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1448 最後のあがき
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「ぐぅっ・・・ガハッ、・・・はぁっ!ぜぇっ!」
大きく息が上がる。口内に溜まった血を足元の泥の中に吐き捨てると、ガラハドは震える足に力を入れて、無理やり立ち上がった。
「へぇ、頑丈だな?俺がこんだけ殴ったのに、まだ立てんのかよ」
アルバレスの声には、少しの驚きが含まれていた。
自分の拳は鋼鉄以上の硬度である。一発一発がハンマーで殴りつけている事と変わらない、いやそれ以上と言っていいだろう。現に魔導剣士のアランは一発で戦闘不能に追い込まれ、アドニスは腕と肋骨をへし折られた。
そのアルバレスの拳を、ガラハドはすでに十数発受けている。
手応えで分かる。この白髪の老戦士はとっくに限界のはずだ。
なぜなら頬骨も胸骨も鎖骨も、アルバレスが拳をあてた場所はどこも骨が砕かれているのか、赤紫色に変色して腫れあがっているからだ。
「はぁっ!はぁっ!ぜぇっ・・・ぐ、うぅ、なめんじゃねぇ、勝負は、これからだ」
全身に抱えるダメージは大きく、立っている事が不思議なくらいだ。しかしこの状態でも、ガラハドの戦意は衰えていない。殴られた頬が腫れて右目は塞がっているが、開いている左目には力があり、アルバレスを睨みつける。
「そのざまでよく言うな?だったらどこまで耐えられるのか見てやるよ」
アルバレスは両の拳を打ち合わせて嗤った。
体格的にアルバレスに見劣りしない者はいないわけではない。しかし大陸最強の軍事国家であるブロートン帝国でも、アルバレスの鋼鉄の拳を、たった数発も耐えられる者がいなかった。
その意味では、このロンズデールの老戦士は十数発も耐えているのだから、賞賛ものと言ってもいい。
しかし蓄積したダメージが、限界まで達してるのは明らかだ。
あと一発、顔でも腹でも、どこにでも一発食らわせれば倒れるだろう。それはこの老戦士自身が一番よく分かっているはずだ。
そうにも関わらずに、まだ挑戦的な態度を見せる事を、勇敢と言う者もいるだろう。
しかしアルバレスにとって見れば、そんなものはただの無謀な馬鹿でしかなかった。
絶対に勝てない相手に対し、なぜ向かってくる?大人しく倒れて死んだふりでもしていれば、あるいは助かったかもしれないのに。それが戦士としての矜持とでも言うつもりか?
ならばそんなものには何の意味もないと教えてやる!戦いは圧倒的な力こそが全てだ!
「フハハハハハハーーーーーーーーッツ!」
拳を握り締めると、アルバレスは嗤いながら地面を蹴った。
「はぁ・・・ふぅ・・・」
アルバレス・・・想像以上の強さだ。
パワー自慢のこの俺が、ここまで一方的に打ちのめされるとは思わなかった。
俺との勝負は貴様の勝ちだ。それは認めてやる。
「だがな、最後のあがきはさせてもらうぞ」
ガラハドは背中に差していた、長さ1メートル程の鉄の棒を取りだした。
それは魔道具、轟爆の鉄棒、ガラハドの武器である。
先端を強く叩きつける事で爆発を起こすのだが、その威力は叩きつける強さに比例して、いくらでも上がっていく。
「馬鹿が!今更そんな棒切れで何ができるーーーーーーッツ!」
ガラハドが轟爆の鉄棒を両手で握り締めても、アルバレスは一切怯む事なく、それどころか嘲笑を浮かべて真っ直ぐに突っ込んで来る。それは己の肉体に対する絶対の自信。いかなる武器でも、自分を傷つける事はできないと確信しているからこそである。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーッツ!」
ガラハドは叫んだ。これが最後の一撃だ!
体に残った最後の力を振り絞り、ガラハドは頭上に掲げた轟爆の鉄棒を振り下ろす!
