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1546 最後の最後に
なぜかばった?
あの女は敵だ、倒すべき敵なのに、なぜ俺は己の体を盾にしてまでかばったんだ?
我が身を炎に焼かれながら頭に浮かんだのは、俺が幼少の頃から聞かされてきたクラレッサとカエストゥスの話しだった。
俺の曽祖父は力を求めて帝国に来た。曽祖父は祖先にはあまり関心がない人だった。だから本来なら仇として憎むべき帝国にも、力でのし上がるという目的のために移り住んだ。
そんな曽祖父に育てられたから、祖父も父も祖先への関心は薄かった。だけどカエストゥスがなぜ滅ぼされたのか、そしてクラレッサの話しだけは聞かされてきた。
きっと曽祖父も祖父も父も、忘れてはいけない事は分かっていたんだ。
感心が薄いなりに、自分達が何者でどうやって生まれて来たのか。それだけは語り伝えていかなければと、心に持っていたんだ。
いつまでも過去にとらわれない。自分達の生き方は自分達で決める。
事実帝国で確固たる地位を築き上げた。
そういう人達だったが、それでも祖先への最低限の敬意は持っていたのだろう。
俺は・・・・・俺は、どうだ・・・・・?俺の生き方は、正しかったのか?
クラレッサ・・・・・カエストゥス・・・・・
国を滅ぼされ、大切な人を奪われた祖先達・・・・・
この家に生まれたからと、俺も帝国のために力使い生きて来た。
それが正しいと信じて疑わなかった。そして俺にも守るべき大切なものがこの国にある。
だけど、今まで何も疑問に思わなかったのか?
祖先の歴史を聞いて、帝国のために生きる事に迷いはなかったか?
父達もそうして生きて来たからと、流されるままに自分の心から目を背けていなかったか?
ああ・・・今やっと分かった
俺は・・・・・俺は間違っていた・・・・・・・
「・・・・・イ!」
誰、だ・・・?うる、さいな・・・・・
「レイ!レイ・ランデル!」
赤い、髪・・・・・無事、だったか・・・・・
「なぜだ!なぜ私を助けた!私をかばう理由なんてないだろう!なのに、なぜ・・・・・」
うる、さいな・・・・・何、だ?何を言って、いる?耳が、よく聞こえ、ない
目も霞んで・・・・・・・
「おい!レイ!レイ・ランデル!ぐっ、お、お前・・・お前は・・・・・」
レイチェルは黒コゲになったレイ・ランデルの横で、懸命にその名を呼び続けた。
かろうじて動く右手でその体に触れると、人の体温とは到底思えない程の熱を持っていた。
当然だろう、黒コゲにされるほど焼かれたのだから。
この火傷ではもう助からない。しかし彼の名を呼ばずにはいられなかった。
ふいに砂漠に風が吹いた
それは死にかけているレイ・ランデルを抱きしめるように、優しく労わるように包み込んだ
「あ、これは・・・緑の、風・・・・・」
緑の風・・・まさか、これは!
ハッとして、レイ・ランデルの顔を見る
もう痛みの感覚すらないだろう、けれど心なしか表情が和らいでいるように見えた
「・・・レイ、ランデル・・・・・」
虚ろだった目が最後に私を見た
・・・あり、がとう・・・・・・・・・・・・
もう言葉を発する事はできなかった
けれどレイ・ランデルの口がそう動いた事は分かった
「お、おい・・・」
最期にフッと満足そうに笑うと、支えていた頭がガクっと落ちた
そしてそれきり目を開ける事も、口を開く事もなかった
・・・・・・・・・・レイ・ランデル
聞いた事がある
緑色の風はカエストゥスの風だと・・・・・
なぜここに・・・
そうか・・・精霊は迎えに来たんだ
クラレッサの血を引く子孫を
だからレイ・ランデルは、安らかに逝けたんだ・・・・・
「・・・・・レイ、ランデル・・・・・お前の気持ち、伝わったぞ。安心して眠れ・・・・・」
こんな形になるとは思わなかった
だけどレイ・ランデル・・・最後の最後にお前と分かり合えた
約束しよう
美しかったカエストゥスは、きっと取り戻して見せる!
そのためにも、この戦い・・・・・
「負けるわけにはいかない!」
キッと空を見上げ、炎を纏い空中に立つ男を睨みつけた。
ジャック・フレイジャーは意識を失ったために、火の精霊に体を乗っ取られている。
左目は潰れており、残った右目は焦点が合わない虚ろなものだが、その意識が私に向けられている事は分かる。
何をするでもなく、ただニタリと歪んだ笑みを浮かべ、私を見ている。
次弾をすぐに撃っていれば、私も殺す事ができたはずだ。そうしなかったのは、私を弄んでいるからだ。
私が悲しみ、苦しむ姿を見て楽しんでいるんだ。
こんな・・・こんな性根の腐った精霊!絶対に許す事などできない!
体が動くか動かないかじゃない、やるんだ!
ギリッと歯を噛み締めて、私は砂に刺さっているガラスのナイフを右手で掴んだ!
手はまだ震えている、十分に力も入らないが、それでも私はガラスのナイフを握って立ち上がった。
「・・・!?」
立ち上がった私を見て、火の精霊は驚いたようだ。まさか立てるとは思っていなかったのだろう、それだけ私は消耗していたのだ。
足にも腰にも力が入らない、軸が安定せずにふらふらするが、それでも立った・・・立てた。
火の精霊よ、貴様には分からないだろうな?これが人間だ、命ある限り限界などない!
もう一発・・・この命を燃やしてでも貴様を消し飛ばしてやる!
真空波だ!
「レイチェルーーーーーーーーーッツ!」
闘気を振り絞り、技を繰り出そうとしたその時、聞き覚えのある声が割り込んで来た。
エメラルドグリーンの髪を無造作に後ろで縛り、弓矢を構えて私の前に飛び込んで来たその男を見て、私は声を上げた。
「なっ、リカルド!」
「あのバカみてぇな火の玉はこいつだな!?野郎!さっきはくそ熱かったぞコラァーーーーーッ!」
リカルドは空中に立つ炎を纏った男、今は火の精霊に支配されているジャック・フレイジャーに向かって
左手の五指を開いて向ける。その指先には白い火が灯っていた、そして右手の指先はその白い火を摘まむようにして、左手の甲から真っ直ぐ後ろに引き、そして怒鳴り声を上げながら右手の指を開いて、ソレを引き放った。
「グッ!?」
ジャック・フレイジャーの体、左腕、左肩、右脇腹、両の太腿を、五本の白い炎の矢が貫いた。
それは風の精霊の力を自在に操っていたジョルジュ・ワーリントンが、戦場で弓矢を失った時のために編み出した技であり、奥義であった。
呻き声をもらして、ジャック・フレイジャーは空中から落下した。
「カスが、サウナじゃねぇんだよ!適正温度を考えろハゲ!」
リカルドは指先を突き付けると、憎々し気に言葉を吐き捨てるように言い放った。
あの女は敵だ、倒すべき敵なのに、なぜ俺は己の体を盾にしてまでかばったんだ?
我が身を炎に焼かれながら頭に浮かんだのは、俺が幼少の頃から聞かされてきたクラレッサとカエストゥスの話しだった。
俺の曽祖父は力を求めて帝国に来た。曽祖父は祖先にはあまり関心がない人だった。だから本来なら仇として憎むべき帝国にも、力でのし上がるという目的のために移り住んだ。
そんな曽祖父に育てられたから、祖父も父も祖先への関心は薄かった。だけどカエストゥスがなぜ滅ぼされたのか、そしてクラレッサの話しだけは聞かされてきた。
きっと曽祖父も祖父も父も、忘れてはいけない事は分かっていたんだ。
感心が薄いなりに、自分達が何者でどうやって生まれて来たのか。それだけは語り伝えていかなければと、心に持っていたんだ。
いつまでも過去にとらわれない。自分達の生き方は自分達で決める。
事実帝国で確固たる地位を築き上げた。
そういう人達だったが、それでも祖先への最低限の敬意は持っていたのだろう。
俺は・・・・・俺は、どうだ・・・・・?俺の生き方は、正しかったのか?
クラレッサ・・・・・カエストゥス・・・・・
国を滅ぼされ、大切な人を奪われた祖先達・・・・・
この家に生まれたからと、俺も帝国のために力使い生きて来た。
それが正しいと信じて疑わなかった。そして俺にも守るべき大切なものがこの国にある。
だけど、今まで何も疑問に思わなかったのか?
祖先の歴史を聞いて、帝国のために生きる事に迷いはなかったか?
父達もそうして生きて来たからと、流されるままに自分の心から目を背けていなかったか?
ああ・・・今やっと分かった
俺は・・・・・俺は間違っていた・・・・・・・
「・・・・・イ!」
誰、だ・・・?うる、さいな・・・・・
「レイ!レイ・ランデル!」
赤い、髪・・・・・無事、だったか・・・・・
「なぜだ!なぜ私を助けた!私をかばう理由なんてないだろう!なのに、なぜ・・・・・」
うる、さいな・・・・・何、だ?何を言って、いる?耳が、よく聞こえ、ない
目も霞んで・・・・・・・
「おい!レイ!レイ・ランデル!ぐっ、お、お前・・・お前は・・・・・」
レイチェルは黒コゲになったレイ・ランデルの横で、懸命にその名を呼び続けた。
かろうじて動く右手でその体に触れると、人の体温とは到底思えない程の熱を持っていた。
当然だろう、黒コゲにされるほど焼かれたのだから。
この火傷ではもう助からない。しかし彼の名を呼ばずにはいられなかった。
ふいに砂漠に風が吹いた
それは死にかけているレイ・ランデルを抱きしめるように、優しく労わるように包み込んだ
「あ、これは・・・緑の、風・・・・・」
緑の風・・・まさか、これは!
ハッとして、レイ・ランデルの顔を見る
もう痛みの感覚すらないだろう、けれど心なしか表情が和らいでいるように見えた
「・・・レイ、ランデル・・・・・」
虚ろだった目が最後に私を見た
・・・あり、がとう・・・・・・・・・・・・
もう言葉を発する事はできなかった
けれどレイ・ランデルの口がそう動いた事は分かった
「お、おい・・・」
最期にフッと満足そうに笑うと、支えていた頭がガクっと落ちた
そしてそれきり目を開ける事も、口を開く事もなかった
・・・・・・・・・・レイ・ランデル
聞いた事がある
緑色の風はカエストゥスの風だと・・・・・
なぜここに・・・
そうか・・・精霊は迎えに来たんだ
クラレッサの血を引く子孫を
だからレイ・ランデルは、安らかに逝けたんだ・・・・・
「・・・・・レイ、ランデル・・・・・お前の気持ち、伝わったぞ。安心して眠れ・・・・・」
こんな形になるとは思わなかった
だけどレイ・ランデル・・・最後の最後にお前と分かり合えた
約束しよう
美しかったカエストゥスは、きっと取り戻して見せる!
そのためにも、この戦い・・・・・
「負けるわけにはいかない!」
キッと空を見上げ、炎を纏い空中に立つ男を睨みつけた。
ジャック・フレイジャーは意識を失ったために、火の精霊に体を乗っ取られている。
左目は潰れており、残った右目は焦点が合わない虚ろなものだが、その意識が私に向けられている事は分かる。
何をするでもなく、ただニタリと歪んだ笑みを浮かべ、私を見ている。
次弾をすぐに撃っていれば、私も殺す事ができたはずだ。そうしなかったのは、私を弄んでいるからだ。
私が悲しみ、苦しむ姿を見て楽しんでいるんだ。
こんな・・・こんな性根の腐った精霊!絶対に許す事などできない!
体が動くか動かないかじゃない、やるんだ!
ギリッと歯を噛み締めて、私は砂に刺さっているガラスのナイフを右手で掴んだ!
手はまだ震えている、十分に力も入らないが、それでも私はガラスのナイフを握って立ち上がった。
「・・・!?」
立ち上がった私を見て、火の精霊は驚いたようだ。まさか立てるとは思っていなかったのだろう、それだけ私は消耗していたのだ。
足にも腰にも力が入らない、軸が安定せずにふらふらするが、それでも立った・・・立てた。
火の精霊よ、貴様には分からないだろうな?これが人間だ、命ある限り限界などない!
もう一発・・・この命を燃やしてでも貴様を消し飛ばしてやる!
真空波だ!
「レイチェルーーーーーーーーーッツ!」
闘気を振り絞り、技を繰り出そうとしたその時、聞き覚えのある声が割り込んで来た。
エメラルドグリーンの髪を無造作に後ろで縛り、弓矢を構えて私の前に飛び込んで来たその男を見て、私は声を上げた。
「なっ、リカルド!」
「あのバカみてぇな火の玉はこいつだな!?野郎!さっきはくそ熱かったぞコラァーーーーーッ!」
リカルドは空中に立つ炎を纏った男、今は火の精霊に支配されているジャック・フレイジャーに向かって
左手の五指を開いて向ける。その指先には白い火が灯っていた、そして右手の指先はその白い火を摘まむようにして、左手の甲から真っ直ぐ後ろに引き、そして怒鳴り声を上げながら右手の指を開いて、ソレを引き放った。
「グッ!?」
ジャック・フレイジャーの体、左腕、左肩、右脇腹、両の太腿を、五本の白い炎の矢が貫いた。
それは風の精霊の力を自在に操っていたジョルジュ・ワーリントンが、戦場で弓矢を失った時のために編み出した技であり、奥義であった。
呻き声をもらして、ジャック・フレイジャーは空中から落下した。
「カスが、サウナじゃねぇんだよ!適正温度を考えろハゲ!」
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