異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1182 カルロスの譲れないもの

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クインズベリー軍副団長カルロス・フォスターに呼ばれ、前に出てきた者は四人だった。

最初に名前を呼ばれたのは、一目で体力型と分かる長身でバランスの良い筋肉が付いた男。
歳は30代前半くらいだろう。落ち着いた印象がある。
この男は第一部隊、エフゲニー・ラゴフ。

黒いローブを纏った左目に眼帯の男は、名前を呼ばれると無言で前に進み出てきた。
歳は20代後半から30手前というところだろう。
この男は第二部隊、クレイグ・コンセンシオン。

青いローブを纏った長いブラウンの髪の女性は、よく通る声で返事をすると、堂々とした足取りで前に出てきた。歳は二十代前半くらいに見える。目には力があり、自分に自信を持っているようだ。
この女性は第三部隊、ニーディア・エスパーザ。

そしてまだ10代と思われる小柄な少年が進み出て来た。白いローブを着ており、手には木製の杖が握られている。その顔にはまだあどけなさが残っているが、この場で名前を呼ばれても全く臆する様子は見えなかった。
この少年は第四部隊、エリクス・スピルカ。


彼ら四人が前に並び立つと、後ろで整列する軍人達からどよめきが上がった。
どうやらこの四人は、各部隊の中核を担う者として将来を期待されているらしい。

「お前達四人をセドコン村奪還の部隊長に命ずる。そしてリーダーはエフゲニー・ラゴフ、お前だ。それぞれの部隊から十人づつ連れて、日暮れまでに敵を全滅させて来い!準備時間は十分だ、以上!」


カルロスの命令に四人は大きな声で返事をすると、すぐに踵を返してそれぞれの部隊に戻った。
作戦に同行させる部下をそれぞれ十人づつ集めるためだが、一声で志願者が集まり、カルロスの指示した十分という時間であっという間に編成を終えた。
そして部隊長四人と各部隊に十人づつ、総勢四十四人が再びカルロスの前に立ち並んだ。



「カルロス副軍団長、セドコン村奪還部隊総勢四十四名、揃いました」

先頭に立ったエフゲニー・ラゴフが落ち着いた声で報告をすると、カルロスは、うむ、と一言口にして静かに頷いた。
そして隣に立つ、赤い髪の女戦士レイチェルに視線を向けると、やや低い声で言葉を発した。

「どうだ?これが軍というものだ。規律というものが確立しているのだ。貴様らレイジェスは独立部隊ゆえの自由な動きが強みかもしれんが、視点を変えれば適当に動いているだけだ。それではまとまりというものが無くなり、統率がとれなくなる。ロブギンス軍団長は貴様らに目をかけているようだが、私は軍隊という組織の中で勝手な行動をされるのは我慢ならん。このセドコン村の奪還で我が軍の強さが分かったら、以後は軍の指揮下に入り行動には許可を求めるようにしろ」

前を向いて、黙ってカルロスの話しを聞いていたレイチェルだが、カルロスが話し終えると顔を向けて挑戦的な眼差しを向けた。

「・・・いいでしょう。私は軍の規律を乱すつもりはありません。我々レイジェスが軍の指揮下に入る事で、スムーズな統率がとれるというのであれば従います。ですが今カルロス副団長がおっしゃられたように、この戦力でセドコン村を奪還できたらです」

そう言ってレイチェルは再び視線を前方に向けた。
レイチェルの黒い瞳の先には、セドコン村奪還作戦のリーダー、エフゲニー・ラゴフが映っている。

ラゴフは表情を変える事なくレイチェルの視線を受け止めている。
だがその蒼い眼には、抑えきれない闘志の火が見えた。同じ体力型として、レイチェル・エリオットの実力を肌で感じ取っているのだ。
強者を前に戦いの本能を抑えつけている。エフゲニー・ラゴフは、静かなる顔の下に強い闘争心を持った男だった。

「・・・ほぉ、言うではないか。この四名は軍の精鋭だ、彼ら率いるこの部隊では作戦が失敗すると思っているのかね?」

「・・・そこまでは言っておりません。最優先は村の奪還であり、敵を倒す事です。それができるのであれば、私達レイジェスであろうと彼らであろうと、どっちでもいい話しです。ただ、私は彼女、ラクエル・エンリケスの実力を知っています」

カルロスの問いに答えながら、レイチェルは後ろに立つラクエルを振り返った。自然とカルロスもラクエルに目を向ける。

「ラクエルは強いです。帝国の幹部クラスとも一人で戦えるだけの実力を持っています。そのラクエルが全員で村から脱出できたのは奇跡だったと言う程なんです。敵の戦力はかなりのものだと思います。ですからもっと準備に時間をかけるべきではないでしょうか?軍は軍だけで戦うと言うのでしたらそれで構いません。ですがラクエルからは、もっと敵の情報を聞いておくべきではないですか?敵の居場所や風貌、聞いておく事はもっと沢山あると思いますよ?」

レイチェルは情報を持ち、村の地理も把握しているラクエルと共闘して敵の制圧を考えていた。

それは何も軍を軽視しての事ではない。敵は村人を全員をいっぺんに縛り付けられる、広範囲の攻撃方法を持っているのだ。ならば大勢で行くよりも少数精鋭が望ましい。だからこそのレイジェスだと考えての事だ。

だがカルロスは違う。

カルロスの言い分も理解はできる。だが軍のメンツにこだわっている節もある。
それ自体は責める事でもないし、軍人である以上当然の感情だとも思う。

だが今は自国の村が占拠されたこの状況だ。
重要な情報を持っているラクエルからは、時間をかけてでも詳しく話しを聞いておくべきである。


「必要な分はさっき聞いた。帝国軍と思われる者達が村を占拠した。そしておそらくは蔦を出す魔道具で攻撃をしてくる。これだけ分かれば十分だ。敵の正確な数は分からんが、話しを聞く限りそう多くはないようだ。十人もいないだろう、せいぜい五人かそこらだ。敵が並の相手でない事も理解はした。だがこちらも軍の精鋭を送るんだ。こいつらはやり遂げる。負ける事などない。私は自分の部下を信じる」

レイチェルに譲れないものがあるように、カルロスにも譲れないものがある。
貴様らの手は借りない。黙って見ていろ。直接言葉に出さずとも、カルロスの眼はそう言っていた。

「・・・・・分かりました。では私達はおとなしく見させてもらうとしましょう。クインズベリー軍の戦いを」

みんな、行こう。レイチェルは振り返って、自分とカルロスのやりとりを黙って見ていたラクエル達にそう告げて歩き出す。ラクエルは黙ってうなずくと、リリアとエマを促してレイチェルの後を追う。
フランクもいくらか落ち着いてきたシェリーとリズを気にかけながら、三人でゆっくりとそのあとに続いた。


レイチェルがエフゲニー・ラゴフの横を一歩通り過ぎた時、ラゴフの呟きが赤い髪を撫で耳に届いた。


「惜しいな、あんたが敵だったら遠慮なく殺(や)れたのに」

立ち止まって振り返り、レイチェルはラゴフに目を向けた。
こんな時に言う言葉ではない。その眼に怒りと軽蔑を込めて睨みつける。

強い視線をぶつけられてラゴフも振り返り、そして口の端を持ち上げて、もう一度同じ言葉を口にした。

「村の敵を排除したら、次はあんたとやりたいな」
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