370 / 1,560
【369 託した想い】
しおりを挟む
「う・・・」
テレンスが目を開けると、夕焼けに赤く染まった空が目に映った。
「お、起きたかの?」
次いで耳に入ってきた声に、反射的に飛び起きる。
忘れるはずもない。それは今しがたまで戦っていたカエストゥスの魔法使い、ブレンダン・ランデルだったからだ。
「ほっほっほ、2時間くらい寝てたかの、まぁ大丈夫なようじゃな?クラレッサに感謝せいよ。お前さんの怪我を治したのは、妹のクラレッサじゃ」
ここが戦場である事を分かっているのかいないのか、緊張感の欠片も無いのんびりとした声色だった。
そしてブレンダンから距離をとり、今自分が置かれている状況を確認する。
さっきまで戦っていた場所からは移動しているようだ。
かと言って、この戦場でのカエストゥスの陣営でもない。
水の流れる音に振り返ると、すぐ後ろに川があった。
見上げると崖に挟まれている事が分かる。どうやら渓谷の下の川にいるようだ。
「お前さんの体が血まみれだったんでな。洗ってやらねばならんと思うて、ここまで運んできたんじゃ。ちとやり過ぎたようじゃな。あぁ、足元には気を付けるんじゃぞ。そこの川は流れが速いし深いからな」
ブレンダンは川を指して忠告をしてくる。
空を飛べる黒魔法使いには無縁な忠告であるが、ブレンダンにとってそんな理屈は関係ない。
危ない物は危ないと教える。それが子育てだった。
「ところで、お前さんはクラレッサに言うべき事があるじゃろ?お前さんに腹を殴られた妹がお前さんの怪我を治したんじゃぞ?」
続けて発せられた言葉には、ハッキリとした厳しさがあった。
そしてそこで初めて、ブレンダンの隣で足を崩す形で腰を下ろしているクラレッサに目がいった。
「なんじゃ?ワシの隣におったのに今気が付いたのか?まぁ・・・自分がおかれている状況によほど驚いたという事か・・・」
「ク、クラレッサ・・・お前、なんで?」
なんでブレンダンの隣に?
なんで戦わない?
なんで・・・・・
自分を心配そうに見つめる妹の目を真っ直ぐに見返す事ができず、テレンスはそれ以上言葉を続ける事ができなかった。
「・・・兄さま、ご無事でなによりです」
助け船という事ではない。
クラレッサは純粋に兄が目を覚ました事を喜んでいた。
「クラ、レッサ・・・」
やはりブレンダンの影響だろう。
この短い時間でずいぶんと表情が豊かになった。
自分がブレンダンに破れた事は理解した。
そして妹に自分を治療させ、カエストゥスの他の兵士がいない場所に連れて来ている事からも、害意を加える気が無い事も分かる。そもそも何かするつもりならば、とっくにそうしているだろう。
では、目的はいったいなんだ?
そう考えた時、クラレッサが思いもよらぬ事を口にした。
「兄さま、私この戦争が終わったら、おじいさんと一緒にリサイクルショップというお店で働きたいです」
一瞬、妹が何を言っているのか理解できなかった。
働きたい?言葉の意味は理解できる。
だが、クラレッサが働くという意味が理解できなかった。
そしてリサイクルショップとはなんだ?
帝国にも様々な仕事がある。
テレンスだって宝石商の父を持っていたのだ。
商売というものも分かっているつもりだ。
酒場、服屋、武器屋、宿屋、色々ある。
だが、リサイクルショップとはなんだ?
そしてなぜブレンダンと一緒に働くと言う言葉が出て来る?
