異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
316 / 1,560

【315 前線に立った指揮官】

しおりを挟む
ロビンを先頭に、勢いに乗った五千人のカエストゥス兵が総当たりで仕掛ける攻撃に対し、帝国は踏みとどまる事がやっと・・・いや、それどころから押されていた。

帝国軍は体力型ではカエストゥスの上をいくが、魔法ではカエストゥスが帝国を凌ぐ。
しかし、数で倍以上の差をつけている帝国が押されている事には、明確な理由があった。


「・・・数の理が通じなくなってきたな。ロビン・ファーマー、これほどの男だとは・・・」

「フルトン様、私が出ますか?」


最後尾では指揮官となったフルトンが、右手にはめた黒いグローブの感触を確かめるように、二度三度拳を握っている。

そしてその隣には、金色の目をした女性が厳しい目で戦局を見据えていた。

「キャシー、キミはここで私の代わりに指揮を執りなさい。ロビンは私でなければ止められないでしょう」

「ですが・・・フルトン様、魔力はどれほど回復してますか?」

抑揚の無い声だが、キャシーはフルトンの体を気にかけるように見ていた。


キャシー・タンデルズ。24歳。
黒魔法使いであり、今回の国境沿いの戦いでは、ミラー、フルトンに次ぐ三番手の立ち位置に付いている。

赤紫色の長い髪を首の後ろから流すように三つ編みに結っている。
金色の瞳は意思の強さを見せるように少し鋭く、シャープな顔立ちと相まってややキツメの印象だ。
フルトンより少しだけ背が高く、173~174cmはあるように見える。魔法使いの女性にしては長身の部類だろう。

「そうですね・・・6~7割というところでしょうか。まぁ、できればもう少し回復させたいものですが、ここでロビンを止めなければ、本当に全滅させられかねません」

フルトンが前に出ようとすると、キャシーがその背中に更に言葉をかける。


「フルトン様、ミラー様の魔道具は・・・」

キャシーの言葉に足を止め、フルトンはゆっくりと振り返った。

「・・・えぇ、分かっております。ミラー様の魔道具は、ミラー様が使用する事を前提に作られております。私では負担が大きすぎます。ですが、土竜では止められないでしょう。やるしかありません」

「・・・フルトン様」

まだ言葉を続けようとするキャシーの肩に手を置いて、フルトンは優しく言葉をかけた。

「キャシー・・・ご心配ありがとうございます。ですが大丈夫です。土竜で遠距離から攻撃をするだけでしたら、ミラー様が私を副団長に任命されると思いますか?私、これでも強いんですよ?」


「・・・・・ふふ、そうでしたね。分かりました。では、私はここで指揮を引き継ぎます」

自分を強いと言い切り、微笑みかけるフルトンに、キャシーもまた微笑みで返した。

そしてフルトンは今度こそ振り返らず前線へと出て行く。


「・・・フルトン様、私はあなたに見いだされてここまで来れました」


今、キャシーは深紅のローブを身に着けている。
強い精霊の加護を受けている深紅のローブは、炎だけでなく風や氷魔法に対しての耐性も強い。

だが、強い加護を受けている装備は、その加護に耐えられるだけの器が必要になる。
帝国でも、副団長以上を務められる魔力が必要になる。

三番手のキャシーが深紅のローブを纏える事は、不可能ではないにしても並々ならぬ努力が必要だった。

「・・・・・私一人では深紅のローブは纏えなかったでしょう。フルトン様・・・この命、あなたのためでしたら・・・」

小さくなるその背を見つめ、キャシーは呟いた。





「そのままいけ!怯む事は無い!我が軍の勝利は目前だぞ!」

ロビンの声が戦場に響き、カエストゥス軍の背中を押す。戦局はカエストゥスが優位に進めていた。

その立役者は間違いなくロビンだった。ロビン一人で、すでに帝国兵の1/10は倒している。
その有志に勢いづいたカエストゥス兵が、帝国兵を次々と倒していく姿は、人数差などまるで感じさせなかった。

「ハァァァァッツ!」

ロビンがその腕を振るうたび、灼炎竜は右へ左へ意のままに動き帝国兵を焼き払っていく。

帝国の黒魔法兵が同じく灼炎竜で対抗してくるが、おそらく上位の使い手だったであろうディミトリーがなすすべも無く敗れた事から、決して深く入って来ず、遠巻きに牽制するような攻撃だった。

「そんな弱腰でこのロビン殺れると思ったかーッツ!?」

ロビンの叫びに呼応するように、その体を纏う炎の竜が大きさを増す。
10メートル級の灼炎竜の数を三体出現させると、縦横無尽に帝国兵を焼き殺していく。


鬼気迫る表情、そのあまりの迫力と容赦のない戦いぶりに、帝国の兵士達は完全に飲まれていた。
このままでは、本当に一万を超える軍がロビン一人に全滅させられる、そう思わせる程に今のロビンには凄まじい気がともっていた。


「むッツ!?」

視界の端で何かが光った。
ロビンは反射的に顔を右にそらすと、目でとらえきれない程のなにかが顔のすぐ脇を通り過ぎる。

一瞬遅れて左耳に激痛が走る。

「くっ・・・これは?」

まるで焼かれたように熱く、鋭く強い痛みに、左手を耳に当ててみると、あるべきはずの場所に耳が無く、その手は耳があった場所を押さえるように触れていた。

どろりとした血が左手を染める。


「くっくっく・・・さすがですね。よくぞこの結界刃けっかいじんの一撃を躱せたものです」


前線の帝国兵が道を開ける。

声の主、ステイフォン・フルトンがその姿を現した。
十数メートルは離れているが、ロビンの灼炎竜の熱気が吹雪をかき消し、互いに姿を視認できた。

「・・・貴様は?」

眼光鋭くロビンが睨みつける。

「お会いするのは初めてですね。私は、ステイフォン・フルトン・・・今はこの軍の指揮官です」

「・・・指揮官だと?ジャキル・ミラーではないのか?」

帝国の指揮官はジャキル・ミラー。そう聞いており、ロビン自身も師団長のミラーならば当然だろうという認識だった。だが、目の前のフルトンという男は自分が指揮官だと言う。

ロビンは話しがつかめず、怪訝な表情を向け当然の疑問を口にしただけだった。


だが、ミラーを尊敬してやまないフルトンにとっては、挑発以外のなにものでもなかった。


「・・・・・貴様らが・・・貴様らが殺しておいて・・・よくもそんな事が言えたなぁぁぁッツ!」

怒声を上げるフルトンの体から、青く光る魔力が沸き立つ。

来る!
凄まじい殺気を当てられたロビンは、フルトンからの攻撃に備え、灼炎竜をフルトンに向けた。



次の瞬間、斬り飛ばされたロビンの右腕が宙を舞った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...