全身全霊を込めた鉄槌がアルバレスの脳天に直撃した瞬間、轟爆の鉄棒は耳をつんざく轟音を響かせ大爆発を起こした。
「ぐッーーーーーーーーーーーー!」
それは使い手であるガラハドさえも吹き飛ばす程の衝撃だった。
傷ついた体では受け身さえ満足にとれず、ガラハドは泥の上で体を転がされると、樹木に背中を強く打ち付けた。
唯一の武器である轟爆の鉄棒も、今の衝撃で落としたようだ。もっとも持っていたとしても、力を使い果たしたこの体では、もう振り回す事もできないだろう。
「ガハッ!・・・ぐ、うぅ・・・」
・・・もはや足には力が入らない。
両腕もここまでアルバレスの打撃を防御していた事で、赤紫色に腫れあがっていた。
そこに今の爆発の衝撃で手が痺れてしまい、拳も握れない。
満身創痍・・・
もうガラハドは戦えない。だが、一矢報いる事はできたはずだ。
ガラハドの全力でも、轟爆の鉄棒の一撃は、上級の爆発魔法とまではいかなかった。
しかし轟爆の鉄棒は、エネルギーを一点集中で爆発させる武器だ。いかにアルバレスが鋼鉄以上の硬さを持っていたとしても、ただではすまないはずだ。
突破口となるダメージさえ残せれば、後は仲間達がなんとかしてくれる。
そう思っていた・・・・・
「・・・・・な、に?」
濛々と立ち込める土煙の中、うっすら浮かび上がる影にガラハドは目を開いた。
「くっくっく・・・だから言っただろ?そんな棒切れで何ができるって?」
「ま、まさか・・・!」
淀みない足取りで煙の中から姿を現した男は、いまだ起き上がれずにいるガラハドを見下ろした。
轟爆の鉄の棒を叩きつけ、爆発した頭頂部の髪は、焼け焦げて散り散りになっている。だが血の一滴も流れず、ニヤリと嗤うその表情を見る限り、肉体的なダメージを負ったようには見えない。
ここまで・・・ここまで硬い体などありえるのか?
ガラハドは戦慄した。
頭部にあれだけの爆発を受けて、無傷なのか?
アドニスからも何百という爆発魔法を直撃させられていたが、それでも体の表面を焦がした程度でしかなかった。
これはもはや人間とは思えない。
ビンセントの連双斬ならば斬れると思っていたが、その判断さえ誤っていたのかもしれない。
こんなヤツに・・・本当に勝てるのか?
「やっと観念したようだな?まぁ、少しは楽しめたぜ。せめて一思いに楽にしてやるよ」
見下ろすガラハドの表情が絶望に染まり、アルバレスは右の拳を握り締めて頭上に掲げた。
鋼鉄の拳は凶器そのものである。これを振り下ろせばガラハドの頭など、簡単に砕く事ができる。
そして全精力を使い果たしたガラハドには、もはやそれを躱す事も防ぐ事もできない。
「ぐっ・・・」
ここまで、か・・・・・
「死ね」
アルバレスが拳を振り下ろしたその瞬間、背後の樹木から高速で飛び出して来た影が、アルバレスの右腕に飛びついた!
「ッ!?」
右腕に取りついた体を倒れるように前方に傾けると、重さにつられてアルバレスの体も前のめりに傾いた。
反射的に倒れないように一歩前に足を出したその時、右腕に取りついたその女は、前方に傾けた体を急激に横に回し、腕を捻りながらアルバレスを投げ飛ばした!
