異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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右の拳を真っすぐに突き出す。
反応ができなかった帝国の黒魔法使いは顎を打ち抜かれ、そのまま体を支える糸が切れたように崩れ落ちた。
死んではいない。けれど拳に残る感触から、顎の骨を砕いた事は間違いない。
この戦闘中にこの魔法使いが復帰する事はないだろう。

そのまま視線の先に映った黒魔法使いに距離を詰め、左のボディブローを叩き込む。次いで後ろから飛んで来た火球を察知し、跳び上がって躱した。

「上だ!撃てぇぇぇーーーーーッ!」

黒魔法使いの一人が叫ぶと、一斉に手の平が向けられた。
刺氷弾、ウインドカッター、爆裂弾、火球、四属性の魔法が俺に向かって撃ち放たれる。

これは予想通りだ。上に跳べば必ず狙い撃ちにされる。
だからこそ躱し防ぐ事ができる。

跳び上がった時の反動を生かして体を横に回転させる。これだけで攻撃魔法の半分は躱す事ができた。
そして躱しきれなかった残りの半分は、一瞬だけ光を纏ったこの拳で叩き落す!

回転力をそのまま生かして振るった拳で氷の槍を粉砕し、爆裂弾を払い飛ばす。
火球を殴り散らし、風の刃を正面から打ち切った。

光の力のコントロールは、店長との修行でずいぶん上達したと思う。
今の俺は初級魔法程度なら難なく迎撃できる。

そしてそれを下で見ていた帝国の黒魔法使い達は、驚きに目を開き、僅かな時間だが追撃の手を止めてしまった。魔法を弾く武器でも使っているのなら分かる。しかし初級魔法とはいえ、まさか素手で潰されるとは思わなかった。

そして黒魔法使い達が気を取り直した時にはもう遅い。

「くっ、怯むな!撃て!撃つんだ!」

「遅い!」

着地したタイミングで魔力を込めた手の平を向けられるが、黒魔法使い達が魔法を撃つよりも、俺が地面を蹴って距離を詰める方が一瞬速かった。

目の前の黒魔法使いの腹に右フックを打ち込む。
腹部を圧迫されて呼吸が止まり、そのまま意識が途切れて倒れる。

そのまま横にステップを踏み、火魔法を撃とうとしていた魔法使いの胸に右ストレートを叩き込んだ。
胸骨が砕ける感触が拳に伝わるがそのまま殴り飛ばす。魔法使いは受け身すら取れずに背中から地面に落ち、そのまま立ち上がる事はなかった。

俺は決して足を止めず、両の拳で帝国の黒魔法使い達を叩き伏せた。
一見すると敵の陣地に飛び込み、黒魔法使い達に囲まれている俺が不利に見えるだろう。
しかし何百人、何千人の黒魔法使い達が密集しているという事は、撃てば味方にも攻撃が当たってしまう。つまり同士討ちになりやすいのだ。

初級魔法程度なら相殺できるだろう。しかし中級魔法からは違う。相殺したとしても、その余波によって必ず被害を被る事になる。そしてタイミングが悪く被弾してしまえば、自軍に大きな損傷を出す事になる。
そのため帝国の黒魔法使い達は、陣地のど真ん中で暴れている俺に対して、初級魔法でなんとかするしかない状況に陥っているのだ。

しかしその初級魔法が通じず、尚且つ体力型である俺と魔法使いの身体能力の差を考えた時、この密集した状況は俺に有利に働いた。


「フッ!」

短く息を吐いて右足で地面を蹴る。目線の高さに構えた左拳で、正面の黒魔法使いの顎をかすめるように打ち抜いた。
魔法使いは呻き声さえ漏らす事ができず、一瞬にして全身から力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。

左腕を引くと同時に腰を左に回し、隣で構えていた魔法使いの顔面に右の拳を叩きこむ。

「てめぇぇぇーーーーーーッツ!」

叫び声を上げて背後から飛び掛かって来た魔法使いの右手には、圧縮された風の球がグルグルと渦巻いていた。
風の中級魔法サイクロン・プレッシャーである。
射程距離の短さゆえに中級魔法に分類されているが、その破壊力は上級魔法に匹敵する。
混戦とした状況下で、同士討ちを避けるためには最適な魔法と言えるだろう。

しかし今回に限っては最悪の一手だった。

「なにっ!?」

「フッ!」

腰を落としてサイクロン・プレッシャーを躱す。まるで後ろに目が付いているかのような動きに、黒魔法使いが驚愕した次の瞬間、アラタの左拳が深々と腹に突き刺さった。

「カァ・・・・・ッツ!」

まるで腹を貫かれたかと思う程の凄まじい一撃だった。胃が押し潰され呼吸が強制的に断ち切られる。
そのまま黒魔法使いは白目を剥いて意識を飛ばし倒れ伏した。

5~7メートル四方のリングで戦ってきたアラタは、接近戦のスペシャリストである。
そのアラタに後ろからとはいえ、声を上げて飛び掛かるなど愚策でしかなかった。


「ウオォォォォォォォーーーーーーーーッツ!」

そこからのアラタを帝国兵は止められなかった。
たった一人で帝国の黒魔法使い達を半壊にまで追い込んだ。

数百、数千人の帝国の黒魔法使いをアラタが単独で制圧できた事には、いくつかの要因がある。

まず敵の不意を突いて、集団の中に飛び込めた事が大きい。
入り込んでさえしまえば、体力型が有利になるのは必然だった。

そして今日この日まで、ウィッカーはアラタの体力向上を中心に鍛えてきた。
光の力の持続時間を延ばす事が目的だったが、その結果アラタはこれだけの数の黒魔法使いを相手にしても、戦い抜ける体力を手にしていた。

接近戦の心得のない帝国兵では止めようがなく、同士討ちを覚悟で爆裂空破弾、地氷走りも使われたが、動き続けるアラタを捉える事はできず、自軍への被害を拡大させるだけだった。


そしてアラタは見事に任務を果たした。

アラタの一撃を受けた黒魔法使い達は、そのほとんどが立ち上がる事ができなかった。
かろうじて意識を残した者も、拳一つで圧倒するアラタに再び立ち向かう勇気は持てず、戦意を喪失していた。


これでクインズベリー軍への、攻撃魔法の集中砲火は止める事ができた。

しかしここまで暴れれば、当然帝国も対策を打つ。
アラタは帝国兵達の隙をついて黒魔法兵達を倒し、そして止める事ができた。

しかしそれは後先を考えず、ただそれだけを考え行動したがゆえに成しえた事である。
アラタが黒魔法使い達を制圧した時には、すでに体力型を中心とした大勢の帝国兵達に囲まれていた。

そして・・・・・



「信じ難いが、まさかたった一人の男に、我が帝国軍がここまでやられるとはのう・・・名を聞いておこうか?」

歳の頃は70にはなっているだろう。小さくて痩せた老人だった。

鼻の下と顎から伸びる白い髭、年齢の割に頭髪量は多く、白くて長い髪の毛を一本の三つ編みにして流している。頬はこけており体はあまり丈夫そうには見えない。

しかしその眼光は鋭く、この痩せた老人のどこにそんな力があるのかと思わせる程の、異様な圧力があった。


「・・・お、お前・・・何者だ?」

「ふぉっふぉっふぉっ・・・何じゃ?名も言えんのか?しかたないのう、ならばワシから名乗ろうか」

正体不明の圧力に気おされるアラタをあざ笑うように、老人は顎の白い髭を摘みながら口を開いた。


「ワシはアーロン・カカーチェ。第六師団副団長じゃ。さっそくだが死んでもらうぞ、若いの」
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