1,142 / 1,560
1141 赤い視線
しおりを挟む
魔風の羽の風に包み込まれたカチュアとユーリは、荒れ狂う爆風を苦にもせず、目的の場所に向かい歩いていた。
「・・・すごい・・・カチュア、これって風が同化しているの?」
感心するほど精密な魔力の流れに、ユーリが感心して褒めるとカチュアは照れたように笑った。
「うん、そうだよ。向かって来る風の性質を見て、同調して受け流してる感じかな。けっこう気を使うから走るのは難しいけど、歩きながらなら大丈夫だよ」
「カチュアは手先が器用だから、魔力操作も上手。やっぱり一緒に来てくれて良かった」
膂力のベルトを使えば、この爆風でも突っ切って行く事は可能だろう。
だがかなりの魔力と体力を消耗する事になったはずだ。
カチュアが道を作ってくれたおかげで、魔力と体力を温存できたのは大きい。
「・・・ユーリ、みんなは絶対に生きている。私は信じてる」
「うん、あいつらが簡単に死ぬわけない。絶対生きてる」
二人の目は、ただ前だけを見つめていた。
爆風によって起こった猛吹雪の中、二人はその先で待つ仲間達を想い、足を急がせた。
カチュアとユーリが向かう先、レイチェル達が帝国軍のアダメス達と戦った場所では、轟轟と燃え上がる炎によって辺り一面の雪は消し飛び、焼け野原と化していた。
そしてそこから数百メートル程離れた雪原で・・・・・
「・・・・・ブッハァーーーーーーーーッツ!」
地中から地面を拳で突き破り、緑色の髪をした男、リカルドが顔を見せた。
「ゲホッ!ぺっ!ぺっ!・・・はぁっ、はぁっ・・・ゲホッ!・・・はぁ、はぁ・・・う、おらぁーーーッ!」
地面から顔を出して大きく咳き込むと、口の中の土を吐き出した。
そして息を切らせながら右腕を前に出し、体を支えるようにして肘をつくと、歯を食いしばって左腕に抱えた赤毛の女戦士、レイチェルを腕一本で地中から引き上げた。
「はぁっ!はぁっ!・・・ゲホッ!・・・はぁ、はぁ・・・・・・・・・くそがっ!」
体力型でも小柄なリカルドでは、女性とはいえ人一人を片手で持ち上げるのは困難だった。
だがリカルドは無理やり力を絞り出し、レイチェルを放るようにして地面に投げ置くと、力尽きたのか穴から這い出て、その場に仰向けに倒れた。
「はぁ・・・はぁ・・・し、死ぬかと思ったぜ・・・ゲホッ・・・日頃の、行いだな・・・」
しばらく仰向けのままで呼吸を落ち着けると、リカルドの目の前にフワリと黄色の炎が浮かび上がった。突然目の前に現れた黄色の炎を見ても、リカルドは眉一つ動かす事はない。
なぜならリカルドは、この炎を知っているからである。
「・・・よぉ、土の精霊・・・助かったぜ」
仰向けに倒れたまま、リカルドは黄色の炎を土の精霊と呼んだ。
そう、この黄色の炎は土の精霊である。そしてこの土の精霊が、あのブラックスフィアの爆発から、リカルドとレイチェルを救ったのである。
「いきなり地面の中に引きずり込まれた時はよ、マジでビビったけど・・・レイチェルと俺を爆発から護ってくれたんだもんな。マジ感謝だぜ。でもよ、次からは口ん中に土が入らねぇように頼むわ。息できてもジャリジャリしてめっちゃ気持ち悪いから」
黄色の炎に向けてお礼と駄目出し述べると、炎はユラユラと揺らめきながら、スゥッと静かに消えていった。
「相変わらず、愛想ねぇな・・・よっと」
一息ついたリカルドは体を起こすと、となりで体を横たえているレイチェルに目を向けた。
どうやら意識は失っているようだ。だが呼吸は落ち着いており、脇腹から流れていた血は止まっている。
「あ~・・・こりゃ土の精霊だな。あいつら愛想悪いけど、サービス良いよな」
回復効果のある土の寝巻から分かるように、土の精霊は癒しの力を持っている。
かなりの深手を負っていたレイチェルだったが、土の精霊の力によって、一命を取り留めていた。
そして爆発の中心地にいたはずのリカルドとレイチェルが、爆炎や爆風の影響の少ない場所まで避難できていたのも、土の精霊が地中から移動させていたからである。
「つーかよ、ここってどこらへんだよ?えっと・・・あ、あそこの火柱が元々いた場所か?そうすっと・・・あっちか?あっちに行けばみんなと合流できんのか?」
リカルドは立ち上がると、日差しを遮るように額に手を当て周囲を見回した。
さっきまで戦闘をしていた場所から、数百メートルは離れている。天まで届く火柱は一目で見つかり、それを目印にクインズベリー軍の位置に検討をつけた。
「あ~あ、面倒くせぇけど行くしかねぇよな?みんな俺らがここにいるって知るわけねぇし。いや、ジーンかケイトがサーチ使えばいいんじゃね?・・・うん、そうだよな?がんばった俺がわざわざ歩く事なくね?あっちから迎えに来んのが礼儀じゃんよ」
一人でぶつぶつ言っていると、ふいに背後から感じた視線にリカルドは振り返った。
「・・・・・っ!」
ハンターとして育てられたリカルドは、レイジェスの誰よりも目が良い。
だからこそ、100メートル以上離れている樹の上から、こちらを見るその女の姿を、目に映し認識する事ができた。
「ん、んだよ・・・あいつ・・・・・」
血のように真っ赤な目で、じっと自分を見つめる赤い髪の女と目が合った。
