1,293 / 1,560
1292 いつか見た景色
しおりを挟む
中間地点インターバウルを出立したアラタ達は、帝国の北側に位置するユナニマス大川まで辿り着いた。
そこは一帯が砂漠であるが、雨の多い南のリングマガ湿地帯からの供給によって流水を保持し、砂漠地帯を横断する形で河川ができた。それが今クインズベリー軍の目の前に広がる、ユナニマス大川である。
「うわぁ、これがユナニマス大川?でっけぇなぁ・・・」
確かに川なのだろうが、川というには大きすぎる。向こう岸までどのくらいの距離があるんだ?
100や200メートルどころではない。700~800?いや1000メートル以上あるんじゃないのか?
川の全長だっていったい何キロある?ぐるりと見回しても端から端がまったく見えない。
日本にいた時にテレビで見た、外国の川を思い出した。確かアフリカだったかな?こんな大きな川を見た覚えがある。記憶をたどっていると、隣に立つカチュアが腕をつついて来た。
「アラタ君、また考え事してるね?」
優し気に、でも少しだけ意地悪そうに俺を見るカチュアに、ポリポリと指先で頬をかいて言葉を返す。
「あ、ごめん、日本にいた時にもこんな川見た事あったなって思って。そこは観光地になっててさ、でかい船に乗って景色を見ながら食事したり、船内の娯楽施設で楽しく過ごすみたいなんだ。金持ちしか行けないから、俺はテレビでしか見た事ないけどね」
「テレビ?あ、それって前にアラタ君が話してくれた、遠くの国を映して見せたり、歌が流れて来る箱だっけ?」
「うん、そうそう。誰にも言った事無いんだけど、ああいう船の旅って、実は少し憧れがあったんだ。そんな豪華じゃなくていいんだけど、のんびりと船の上でさ、空とか景色を見ながら風を感じるのって、すごい気持ち良いんだろなって思って・・・」
昔テレビで見た船の旅・・・別に外国じゃなくていいんだ。青森から北海道までフェリーで行って、数日観光して帰るくらいで。
実際一人旅の資金くらいは貯まっていた。俺は実家に住んでいたし、趣味もなかったからお金を使う物が無かったからな。
けれど行かなかった。
「・・・日本にいた時、行っておけば良かったかな・・・・・でもあの時はなんて言うか・・・行きたいけど行きたくない・・・うん、なんか俺意味分かんない事言ってるよね、ははは・・・」
自分の感情が分からない。ただなぜか寂しくてやるせない気持ちになって、それをごまかすように曖昧に笑うと、カチュアは俺の手をとって優しく微笑んだ。
「じゃあ、私と一緒に行こうよ。この戦争が終わったらロンズデールに行って、船を借りていろんな所に行こうよ。新婚旅行まだ行ってなかったもんね、私、アラタ君と船旅がしたい!」
「カチュア・・・・・」
陽の光を浴びてキラキラと輝くオレンジ色の髪。俺を見つめる優しい瞳。
カチュアの笑顔を見ていると、自分の中のどうしようもない嫌な気持ち・・・卑屈のようなものがスッと消えていった。
あ・・・そうか、今分かった・・・・・
「・・・うん、カチュア、一緒に行こう。俺もカチュアと行きたい」
「うん!約束だよ!」
俺はずっと寂しかったんだ。日本にいた時からずっと・・・・・
一人旅に行かなかったのも、行けばきっと孤独を目の当たりにしてしまう。だからまた今度とか、そのうちとか、適当に理由をつけて行かなかった、行こうとしなかったんだ。
村戸さんも弥生さんも大切な人だけど、二人とも尊敬する先輩、兄や姉に近い存在だった。
俺には自分だけを見てくれる人がいなかった。
だから俺はずっと・・・・・
「ありがとう、カチュア」
「ふふふ、なんでお礼なの?私はアラタ君と一緒に行きたいから行こうって言ったんだよ?私達夫婦なんだから、これからもずっと一緒なんだからね」
カチュア・・・ありがとう。俺、カチュアと結婚できて本当に幸せだよ。
今は戦時中だ。だからこういう会話は不謹慎かもしれない。
けれど俺は、絶対に生きて帰るという気持ちがより強くなった。
俺は国のために戦うなんて立派な志は持っていない。俺は、そう・・・カチュアのために、愛する妻とこれからも生きていくために戦うんだ。そして絶対に生きて帰る。
「おーい、アラやん、カッちゃん、今から最後の打ち合わせやんぞ、いちゃついてねぇでこっち来いよ」
少し離れた場所で、ジャレットさんが手を振っている。
シルヴィアさんもジーンも、レイジェスの仲間達みんなが、俺とカチュアに顔を向けて優しく笑っている。
「アラタくーん、カチュア、早くしないと怒られちゃうわよー」
「あ、今行きまーす!アラタ君、行こう!」
シルヴィアさんの呼びかけに、カチュアが俺の手を取って走り出す。
「うん!行こう、カチュア!」
この世界でできた、かけがえのない仲間達の元へ・・・・・
北のユナニマス大川での戦いが始まる。
そこは一帯が砂漠であるが、雨の多い南のリングマガ湿地帯からの供給によって流水を保持し、砂漠地帯を横断する形で河川ができた。それが今クインズベリー軍の目の前に広がる、ユナニマス大川である。
「うわぁ、これがユナニマス大川?でっけぇなぁ・・・」
確かに川なのだろうが、川というには大きすぎる。向こう岸までどのくらいの距離があるんだ?
100や200メートルどころではない。700~800?いや1000メートル以上あるんじゃないのか?
川の全長だっていったい何キロある?ぐるりと見回しても端から端がまったく見えない。
日本にいた時にテレビで見た、外国の川を思い出した。確かアフリカだったかな?こんな大きな川を見た覚えがある。記憶をたどっていると、隣に立つカチュアが腕をつついて来た。
「アラタ君、また考え事してるね?」
優し気に、でも少しだけ意地悪そうに俺を見るカチュアに、ポリポリと指先で頬をかいて言葉を返す。
「あ、ごめん、日本にいた時にもこんな川見た事あったなって思って。そこは観光地になっててさ、でかい船に乗って景色を見ながら食事したり、船内の娯楽施設で楽しく過ごすみたいなんだ。金持ちしか行けないから、俺はテレビでしか見た事ないけどね」
「テレビ?あ、それって前にアラタ君が話してくれた、遠くの国を映して見せたり、歌が流れて来る箱だっけ?」
「うん、そうそう。誰にも言った事無いんだけど、ああいう船の旅って、実は少し憧れがあったんだ。そんな豪華じゃなくていいんだけど、のんびりと船の上でさ、空とか景色を見ながら風を感じるのって、すごい気持ち良いんだろなって思って・・・」
昔テレビで見た船の旅・・・別に外国じゃなくていいんだ。青森から北海道までフェリーで行って、数日観光して帰るくらいで。
実際一人旅の資金くらいは貯まっていた。俺は実家に住んでいたし、趣味もなかったからお金を使う物が無かったからな。
けれど行かなかった。
「・・・日本にいた時、行っておけば良かったかな・・・・・でもあの時はなんて言うか・・・行きたいけど行きたくない・・・うん、なんか俺意味分かんない事言ってるよね、ははは・・・」
自分の感情が分からない。ただなぜか寂しくてやるせない気持ちになって、それをごまかすように曖昧に笑うと、カチュアは俺の手をとって優しく微笑んだ。
「じゃあ、私と一緒に行こうよ。この戦争が終わったらロンズデールに行って、船を借りていろんな所に行こうよ。新婚旅行まだ行ってなかったもんね、私、アラタ君と船旅がしたい!」
「カチュア・・・・・」
陽の光を浴びてキラキラと輝くオレンジ色の髪。俺を見つめる優しい瞳。
カチュアの笑顔を見ていると、自分の中のどうしようもない嫌な気持ち・・・卑屈のようなものがスッと消えていった。
あ・・・そうか、今分かった・・・・・
「・・・うん、カチュア、一緒に行こう。俺もカチュアと行きたい」
「うん!約束だよ!」
俺はずっと寂しかったんだ。日本にいた時からずっと・・・・・
一人旅に行かなかったのも、行けばきっと孤独を目の当たりにしてしまう。だからまた今度とか、そのうちとか、適当に理由をつけて行かなかった、行こうとしなかったんだ。
村戸さんも弥生さんも大切な人だけど、二人とも尊敬する先輩、兄や姉に近い存在だった。
俺には自分だけを見てくれる人がいなかった。
だから俺はずっと・・・・・
「ありがとう、カチュア」
「ふふふ、なんでお礼なの?私はアラタ君と一緒に行きたいから行こうって言ったんだよ?私達夫婦なんだから、これからもずっと一緒なんだからね」
カチュア・・・ありがとう。俺、カチュアと結婚できて本当に幸せだよ。
今は戦時中だ。だからこういう会話は不謹慎かもしれない。
けれど俺は、絶対に生きて帰るという気持ちがより強くなった。
俺は国のために戦うなんて立派な志は持っていない。俺は、そう・・・カチュアのために、愛する妻とこれからも生きていくために戦うんだ。そして絶対に生きて帰る。
「おーい、アラやん、カッちゃん、今から最後の打ち合わせやんぞ、いちゃついてねぇでこっち来いよ」
少し離れた場所で、ジャレットさんが手を振っている。
シルヴィアさんもジーンも、レイジェスの仲間達みんなが、俺とカチュアに顔を向けて優しく笑っている。
「アラタくーん、カチュア、早くしないと怒られちゃうわよー」
「あ、今行きまーす!アラタ君、行こう!」
シルヴィアさんの呼びかけに、カチュアが俺の手を取って走り出す。
「うん!行こう、カチュア!」
この世界でできた、かけがえのない仲間達の元へ・・・・・
北のユナニマス大川での戦いが始まる。
0
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる