1,201 / 1,560
1200 自信に満ちた言葉
しおりを挟む
「ニーディ・・・・・」
レイチェルは声をかけようとして止めた。
一目で分かった。
伝授の杖を両手で握り、瞳を閉じているニーディアは、すでに全神経を集中させて敵の蔦を封じているのだ。
体力型のレイチェルでも、ニーディアの体から発せられている魔力が、恐ろしい程に研ぎ澄まされている事は分かった。
今ニーディアは、蜘蛛の巣のように細かく、そして広範囲に張り巡らされている蔦の魔力を追っているのだ。
地中の魔力は肉眼で捉える事はできない。
そのためニーディアは、微かに感じ取れる敵の魔力を己の魔力で追尾し、そしてその一本一本に自分の魔力を絡めて封じている。
それは針の穴を通すどころではない集中力を要求される技であり、うかつに声をかけてニーディアの精神を乱してはならない。
「みんな、行こう」
振り返ったレイチェルの顔つきは、すでに戦士のものだった。
一歩進めばそこはもはや戦場である。
ともにここまで来た仲間達も、ピリピリとした空気を感じ取り表情が引き締まった。
レイチェル、アゲハ、リカルド、ミゼル、ジーン、ユーリ、ラクエル、七人はそれぞれ視線を合わせると、意思を確かめるように大きく頷いた。
そしてレイチェルを先頭にセドコン村へと入って行った。
「・・・へぇ、本当に蔦が出てこないんだ」
村へ入りしばらく歩くと、ラクエルが辺りを見回しながら呟いた。
蔦が出てこないという事は、ニーディアが押さえ込んでいるという事である。ラクエルもニーディアを疑っていたわけではないが、実際に蔦が出てこないところを見ると、驚きと同時に感心するものだった。
「そう言えばあんた、実際に蔦に追いかけられたんだっけ?」
ラクエルの隣を歩いていたアゲハが、その小さな一人言を拾って問いかけた。
「そうそう、地面からブワァーって感じでめっちゃ出てきたんだよね。あれヤバイよ、超気持ち悪いから」
顔をしかめて心底嫌そうに説明するラクエルを見て、アゲハはおかしくなって笑いを堪えるために口を押えた。
「ぷっ・・・ちょっ、笑わせるなって!まったく・・・あんた面白いね」
アゲハがラクエルに笑いかけると、ラクエルも、そう?と言って笑い返した。
いつ敵の襲撃があるか分からない。だから周囲への警戒を切らさず気を張り続けている。
そんな状況で気が緩んでいるように見えるが、ラクエルにとってはこれが自然体である。適度な緊張感はもっており、決して油断をしているわけではない。
「おいおい、おしゃべりはそのくらいにしておけよ?」
アゲハとラクエルの話しを止めたのは、後ろを歩いていたミゼルだった。
振り返る二人に、前を見ろと言うように右手を伸ばして指で差し示す。
アゲハとラクエルがミゼルの指先を追うと、数十メートル程先に、太い氷の柱が見えた。
家屋が立ち並んでいる隙間から、少し見え隠れするくらいだったが、思い当たる事があった。
「・・・あれって、もしかして昨日の火柱?」
アゲハが口にした疑問にミゼルが答える。
「ああ、間違いないだろう。火柱が立ち昇って少ししたら、突然凍りついただろ?それでそのまま砕け散ったから、その後は気にしないでいたが・・・まぁこの寒さだし、まだあれだけ形を残してたんだな」
それはクレイグの魔道具、赤口の石によって起こされた火柱だった。
クレイグがハビエル達を道連れにしようと、赤口の石を使い自爆したのだが、ハビエルの魔力はクレイグの想像をはるかに上回っていた。
風魔法による防御で全員を護りきり、その後氷の魔力で巨大な火柱を一瞬で凍りつかせたのだ。
今ミゼル達が目にしているのは、ハビエルが凍らせた火柱だったものである。
「本当にヤバそうな相手だね。ニーディアから聞いたのは、敵のボスが黒魔法使い、そして鎖鎌を使う体力型と青魔法使い、そして蔦の魔道具を使う女魔法使いの全部で四人。私達は七人だから数の上では有利だけど、とにかく敵のボスが危険だからチームで戦っていこう」
アゲハに限った事ではないが、体力型は魔力を感知する事が不得手である。
だがそんなアゲハでも、昨日見たあの巨大な火柱が、一瞬で凍りついた事がどれほど強大な魔力なのかは想像に易い。
それはラクエルもレイチェルもリカルドも同じだった。
「アゲハの言う通りだ。昨日打ち合わせた通りチームで戦うんだ。一人一人自分の役割を果たせば絶対に勝てる。いいか、もう一度言うぞ、私達は絶対に勝てる」
レイチェルの言葉は静かだがとても力強かった。
絶対に勝てる。その言葉がそれぞれの胸に刻み込まれたその時、風を切る鋭い音とともに上空から何かが投げ込まれた!
「ッ!?後ろに飛・・・」
ソレに気づいたレイチェルが声を上げようとしたその時、青く輝く結界がソレを弾いた。
「ふー・・・いきなりずいぶんな挨拶だね」
耳に痛い金属音を響かせ、宙に舞った鉄の鎖を見て、ジーンは小さく息を吐いた。
そして顔を上げると、正面の家の屋根に立つ赤茶色の髪の男を睨みつけた。
「へぇ、やるじゃないか。今のによく反応できたな・・・でも」
右手を引いて弾かれた鎖を手元に戻すと、イサック・クルゾンはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ちゃちな結界なんて、すぐに壊してやるよ」
イサックは右手を頭上に振り上げると、鎖分銅を高速で回しだした!
「やわな鎖だね?そんなもので僕の結界は壊せないよ」
返すジーンの言葉には、自信が満ちていた。
レイチェルは声をかけようとして止めた。
一目で分かった。
伝授の杖を両手で握り、瞳を閉じているニーディアは、すでに全神経を集中させて敵の蔦を封じているのだ。
体力型のレイチェルでも、ニーディアの体から発せられている魔力が、恐ろしい程に研ぎ澄まされている事は分かった。
今ニーディアは、蜘蛛の巣のように細かく、そして広範囲に張り巡らされている蔦の魔力を追っているのだ。
地中の魔力は肉眼で捉える事はできない。
そのためニーディアは、微かに感じ取れる敵の魔力を己の魔力で追尾し、そしてその一本一本に自分の魔力を絡めて封じている。
それは針の穴を通すどころではない集中力を要求される技であり、うかつに声をかけてニーディアの精神を乱してはならない。
「みんな、行こう」
振り返ったレイチェルの顔つきは、すでに戦士のものだった。
一歩進めばそこはもはや戦場である。
ともにここまで来た仲間達も、ピリピリとした空気を感じ取り表情が引き締まった。
レイチェル、アゲハ、リカルド、ミゼル、ジーン、ユーリ、ラクエル、七人はそれぞれ視線を合わせると、意思を確かめるように大きく頷いた。
そしてレイチェルを先頭にセドコン村へと入って行った。
「・・・へぇ、本当に蔦が出てこないんだ」
村へ入りしばらく歩くと、ラクエルが辺りを見回しながら呟いた。
蔦が出てこないという事は、ニーディアが押さえ込んでいるという事である。ラクエルもニーディアを疑っていたわけではないが、実際に蔦が出てこないところを見ると、驚きと同時に感心するものだった。
「そう言えばあんた、実際に蔦に追いかけられたんだっけ?」
ラクエルの隣を歩いていたアゲハが、その小さな一人言を拾って問いかけた。
「そうそう、地面からブワァーって感じでめっちゃ出てきたんだよね。あれヤバイよ、超気持ち悪いから」
顔をしかめて心底嫌そうに説明するラクエルを見て、アゲハはおかしくなって笑いを堪えるために口を押えた。
「ぷっ・・・ちょっ、笑わせるなって!まったく・・・あんた面白いね」
アゲハがラクエルに笑いかけると、ラクエルも、そう?と言って笑い返した。
いつ敵の襲撃があるか分からない。だから周囲への警戒を切らさず気を張り続けている。
そんな状況で気が緩んでいるように見えるが、ラクエルにとってはこれが自然体である。適度な緊張感はもっており、決して油断をしているわけではない。
「おいおい、おしゃべりはそのくらいにしておけよ?」
アゲハとラクエルの話しを止めたのは、後ろを歩いていたミゼルだった。
振り返る二人に、前を見ろと言うように右手を伸ばして指で差し示す。
アゲハとラクエルがミゼルの指先を追うと、数十メートル程先に、太い氷の柱が見えた。
家屋が立ち並んでいる隙間から、少し見え隠れするくらいだったが、思い当たる事があった。
「・・・あれって、もしかして昨日の火柱?」
アゲハが口にした疑問にミゼルが答える。
「ああ、間違いないだろう。火柱が立ち昇って少ししたら、突然凍りついただろ?それでそのまま砕け散ったから、その後は気にしないでいたが・・・まぁこの寒さだし、まだあれだけ形を残してたんだな」
それはクレイグの魔道具、赤口の石によって起こされた火柱だった。
クレイグがハビエル達を道連れにしようと、赤口の石を使い自爆したのだが、ハビエルの魔力はクレイグの想像をはるかに上回っていた。
風魔法による防御で全員を護りきり、その後氷の魔力で巨大な火柱を一瞬で凍りつかせたのだ。
今ミゼル達が目にしているのは、ハビエルが凍らせた火柱だったものである。
「本当にヤバそうな相手だね。ニーディアから聞いたのは、敵のボスが黒魔法使い、そして鎖鎌を使う体力型と青魔法使い、そして蔦の魔道具を使う女魔法使いの全部で四人。私達は七人だから数の上では有利だけど、とにかく敵のボスが危険だからチームで戦っていこう」
アゲハに限った事ではないが、体力型は魔力を感知する事が不得手である。
だがそんなアゲハでも、昨日見たあの巨大な火柱が、一瞬で凍りついた事がどれほど強大な魔力なのかは想像に易い。
それはラクエルもレイチェルもリカルドも同じだった。
「アゲハの言う通りだ。昨日打ち合わせた通りチームで戦うんだ。一人一人自分の役割を果たせば絶対に勝てる。いいか、もう一度言うぞ、私達は絶対に勝てる」
レイチェルの言葉は静かだがとても力強かった。
絶対に勝てる。その言葉がそれぞれの胸に刻み込まれたその時、風を切る鋭い音とともに上空から何かが投げ込まれた!
「ッ!?後ろに飛・・・」
ソレに気づいたレイチェルが声を上げようとしたその時、青く輝く結界がソレを弾いた。
「ふー・・・いきなりずいぶんな挨拶だね」
耳に痛い金属音を響かせ、宙に舞った鉄の鎖を見て、ジーンは小さく息を吐いた。
そして顔を上げると、正面の家の屋根に立つ赤茶色の髪の男を睨みつけた。
「へぇ、やるじゃないか。今のによく反応できたな・・・でも」
右手を引いて弾かれた鎖を手元に戻すと、イサック・クルゾンはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ちゃちな結界なんて、すぐに壊してやるよ」
イサックは右手を頭上に振り上げると、鎖分銅を高速で回しだした!
「やわな鎖だね?そんなもので僕の結界は壊せないよ」
返すジーンの言葉には、自信が満ちていた。
0
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる