異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
638 / 1,560

637 ボート

しおりを挟む
レイチェル達はラクエルとの戦いの後、上の階へと進みボートのある部屋へとたどり着いた。

楕円形で木製のボートは、一隻で20人以上乗れる大きさであり、その数も生き残りの乗客を乗せるだけなら十分に足りた。
レイチェル達はロンズデール国王を入れても全部で11人、ボートは一隻で間に合った。

レイチェル達がボートを一隻確保すると、その後に部屋に入ってきたのが、下の階で一戦やり合ったラクエル達であった。
数十人の集団の先頭には船員のフランクが立っており、レイチェル達に気が付くと少しだけ頭を下げて、反対方向にあるボートを指して乗客達を誘導した。
あえて一定の距離を取ったのは、余計な摩擦を生まないためだろう。

乗客達はラクエルに対して好感を持っている。ラクエルが魔道剣士であり、並々ならぬ力を持っている事など問題になっていない。
横暴な貴族を黙らせ、小さい女の子から好かれている。そのラクエルに突然斬りかかったのだ、レイチェルに対して良い感情など持てるはずもない。
現にこうして距離を取っていても、チラチラと睨んでくる者もいる。



「う~ん、アタシさぁ、あぁいうの嫌いなんだよね。言いたい事はハッキリ言えばいいじゃん?チラチラこっち見てさ、レイチェルの戦闘力を見てるから何も言えないんだろうけど、嫌な感じだよね・・・よし、準備オッケー、切っていいよ!」

並べられたボートは、船首部分が縄紐で、壁に取り付けられたフックに固定されている。

転覆したせいでひっくり返っていて、更に頭の上の高さでぶら下がっているボートは、なかなかシュールに見える。しかし、そのせいで縄紐をほどいて下ろす事には注意が必要だった。

ここで活躍したのはシャノンだった。
レイチェルがナイフで縄紐を切ると、ボートが落下しないように風魔法を使い、ボートをゆっくりと下ろして、少しだけ浮かせた。

「よっと・・・・・シャノン、私は気にしていないぞ。ラクエルと私達が敵対していた事を知らなければ、私なんて突然斬りかかった、危ない女にしか見えないだろうな」

ボートが無事に下ろせたのを見ると、レイチェルは天井から飛び降りて、ボートの真ん中辺りを掴むみ、シャノンの風の動きに合わせてバランスを取る。

「そう言うけどさ・・・うん、まぁ、レイチェルがそう言うんなら、アタシもこれ以上は言わないよ」

「私もあまり良い気持ちはしないけど、しかたないわね。まさか私達が一般人に文句を言うわけにもいかないし、なにかされるわけでもないでしょうし、睨まれるだけなら無視してればいいわ」

ボートを挟んでレイチェルの向かい側に立つリンジーも、シャノンの風の揺らぎに合わせて、ボートを掴んでいた。

「だ、大丈夫みたい、ですね・・・で、ではそのままこちらに、き、来てください」

レイチェル達三人から数歩程下がり、ファビアナがボートのバランスを見ながら誘導していた。

「よし、じゃあアタシの風に合わせて運んで。ゆっくりね」

シャノンが風を操るとボートが少し前に進む。両脇を支えるレイチェルとリンジーは、ボートが揺れて周りにぶつかったり、落ちたりしないように注意を払いながら足並みをそろえる。

「これだけ大きいと、やっぱり疲れるのかい?」

「そうだね、けっこう魔力は食うし、バランスを保つのに神経は使うよね」

単純に風で浮かしているだけに見えて、細かな魔力操作の技術が必要になる。
大きく質量のある物を持ち上げるには、それなりの魔力とセンスが必要だった。

「そ、そのまま、ま、真っ直ぐです・・・は、はい、ここで向きを、か、変えて・・・は、はい、そうです・・・はい、では、こ、このままこっちに、ちょ、ちょっとだけきて、ください」

ファビアナが室内を見ながら、ボートを誘導する。
シャノンはそれに従い風でボートを進ませる。レイチェルとリンジーはボートが風の操作から抜けないように、両脇から支える。四人はそれぞれの役割をこなし、息の合った連携でボートを定位置につけた。

「・・・船がずいぶん沈んできたからな、脱出するならここしかないだろう」

脱出の準備を終えたレイチェル達は、ボートの脱出口となるハッチの前で、体を休める事にした。



「・・・あっちも、手際よくボートを下ろしてるね」

シャノンが見つめる方に顔を向けると、フランク達が声を掛け合ってボートを一隻、二隻と下ろしている。天井まで上がって縄紐を切っているのはラクエルだった。
男達が力を合わせてボートを支え、ラクエルがボートを上がり縄紐を切る。
ラクエルとフランク以外は、それぞれ戦う力を持たない一般人だが、それぞれができる事で貢献して脱出のために力を尽くしている。

「・・・あっちにも黒魔法使いの一人や二人はいるでしょうに、なんでシャノンみたく風魔法を使わないのかな?」

数十人が乗れる程大きいボートを支える事は大変だ。ならばシャノンのように風魔法で浮かせた方が楽だろう。そう考えるリンジーの疑問に答えたのはファビアナだった。

「く、訓練を積んでない・・・い、一般の、人の魔力じゃ・・・あ、あんな大きいの、とても持ち上げ、られないです・・・」

ファビアナの答えを補足するように、シャノンも言葉を重ねた。

「そうだね、アタシは実践経験は少ないけど、魔道具を扱う店をやってるでしょ?それに、女が次のアラルコン商会の会長になるわけだから、舐められないようにするためにも、魔法の修行はしっかり積んできたからね。だからアタシはこれくらいなら浮かせられるのさ」

そう言って、右手の人差し指を立てて風を纏わせて見せる。

「そうなんだ、シャノンはすごいね。先の事をしっかり考えてるんだ」

「そう?小さい頃から当たり前にやってたから、アタシにはこれが普通だよ・・・ねぇ、話しは変わるけど、いつまで待つ?」

それは全員に向けられた言葉だった。
言葉の意味は確認するまでもない・・・ここにいない仲間をいつまで待つか?


「・・・フッ、シャノン・・・それは聞くまでもないだろ?なぁみんな」

レイチェルはおかしそうに笑うと、リンジーとファビアナに顔を向けた。

二人とも、レイチェルの言葉を受け止めて、同じ気持ちだと伝えるように頷いた。


「来るまでに決まってるだろ?みんな生きてるよ」

確信を持って話すレイチェルに、シャノンも目を閉じて微笑みを浮かべた。

「・・・馬鹿な事聞いちゃったね。うん、レイチェルの言う通りだ。みんな生きてるよ、来るまで待ってみんなで脱出だね」

チラリと、ボートの中で眠っているロンズデール国王に目を向ける。
まだ起きる気配は無い。

少なくとも、ロンズデール国王がいなければ、ロンズデールを帝国に売り払う話しは成立しないだろう。

帝国の大臣ダリル・パープルズ、そして二人の護衛。
魔道剣士ラミール・カーン・・・やつらは今どこだ?

そして、大海の船団のウラジミール・セルヒコ・・・・・ヤツは一体今・・・・・

シャノンの頭には、アラルコン商会の青の船団をいつも目の敵にしている、大海の船団の船長の顔が浮かんだ。

「・・・ウラジミール・・・おそらく船団の全てをかけたこのクルーズが、こんな形で駄目になってはもうお終いだろう・・・お前は今どこに・・・・・」


そう呟いたその時、部屋の外で突然の怒声が響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...