異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,329 / 1,560

1328 拳の選択

しおりを挟む
対峙する黒髪の男の言葉に、アーロン・カカーチェの眉がピクリと上がった。

「・・・ほぅ、ワシの防御方法が分かったと?面白い事を言うな、若いの。しかしさっきも言ったが、威勢が良すぎると身を亡ぼすぞ?」

平静を装った声だが、微かな揺らぎがあった。
カカーチェの防御方法は、その仕組みを解かない限り、絶対無敵とも言えるものである。
それをたった二発の打撃で解明したと言うのだから、カカーチェがハッタリと思っても無理のない事だった。


「・・・俺はな、この二つの拳だけで戦ってきた。だから分かるんだ。この拳が感じ取ったソレがお前の謎の防御の答えだ。もう一度言うが、お前のそれはもう俺には通用しない。予告するが、次はその鼻っ柱をへし折ってやる」

そう言って黒髪の男は、血まみれの両手を顔の高さまで上げて拳を握りしめた。
拳から流れ落ちる赤い血は、手首を伝って肘まで赤く色を染める。出血量は決して少なくはない。

「ふっ、その出血でまだやる気とはな・・・いいじゃろう。そこまで大口を叩いたのだから見せてみろ!」

カカーチェの目が鋭さを増した。
アラタをギラリと睨みつけると、好きなように打って来いと言わんばかりに両手を広げた。

もっとも戦闘に向かず、肉体的強さは一般的な老人と変わらないアーロン・カカーチェが、現役のボクサーであり体力型のアラタに向って、打って来いと体を開いている。


「・・・すげぇ自信だな」

よほど自信がなければこれはできない。生きるか死ぬかの戦いで、敵に対して無防備に体を開く。
きっとこの男は今までこれで勝ち続けて来たんだ。自分が強者だと信じて疑わない。その狂気さえ感じる自尊心が、この老人を今日まで支えて来たんだ。


・・・・・俺がこれから挑むのは、この老人を形成する全てと言えるものだろう。

殴った俺の拳がダメージを受ける。
とんでもない防御だ。鉄糸のグローブが無ければ、この両手は使い物にならなくなっていたはずだ。
ここまでボロボロになってしまったのだから、もうこのグローブは使えないな・・・
けれど、このグローブのおかげで、俺の両手はまだ残っている。

ジャレットさん・・・シルヴィアさん・・・ありがとう・・・・・

おかげで俺はこの男の謎を解く事ができました。


「どうした?打って来ないのか?やはりハッタリだったわけじゃな?そうじゃろう、そうじゃろう。ワシに攻撃を通すなど誰にもできん事じゃからなぁ!」

左半身で拳を構えたきり、一向に動き出さないアラタを見て、カカーチェはあざ笑うように声を上げた。


「・・・いいや・・・今からだ。今から俺が破ってやるよ!」


そう言うなり、アラタは右足で地面を強く蹴って飛び出した。


二人はほんの五メートル程の距離で睨み合っていたが、今のアラタにとって五メートルなど一蹴りで詰める事ができる。

瞬き程の一瞬で拳の間合いに入ったアラタには、左ジャブ、左フック、右ストレート、いくつかの選択肢があった。
当てる事を優先するならば左ジャブが最も有効だろう。
ボクシング・・・いや、格闘技全般において、最速と言っていい技がジャブだからだ。

倒す事だけを考えるならば、初手右ストレートでもいいだろう。
相手は自分の攻撃に全く反応ができてないのだ。思い切り右を打てばいい。

しかし今回はカカーチェの防御を破って見せる事が第一である。
可能ならばそのまま倒してしまえばいい。しかしそれが難しいのであれば、まずはカカーチェの防御を破り、倒すための下積みを重ねる事が大事だ。

その考えで動いたアラタが選んだ拳の選択は・・・・・


「シッ!」


顔の前に出した左の拳を真っすぐに突き出す。

そう、左ジャブだった。

「ッ!?」

それを見た時、カカーチェの目が驚きに開かれた。
なぜなら、さっきまでは目で追う事もできない程に速い拳だったのだ。
しかし今は驚く程に遅い・・・そうジャブが遅かったのだ。

アラタが選んだ拳の選択は、ジャブはジャブでもゆっくりと腕を伸ばした遅い左ジャブだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...