「・・・クラレッサ、お前の言っている事が・・・よく分からない。働くってどういう事だ?」
戸惑いながらも疑問に感じた事をそのまま聞くと、クラレッサはまるで夢を見る様に目を細めて空を見上げると、口元には微笑みを持って答えた。
「おじいさんは孤児院の他に、要らない物を買い取って修理して販売するお店を営んでおられるそうです。それがリサイクルショップというそうです。兄さまが寝てらっしゃる間、そのお店の話しを聞いておりました。
思えば・・・父さまの宝石店も最初は楽しかったです。ハッキリとは覚えておりませんが、ガラスケースの中でキラキラ輝く宝石、それを笑顔で買っていくお客様・・・父さまも・・・お仕事に誇りを・・・もって、らっしゃいました・・・・・」
「ク・・・クラ、レッサ・・・?お、お前・・・泣いてる、のか?」
妹に残った左目から流れる一滴の涙・・・
信じられない。
あの日、父と母を殺したクラレッサの手を引いて国を出て、浮浪孤児として2年、各地を流れた。
そして10年前運良く・・・いや、クラレッサの力を考えれば、皇帝との出会いは運命だったのかもしれないが・・・
皇帝に拾われた僕達二人は、この年まで帝国の庇護の下生きて来れた。
皇帝には感謝してもしきれない。
そこに俺達の・・・特にクラレッサに対する打算があったとしても、それは当然だろう。
なんの見返りもなく、浮浪孤児二人に金をかけて世話をする理由などないのだから。
立場を考えれば、奴隷のように扱ってもいいはずだ。
だが、予想に反して僕達は大事にされていたと言っていいだろう。
しかし・・・あの日以来クラレッサが笑う事、そして泣く事は一度も無かった。
きっと、あの日クラレッサは感情を全て無くしてしまったんだ。
ずっとそう思っていた。
だけど違った・・・・・
「そっか・・・・・・・・・うん、そっか・・・・・」
「・・・兄さま?・・・なぜ泣いているのです?」
ちゃんと、感情が残ってるじゃないか・・・・・
妹の涙をそっと指先で拭ってやると、クラレッサは少し驚いたように、え?と小さく言葉をもらした。
だけどすぐに、じゃあ私も、そう言って僕の目元にその白く細い指先を伸ばす。
「クラレッサ・・・くすぐったいよ・・・」
「兄さま、我慢してください」
クラレッサ・・・お前、今笑ってるよ・・・・・
そうか・・・僕は間違っていたのかもしれないな。
妹を護る事だけを考えて生きて来た。
どんな形であれ護ってみせる・・・それだけを考えて生きて来た。
でも・・・生きるという事は、そこに喜びも楽しみもあってこそなんだ。
時には涙する事もある。
苦しくて辛い事もある。
だけど・・・・・
「クラレッサ・・・お腹、殴ってすまなかった・・・大丈夫か?」
「はい・・・大丈夫です。兄さま、私は分かってますから、お気になさらないでください」
僕が気にしないように、クラレッサに微笑みながら労わりの言葉をかけてくれる。
その優しい笑顔に胸が痛くなる。
やはり、ここから先は僕ではないな・・・
「・・・ブレンダン・・・妹を、クラレッサを頼めるか?」
「え、兄さま・・・」
「・・・うむ。もちろんじゃ。お主はどうする?」
驚くクラレッサの肩越しにブレンダンに顔を向けると、ブレンダンは意外そうな目を開いたが、すぐに温かみのある柔らかい口調で返事をくれた。
あの日、僕達が最初にブレンダンと出会っていれば・・・・・
いや、考えてもしかたのない事だ。時は戻らない。
そして皇帝には多大な恩がある。
それもまた事実だ。
「僕は帝国へ戻らなければならない。この10年、僕とクラレッサは皇帝のおかげで生きて来れた。
ブレンダン・・・このクラレッサを見て、きっとクラレッサが人間らしく生きるには、あなたが必要なんだと感じる事ができた。だからこれからのクラレッサの人生はあなたにまかせたい。
だけど、僕まで帝国を離れるわけにはいかない。皇帝に受けた恩は僕がクラレッサの分も、一生をかけてでも返さなければならない。それに、僕はカエストゥスの兵を何人も殺した。ここの指揮官もな・・・今更そっちには行けない」
クラレッサはこの戦争でカエストゥスの人間を誰一人として殺していない。
クラレッサだけなら、きっとブレンダンがなんとかしてくれるだろう。
ブレンダンは何か言いたげな顔をしたが、自分を納得させるように黙って何度か頷くと、分かった、とだけ短く答えてくれた。
「・・・確かにな。お主の殺した男、マーヴィン・マルティネスはワシの盟友じゃ・・・若い時にはよくこの国の未来について語り合ったものじゃ。そんな友を殺したお主に思うところがないかと問われれば・・・全く無いとは言えん」
「・・・あぁ、そうだろうな。だから僕は行けない」
「じゃがな・・・マーヴィンは若者の未来を常に考えておった。お主がマーヴィンとの戦いで、何か一つでも感じ取ってくれておったら・・・お主が歩む道を正そうとしてくれれば、ヤツも本望じゃろうて。そして辛く険しい道じゃが、お主が生きて償いをしたいと言うのであれば、ワシはいくらでも力になるぞ」
これは帝国からの侵略戦争だ。
多くの血が流れた。改心したと言っても割り切れないところはどうしてもある。
だが、長い時間をかけても償いに生きる事はできる。
「ブレンダン・・・・・あぁ、もし僕にその道が残っていたら・・・その時は・・・」
その時は僕も一緒に・・・・・
差し出した手を見て、ブレンダンは少し驚いたように目を開いた。
でも、すぐにニコリと笑って僕の手を取ろうと手をのばす・・・・・
その時、ブレンダンとテレンス、二人の間を引き裂くかのような鋭い炎が上空から走った。
「むッ!」
「クッ!」
瞬時に手を引き後方に飛ぶテレンスとブレンダン。
二人が飛び退くとほぼ同時に、一瞬前まで立っていた地面に炎が突き刺さり、そして焼き焦がしながら斬り裂いた。
「クラレッサ!」
炎に斬り裂かれた地面、そしてそれを挟むようにテレンスとブレンダンが分かれ立つ。
一瞬の後、二人を隔てるように背丈程もある炎の壁が吹き上がった。
「兄さま!私は大丈夫です!」
直前でブレンダンに手を引かれたクラレッサも、その一撃を無事にかわせていた。
クラレッサの声を聞き、テレンスの表情に安堵が浮かぶ。
「・・・あやつは」
ブレンダンが崖の上に立つその襲撃者の姿を目に捉える。
その視線を追うようにテレンスも頭上を見上げ、そして眉を潜め声を上げた。
「・・・どういうつもりだ?セシリア!」
崖の上に立っていたのは、ブロートン帝国第一師団長のセシリア・シールズ
夕焼けが赤い髪をより赤く染める。
深紅の片手剣を突きつけたセシリアが、その赤い唇に薄い笑みを浮かべ見下ろしていた。
テレンスが目を開けると、夕焼けに赤く染まった空が目に映った。
「お、起きたかの?」
次いで耳に入ってきた声に、反射的に飛び起きる。
忘れるはずもない。それは今しがたまで戦っていたカエストゥスの魔法使い、ブレンダン・ランデルだったからだ。
「ほっほっほ、2時間くらい寝てたかの、まぁ大丈夫なようじゃな?クラレッサに感謝せいよ。お前さんの怪我を治したのは、妹のクラレッサじゃ」
ここが戦場である事を分かっているのかいないのか、緊張感の欠片も無いのんびりとした声色だった。
そしてブレンダンから距離をとり、今自分が置かれている状況を確認する。
さっきまで戦っていた場所からは移動しているようだ。
かと言って、この戦場でのカエストゥスの陣営でもない。
水の流れる音に振り返ると、すぐ後ろに川があった。
見上げると崖に挟まれている事が分かる。どうやら渓谷の下の川にいるようだ。
「お前さんの体が血まみれだったんでな。洗ってやらねばならんと思うて、ここまで運んできたんじゃ。ちとやり過ぎたようじゃな。あぁ、足元には気を付けるんじゃぞ。そこの川は流れが速いし深いからな」
ブレンダンは川を指して忠告をしてくる。
空を飛べる黒魔法使いには無縁な忠告であるが、ブレンダンにとってそんな理屈は関係ない。
危ない物は危ないと教える。それが子育てだった。
「ところで、お前さんはクラレッサに言うべき事があるじゃろ?お前さんに腹を殴られた妹がお前さんの怪我を治したんじゃぞ?」
続けて発せられた言葉には、ハッキリとした厳しさがあった。
そしてそこで初めて、ブレンダンの隣で足を崩す形で腰を下ろしているクラレッサに目がいった。
「なんじゃ?ワシの隣におったのに今気が付いたのか?まぁ・・・自分がおかれている状況によほど驚いたという事か・・・」
「ク、クラレッサ・・・お前、なんで?」
なんでブレンダンの隣に?
なんで戦わない?
