異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
978 / 1,560

【977 底の知れない闇】

しおりを挟む
光源爆裂弾が孤児院を破壊し、巨大な黒煙が空まで立ち昇った光景を、俺はただ呆然と見ていた。
舞い上がり飛び散る火の粉が、髪を焼き、肌を焼くが、熱さを感じる余裕など無かった。

俺は今なにを見ているんだ?
この爆炎はなんだ?どこが燃えているんだ?

自分の見ている光景が信じられなかった。受け入れられなかった。

だが、どう見てもこの方角は孤児院だった。


メアリー・・・・・ティナ・・・・・無事・・・だよな?とっくに逃げているよな?

全身から嫌な汗が吹き出した。呼吸ができないくらい胸が苦しくなり、心臓の鼓動が早くなる。

まさかこの爆発で・・・いや、そんなはずはない!二人はきっと逃げているはずだ!
俺の・・・俺のメアリーが・・・ティナが死んだなんてあるはずが・・・・・


「・・・う、うわぁぁぁぁぁぁー-------メアリィィィー-------ッツ!」

限界だった・・・
頭がどうにかなりそうで、俺は耐え切れずに絶叫した。

絶対に無事だ!メアリーもティナも生きてる!今行くからな!

頭の中がぐちゃぐちゃになって何も考えられない。とにかく早く二人の顔を見たかった。
そして地面を蹴り上げて、風魔法で空を飛んだその時・・・・・・

空が一瞬にして真っ暗な闇に染まった。




「ッ!?な、なんだ!?・・・空が急に・・・ま、まさか!?」

足を止めて辺りを見回した。
目に見える限り闇はどこまでも広がり、一切の陽の光が遮られた異常な暗闇だった。

夜の闇とは違う、禍々しささえ感じる暗闇・・・・・

そして漂って来るおぞましい気配・・・・・まさか・・・これは!?



俺はこれをかつて一度目にしている。何年経っても忘れる事などない。忘れられるわけがない。

「王子!まさかっ!?」

振り返って、エンスウィル城の方角に顔を向け・・・そして俺は見た。

「あ・・・あれは・・・くっ!」

やはりそうだ!間違いない!
エンスウィス城の上空で、暗闇がまるで大口を開けるように渦を巻いている。
これは六年前のあの日、数百億ものバッタの群れを喰らいつくした、王子の闇魔法黒渦だ!


「・・・お、王子・・・なぜ、なぜだぁぁぁぁぁーーーーーーーーッツ!」


二度と・・・もう二度と使わないと約束したじゃないか!なにもかも全てを呑み込むつもりか!?
マルコ様はどうした!?止めなかったのか!?

足に纏う風を爆発させ、全速力で一直線に城へと飛んだ!
一秒でも早く行かなければ!王子を止めなけば国そのものが消えてしまう!

王子なぜ黒渦を使った!







「う・・・ぐぅ・・・あ、あれは・・・まさか・・・」

全身の火傷、魔力の拳で殴られた痛みで、もう満足に体を動かす事ができなかった。
だが、倒れている余の目に映った光景に、無理にでも体を起こさなければならなかった。

見た事はなかった。だが話しには聞いていた。そして一目で分かった。

この空を闇に変えた黒い渦が、六年前にカエストゥスを襲ったバッタの群れを殲滅した、タジームの魔法なのだと。

「ぐぅ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・なんと、おぞましい、もの・・・よ・・・あれが、話しに聞いた、闇の渦か・・・・・」

痛みを堪えて上半身を起こし、膝に手をかけて立ち上がった。
それだけで激痛が走り顔が歪むが、倒れるわけにはいかない。

話しに聞いていた通りならば、数百億のバッタをあの渦が呑み込んだというのだから。
ここにいては余まで巻き込まれかねん。

「ぐ・・・はぁ、はぁ・・・早く・・・ここを、離れんと・・・」

頭がふらつき、体を支える足が折れそうになる。
膝に手を置いて、なんとか立っている事で精いっぱいだった。

やはりダメージが大きい。魔力はまだ残っているが、この体でここから脱出できるだろうか。

顔を上げて空を見ると、宙に浮いたタジームが、感情の見えない顔でこちらを見下ろしていた。
闇の渦はまだ発動していないようだが、ぐるぐると渦を巻いているところを見ると、いつ動き出してもおかしくない。


