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7.独立多重種族国家をつくろう
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さて、どうするべきか。
討伐依頼が出たと教えてくれたソロじいさんには、これ以上迷惑を掛けられない。つまりオレは、ツェシェルアの徽章を使う気がない。
ツェシェルア家も貴族という特権階級らしいが、元々貴賓の区別がない日本人だったオレとしては平民だとか貴族だとか関係ない。だから権力を持ち出してどうこうするとか、興味ないしそんなのオレじゃない。らしくないんだよな。
けれども物理的に実力行使されれば、それまた違ってくる。平和にのんびり過ごせれば良いオレだけど、やられたらやり返すのは当然だ。
獣人達へされた事は、した奴等にきちんと利子つけて返してやったもん。若干名の獣人は引いていたが、基本的には喜んでいたから大丈夫。何の問題もない。
とはまぁ、現実逃避中のオレの脳内。
今は仕方なく──本当に仕方なく、だ。オレは団長さんの呼び出しに応じるべく、魔の森の入り口付近に立っている。
目の前、テニスコートくらいの距離をおいて団長さんと他二名。一応、保安騎士団は待機させているようで。それなりに離れていて、ゴマ粒くらいにしか見えない。
「わざわざ出てきてもらってすまない、トーリ」
「……別に良い」
良くはないけど仕方ないじゃん、とか内心で思っているオレ。
困ったようなソワソワ感が伝わってくるけど、団長さんとオレは仲良しではないんだ。だからこそ、他の人みたいに会話が続かない。
何だかセスを取られそうで怖いっていうか、オレに向けられる伺うような雰囲気が気持ち悪かった。
この世界で、精霊が非常に重要な存在である事は理解している。そしてオレが神様特典で精霊を含む自然に好かれている為、精霊ありきのヒト族にとって手の内に入れたい存在らしい事も何となく分かっている。──思い通りになってはやらんが。
「で、何の用」
「あ、いや……」
「団長」
「お願いいたします」
「わ、分かっている。ゴホン……すまない、トーリ。獣人達の脱走に、君が関わっているのは本当か」
オレが問い掛けると、もごもご何かを言い掛けてやめる団長さんだった。それでも控えているその他二名からつつかれ、漸く本題を口にする。
つまりは討伐依頼が出たオレの、自供を取ろうって話だよな。
でも、聞き方がパッとしない。曖昧な問い掛けで嵌める意図があるのか、本当に真実を探ろうとしているのか。
「脱走、ね」
「あ、いや……そう、冒険者達から申告があったのだ。本来ならば、そんな事を出来る筈がないのだが……」
「はあ……。あのさ、団長さん。隷属の首輪って知ってる?」
「あ、あぁ……知っているとも」
「当然、使われ方も知ってるよな?」
「勿論だ。犯罪者への拘束の魔道具で……」
「犯罪者?」
「あ、あぁ」
オレの態度が鋭くなった事に気付いたのか、団長さんの雰囲気が変わる。
だが、知った事ではない。
隷属の首輪は対犯罪者用の魔道具。そう、団長さんは告げた。
獣人達は生まれながらにそれを首に嵌められ、手酷い扱いを死ぬまで受けているのに。それは、いったい何の犯罪に対してだろうか。
「オレは、全ての獣人達を解放する事を求める」
「えっ……な、トーリ?」
「獣人……亜人種と呼ばれる者達は、丸耳族の装飾品でも所有物でもない」
「……どういう事だ、トーリ。冒険者達と共に生きる獣人達は、戦犯奴隷や犯罪奴隷ではないのか?」
オレが言っている意味が分からないのか、団長さんは眉を寄せていた。
だがしかし。オレからしてみれば、何故彼等を直接見ているアンタが分からないのかと聞きたい。
保安騎士団はリドツォルの門番もしていた。当然町を出入りする冒険者も、それらが連れ歩く獣人達も見ている。──見ているなら、見える筈の事が何故分からないのか。
痩せた外見を見るだけで。傷だらけの彼等を見るだけで、何故分からない。
冒険者達はいつもそれなりに身綺麗にしていて、金に困っているような雰囲気はみえなかった。
同じグループに属する仲間である筈の獣人達が、何故あそこまで見苦しいのか。首輪をつけなければならない狂暴さなんて、欠片も見えないのに。
「丸耳族より力も素早さもある獣人達が、何故ああも薄汚れていると思っているんだ。……百歩譲って、仮に奴隷ならば良いのか?個の意思を封じ、食べ物もまともに与えず。傷の手当てもせず、水浴びの一つもさせない」
「…………」
「団長さんは何も知らないのだな。いや、知ろうとしてないのか。自分と同じ丸耳族がそれなりの平和を見せていたら、それで良いのだろうな……アンタは」
「ち、ちが……」
「違わないだろ?オレより小さな獣人が……血のこびりついた身体を引き摺りながら冒険者の荷物を持っている姿は、アンタには犯罪奴隷に見えているんだろ?」
「っ……」
「話は以上だ。オレは独立を求める」
「と、トーリっ」
最後に独立宣言をして背を向けたオレに、慌てたような団長の声が聞こえた。