「ヤァッツ!」
片足が浮いた状態では、いかにニメートルの巨体でも体勢を維持などできない。
アルバレスは体を回されながら、泥の中に頭から落とされた。
アルバレスを投げ飛ばした女、ロンズデールの伝統衣装を身に纏うその女戦士は、リングマガ湿地帯攻略軍の指揮官、リンジー・ルプレクトだった。
リンジーはガラハドに振り返ると、安堵したように微笑んだ。
「ふぅ・・・間に合った。危なかったね、ガラハド」
大きく息が上がる。口内に溜まった血を足元の泥の中に吐き捨てると、ガラハドは震える足に力を入れて、無理やり立ち上がった。
「へぇ、頑丈だな?俺がこんだけ殴ったのに、まだ立てんのかよ」
アルバレスの声には、少しの驚きが含まれていた。
自分の拳は鋼鉄以上の硬度である。一発一発がハンマーで殴りつけている事と変わらない、いやそれ以上と言っていいだろう。現に魔導剣士のアランは一発で戦闘不能に追い込まれ、アドニスは腕と肋骨をへし折られた。
そのアルバレスの拳を、ガラハドはすでに十数発受けている。
手応えで分かる。この白髪の老戦士はとっくに限界のはずだ。
なぜなら頬骨も胸骨も鎖骨も、アルバレスが拳をあてた場所はどこも骨が砕かれているのか、赤紫色に変色して腫れあがっているからだ。
「はぁっ!はぁっ!ぜぇっ・・・ぐ、うぅ、なめんじゃねぇ、勝負は、これからだ」
全身に抱えるダメージは大きく、立っている事が不思議なくらいだ。しかしこの状態でも、ガラハドの戦意は衰えていない。殴られた頬が腫れて右目は塞がっているが、開いている左目には力があり、アルバレスを睨みつける。
「そのざまでよく言うな?だったらどこまで耐えられるのか見てやるよ」
アルバレスは両の拳を打ち合わせて嗤った。
体格的にアルバレスに見劣りしない者はいないわけではない。しかし大陸最強の軍事国家であるブロートン帝国でも、アルバレスの鋼鉄の拳を、たった数発も耐えられる者がいなかった。
その意味では、このロンズデールの老戦士は十数発も耐えているのだから、賞賛ものと言ってもいい。
しかし蓄積したダメージが、限界まで達してるのは明らかだ。
あと一発、顔でも腹でも、どこにでも一発食らわせれば倒れるだろう。それはこの老戦士自身が一番よく分かっているはずだ。
そうにも関わらずに、まだ挑戦的な態度を見せる事を、勇敢と言う者もいるだろう。
しかしアルバレスにとって見れば、そんなものはただの無謀な馬鹿でしかなかった。
絶対に勝てない相手に対し、なぜ向かってくる?大人しく倒れて死んだふりでもしていれば、あるいは助かったかもしれないのに。それが戦士としての矜持とでも言うつもりか?
ならばそんなものには何の意味もないと教えてやる!戦いは圧倒的な力こそが全てだ!
「フハハハハハハーーーーーーーーッツ!」
拳を握り締めると、アルバレスは嗤いながら地面を蹴った。
「はぁ・・・ふぅ・・・」
アルバレス・・・想像以上の強さだ。
パワー自慢のこの俺が、ここまで一方的に打ちのめされるとは思わなかった。
俺との勝負は貴様の勝ちだ。それは認めてやる。
「だがな、最後のあがきはさせてもらうぞ」
ガラハドは背中に差していた、長さ1メートル程の鉄の棒を取りだした。
それは魔道具、轟爆の鉄棒、ガラハドの武器である。
先端を強く叩きつける事で爆発を起こすのだが、その威力は叩きつける強さに比例して、いくらでも上がっていく。
「馬鹿が!今更そんな棒切れで何ができるーーーーーーッツ!」
ガラハドが轟爆の鉄棒を両手で握り締めても、アルバレスは一切怯む事なく、それどころか嘲笑を浮かべて真っ直ぐに突っ込んで来る。それは己の肉体に対する絶対の自信。いかなる武器でも、自分を傷つける事はできないと確信しているからこそである。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーッツ!」
ガラハドは叫んだ。これが最後の一撃だ!