背筋が凍りつくような寒気を覚えるのは初めてだった。
「・・・すごい・・・カチュア、これって風が同化しているの?」
感心するほど精密な魔力の流れに、ユーリが感心して褒めるとカチュアは照れたように笑った。
「うん、そうだよ。向かって来る風の性質を見て、同調して受け流してる感じかな。けっこう気を使うから走るのは難しいけど、歩きながらなら大丈夫だよ」
「カチュアは手先が器用だから、魔力操作も上手。やっぱり一緒に来てくれて良かった」
膂力のベルトを使えば、この爆風でも突っ切って行く事は可能だろう。
だがかなりの魔力と体力を消耗する事になったはずだ。
カチュアが道を作ってくれたおかげで、魔力と体力を温存できたのは大きい。
「・・・ユーリ、みんなは絶対に生きている。私は信じてる」
「うん、あいつらが簡単に死ぬわけない。絶対生きてる」
二人の目は、ただ前だけを見つめていた。
爆風によって起こった猛吹雪の中、二人はその先で待つ仲間達を想い、足を急がせた。
カチュアとユーリが向かう先、レイチェル達が帝国軍のアダメス達と戦った場所では、轟轟と燃え上がる炎によって辺り一面の雪は消し飛び、焼け野原と化していた。
そしてそこから数百メートル程離れた雪原で・・・・・
「・・・・・ブッハァーーーーーーーーッツ!」
地中から地面を拳で突き破り、緑色の髪をした男、リカルドが顔を見せた。
「ゲホッ!ぺっ!ぺっ!・・・はぁっ、はぁっ・・・ゲホッ!・・・はぁ、はぁ・・・う、おらぁーーーッ!」
地面から顔を出して大きく咳き込むと、口の中の土を吐き出した。
そして息を切らせながら右腕を前に出し、体を支えるようにして肘をつくと、歯を食いしばって左腕に抱えた赤毛の女戦士、レイチェルを腕一本で地中から引き上げた。
「はぁっ!はぁっ!・・・ゲホッ!・・・はぁ、はぁ・・・・・・・・・くそがっ!」
体力型でも小柄なリカルドでは、女性とはいえ人一人を片手で持ち上げるのは困難だった。
だがリカルドは無理やり力を絞り出し、レイチェルを放るようにして地面に投げ置くと、力尽きたのか穴から這い出て、その場に仰向けに倒れた。
「はぁ・・・はぁ・・・し、死ぬかと思ったぜ・・・ゲホッ・・・日頃の、行いだな・・・」
しばらく仰向けのままで呼吸を落ち着けると、リカルドの目の前にフワリと黄色の炎が浮かび上がった。突然目の前に現れた黄色の炎を見ても、リカルドは眉一つ動かす事はない。
なぜならリカルドは、この炎を知っているからである。
「・・・よぉ、土の精霊・・・助かったぜ」
仰向けに倒れたまま、リカルドは黄色の炎を土の精霊と呼んだ。
そう、この黄色の炎は土の精霊である。そしてこの土の精霊が、あのブラックスフィアの爆発から、リカルドとレイチェルを救ったのである。
「いきなり地面の中に引きずり込まれた時はよ、マジでビビったけど・・・レイチェルと俺を爆発から護ってくれたんだもんな。マジ感謝だぜ。でもよ、次からは口ん中に土が入らねぇように頼むわ。息できてもジャリジャリしてめっちゃ気持ち悪いから」
黄色の炎に向けてお礼と駄目出し述べると、炎はユラユラと揺らめきながら、スゥッと静かに消えていった。
「相変わらず、愛想ねぇな・・・よっと」
一息ついたリカルドは体を起こすと、となりで体を横たえているレイチェルに目を向けた。
どうやら意識は失っているようだ。だが呼吸は落ち着いており、脇腹から流れていた血は止まっている。
「あ~・・・こりゃ土の精霊だな。あいつら愛想悪いけど、サービス良いよな」
回復効果のある土の寝巻から分かるように、土の精霊は癒しの力を持っている。
かなりの深手を負っていたレイチェルだったが、土の精霊の力によって、一命を取り留めていた。
そして爆発の中心地にいたはずのリカルドとレイチェルが、爆炎や爆風の影響の少ない場所まで避難できていたのも、土の精霊が地中から移動させていたからである。
「つーかよ、ここってどこらへんだよ?えっと・・・あ、あそこの火柱が元々いた場所か?そうすっと・・・あっちか?あっちに行けばみんなと合流できんのか?」
リカルドは立ち上がると、日差しを遮るように額に手を当て周囲を見回した。
さっきまで戦闘をしていた場所から、数百メートルは離れている。天まで届く火柱は一目で見つかり、それを目印にクインズベリー軍の位置に検討をつけた。
「あ~あ、面倒くせぇけど行くしかねぇよな?みんな俺らがここにいるって知るわけねぇし。いや、ジーンかケイトがサーチ使えばいいんじゃね?・・・うん、そうだよな?がんばった俺がわざわざ歩く事なくね?あっちから迎えに来んのが礼儀じゃんよ」
一人でぶつぶつ言っていると、ふいに背後から感じた視線にリカルドは振り返った。
「・・・・・っ!」
ハンターとして育てられたリカルドは、レイジェスの誰よりも目が良い。
だからこそ、100メートル以上離れている樹の上から、こちらを見るその女の姿を、目に映し認識する事ができた。
「ん、んだよ・・・あいつ・・・・・」
血のように真っ赤な目で、じっと自分を見つめる赤い髪の女と目が合った。
背筋が凍りつくような寒気を覚えるのは初めてだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる