効利用出来ないものだから、何かと目の上のたんこぶ的な扱いにしているようだ。
けれども森の魔獣が爆発的に増える事もなく、生物と魔獣がそれなりに共存出来ているのは事実である。そしてそこに森の主である黒竜が位置している事にも、一応の理解をしているらしく。
ヒトが無謀に森を占拠しようとする事は、今のところないようだ。たまに頭の足りない奴等が八つ裂きになっていようとも、接する近隣の国自体に大きな被害はないのだから。
「勝手に住んでいるけど。宜しく、森の王」
『住処が接している事は知っている。だがそなたのその存在が、この地を豊かにしている事も事実。我もそなたを歓迎する、神の愛し子よ』
「サンキュ。でも、トーリで良い」
『分かった、トーリ。我もノヴァと呼ぶ事を許そう。そして、地が裂かれた事で咄嗟に喚んでしまった事を謝罪する』
「いや、逆に助かった。礼を言う」
何だか、とても友好的な竜だった。それに地面が割れて落下した事は事実なので、結果的に助けられたのはオレの方である。
召還魔法か転移魔法かで、オレはここへ移動してきたようだ。けれどセスも精霊も驚いているだろうから、後で説明しておかないとである。──とここで、オレは森へ入った理由を思い出した。
冒険者らしき攻撃を受けたという事は、獣人と丸耳族の戦闘に出くわした筈。
「ところで。オレは捜し人がいたんだが、ノヴァは知らないか」
『獣族の事だろう。トーリの白き毛玉が保護したようだ。追い払われたあの毛無は、我が後で遊んでやろうと別空間に入れた。もらっても良いか』
「……オレを攻撃してきた丸耳族なら良い、やる」
『うむ。それにしてもトーリは、心地好い魔力だな』
「あ~……、精霊たちからも言われている。ノヴァも魔力を吸収するのだな」
『肉で腹を充たす事はするが、気を保つには魔力が必要だ』
独特な単語を使うが、そも魔獣なので仕方ない。
何となく言っている事は伝わる為、オレとしては問題ない。──端から見れば、グルルと唸る竜と喋っているのだが。
ともあれ。セスが無事に獣人と会えた事まで分かった。毛玉は可哀想だが、毛無呼ばわりされた丸耳族が何と言うか。──『遊ぶ』というのだから、言葉通りの意味なのだろう。悲惨な末路しか見えない。
無条件でオレに向けて攻撃してきたのだから、その身がどうなろうとお互い様だ。命を奪うならば、奪われる覚悟がなければ話にならないからな。
ザ・ファンタジー的な素敵フォルムに、オレはまじまじと視線を送った。
実際にオレがこの世界に来てからという、それなりに小型の魔物は目にした事がある。けれどもどれも遠目で、更には襲われた事すらないのだ。それこそ、映画などの作り物を見ているのとそう変わらない。
いつもセスの最強防御があるから、オレには危機感なんて全くなくて。
それに、ヒト──丸耳族から敵意や害意を感じた事はあっても。獣人や生物。魔物からも、それを感じた事がなかった。いつも興味や好奇心、好意を向けられる。
だからか、この目の前の強大な竜に対しても。オレは恐れなど一切感じなかった。
しかしながら、首を上げれば真上を向くレベルで近距離だ。
もう少し離れていれば、もっと全体像をまじまじ見られるだろう。──ある意味、残念である。
「それで?」
『……ヒトあらざる者よ』
頭上から見下ろされている状態のオレだったが、黒竜が発した言葉にフリーズした。
ヒトアラザルモノヨ──ヒトではない者よ、か。
オレはヒトではないと判断されたようだ。──え、オレってば人外なのか。マジで?
何を思ってそう声を掛けてきたかは不明だが、そも人外である黒竜からの言葉だ。この場合の『ヒト』とは、どの辺りを指し示すのだろう。
「言っておくが。一応オレは、ヒト種ではあるぞ」
『その強大な魔力と清涼な気配を持つヒトなど存在しない』
ダメ元で否定してみれば、更なる追撃だ。人外から人外認定されたオレって、結構可哀想なのではないだろうか。
魔力が多いのは分かる。精霊たちからも言われているし、なんなら『美味しい』とまでの感想付きだ。でも、『セイリョウな気配』とは何だろうか。清涼か?爽やかで涼しい、との言葉通りのもので合っているのだろうか。──まぁ、創造神再構築の身体だからな。単なる肉の塊でなくとも、それはそれで納得出来てしまう。
そう告げてきた黒き竜だが、オレに向ける視線に嫌悪感などないようで。単に、それが事実なのだとして言っているだけのように感じられた。
人外のトップ的な立ち位置だから、そういう判断をするのだろうか。この竜以上の強者はなかなかいないだろうし。
「どう思われようが、これがオレなのだから仕方ない。とりあえず、オレはトーリ」
『……我は黒竜。この森を統べるもの』
小さな溜め息を吐きつつもオレが自己紹介をすると、素直に応じてくれる事に驚く。
そしてこの黒竜がノヴァと言うのは本当のようで、更には森を自身の縄張りと自認しているらしい。
この森は、ソロからもセスからも聞いているが。結構、広大な敷地を有しているらしい。ヒトはそれを有効利用出来ないものだから、何かと目の上のたんこぶ的な扱いにしているようだ。
けれども森の魔獣が爆発的に増える事もなく、生物と魔獣がそれなりに共存出来ているのは事実である。そしてそこに森の主である黒竜が位置している事にも、一応の理解をしているらしく。
ヒトが無謀に森を占拠しようとする事は、今のところないようだ。たまに頭の足りない奴等が八つ裂きになっていようとも、接する近隣の国自体に大きな被害はないのだから。
「勝手に住んでいるけど。宜しく、森の王」
『住処が接している事は知っている。だがそなたのその存在が、この地を豊かにしている事も事実。我もそなたを歓迎する、神の愛し子よ』
「サンキュ。でも、トーリで良い」
『分かった、トーリ。我もノヴァと呼ぶ事を許そう。そして、地が裂かれた事で咄嗟に喚んでしまった事を謝罪する』
「いや、逆に助かった。礼を言う」
何だか、とても友好的な竜だった。それに地面が割れて落下した事は事実なので、結果的に助けられたのはオレの方である。
召還魔法か転移魔法かで、オレはここへ移動してきたようだ。けれどセスも精霊も驚いているだろうから、後で説明しておかないとである。──とここで、オレは森へ入った理由を思い出した。
冒険者らしき攻撃を受けたという事は、獣人と丸耳族の戦闘に出くわした筈。
「ところで。オレは捜し人がいたんだが、ノヴァは知らないか」
『獣族の事だろう。トーリの白き毛玉が保護したようだ。追い払われたあの毛無は、我が後で遊んでやろうと別空間に入れた。もらっても良いか』
「……オレを攻撃してきた丸耳族なら良い、やる」
『うむ。それにしてもトーリは、心地好い魔力だな』
「あ~……、精霊たちからも言われている。ノヴァも魔力を吸収するのだな」
『肉で腹を充たす事はするが、気を保つには魔力が必要だ』
独特な単語を使うが、そも魔獣なので仕方ない。
何となく言っている事は伝わる為、オレとしては問題ない。──端から見れば、グルルと唸る竜と喋っているのだが。
ともあれ。セスが無事に獣人と会えた事まで分かった。毛玉は可哀想だが、毛無呼ばわりされた丸耳族が何と言うか。──『遊ぶ』というのだから、言葉通りの意味なのだろう。悲惨な末路しか見えない。
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