なんで・・・・・
自分を心配そうに見つめる妹の目を真っ直ぐに見返す事ができず、テレンスはそれ以上言葉を続ける事ができなかった。
「・・・兄さま、ご無事でなによりです」
助け船という事ではない。
クラレッサは純粋に兄が目を覚ました事を喜んでいた。
「クラ、レッサ・・・」
やはりブレンダンの影響だろう。
この短い時間でずいぶんと表情が豊かになった。
自分がブレンダンに破れた事は理解した。
そして妹に自分を治療させ、カエストゥスの他の兵士がいない場所に連れて来ている事からも、害意を加える気が無い事も分かる。そもそも何かするつもりならば、とっくにそうしているだろう。
では、目的はいったいなんだ?
そう考えた時、クラレッサが思いもよらぬ事を口にした。
「兄さま、私この戦争が終わったら、おじいさんと一緒にリサイクルショップというお店で働きたいです」
一瞬、妹が何を言っているのか理解できなかった。
働きたい?言葉の意味は理解できる。
だが、クラレッサが働くという意味が理解できなかった。
そしてリサイクルショップとはなんだ?
帝国にも様々な仕事がある。
テレンスだって宝石商の父を持っていたのだ。
商売というものも分かっているつもりだ。
酒場、服屋、武器屋、宿屋、色々ある。
だが、リサイクルショップとはなんだ?
そしてなぜブレンダンと一緒に働くと言う言葉が出て来る?
「・・・クラレッサ、お前の言っている事が・・・よく分からない。働くってどういう事だ?」
戸惑いながらも疑問に感じた事をそのまま聞くと、クラレッサはまるで夢を見る様に目を細めて空を見上げると、口元には微笑みを持って答えた。
「おじいさんは孤児院の他に、要らない物を買い取って修理して販売するお店を営んでおられるそうです。それがリサイクルショップというそうです。兄さまが寝てらっしゃる間、そのお店の話しを聞いておりました。
思えば・・・父さまの宝石店も最初は楽しかったです。ハッキリとは覚えておりませんが、ガラスケースの中でキラキラ輝く宝石、それを笑顔で買っていくお客様・・・父さまも・・・お仕事に誇りを・・・もって、らっしゃいました・・・・・」
「ク・・・クラ、レッサ・・・?お、お前・・・泣いてる、のか?」
妹に残った左目から流れる一滴の涙・・・
信じられない。
あの日、父と母を殺したクラレッサの手を引いて国を出て、浮浪孤児として2年、各地を流れた。
そして10年前運良く・・・いや、クラレッサの力を考えれば、皇帝との出会いは運命だったのかもしれないが・・・
皇帝に拾われた僕達二人は、この年まで帝国の庇護の下生きて来れた。
皇帝には感謝してもしきれない。
そこに俺達の・・・特にクラレッサに対する打算があったとしても、それは当然だろう。
なんの見返りもなく、浮浪孤児二人に金をかけて世話をする理由などないのだから。
立場を考えれば、奴隷のように扱ってもいいはずだ。
だが、予想に反して僕達は大事にされていたと言っていいだろう。
しかし・・・あの日以来クラレッサが笑う事、そして泣く事は一度も無かった。
きっと、あの日クラレッサは感情を全て無くしてしまったんだ。
ずっとそう思っていた。
だけど違った・・・・・
「そっか・・・・・・・・・うん、そっか・・・・・」
「・・・兄さま?・・・なぜ泣いているのです?」
ちゃんと、感情が残ってるじゃないか・・・・・
妹の涙をそっと指先で拭ってやると、クラレッサは少し驚いたように、え?と小さく言葉をもらした。
だけどすぐに、じゃあ私も、そう言って僕の目元にその白く細い指先を伸ばす。
「クラレッサ・・・くすぐったいよ・・・」
「兄さま、我慢してください」
クラレッサ・・・お前、今笑ってるよ・・・・・
そうか・・・僕は間違っていたのかもしれないな。
妹を護る事だけを考えて生きて来た。
どんな形であれ護ってみせる・・・それだけを考えて生きて来た。
でも・・・生きるという事は、そこに喜びも楽しみもあってこそなんだ。
時には涙する事もある。
苦しくて辛い事もある。
だけど・・・・・
「クラレッサ・・・お腹、殴ってすまなかった・・・大丈夫か?」
