文字の大きさ
大
中
小
1,143 / 1,595
1142 視線を外さずに
赤い女だった。
腰まである赤く長い髪。切れ長の瞳も血のように赤い。
装備は鉄のようだが、丸みのある肩当て、胸当て、肘から手首にかけての腕当て、膝から下の脛当て、その全てが赤かった。
そして深紅のマントを風ではためかせ、地上から10メートルはある高い樹の上から、その赤い女はリカルドとレイチェルを見つめていた。
表情は無く一切の感情は読めないが、自分とレイチェルから目を離さずに、いつまでも見つめるという行為には、ある種の執着のようなものが感じられた。
「・・・やべぇ・・・あいつ、絶対やべぇぞ・・・」
ハンターとしてのリカルドの本能が察知した。
この赤い女が何者かは分からない。だが自分達の味方ではない。そして目があっただけで、全身にかいていた汗が一気に冷える程の寒気を覚えた。
恐ろしいまでの戦闘力を秘めている事は間違いない。
だがこの赤い女は、どうやら今ここで戦う意思はないようだった。
戦うつもりであれば、すでに襲ってきているはずだからだ。しかし赤い女は一歩も動かず、同じ場所でただじっとこちらを見ているだけなのだ。
「・・・・・こねぇようだな」
目が合って数十秒は経った。だが一向に動く様子を見せない赤い女に、リカルドも少し冷静さを取り戻す事ができた。視線は切らずにゆっくりと腰を下ろし、横たわっているレイチェルの体を起こして、抱きかかえた。
その間もやはり赤い女は何も仕掛けてはこない。あくまでもこちらの動きを見ているだけである。
・・・大丈夫そうだな・・・
あの女はおそらく何もして来ない。何を考えているのか分からないが、少なくとも今、何か仕掛けてくる事はないだろう。
リカルドはレイチェルを抱きかかえながら、一歩一歩ゆっくりと後ずさった。
決して焦らず、視線も外さず、目に映る赤い女から慎重に距離を取った。
猛獣を前にしている気分だった。
今よりもずっと幼い頃、狩りに行き父とはぐれ、獰猛で巨大な熊と出くわした事がある。
一目で勝てない事は理解できた。自分の弓術なんて何の役にも立たない。戦おうなんて考えてはいけない存在だ。
どうやってここから逃げるか?生き延びる事だけを考えて、父から受けた教えの通りに行動した。
決して目を離してはいけない。
背中を向けて走り出してはいけない。
猛獣と出くわした時は刺激しないように、しかし自分を狩られるだけの弱い獲物に見せないように。
リカルドは今、子供の頃に出くわしたあの巨大熊を思い出していた。
・・・・・・レイチェルがこんな状態なのに、あんなやべぇ女を相手にできねぇ。
とにかくみんなと合流だ。幸い今ここでやろうって気はあっちもねぇようだし、このままゆっくり退けばなんとかなんだろ。
ジーン、ケイト、おめぇらさっさと探せよな?リカルドさんのピンチがさっきから続いてんだぞ?
サーチしろ!サーチ!怠けてんじゃねぇぞ!
心の中で悪態をつく。しかしごまかしきれない緊張感が、リカルドの額から冷たい汗を流させた。
100メートル以上離れているというのにリカルドは息を殺し、一歩一歩ゆっくりと足を動かし離れた。
この赤い女を、自分達と同じ人間だと思ってはいけない。
人の皮をかぶった猛獣であり、恐ろしい捕食者だ。
両者の距離は100メートル以上離れているが、赤い女がその気になれば、ほんの一瞬で詰める事ができる距離だろう。目は合ったが、興味の対象が自分達から逸れているのならば、その隙になんとか逃げればいい。
そして結論を言えば、リカルドは赤い女から逃げ切る事ができた。
だがリカルドが自分達を助けに来たカチュア達と合流した時、精神的な疲労からリカルドは崩れ落ちて、しばらく動く事ができなかった。
腰まである赤く長い髪。切れ長の瞳も血のように赤い。
装備は鉄のようだが、丸みのある肩当て、胸当て、肘から手首にかけての腕当て、膝から下の脛当て、その全てが赤かった。
そして深紅のマントを風ではためかせ、地上から10メートルはある高い樹の上から、その赤い女はリカルドとレイチェルを見つめていた。
表情は無く一切の感情は読めないが、自分とレイチェルから目を離さずに、いつまでも見つめるという行為には、ある種の執着のようなものが感じられた。
「・・・やべぇ・・・あいつ、絶対やべぇぞ・・・」
ハンターとしてのリカルドの本能が察知した。
この赤い女が何者かは分からない。だが自分達の味方ではない。そして目があっただけで、全身にかいていた汗が一気に冷える程の寒気を覚えた。
恐ろしいまでの戦闘力を秘めている事は間違いない。
だがこの赤い女は、どうやら今ここで戦う意思はないようだった。
戦うつもりであれば、すでに襲ってきているはずだからだ。しかし赤い女は一歩も動かず、同じ場所でただじっとこちらを見ているだけなのだ。
「・・・・・こねぇようだな」
目が合って数十秒は経った。だが一向に動く様子を見せない赤い女に、リカルドも少し冷静さを取り戻す事ができた。視線は切らずにゆっくりと腰を下ろし、横たわっているレイチェルの体を起こして、抱きかかえた。
その間もやはり赤い女は何も仕掛けてはこない。あくまでもこちらの動きを見ているだけである。
・・・大丈夫そうだな・・・
あの女はおそらく何もして来ない。何を考えているのか分からないが、少なくとも今、何か仕掛けてくる事はないだろう。
リカルドはレイチェルを抱きかかえながら、一歩一歩ゆっくりと後ずさった。
決して焦らず、視線も外さず、目に映る赤い女から慎重に距離を取った。
猛獣を前にしている気分だった。
今よりもずっと幼い頃、狩りに行き父とはぐれ、獰猛で巨大な熊と出くわした事がある。
一目で勝てない事は理解できた。自分の弓術なんて何の役にも立たない。戦おうなんて考えてはいけない存在だ。
どうやってここから逃げるか?生き延びる事だけを考えて、父から受けた教えの通りに行動した。
決して目を離してはいけない。
背中を向けて走り出してはいけない。
猛獣と出くわした時は刺激しないように、しかし自分を狩られるだけの弱い獲物に見せないように。
リカルドは今、子供の頃に出くわしたあの巨大熊を思い出していた。
・・・・・・レイチェルがこんな状態なのに、あんなやべぇ女を相手にできねぇ。
とにかくみんなと合流だ。幸い今ここでやろうって気はあっちもねぇようだし、このままゆっくり退けばなんとかなんだろ。
ジーン、ケイト、おめぇらさっさと探せよな?リカルドさんのピンチがさっきから続いてんだぞ?
サーチしろ!サーチ!怠けてんじゃねぇぞ!
心の中で悪態をつく。しかしごまかしきれない緊張感が、リカルドの額から冷たい汗を流させた。
100メートル以上離れているというのにリカルドは息を殺し、一歩一歩ゆっくりと足を動かし離れた。
この赤い女を、自分達と同じ人間だと思ってはいけない。
人の皮をかぶった猛獣であり、恐ろしい捕食者だ。
両者の距離は100メートル以上離れているが、赤い女がその気になれば、ほんの一瞬で詰める事ができる距離だろう。目は合ったが、興味の対象が自分達から逸れているのならば、その隙になんとか逃げればいい。
そして結論を言えば、リカルドは赤い女から逃げ切る事ができた。
だがリカルドが自分達を助けに来たカチュア達と合流した時、精神的な疲労からリカルドは崩れ落ちて、しばらく動く事ができなかった。
感想 0
あなたにおすすめの小説
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!
碧井 汐桜香子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!?
「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。
そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ!
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました
遥風 かずら冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。
追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。
やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。
虐げられた前王の子に転生しましたが、マイペースに規格外でいきます!
竜鳴躍気が付いたら転生していました。
でも王族なのに、離宮に閉じ込められたまま。学校も行けず、家庭教師もつけてもらえず、世話もされず。社交にも出られず。
何故なら、今の王様は急逝した先代の陛下……僕の父の弟だから。
王様夫婦には王子様がいて、その子が次期王太子として学校も行って、社交もしている。
僕は邪魔なんだよね。分かってる。
先代の王の子を大切に育てたけど、体が弱い出来損ないだからそのまま自分の子が跡を継ぎますってしたいんだよね。
そんなに頑張らなくても僕、王位なんていらないのに~。
だって、いつも誰かに見られていて、自分の好きなことできないんでしょ。
僕は僕の好きなことをやって生きていきたい。
従兄弟の王太子襲名の式典の日に、殺されちゃうことになったから、国を出ることにした僕。
だけど、みんな知らなかったんだ。
僕がいなくなったら困るってこと…。
帰ってきてくれって言われても、今更無理です。
2026.03.30 内容紹介一部修正
2026.04.29 内容一部修正(序盤に書いたヒロインの髪色が違うため。)
2026.05.07 思いついてしまったので完了解除
ハッカの子に転生してしまった不遇の子の話
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?