だが一瞬後にはその場から掻き消えていたオレの耳に、彼の言い分など届きもしなかった。
討伐依頼が出たと教えてくれたソロじいさんには、これ以上迷惑を掛けられない。つまりオレは、ツェシェルアの徽章を使う気がない。
ツェシェルア家も貴族という特権階級らしいが、元々貴賓の区別がない日本人だったオレとしては平民だとか貴族だとか関係ない。だから権力を持ち出してどうこうするとか、興味ないしそんなのオレじゃない。らしくないんだよな。
けれども物理的に実力行使されれば、それまた違ってくる。平和にのんびり過ごせれば良いオレだけど、やられたらやり返すのは当然だ。
獣人達へされた事は、した奴等にきちんと利子つけて返してやったもん。若干名の獣人は引いていたが、基本的には喜んでいたから大丈夫。何の問題もない。
とはまぁ、現実逃避中のオレの脳内。
今は仕方なく──本当に仕方なく、だ。オレは団長さんの呼び出しに応じるべく、魔の森の入り口付近に立っている。
目の前、テニスコートくらいの距離をおいて団長さんと他二名。一応、保安騎士団は待機させているようで。それなりに離れていて、ゴマ粒くらいにしか見えない。
「わざわざ出てきてもらってすまない、トーリ」
「……別に良い」
良くはないけど仕方ないじゃん、とか内心で思っているオレ。
困ったようなソワソワ感が伝わってくるけど、団長さんとオレは仲良しではないんだ。だからこそ、他の人みたいに会話が続かない。
何だかセスを取られそうで怖いっていうか、オレに向けられる伺うような雰囲気が気持ち悪かった。
この世界で、精霊が非常に重要な存在である事は理解している。そしてオレが神様特典で精霊を含む自然に好かれている為、精霊ありきのヒト族にとって手の内に入れたい存在らしい事も何となく分かっている。──思い通りになってはやらんが。
「で、何の用」
「あ、いや……」
「団長」
「お願いいたします」
「わ、分かっている。ゴホン……すまない、トーリ。獣人達の脱走に、君が関わっているのは本当か」
オレが問い掛けると、もごもご何かを言い掛けてやめる団長さんだった。それでも控えているその他二名からつつかれ、漸く本題を口にする。
つまりは討伐依頼が出たオレの、自供を取ろうって話だよな。
でも、聞き方がパッとしない。曖昧な問い掛けで嵌める意図があるのか、本当に真実を探ろうとしているのか。
「脱走、ね」
「あ、いや……そう、冒険者達から申告があったのだ。本来ならば、そんな事を出来る筈がないのだが……」
「はあ……。あのさ、団長さん。隷属の首輪って知ってる?」
「あ、あぁ……知っているとも」
「当然、使われ方も知ってるよな?」
「勿論だ。犯罪者への拘束の魔道具で……」
「犯罪者?」
「あ、あぁ」
オレの態度が鋭くなった事に気付いたのか、団長さんの雰囲気が変わる。
だが、知った事ではない。
隷属の首輪は対犯罪者用の魔道具。そう、団長さんは告げた。
獣人達は生まれながらにそれを首に嵌められ、手酷い扱いを死ぬまで受けているのに。それは、いったい何の犯罪に対してだろうか。
「オレは、全ての獣人達を解放する事を求める」
「えっ……な、トーリ?」
「獣人……亜人種と呼ばれる者達は、丸耳族の装飾品でも所有物でもない」
「……どういう事だ、トーリ。冒険者達と共に生きる獣人達は、戦犯奴隷や犯罪奴隷ではないのか?」
オレが言っている意味が分からないのか、団長さんは眉を寄せていた。
だがしかし。オレからしてみれば、何故彼等を直接見ているアンタが分からないのかと聞きたい。
保安騎士団はリドツォルの門番もしていた。当然町を出入りする冒険者も、それらが連れ歩く獣人達も見ている。──見ているなら、見える筈の事が何故分からないのか。
痩せた外見を見るだけで。傷だらけの彼等を見るだけで、何故分からない。
冒険者達はいつもそれなりに身綺麗にしていて、金に困っているような雰囲気はみえなかった。
同じグループに属する仲間である筈の獣人達が、何故あそこまで見苦しいのか。首輪をつけなければならない狂暴さなんて、欠片も見えないのに。
「丸耳族より力も素早さもある獣人達が、何故ああも薄汚れていると思っているんだ。……百歩譲って、仮に奴隷ならば良いのか?個の意思を封じ、食べ物もまともに与えず。傷の手当てもせず、水浴びの一つもさせない」
「…………」
「団長さんは何も知らないのだな。いや、知ろうとしてないのか。自分と同じ丸耳族がそれなりの平和を見せていたら、それで良いのだろうな……アンタは」
「ち、ちが……」
「違わないだろ?オレより小さな獣人が……血のこびりついた身体を引き摺りながら冒険者の荷物を持っている姿は、アンタには犯罪奴隷に見えているんだろ?」
「っ……」
「話は以上だ。オレは独立を求める」
「と、トーリっ」
最後に独立宣言をして背を向けたオレに、慌てたような団長の声が聞こえた。
だが一瞬後にはその場から掻き消えていたオレの耳に、彼の言い分など届きもしなかった。
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