「はい・・・大丈夫です。兄さま、私は分かってますから、お気になさらないでください」
僕が気にしないように、クラレッサに微笑みながら労わりの言葉をかけてくれる。
その優しい笑顔に胸が痛くなる。
やはり、ここから先は僕ではないな・・・
「・・・ブレンダン・・・妹を、クラレッサを頼めるか?」
「え、兄さま・・・」
「・・・うむ。もちろんじゃ。お主はどうする?」
驚くクラレッサの肩越しにブレンダンに顔を向けると、ブレンダンは意外そうな目を開いたが、すぐに温かみのある柔らかい口調で返事をくれた。
あの日、僕達が最初にブレンダンと出会っていれば・・・・・
いや、考えてもしかたのない事だ。時は戻らない。
そして皇帝には多大な恩がある。
それもまた事実だ。
「僕は帝国へ戻らなければならない。この10年、僕とクラレッサは皇帝のおかげで生きて来れた。
ブレンダン・・・このクラレッサを見て、きっとクラレッサが人間らしく生きるには、あなたが必要なんだと感じる事ができた。だからこれからのクラレッサの人生はあなたにまかせたい。
だけど、僕まで帝国を離れるわけにはいかない。皇帝に受けた恩は僕がクラレッサの分も、一生をかけてでも返さなければならない。それに、僕はカエストゥスの兵を何人も殺した。ここの指揮官もな・・・今更そっちには行けない」
クラレッサはこの戦争でカエストゥスの人間を誰一人として殺していない。
クラレッサだけなら、きっとブレンダンがなんとかしてくれるだろう。
ブレンダンは何か言いたげな顔をしたが、自分を納得させるように黙って何度か頷くと、分かった、とだけ短く答えてくれた。
「・・・確かにな。お主の殺した男、マーヴィン・マルティネスはワシの盟友じゃ・・・若い時にはよくこの国の未来について語り合ったものじゃ。そんな友を殺したお主に思うところがないかと問われれば・・・全く無いとは言えん」
「・・・あぁ、そうだろうな。だから僕は行けない」
「じゃがな・・・マーヴィンは若者の未来を常に考えておった。お主がマーヴィンとの戦いで、何か一つでも感じ取ってくれておったら・・・お主が歩む道を正そうとしてくれれば、ヤツも本望じゃろうて。そして辛く険しい道じゃが、お主が生きて償いをしたいと言うのであれば、ワシはいくらでも力になるぞ」
これは帝国からの侵略戦争だ。
多くの血が流れた。改心したと言っても割り切れないところはどうしてもある。
だが、長い時間をかけても償いに生きる事はできる。
「ブレンダン・・・・・あぁ、もし僕にその道が残っていたら・・・その時は・・・」
その時は僕も一緒に・・・・・
差し出した手を見て、ブレンダンは少し驚いたように目を開いた。
でも、すぐにニコリと笑って僕の手を取ろうと手をのばす・・・・・
その時、ブレンダンとテレンス、二人の間を引き裂くかのような鋭い炎が上空から走った。
「むッ!」
「クッ!」
瞬時に手を引き後方に飛ぶテレンスとブレンダン。
二人が飛び退くとほぼ同時に、一瞬前まで立っていた地面に炎が突き刺さり、そして焼き焦がしながら斬り裂いた。
「クラレッサ!」
炎に斬り裂かれた地面、そしてそれを挟むようにテレンスとブレンダンが分かれ立つ。
一瞬の後、二人を隔てるように背丈程もある炎の壁が吹き上がった。
「兄さま!私は大丈夫です!」
直前でブレンダンに手を引かれたクラレッサも、その一撃を無事にかわせていた。
クラレッサの声を聞き、テレンスの表情に安堵が浮かぶ。
「・・・あやつは」
ブレンダンが崖の上に立つその襲撃者の姿を目に捉える。
その視線を追うようにテレンスも頭上を見上げ、そして眉を潜め声を上げた。
「・・・どういうつもりだ?セシリア!」
崖の上に立っていたのは、ブロートン帝国第一師団長のセシリア・シールズ
夕焼けが赤い髪をより赤く染める。
深紅の片手剣を突きつけたセシリアが、その赤い唇に薄い笑みを浮かべ見下ろしていた。
0
あなたにおすすめの小説
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる