異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
200 / 1,560

【200 弥生と新】

しおりを挟む
そして冬が来た。

吐く息も白くなり、毎朝ベッドから起きる事が少し辛くなる。
私は冷え性なので、冬は手と足の指先がいつも冷たい。だからよく両手をすり合わせる。


12月。
日本ならクリスマスを意識する頃だ。

日本で働いていたリサイクルショップ ウイニングでも、この時期は繁忙期だから忙しかった。

私、と言っても、もう一人の弥生は忙しくなると、よくあらたに仕事を押し付けていた。

【新~、なんで毎年クリスマスってこんなに混むんだよ】
【新~、ラッピング代わりにやっといて】
【新~、私ちょい疲れたから、後は頼むよ】

思い返せば、弥生は本当にあらたといつも一緒にいたと思う。

新はとにかく弥生にかまわれていた。仕事も色々やらされていたけど、不思議と嫌な顔一つしないで、しかたないな、という感じに笑って引き受けていた。


弥生は、人付き合いがヘタな新が周りから浮かないように、孤立しないように、いつも周囲との関係に気を配っていた。

最初は早番や中番など、ローテーションで勤務していたのに、新が入ってから閉店までの遅番固定にしたのは、新のためだった。


ほうっておけなかったのだ。

新をバイトに誘った村戸修一以外とは、なかなかうまく付き合えず、いつも悩みながら仕事をしている新を見て、弥生はある日、新に声をかけて昼食を一緒にとった。

弥生は直球をぶつけた。

【新、あんた人間関係下手でしょ?】

そこまでハッキリ言われた事のない新は、さすがに少し驚いたけれど、それでもストレートに言われた事で逆に言いやすくなったのか、これまでの自分を話し始めた。

学校を出て、やりたい事も見つからずブラブラしていた事、なにかバイトを始めても、すぐに人間関係で居づらくなり辞めてしまう事。
頭が固く、自分が正しいと思う事は曲げない事。新は自分の欠点も理解していた。
そして、親子関係がうまくいかず、父親との折り合いも悪い事も話した。

弥生は最後まで黙って聞いた。
そして、最後まで聞いて弥生は決めた。


【じゃあ、アタシが遅番一緒に入ってやるか。修一とは話せるんしょ?遅番は三人いりゃいいんだから、アタシと新と修一の三人が固定で入れば、アンタもちょっとは気が楽でしょ?だから、ウイニングは続けなよ?他の人とは、時間かけて付き合えるようになればいいよ】


以来、弥生はずっと新と遅番に入っている。


ほうっておけなかったのだ。

弥生も母親との関係で何年も悩んできたから。
ずっと自分を殺して生きて来た弥生は、家を出てウイニングで働き、やっと毎日が楽しいと思えていた。

新にも、この店で働いて良かったと思ってほしい。
弥生はそう思った。

見返りを求めたわけではない。
だけど、三年間一緒に遅番で働き、新との間には、特別な信頼関係ができたと感じている・・・





私は窓の外へ目を向けた。
ガラス越しに見える外は、一面白く染まった雪景色だった。


昨日は降っていなかったので、夜の間に積もったのだろう。
どうりで今朝はいつも以上に寒さを感じるわけだ。

時計を見ると、丁度6時だった。
多分、メアリーちゃんはもうキッチンで朝食の準備をしているはずだ。
メアリーちゃんは朝も強くて、どんなに天気が悪くても、毎朝6時には必ずキッチンにいるのだ。
本当にすごい子だ。


私も子供達を起こしに行かないと。
寝巻をぬいで、ケーブル編みの白いセーターに袖を通す。

着替えながら、私はやはり日本の事を考えてしまう。

私がこの世界にいるのなら、新もこの世界にいる可能性は高いと思う。

いつか・・・いつか会えるのかな・・・・・

共有している記憶で、私も新に対して特別な感情を持っている。

それは、まるで生き別れた弟に対するようなものかもしれないけれど、弥生は私以上にとても気にしている事も分かる。

直接の付き合いがあったのは弥生なのだから、当然だと思う。




ねぇ、新・・・あなたもこの世界に来ているのかな?

修一はどうなったかわからないけれど、記憶にある最後のあなたは、呼びかけても返事が無くて、死んでしまったように見えた・・・・・そして私もそこからの記憶がないの


私達は、あそこであの男に殺された・・・・・・

それは、悔しいし辛いけれど、どういう運命なのか、この世界で二度目の命をもらい生きている。

それなら、この世界では悔いのない人生をおくりたい。幸せになりたいと私は思う。

新・・・・・あなたにも、そう思って欲しい。
弥生は、私達はあなたを気にしているから・・・あなたもこの世界にいるのなら、もう一度会いたい。

私達はあなたを探すから、あなたにも私達を探してほしい。

いつかまた・・・いつかまた会える事を願っているから
どうかそれまで元気でいてね


着替え終えた私は、少しだけ目を閉じてこの世界に祈った


今日も一日幸せでありますように
そう願い、私は部屋を出た
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

処理中です...