「はぁ・・・はぁ・・・タジーム・・・・・」

ベンの策がはまったところまでは良かった。
だが追い詰め過ぎた。護るべきものが無くなった男にとって、もはやこの世界にはなんの未練も無いのだ。

「こ、皇帝・・・これはあの黒渦です!は、早く逃げなければ!」

緊迫した顔のベンが駆け寄って来た。
こいつはこの魔法を一度経験しているんだったな。額に大粒の汗を浮かべ、大きく動揺している。
この状況に相当な焦りを感じているようだ。

「ベンよ、あれが黒渦という魔法なのだな・・・・・」

「そ、そうです!あれが発動すれば我々まであの闇に呑まれてしまいます!だから早く・・・ぐおッ!?」

「ベ、ベンッ!?」

突如目の前のベンの体が、強い力で後ろに引かれたように倒れこんだ。

そしてそのまま見えない何かに首でも掴まれたように、ズルズルと城の方に引っ張られ始めたのだ。

「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーッツ!こ、こうていぃぃぃぃーーーーーーッツ!」

目を見開き、大口を開けて必死に叫び声を上げる。
両手を伸ばして余に助けを求めるが、余は目の前で起きている事に、驚愕して動く事ができなかった。

「こ、これが・・・っ!?」

これが黒渦なのか!?有無を言わさず相手を引き寄せ、そしてあの渦の中に飲み込むのか!?

余の理解を超えた魔法に体が動かず立ち尽くしていると、足をすくうように風がまとわりついてきて、反射的に後ろに飛び退いた。

「な、なんだ今のは!?・・・ぐぉッ!?」

結果的にこれで硬直がとれて動けるようになった。
だが後方に着地したとたん、今度は上空から引っ張られるような風に体が捕まり、足が浮きそうになる。

う、動けん!なんだこの風は!?風が余の体に巻き付きいているというのか!?

「す、吸い寄せられる!」

引き寄せる風はどんどん強さを増していき、足元の砂利や草もゆっくりと空に浮かび始めた。

こ、これが黒渦の力か!?人だろうと石だろうと、なにもかも全てをあの渦に呑み込むのか!
い、いかん!このままでは余まで!


空を見上げると、闇の渦がまるで意思を持っているかのようにうごめいて、それはまるで嗤っているように歪んで見えた。

「ぐ、ぐぬぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーッツ!

だ、駄目だ!あれはまずい!ここで脱出できねば余はあの闇に・・・・・!

必死に足を踏ん張り、吸い寄せる力に抵抗するが、吸い込む力がどんどん強くなっていく。
少しでも気を抜けば一瞬にして、空に渦巻く闇の口に吸い込まれてしまうだろう。

そして一度闇に吸い込まれれば逃げる事はできない。

今ここでこの風を外すんだ!魔力を爆発させろローランド!外せねば死ぬぞ!


魔力を全開に放出し、引き寄せる風に必死にあらがったその時、ふと上空に浮かぶ、この魔法の術者であるタジームと目が合った。

そしてその目を見た時、余は自分が戦争を仕掛けた国、いや・・・戦いを挑んだ相手が、いったいどういう人間だったのか分かった気がした。



なんだその目は?

余も皇帝になるために、肉親を含め、大勢の人間を殺してきた。
その中で、恨み、憎しみ、そして殺意を、数えきれない程向けられた来た。

だが・・・だが、なんだその目は?


タジームの黒い瞳には、怒りでも憎しみでもない・・・・・
そこにはただ・・・ただ、空虚で底の知れない闇があった。

タジーム・ハメイド・・・・・こいつはもう余を見てはいない。
全てを・・・全てを闇で呑み込み、なにもかも終わりにする気だ。


累々たる屍の上に皇帝の地位を得た。
どれだけの血をこの身に浴びたか分からない。
数多の死線を越えて来た・・・・・

だが・・・・・


体が震える程の恐怖を感じたのは初めてだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

転生したら最強の神具を持っていた!~無自覚英雄は今日ものんびり街を救う~

にゃ-さん
ファンタジー
ブラック企業で過労死した青年・タクトが転生した先は、魔法と剣が息づく異世界。 神から与えられた“壊れ性能”の神具を片手に、本人は「平穏に暮らしたい」と願うが、なぜか行く先々でトラブルと美女が寄ってくる。 魔物を一撃で倒し、王族を救い、知らぬ間に英雄扱いされるタクト。 そして、彼を見下していた貴族や勇者たちが次々と“ざまぁ”されていく…。 無自覚最強系×コミカルな日常×ほのぼのハーレム。テンプレの中に熱さと癒しを込めた異世界活劇、ここに開幕!

処理中です...