異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,004 / 1,560

1003 見送る背中

しおりを挟む
アラルコン商会の事務所では、二人の女性がテーブルを挟んで向かい合い座っていた。

秋晴れの気持ちの良い日だが、まだまだ夏の名残りで汗は出る。

向かい合う二人のうち、黒髪の女性シャノン・アラルコンは、氷が浮かぶ薄茶色の液体が入ったグラスに口を付けると、正面に座る赤い髪の女性に顔を向けた。

「・・・・・マジかぁ・・・レイチェル、あんたって本当に大変だよね?体大丈夫?いっつも面倒事引き受けてない?」

大きく息を吐き出し、ありえないと言うように首を横に振った。
カシレロとの戦いで死にかけた事を知っているだけに、苦労の絶えないレイチェルが心配でならなかった。


今日はロンズデールから来ると言う、リンジー達の話しをするために来てもらったはずが一転した。帝国との国境にある山岳地帯パウンド・フォー。
そこで窮地に陥っている騎士達を救出に行く事になったと言うのだ。

「まぁ、体は大丈夫だ。この前まとまった休養をとったからな。店長とも毎日のように訓練ができているから、どこも悪くないし健康そのものだぞ。それに、レイマートを見捨てるわけにはいかないだろ?私達レイジェスに助ける力があるのなら、行かなければならない」

「そりゃ。そうなんだろうけど・・・私達ロンズデールも助けてもらったしね。でもさ、私はあんたが無理してないかって思ってね・・・」

テーブルの上に両手を重ねて、シャノンはレイチェルの瞳をじっと見つめた。

ロンズデールの戦いからまだ一年も経っていない。
そしてほんの数か月前には、クインズベリーに攻め入って来た帝国の師団長、ジェリメール・カシレロとの一戦で死にかけたのだ。
レイチェル本人は大丈夫だと言うが、またも危険な場所に赴(おもむ)く友人の身を、シャノンは心から案じていた。


「・・・心配してくれてありがとう。私は良い友人を持ったな」

「はぁ~・・・まったく、あんた頑張り過ぎだよ。他に任せられる人はいないの?」

「闇蛇には魔法を含め、剣や打撃、普通の攻撃がほとんど効かないという話しだ。しかも体長は10メートルにも及ぶという。そんな危険な蛇を相手にするんだから、この任務を引き受けた私が行くのが筋だろう?」

「そりゃ、そうかもしれないけど・・・はぁ、しかたないね。レイチェルはこうだって決めると曲げないからね・・・分かったよ、それで帰りはいつくらいになりそう?」

レイチェルの決意の固さを見て取ると、シャノンは説得を諦めたように小さく息をついた。
できれば行かせたくない。だが事情が事情なだけに、行くしかないのだろう。そう納得するしかないのだ。


「今回は救出が目的であって、蛇を殲滅(せんめつ)する必要は無い。逃げる事だけを考えるなら、そうだな・・・12~13日、まぁ二週間もあれば帰って来れるとは思う」

レイマート達を見つけ次第撤退する。逃げに徹するのであれば、往復で二週間もあれば帰って来れるだろう。これがレイチェルの見積もりだった。

「分かった。じゃあ、リンジー達にはそう伝えておくよ。彼女達も使者として来るわけだから、日程を合わせるは難しいかもしれないけど、できれば会いたいよね?9月下旬、二十日過ぎくらいなら帰ってるって事かな?それで連絡しておくよ」

「悪いな、そうしてくれると嬉しいよ」

「いいって、私は日程を調整するだけだからさ。でも、約束した日にレイチェル達がいなかったら、きっとリンジー達もガッカリすると思うんだよね。だから絶対に二十日までには帰って来るんだよ?分かった?」

シャノンが自分に向ける視線の意味、絶対に生きて帰って来て約束を守れ。
本気で自分の身を案じてくれている。その気持ちが嬉しくて、つい表情が緩んでしまう。

「・・・フッ、それじゃあ絶対に遅れる事はできないな。分かった。二週間でキッチリ帰って来る。リンジー達にそう伝えてくれ」

そう言葉を返すレイチェルからは、虚勢ではない確固とした自信が感じられた。


大丈夫・・・レイチェルは強い。これまでだって生き残った。
だから今度も絶対に帰って来る。
そう信じられたからこそ、シャノンはこれ以上引き留める事はせず、快く送り出す事に決めた。

「・・・よし!じゃあせっかくだから、化け物蛇の牙でもお土産に取って来てよ!」

「ははは、なんだよそれ?ピクニックに行くんじゃないんだぞ?」

「いいじゃん、商人は珍しい物に目が無いんだよ。ま、取れたらでいいからさ」

「フッ、分かった分かった。期待しないでまっててくれ」

それから二人は少しの間、他愛の無い会話を楽しんだ。

二人の話しは尽きる事はなかった。

まるで二人とも、この時間を終わらせたくないかのように、話しはいつまでも、いつまでも続いた。

やがて陽が傾いてきた頃、壁にかかった時計の針に目を向けて、レイチェルは静かに席を立った。

そろそろ出ないと暗くなってしまう。


・・・じゃあ行って来る。

そう言い残して、レイチェルは事務所を出た。
シャノンは何も言葉を口にしなかった。

ただゆっくりと頷いただけで、部屋を出るレイチェルの背中を黙って見送った。



レイチェル・・・・・絶対に生きて帰って来い


ただシャノンは心の中で祈った。
危険地帯へと発つ友人が、無事に帰って来れるようにと・・・

いつまでもずっと・・・祈り続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...