異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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【1525 遠き落日 ①】

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あの孤児院は私の全てだった。

最初は私みたいな女が受け入れてもらえるか心配だったけれど、
みんなとても優しくかった。沢山の子供達が私に笑いかけてくれた。

私はここにいてもいいんだって思えた。


戦争が始まって、帝国軍がカエストゥスの首都まで攻めて来たと報告が入った。
私は白魔法使いとして戦場に出た。

最後に孤児院の前でみんなに、これまでの精一杯の感謝の気持ちを伝えた。



さよならは言わなかった

だってまた会えると信じていたから・・・・・
お別れを口にしたら、もう会えなくなる・・・・・そんな気がしたから


そして負傷した兵隊さんの治療をしていた時、突然強大な魔力が城から放出された事を感じ取った


一瞬だった

魔力を感じ取った直後、空が目も眩む程の光で照らされたかと思うと、一瞬で目の前が真っ白になった
何が起きたのか理解する事もできないまま、強い光に呑まれるように私の意識は途切れた





・・・
・・・・・
・・・・・・・

「・・・・・・・・・う、ん」


重い石を背負ったまま、深い泥沼に沈められたような意識が、ゆっくりと引き上げられる。
瞼を開けて最初に目に入ったのは、今にも朽ち果てそうな板張りの天井だった。

目が覚めても、まだ頭がぼんやりとしていたので、少しの間そのままじっと天井を見つめていた。



どのくらい時間が経っただろう・・・・・
少しづつ頭が冴えてくると、自分がどういう状況なのか分かって来た。

どうやら私は布団に寝かされているようだ。
板張りの床に薄い布団が敷かれていて、胸の辺りまで薄い毛布が掛けられている。

誰が私をここに寝かせたのかまでは分からないけど、とりあえず上半身を起こして、辺りを見回して見た。


目に入って来たのは、古びた木製の箪笥たんすと、小さな四角いテーブル。テーブルの下には色褪せた絨毯が敷かれていて、元は何かの刺繍もされていたようだけど、よほど使い古しているのか判別できないくらいの状態だった。

キッチンは一人がギリギリ立てるくらいの狭さで、洗い終わったらしい茶碗と箸が、まな板の上に置かれていた。


板張りの壁にはところどころ修復した跡があり、どうやらここは相当古びた一軒家のようだ。
そして最低限の物しか置かれていないけれど生活感はあり、誰かが住んでいる事も分かった。

頭の中にかかったモヤが取れるように、意識がはっきりとしてくると、だんだんと疑問が湧いて来た。


ここはどこだろう?なんで私はここで寝ていたの?
ううん、それよりも私は今まで何をして・・・・・・・

「うッ!・・・痛っ・・・」


直前までの行動を思い出そうとすると、頭に強い痛みが走り、私は両手で頭を押さえてうずくまった。

痛い・・・・・ズキズキする・・・・・

この痛みはなんだろう?どこか怪我でもしているのかな?
知らない場所で寝ていたんだし、どこかで怪我でもして運ばれたのかもしれない。

痛みが通り過ぎるのを待って、頭を押さえてじっとしていると、玄関の戸がギギギと軋むような音を立てて開いた。

誰か来た!

音に反応して私が顔を向けると、そこには大きくて丸い・・・まるで熊のような男性が立っていた。

年齢は三十前くらいだろうか?私より10歳は上に見える。着古してヨレヨレになった茶色のシャツと、膝部分の色が抜けて、穴の開きかけている黒いズボンを穿いていた。

濃い茶色の髪はボサボサで耳が隠れていて、口の回りには無精髭も生えている。
お世辞にも清潔感があるとは言えなかった。

多分普通の女の子なら、こういう時は悲鳴を上げるか、怯えて後ずさりするのかもしれない。

だけど私はこの人を見て、怖いとか不潔とか、そんな事を思うよりも先に、ある動物が頭に浮かんだ。


「あ、クマさんだ」


見たままの感想を口にすると、なぜか男性は困ったように笑って一歩後ろに下がり、両手を肩の高さにまで上げた。そしてまるで弁明するように、少し慌てた口調で話し出した。


「あ、えっと、起きたんだね・・・良かった。そ、その、キミは倒れてたんだ。それでボクが見つけて、ここに運んだ。それだけだよ!へ、変な事はしてないから安心して!」

どもりながら必死になって話す姿に、私はこの熊のように大きい人が不思議と可愛いと思えてしまった。

「あ、そうだったんですね。それはありがとうございました」

あっさりするくらい、スルっと男性の言葉が入ってきた。
私は布団の上で両膝をたたんで男性に向き直ると、両手の指先を揃えて腰を曲げ、感謝の言葉を伝えながら頭を下げた。

「え?・・・ええ、えっと・・・キ、キミは・・・ボクが怖くないの?気持ち悪いと思わないの?」

自分で助けておいて、お礼を言われる事がびっくりするくらい意外だったようだ。
男性の慌てように私は首を傾げた。聞いているとずいぶん卑屈なように思える。

「え?・・・どうして私がクマさんを怖がるんですか?クマさんは私を助けてくれたんですよね?それに丸くて可愛いです。どこが気持ち悪いんですか?」

「・・・だって、ボク、体が大きいし、この顔だし・・・村のみんなはボクの事怖いとか、気持ち悪いとか・・・」


なんとなく分かってきた。この男性は周囲から良く思われていないみたいだ。
嫌がらせとか、心無い言葉を浴びせられているのかもしれない。


「そんな事ありません。私は親切なクマさんに助けられました。優しいクマさんを怖いとも、気持ち悪いとも思いません」

私はクマさんの目をじっと見つめながら、思ったまま、感じたままの言葉を伝えた。

体が大きい?顔が怖い?それがなんだと言うのだろう?怖いと感じる人がいるのはしかたないかもしれない。でもそれで仲間外れにするとか、イジメていい理由にはならない。それよりも見知らぬ人でもを助けてくれる、クマさんの優しい心を見るべきだと思う。

「・・・クマさん?」

私が言いたい事を言うと、ふいにクマさんの両目に涙が浮かんできた。

何か嫌な事を言ってしまっただろうか?自分にそのつもりがなくても、相手を傷つけてしまう事がある。
だから言葉には気を付けているつもりだけど、クマさんは泣きそうになっている。

心配になって、大丈夫?と声をかけると、クマんさはプルプルと体を震わせ、そして泣き出した。

「・・・う・・・うぅ・・・ぐぅぅぅぅぅぅぅ!」

「・・・・・クマさん、なんで泣いてるんですか?悲しい事があったんですか?」

なんでクマさんは泣き出したんだろう?分からないけれど、誰かに教えてもらった気がする。

泣いている人がいたら、優しく寄り添ってあげなさいと・・・・・

「う・・・うぅ・・・・・う・・・・・・え?」

私は背伸びをして、クマさんの頭を撫でた。
ボサボサの頭に手が沈み込む感触は、本当の動物の毛のようだった。

「クマさん、泣かないでください。大丈夫ですよ、ここには意地悪をする人はいませんから」

クマさんは驚いたように大きく目を開いたけど、またすぐに大粒の涙を零した。

「う・・・うぅぅぅぅ・・・・・ぐぅぅぅぅぅ・・・・・・・」

それから私はクマさんが泣き止むまで、ずっと頭を撫で続けた。




ねぇ、クマさん

私達の出会いはびっくりがいっぱいだったね
この時も、本当はドキドキしてたの

だって私よりずっと大きな男の人が、急にわんわん泣き出すんだもん

私より大人の人を慰めた事なんて初めてだったから、大丈夫かなってちょっとだけ心配だったの

クマさんは泣き止んだあと、自分の事を色々話してくれたよね
それで私達は、お互いの事を沢山話して知っていったの

クマさん・・・クマさんは私にいつもありがとうって言ってくれるけど・・・

私の方がクマさんに、沢山感謝してるんだよ

だから何回でもお礼を言うよ


クマさん、ありがとう・・・・・




「あの・・・ボ、ボクの名前は、ウシク・・・キミの名前を聞いてもいいかな?」


「私は・・・・・クラレッサ・・・クラレッサ・ランデルです」


名前だけは思い出す事ができた


私はクラレッサ・・・・・クラレッサ・ランデル


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