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6.ここが魔の森だって知らなかった
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「ってな感じで、地面が割れたのは丸耳族の魔法だよな」
『そうだ。魔法石まで使って森を断つなど、度し難い』
ブルブルと翼を震わせる黒竜は、激おこの様子だ。
しかも魔法石ときた。
リドツォルの図書館で得た情報誌によると、魔法石は鉱石に魔力を充填させた物だ。大きさで効果が変わるらしいけど、自分の所有魔力以上の力で魔法を発動させられる。魔法石に蓄積させた分が上乗せになる感じのようで、消耗品とはいえども効果抜群だろう。
ちなみに使用後は砕け散る。完全に再生不可だ。
「森の環境破壊とか、確かに最悪だな。どうせ奴等は後始末しないだろうし……そうだ。助けてくれた御礼に、オレが直そうか?」
『本当にか、それは助かる。神の愛し子の力を以てすれば、森の傷もすぐに癒されるだろう』
「ん?……さっきも言ってたけど、その『神の愛し子』ってなんだ?オレはそんなんじゃないぞ」
森の地下部分に、こんな大きな空間がある事には驚きだが。この黒竜のおかげで、落下の打撃を受けなくて済んだのは本当に助かった。
そして犯人である魔法使い達は基本的に事後処理はしないから、魔法効果の跡地なんて放置だろう。経験上、ダメダメな奴等だからな。
オレはある意味この森に住んでいるようなものだから、安易な環境破壊をされるのは困る。だからこその提案だったのだ。
だが黒竜は、それを簡単に受け入れてくれる。余計なお世話かもしれないが、その事に僅かながら心配になってしまう。
俺が変な事をしないかとか、少しも疑わないのか。人間嫌いじゃないのかよ。
『トーリは神の恩恵を受けているのだろう?』
「恩恵?……あぁ、『自然に好かれる』ってやつか」
『利己的な存在には通用しないだろうが、そうでない限りオヌシを心地好く感じるのだ。万物に好かれるトーリは、正しく神の愛し子よ』
「お、おぅ……そうなのか。大袈裟過ぎる気しかしないが……まぁ、正直ありがたいな。おかげで色々と助かっているよ」
『そう思うトーリだからこそなのだろう。強欲なヒト族には稀有な存在よの』
「ははは、まぁ珍獣扱いでも良いや。ところで……ここからどうやって元の居た場所に戻れるんだ?森を直すにも、精霊の力が必要なんだ」
褒められ慣れていないからか、真っ直ぐに向けられる称賛が居たたまれない。
そこでオレは、話を帰路へ切り替えた。
『ふむ、良かろう。森の回復は任せた。ではすぐに帰してやる。……オヌシの白き毛玉の傍へ』
「へ?……っわぁ、凄いな」
「トーリ様っ!」
黒竜の言葉の一瞬後には風景が変わり、その変化に呆けたオレだった。だがすぐに胸に飛び込んできた小さな暖かさを抱き留め、ホッと安堵する。
顔をぐいぐいとオレの腹に押し付けるセスは、オレと同じように寂しさを感じていたのだろうか。
それに地下の亜空間と瞬間移動の魔法。あのドラゴンの潜在能力からして、他の魔獣や魔物とは次元が全く異なる存在のようだ。
「大丈夫だったか、セス」
「はい、トーリ様。傷付いた獣人を三名保護し、既にクマ耳獣人へ頼みました」
「おぉ、凄い。さすがセスだな、良くやった」
オレのこんな言葉に、セスはフフンと胸を張っていた。──白イタチのドヤ顔、可愛いな。
表情がイタチだから分かりにくいけど、普段クールなので自然とデレているのが伝わってくるんだ。それだけオレが、セスと一緒にいる時間が長いからだろうけどな。
「あ、そうだ。この森の地下部分に黒竜がいて、さっきの地割れから助けてくれたんだ。それで御礼に森を直す事にしたんだけど」
「そうだったのですか。トーリ様が地面に吸い込まれた時は焦りましたが、セスはトーリ様と繋がっているので無事なのは伝わってきていました。それでもセスがお助け出来ず、申し訳ございませんでした」
「ん、大丈夫。オレもセスの無事は分かってたけど、やっぱり一緒にいれないと不安が先走っちゃうな。黒竜を前にしていても、セスの事を考えてた。それじゃあ獣人達も救出した事だし、ささっと森の修復をするか」
「はい、トーリ様」
それから橙色の土系魔法の精霊に頼んで、バックリ抉れている大地を埋め戻してもらった。でもそのままだとただの大地なので、緑色の植物系魔法の精霊にもお願いする。
こんな風に、オレはお願いしかしていないが。結果的に、目の前には立派な森が再度出来上がった。
精霊の持つ力は、本当に素晴らしいものだな。
「ありがとうな、精霊達。オレの魔力を好きなだけ受け取ってくれよ」
「トーリ様はお優しいのでこう仰っていますが、正当な対価としての魔力に限りますからね」
精霊に対してのオレのゆるゆるな会話に、セスがすぐに釘を刺す。
バロメーターがついている訳ではないので、実際に自分の魔力値がどの程度であるかは不明だ。けれどもこれまで、何らかの支障が出た事がない事実がある。
そういう理由から、自分の能力を過信している訳ではないが、今の身体の調子的にも問題ないと思った。
『そうだ。魔法石まで使って森を断つなど、度し難い』
ブルブルと翼を震わせる黒竜は、激おこの様子だ。
しかも魔法石ときた。
リドツォルの図書館で得た情報誌によると、魔法石は鉱石に魔力を充填させた物だ。大きさで効果が変わるらしいけど、自分の所有魔力以上の力で魔法を発動させられる。魔法石に蓄積させた分が上乗せになる感じのようで、消耗品とはいえども効果抜群だろう。
ちなみに使用後は砕け散る。完全に再生不可だ。
「森の環境破壊とか、確かに最悪だな。どうせ奴等は後始末しないだろうし……そうだ。助けてくれた御礼に、オレが直そうか?」
『本当にか、それは助かる。神の愛し子の力を以てすれば、森の傷もすぐに癒されるだろう』
「ん?……さっきも言ってたけど、その『神の愛し子』ってなんだ?オレはそんなんじゃないぞ」
森の地下部分に、こんな大きな空間がある事には驚きだが。この黒竜のおかげで、落下の打撃を受けなくて済んだのは本当に助かった。
そして犯人である魔法使い達は基本的に事後処理はしないから、魔法効果の跡地なんて放置だろう。経験上、ダメダメな奴等だからな。
オレはある意味この森に住んでいるようなものだから、安易な環境破壊をされるのは困る。だからこその提案だったのだ。
だが黒竜は、それを簡単に受け入れてくれる。余計なお世話かもしれないが、その事に僅かながら心配になってしまう。
俺が変な事をしないかとか、少しも疑わないのか。人間嫌いじゃないのかよ。
『トーリは神の恩恵を受けているのだろう?』
「恩恵?……あぁ、『自然に好かれる』ってやつか」
『利己的な存在には通用しないだろうが、そうでない限りオヌシを心地好く感じるのだ。万物に好かれるトーリは、正しく神の愛し子よ』
「お、おぅ……そうなのか。大袈裟過ぎる気しかしないが……まぁ、正直ありがたいな。おかげで色々と助かっているよ」
『そう思うトーリだからこそなのだろう。強欲なヒト族には稀有な存在よの』
「ははは、まぁ珍獣扱いでも良いや。ところで……ここからどうやって元の居た場所に戻れるんだ?森を直すにも、精霊の力が必要なんだ」
褒められ慣れていないからか、真っ直ぐに向けられる称賛が居たたまれない。
そこでオレは、話を帰路へ切り替えた。
『ふむ、良かろう。森の回復は任せた。ではすぐに帰してやる。……オヌシの白き毛玉の傍へ』
「へ?……っわぁ、凄いな」
「トーリ様っ!」
黒竜の言葉の一瞬後には風景が変わり、その変化に呆けたオレだった。だがすぐに胸に飛び込んできた小さな暖かさを抱き留め、ホッと安堵する。
顔をぐいぐいとオレの腹に押し付けるセスは、オレと同じように寂しさを感じていたのだろうか。
それに地下の亜空間と瞬間移動の魔法。あのドラゴンの潜在能力からして、他の魔獣や魔物とは次元が全く異なる存在のようだ。
「大丈夫だったか、セス」
「はい、トーリ様。傷付いた獣人を三名保護し、既にクマ耳獣人へ頼みました」
「おぉ、凄い。さすがセスだな、良くやった」
オレのこんな言葉に、セスはフフンと胸を張っていた。──白イタチのドヤ顔、可愛いな。
表情がイタチだから分かりにくいけど、普段クールなので自然とデレているのが伝わってくるんだ。それだけオレが、セスと一緒にいる時間が長いからだろうけどな。
「あ、そうだ。この森の地下部分に黒竜がいて、さっきの地割れから助けてくれたんだ。それで御礼に森を直す事にしたんだけど」
「そうだったのですか。トーリ様が地面に吸い込まれた時は焦りましたが、セスはトーリ様と繋がっているので無事なのは伝わってきていました。それでもセスがお助け出来ず、申し訳ございませんでした」
「ん、大丈夫。オレもセスの無事は分かってたけど、やっぱり一緒にいれないと不安が先走っちゃうな。黒竜を前にしていても、セスの事を考えてた。それじゃあ獣人達も救出した事だし、ささっと森の修復をするか」
「はい、トーリ様」
それから橙色の土系魔法の精霊に頼んで、バックリ抉れている大地を埋め戻してもらった。でもそのままだとただの大地なので、緑色の植物系魔法の精霊にもお願いする。
こんな風に、オレはお願いしかしていないが。結果的に、目の前には立派な森が再度出来上がった。
精霊の持つ力は、本当に素晴らしいものだな。
「ありがとうな、精霊達。オレの魔力を好きなだけ受け取ってくれよ」
「トーリ様はお優しいのでこう仰っていますが、正当な対価としての魔力に限りますからね」
精霊に対してのオレのゆるゆるな会話に、セスがすぐに釘を刺す。
バロメーターがついている訳ではないので、実際に自分の魔力値がどの程度であるかは不明だ。けれどもこれまで、何らかの支障が出た事がない事実がある。
そういう理由から、自分の能力を過信している訳ではないが、今の身体の調子的にも問題ないと思った。
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