異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,344 / 1,560

1343 奪われた意思

しおりを挟む
「クインズベリーだ!クインズベリー軍が攻めて来たぞーーーーーーーッツ!」

円で囲む帝国軍の後方から声が上がったのは、前方の黒魔法使い達がラクエルに魔法を撃った直後だった。

即座に反応した帝国兵の目には、何千何万ものクインズベリー軍が突撃をかけて来る姿だった。

シルヴィアの竜氷縛が作った氷の道を渡り、先発したアラタ達が帝国の攻撃を止めた事で、クインズベリー軍はユナニマス大川を渡る事ができたのだ。

そして上陸したクインズベリー軍は、全軍をぶつけるのみである。
さながら押し寄せる大波の如き勢いのクインズベリー軍だったが、帝国軍も数では負けていない。

ガルバンとヴァネッサ、そして副団長のアーロン・カカーチェを失った帝国軍だが、それを補うため、各部隊の隊長クラスが指揮を執り号令を出す。

「怯むな!体力型を前に黒魔法兵は援護射撃だ!クインズベリーを叩き潰せ!」

武器を持ち構えた帝国の兵達は、部隊長の指示で即座に隊列を揃えると、クインズベリー軍に真っ向からぶつかって行った!





「・・・クインズベリー・・・ユナニマス大川を渡って来たのですね」

「シャンテル、危ないよ、こっちへ」

両軍のぶつかり合いが始まると、宝飾をあしらった煌びやかな鎧で身を包んだ、精悍な顔つきの男がシャンテル・ガードナーに近づき、その肩に手を乗せ後方に下がるように促した。

「・・・ノーマン・・・あなたですね?」

シャンテルは自分の肩に置かれたノーマンの手をそっと払うと、視線を上げて咎めるようにノーマンを見た。

「え?何の事だい?」

「なぜ、黒魔法使い達に撃たせたのですか?私は指示を出していません。師団長の私を差し置いてこんな勝手な真似ができるのは、皇帝の甥であるノーマン・ブルーナー、あなただけです」

スっと視線を向けた先には、濛々と上がる土煙が映った。今しがた黒魔法使い達が一斉射撃を行った跡だ。標的は金髪の女戦士ラクエル・エンリケス。足を痛めていたラクエルには、四方八方から撃ち込まれた攻撃魔法を躱す術はなかった。


「・・・あ~、バレちゃった?でもさぁ、キミを護るためなんだよ?あんな近い距離で敵と向き合って、殺されてたかもしれないじゃないか?僕はキミのために魔法兵に指示を出したんだ。感謝してくれてもいいんじゃないかい?」

軽薄そうに笑うノーマンに、シャンテルは非難するように口調を強めた。

「私を護る?今までずっと後ろに隠れていたあなたが?ガルバンもヴァネッサも、カカーチェ叔父様も、みんなが命を賭して戦っていたのに、あなたは安全なところから指示を出しただけ。それで私に感謝しろと言うのですか?それに私の能力は知っているでしょう?この魔力がある限り、私の命を脅かせるものなんて何もありません」

そこまで一気に責め立てると、それまでヘラヘラと笑っていたノーマンの顔が凍り付いたように固まった。
そして・・・・・


「・・・ひどいな、シャンテル。それが婚約者に言う言葉かい?僕は皇帝の甥なんだ、崇高な血を持つ僕にもしもの事があったら大変だろ?そういうところ、婚約者なら気遣ってほしいな」

「・・・あなたのそういうところが嫌いです。私は、彼女ともう少し話してみたかった・・・」

「キミもそろそろ受け入れたらどうだい?僕とキミの婚約は皇帝の決めた事だ。逆らえばどうなるか分かるだろ?キミはよくてもキミの大事な白魔法兵団はどうなるのかな?賢いキミならどうすればいいか分かるだろ?」

「・・・あなた、最低です」

「おやおや、キミがそれを言うのかい?」

互いの視線が交差する。しかし嫌悪感を隠しもせずにぶつけるシャンテルに対し、ノーマンの目には立場的優位を見せる嘲笑が浮かんでいた。

「・・・まぁ、済んだ事はもういいじゃないか?それよりも・・・え?」

フッと鼻で笑いシャンテルから目を反らしたノーマンだったが、反らした先で目に映ったものに、驚きをあらわにした。

「・・・結界?どうやって・・・?」

「ノーマン?どうしたのですか・・・っ!?」

表情をこわばらせたノーマンを見て、シャンテルもその視線を追った。

無数に撃ち込まれた攻撃魔法、それによって起きた爆発による煙が風に流されると、青く輝く結界に護られたラクエルの姿が見えた。


「・・・あなた、体力型ですよね?」

結解の中のラクエルに、その問いかけが聞こえたかは分からない。
しかし結界の中で、してやったりと歯を見せて笑っているラクエルの反応を見る限り、彼女がこの結界を張ったという事で間違いはなさそうだ。
いつの間に持っていたのか、左手に握っている小さな銀板を見せつけるように前に出した。

「なんだアレ?・・・結界を作る魔道具?大障壁(だいしょうへき)か?」

「いえ、大障壁ではないようです。形は似ていますが結界の規模が小さいですね。おそらく使い捨ての魔道具です。体力型が使える魔道具は限られていますから。敵ながら用意周到ですね」

眉を顰(ひそ)めるノーマンに、シャンテルは冷静に分析した答えを提示した。
そしてその分析が合っていると教えるように、ラクエルを包み込み護っていた結界が、バラバラと崩れて消えた。


「一度だけ結界を張れる魔道具、魔障板(ましょうばん)。これがなかったらヤバかったかな・・・」

効力を失った銀版を砂の上に放ると、ラクエルは右手に握る白い刃のナイフを、シャンテルではなく、その隣に立つノーマンに差し向けた。

「・・・女、僕にナイフを向ける事がどういう意味か分かっているのか?僕はノーマン・ブルーナー、皇帝の甥だぞ?」

「だからなに?聞こえてたよ、アタシに魔法ぶっ放したのアンタの指示だってね?」

やや前傾姿勢になって左足に力を込める。
利き足ではないが、それでもラクエルのスピードなら、一瞬で距離を詰める事が可能である。

「・・・シャンテル、あの女を殺せ。僕に殺意を向けるなんて許せない」

「・・・・・」

「シャンテル、返事はどうした?立場を分かっているのか?」

僅かな迷いを見せたシャンテルに、ノーマンが苛立ちを見せる。
事実上、仲間を人質に取られているようなものなのだ。シャンテルの答えは一つしかなかった。


「・・・分かりました」


できる事ならこのクインズベリーの女性と、もっと話してみたかった。
さっき手を差し伸べられた時、ほんの少しだけ夢を見てしまった。もしあの手を取っていたら・・・・・

いえ、今更ですね・・・・・・・


私は帝国で最も多くの人を殺した女。帝国の大陸統一のために心は捨てたのです。


「死が怖くないのなら、どうぞ向かって来てください」


シャンテル・ガードナーは、ラクエルを殺す覚悟を固めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...