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1195 任せられるチーム
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「・・・レイチェル、あの人達大丈夫かな?」
硬い声を出すアラタの視線の先には、数百メートル程先で、空高く燃え上がる火柱が映っていた。
自分達レイジェスを押さえて、軍から選ばれた四十四人の兵士達。彼らが今戦っているセドコン村で、いったい何が起きているのか?
確かめたくてもうかつには動けない。誰もが固唾を飲んで状況を見ているしかできなかった。
「・・・・・そう願いたいが、あの炎はただ事ではないぞ」
隣に立ち言葉を返すレイチェルも、状況が厳しいものだと感じ取っていた。
あの火柱がクインズベリー軍によるものか、敵側によるものかは分からない。
だがあれだけの炎だ・・・どちらにせよ、多数の犠牲者が出ているのではないか?
そして自分達レイジェスよりも、軍の人間の方が駆けつけたい気持ちは強いだろう。
だが状況が分からないまま気持ちだけで先走っては、不要な犠牲を出す恐れもある。誰かが報せに戻ってくる可能性もある。軍の上層部は、しばしの間はここで状況を見ている事を選んだ。
ラゴフ達がセドコン村に向かった時、レイチェルはこの戦いで分が悪いのは、奪還部隊の方だと見ていた。
彼らを侮っているわけではない。だが帝国軍が掌握した村へ攻め込むのは、何が待っているか分からない危険なものだ。現に蔦という罠が張られている。
そして敵の罠を回避できたとしても、相手はほんの数人で村に居座っているのだ。
それはつまり、それだけ自信のある者達という事になる。
数で上回っていても諸々の条件を考えれば、分が悪いのはこちらではないか?
そして今、その予感が現実のものになってしまったかもしれない。レイチェルはそう思っていた。
「・・・ん?あ!・・・おいおい兄ちゃん!誰か来るぞ!」
レイチェルが嫌な予感に表情を曇らせたその時、眉の上に手を当て、遠くを見ていたリカルドが声を上げた。
レイジェスで働く前、ハンターとして狩りを生業にしていたリカルドは、他のメンバーよりもずっと目が良い。数百メートル先の人影を捉え、興奮したようにアラタの背中をバシバシと叩く!
「痛ってぇ!おいリカルド叩くなよ!」
あまりの痛さにアラタが抗議するが、逆にリカルドは不機嫌そうに口を曲げて、前方を指差した。
「あ?んだよ、人がせっかく教えてやったのに。おら、あそこに人がいんだろ?こっちに走って来てんぞ」
「え?人って・・・ん?」
リカルドの指先を追って目を凝らすと、確かに誰かが走って来ているようだ。
ぼんやりと姿形が見えて来ると、それが女性であり、手には杖らしき物を持っている事も分かってきた。
そして雪に足を取られながらも、がむしゃらなくらい必死に走っているように見える。
「あれは・・・確か、ニーディアと言ったか?奪還部隊の一人だ、・・・だが・・・」
レイチェルはニーディアの姿を認めると、硬い声で言葉を続けた。
「彼女一人のようだな・・・他には誰もいないようだぞ」
ニーディア・エスパーザは軍に合流すると、倒れ込むようにしてその場に両手と膝を着いた。
よほど急いで来たのか呼吸は大きく乱れていて、すぐには話せそうにない。
だが、たった一人で戻ってきた事、そして村で轟々と立ち昇る火柱、これらがクインズベリー軍にとって、良くない報せだという事は誰もが察していた。
大丈夫か!?
なにがあった!?
駆け寄った兵士達が口々に言葉をかける中、まだ立ち上がれないニーディアの前に立ったのは、クインズベリー軍副団長、カルロス・フォスターだった。
「ニーディア・・・お前、一人か?」
すでにカルロスも分かってはいるのだろう。だが感情を押し殺すようにして発したその声からは、一縷(いちる)の望みを懸けているようにも聞こえた。
まだ呼吸は落ち着かないが、ニーディアは頭の上にかけられた声に顔を上げた。
そしてカルロスの目を真っすぐに見つめ、首を縦に振った。
「・・・はい・・・生き残ったのは、私一人です・・・」
ニーディアはそのまま、エリクスの伝授の杖で得た情報を話した。
ラゴフ、クレイグ、エリクス、仲間達がどう戦いどのように散っていったのか。
そして敵の恐るべき能力・・・・・
これらを全て話し終えた時、ニーディアを囲んでいた兵士達の間には重い沈黙が漂っていた。
カルロス・フォスターもまた、軍の若きエリート達がほとんど何もできないまま倒された事にショックを受け、口を閉ざしている。
「カルロス、こりゃあもう認めるしかねぇだろうな」
沈黙を破ったのは、後ろから聞こえた野太く重い声だった。
間違えるはずもないその声に振り返ると、クインズベリー軍軍団長のバーナード・ロブギンスが、真っ直ぐに歩いて来た。
ニーディアの話しを聞くために兵達が密集していたが、バーナードの姿を見るなり、一瞬のうちに左右に分かれて道を開ける。
「ロブギンス団長・・・・・」
「カルロス、お前が副団長になって十年ってとこか?お前は頭は固いが、これまでずっと国のために信念を持ってやってきたのは分かる。だから俺も今回は口を出さねぇで、お前の思う通りにやらせてみた。その結果がこれだ、生還者一名、大事な部下を四十三人も失った」
ロブギンスの眼光がカルロスを射抜いた。
「うっ・・・」
齢七十を迎えても、いまだ第一線に立つバーナードの睨みは鋭く強く、カルロスに一切弁解する事を許さなかった。
「カルロス、お前だけを責めるつもりはない。お前に任せたワシの責任でもある。だからこそもう一度言うが、もう認めるしかねぇぞ?敵がチームで来るんならこっちもチームだ。そして今ここで一番動けるチームって言やぁ・・・」
ロブギンスはそこで言葉を止めると、赤い髪の女戦士に顔を向けた。
「レイチェル・エリオット、お前達レイジェスにセドコン村奪還を任せたいんだが、引き受けてくれるか?」
ロブギンスの視線を正面から受け止めて、レイジェスのリーダー、レイチェル・エリオットはしかと頷いた。
「はい、お任せください。我々レイジェスがセドコン村を奪還してみせます」
硬い声を出すアラタの視線の先には、数百メートル程先で、空高く燃え上がる火柱が映っていた。
自分達レイジェスを押さえて、軍から選ばれた四十四人の兵士達。彼らが今戦っているセドコン村で、いったい何が起きているのか?
確かめたくてもうかつには動けない。誰もが固唾を飲んで状況を見ているしかできなかった。
「・・・・・そう願いたいが、あの炎はただ事ではないぞ」
隣に立ち言葉を返すレイチェルも、状況が厳しいものだと感じ取っていた。
あの火柱がクインズベリー軍によるものか、敵側によるものかは分からない。
だがあれだけの炎だ・・・どちらにせよ、多数の犠牲者が出ているのではないか?
そして自分達レイジェスよりも、軍の人間の方が駆けつけたい気持ちは強いだろう。
だが状況が分からないまま気持ちだけで先走っては、不要な犠牲を出す恐れもある。誰かが報せに戻ってくる可能性もある。軍の上層部は、しばしの間はここで状況を見ている事を選んだ。
ラゴフ達がセドコン村に向かった時、レイチェルはこの戦いで分が悪いのは、奪還部隊の方だと見ていた。
彼らを侮っているわけではない。だが帝国軍が掌握した村へ攻め込むのは、何が待っているか分からない危険なものだ。現に蔦という罠が張られている。
そして敵の罠を回避できたとしても、相手はほんの数人で村に居座っているのだ。
それはつまり、それだけ自信のある者達という事になる。
数で上回っていても諸々の条件を考えれば、分が悪いのはこちらではないか?
そして今、その予感が現実のものになってしまったかもしれない。レイチェルはそう思っていた。
「・・・ん?あ!・・・おいおい兄ちゃん!誰か来るぞ!」
レイチェルが嫌な予感に表情を曇らせたその時、眉の上に手を当て、遠くを見ていたリカルドが声を上げた。
レイジェスで働く前、ハンターとして狩りを生業にしていたリカルドは、他のメンバーよりもずっと目が良い。数百メートル先の人影を捉え、興奮したようにアラタの背中をバシバシと叩く!
「痛ってぇ!おいリカルド叩くなよ!」
あまりの痛さにアラタが抗議するが、逆にリカルドは不機嫌そうに口を曲げて、前方を指差した。
「あ?んだよ、人がせっかく教えてやったのに。おら、あそこに人がいんだろ?こっちに走って来てんぞ」
「え?人って・・・ん?」
リカルドの指先を追って目を凝らすと、確かに誰かが走って来ているようだ。
ぼんやりと姿形が見えて来ると、それが女性であり、手には杖らしき物を持っている事も分かってきた。
そして雪に足を取られながらも、がむしゃらなくらい必死に走っているように見える。
「あれは・・・確か、ニーディアと言ったか?奪還部隊の一人だ、・・・だが・・・」
レイチェルはニーディアの姿を認めると、硬い声で言葉を続けた。
「彼女一人のようだな・・・他には誰もいないようだぞ」
ニーディア・エスパーザは軍に合流すると、倒れ込むようにしてその場に両手と膝を着いた。
よほど急いで来たのか呼吸は大きく乱れていて、すぐには話せそうにない。
だが、たった一人で戻ってきた事、そして村で轟々と立ち昇る火柱、これらがクインズベリー軍にとって、良くない報せだという事は誰もが察していた。
大丈夫か!?
なにがあった!?
駆け寄った兵士達が口々に言葉をかける中、まだ立ち上がれないニーディアの前に立ったのは、クインズベリー軍副団長、カルロス・フォスターだった。
「ニーディア・・・お前、一人か?」
すでにカルロスも分かってはいるのだろう。だが感情を押し殺すようにして発したその声からは、一縷(いちる)の望みを懸けているようにも聞こえた。
まだ呼吸は落ち着かないが、ニーディアは頭の上にかけられた声に顔を上げた。
そしてカルロスの目を真っすぐに見つめ、首を縦に振った。
「・・・はい・・・生き残ったのは、私一人です・・・」
ニーディアはそのまま、エリクスの伝授の杖で得た情報を話した。
ラゴフ、クレイグ、エリクス、仲間達がどう戦いどのように散っていったのか。
そして敵の恐るべき能力・・・・・
これらを全て話し終えた時、ニーディアを囲んでいた兵士達の間には重い沈黙が漂っていた。
カルロス・フォスターもまた、軍の若きエリート達がほとんど何もできないまま倒された事にショックを受け、口を閉ざしている。
「カルロス、こりゃあもう認めるしかねぇだろうな」
沈黙を破ったのは、後ろから聞こえた野太く重い声だった。
間違えるはずもないその声に振り返ると、クインズベリー軍軍団長のバーナード・ロブギンスが、真っ直ぐに歩いて来た。
ニーディアの話しを聞くために兵達が密集していたが、バーナードの姿を見るなり、一瞬のうちに左右に分かれて道を開ける。
「ロブギンス団長・・・・・」
「カルロス、お前が副団長になって十年ってとこか?お前は頭は固いが、これまでずっと国のために信念を持ってやってきたのは分かる。だから俺も今回は口を出さねぇで、お前の思う通りにやらせてみた。その結果がこれだ、生還者一名、大事な部下を四十三人も失った」
ロブギンスの眼光がカルロスを射抜いた。
「うっ・・・」
齢七十を迎えても、いまだ第一線に立つバーナードの睨みは鋭く強く、カルロスに一切弁解する事を許さなかった。
「カルロス、お前だけを責めるつもりはない。お前に任せたワシの責任でもある。だからこそもう一度言うが、もう認めるしかねぇぞ?敵がチームで来るんならこっちもチームだ。そして今ここで一番動けるチームって言やぁ・・・」
ロブギンスはそこで言葉を止めると、赤い髪の女戦士に顔を向けた。
「レイチェル・エリオット、お前達レイジェスにセドコン村奪還を任せたいんだが、引き受けてくれるか?」
ロブギンスの視線を正面から受け止めて、レイジェスのリーダー、レイチェル・エリオットはしかと頷いた。
「はい、お任せください。我々レイジェスがセドコン村を奪還してみせます」
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