体に残った最後の力を振り絞り、ガラハドは頭上に掲げた轟爆の鉄棒を振り下ろす!
全身全霊を込めた鉄槌がアルバレスの脳天に直撃した瞬間、轟爆の鉄棒は耳をつんざく轟音を響かせ大爆発を起こした。
「ぐッーーーーーーーーーーーー!」
それは使い手であるガラハドさえも吹き飛ばす程の衝撃だった。
傷ついた体では受け身さえ満足にとれず、ガラハドは泥の上で体を転がされると、樹木に背中を強く打ち付けた。
唯一の武器である轟爆の鉄棒も、今の衝撃で落としたようだ。もっとも持っていたとしても、力を使い果たしたこの体では、もう振り回す事もできないだろう。
「ガハッ!・・・ぐ、うぅ・・・」
・・・もはや足には力が入らない。
両腕もここまでアルバレスの打撃を防御していた事で、赤紫色に腫れあがっていた。
そこに今の爆発の衝撃で手が痺れてしまい、拳も握れない。
満身創痍・・・
もうガラハドは戦えない。だが、一矢報いる事はできたはずだ。
ガラハドの全力でも、轟爆の鉄棒の一撃は、上級の爆発魔法とまではいかなかった。
しかし轟爆の鉄棒は、エネルギーを一点集中で爆発させる武器だ。いかにアルバレスが鋼鉄以上の硬さを持っていたとしても、ただではすまないはずだ。
突破口となるダメージさえ残せれば、後は仲間達がなんとかしてくれる。
そう思っていた・・・・・
「・・・・・な、に?」
濛々と立ち込める土煙の中、うっすら浮かび上がる影にガラハドは目を開いた。
「くっくっく・・・だから言っただろ?そんな棒切れで何ができるって?」
「ま、まさか・・・!」
淀みない足取りで煙の中から姿を現した男は、いまだ起き上がれずにいるガラハドを見下ろした。
轟爆の鉄の棒を叩きつけ、爆発した頭頂部の髪は、焼け焦げて散り散りになっている。だが血の一滴も流れず、ニヤリと嗤うその表情を見る限り、肉体的なダメージを負ったようには見えない。
ここまで・・・ここまで硬い体などありえるのか?
ガラハドは戦慄した。
頭部にあれだけの爆発を受けて、無傷なのか?
アドニスからも何百という爆発魔法を直撃させられていたが、それでも体の表面を焦がした程度でしかなかった。
これはもはや人間とは思えない。
ビンセントの連双斬ならば斬れると思っていたが、その判断さえ誤っていたのかもしれない。
こんなヤツに・・・本当に勝てるのか?
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見下ろすガラハドの表情が絶望に染まり、アルバレスは右の拳を握り締めて頭上に掲げた。
鋼鉄の拳は凶器そのものである。これを振り下ろせばガラハドの頭など、簡単に砕く事ができる。
そして全精力を使い果たしたガラハドには、もはやそれを躱す事も防ぐ事もできない。
「ぐっ・・・」
ここまで、か・・・・・
「死ね」
アルバレスが拳を振り下ろしたその瞬間、背後の樹木から高速で飛び出して来た影が、アルバレスの右腕に飛びついた!
「ッ!?」
右腕に取りついた体を倒れるように前方に傾けると、重さにつられてアルバレスの体も前のめりに傾いた。
反射的に倒れないように一歩前に足を出したその時、右腕に取りついたその女は、前方に傾けた体を急激に横に回し、腕を捻りながらアルバレスを投げ飛ばした!
「ヤァッツ!」
片足が浮いた状態では、いかにニメートルの巨体でも体勢を維持などできない。
アルバレスは体を回されながら、泥の中に頭から落とされた。
アルバレスを投げ飛ばした女、ロンズデールの伝統衣装を身に纏うその女戦士は、リングマガ湿地帯攻略軍の指揮官、リンジー・ルプレクトだった。
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