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1449 小さき者の殺気
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リンジー・ルプレクト、25歳。身長177センチ、女性では長身の部類に入るだろう。
体力型のリンジーは、腰まである長い髪の先に結んだ意のままに操れる石、念操玉と、体術を組み合わせた独自の戦闘法を確立し、これまで激戦を戦い抜いて来た。
しかし言うまでもないが、重量級のガラハドにはパワーでは遠く及ばない。
そしてそのガラハドを以てしても、アルバレスにはまるでダメージを与えられなかった。
ガラハドの窮地を救ったまではいい。しかしアルバレスの鋼鉄の肉体を突破できる攻撃力が、リンジーにあるとは到底思えない。だからガラハドは叫んだ。
「リンジー逃げろ!こいつの硬さは異常だ!何をやっても通用しない!戦かっちゃ駄目だ!」
泥の中に手を着きながら、顔を持ち上げて叫んだ。
立ち上がる事さえできない状態のガラハドを見ても、リンジーは微笑みを絶やさなかった。
しかしそのシルバーグレーの瞳には、普段の穏やかで明るい印象とはかけ離れた、恐ろしく冷たいものが宿って見えた。
「・・・ガラハド、そうはいかないわ。あなたは私の父親同然よ。親を殺されかけて、黙ってられないわ」
「・・・リンジー、お前・・・・・」
突然の言葉に、ガラハドはすぐには言葉を返せなかった。
ファビアナ同様に、リンジーの事も子供の頃から面倒を見てきた。
リンジーは10歳の時に両親を亡くしたが、父親がガラハドと親交があったため、ガラハドが引き取り育てた。リンジーは心身共に成長が早く、一緒に暮らした期間はほんの数年だが、ガラハドは時に厳しく時に温かく、父親代わりとして精一杯務めて来た。
リンジーが一人立ちした後も、同じ王宮に仕える者として関係は続いた。
マイペースなリンジーに振り回され、フォローに走る事も多かった。
面倒な事ばかりだった。
何度怒ったか分からない。
けれど自分が父親代わりだという気持ちを忘れた事は一度もない。
だからリンジーの事も、我が子同然と想っていた。
しかしまさか、娘のように想っていたリンジーから、同じ想いを聞けるとは思っていなかった。
「あいつは私がやってやるわ」
リンジーはガラハドの目を見てそう告げると、くるりと背を向けて、泥の中からゆっくりと起き上がる帝国の大男を睨みつけた。
「ふ~・・・次から次へと、いい加減に苛ついてきたな」
自分を睨みつける女戦士の視線に、アルバレスの声が一段低くなった。
投げられた事によるダメージは無い。しかし不意をつかれ顔から泥に投げ落とされた事が、アルバレスの怒りの導線に火を付けた。
顔にへばりついた泥を乱暴に払うと、頬を引くつかせて大股で距離を詰めてきた。
リンジーとの身長差35センチ、体の厚みにいたっては一回り二回りどころではない。
これほどの巨体に詰め寄られれば、並大抵の精神では戦意を喪失してしまうだろう。
しかしリンジーは一歩も引く事なく、自分を見下ろす巨躯の男を見上げて睨み返す。
「叩き潰してやる。俺の前に立った事を後悔して死にな」
「こっちのセリフよ。よくも人の親をいたぶってくれたわね・・・・・」
僅か数十センチの距離で睨みあうリンジーとアルバレス。
冷たい空気がピリピリと張り詰めていく。
いかなる攻撃も通用しないアルバレスは、無敵と言ってもよかった。
目の前の銀灰色の髪をした女戦士が何をしようと、全て受けきる自信もある。拳を一発叩き込めば終わらせられる。それは間違いない。だからさっさとそうするべきなのだ。
しかし・・・・・なぜか動く事ができなかった。
・・・なんだ?
この女・・・俺よりずっと小さいこの女に、なぜ身構える必要がある?
さっきまで戦っていた白髪の男の方が、よほど強そうなのに、この気迫はいったい・・・・・
これまでのアルバレスならば、あれこれ考えるよりもまずは手を出していただろう。
鋼鉄の体は一切の攻撃を通さないのだから、反撃など気にする必要もない。
何も悩む必要などないはずなのに、なぜか動けなかった。
・・・いったいなぜ?
その理由はすぐに分かった。
「許さない」
リンジーの桜色の唇から小さく発せられた言葉を耳にした時、アルバレスの背筋にゾクリと走ったもの、
それは紛れもない恐怖だった。
殺気
自分よりもはるかに小さき者から発せられた本物の殺気が、アルバレスを圧倒したのだ。
俺が・・・この女を、恐れたというのか?
それに気付いた時、リンジーの右の掌底がアルバレスの顎を撥ね上げた。
体力型のリンジーは、腰まである長い髪の先に結んだ意のままに操れる石、念操玉と、体術を組み合わせた独自の戦闘法を確立し、これまで激戦を戦い抜いて来た。
しかし言うまでもないが、重量級のガラハドにはパワーでは遠く及ばない。
そしてそのガラハドを以てしても、アルバレスにはまるでダメージを与えられなかった。
ガラハドの窮地を救ったまではいい。しかしアルバレスの鋼鉄の肉体を突破できる攻撃力が、リンジーにあるとは到底思えない。だからガラハドは叫んだ。
「リンジー逃げろ!こいつの硬さは異常だ!何をやっても通用しない!戦かっちゃ駄目だ!」
泥の中に手を着きながら、顔を持ち上げて叫んだ。
立ち上がる事さえできない状態のガラハドを見ても、リンジーは微笑みを絶やさなかった。
しかしそのシルバーグレーの瞳には、普段の穏やかで明るい印象とはかけ離れた、恐ろしく冷たいものが宿って見えた。
「・・・ガラハド、そうはいかないわ。あなたは私の父親同然よ。親を殺されかけて、黙ってられないわ」
「・・・リンジー、お前・・・・・」
突然の言葉に、ガラハドはすぐには言葉を返せなかった。
ファビアナ同様に、リンジーの事も子供の頃から面倒を見てきた。
リンジーは10歳の時に両親を亡くしたが、父親がガラハドと親交があったため、ガラハドが引き取り育てた。リンジーは心身共に成長が早く、一緒に暮らした期間はほんの数年だが、ガラハドは時に厳しく時に温かく、父親代わりとして精一杯務めて来た。
リンジーが一人立ちした後も、同じ王宮に仕える者として関係は続いた。
マイペースなリンジーに振り回され、フォローに走る事も多かった。
面倒な事ばかりだった。
何度怒ったか分からない。
けれど自分が父親代わりだという気持ちを忘れた事は一度もない。
だからリンジーの事も、我が子同然と想っていた。
しかしまさか、娘のように想っていたリンジーから、同じ想いを聞けるとは思っていなかった。
「あいつは私がやってやるわ」
リンジーはガラハドの目を見てそう告げると、くるりと背を向けて、泥の中からゆっくりと起き上がる帝国の大男を睨みつけた。
「ふ~・・・次から次へと、いい加減に苛ついてきたな」
自分を睨みつける女戦士の視線に、アルバレスの声が一段低くなった。
投げられた事によるダメージは無い。しかし不意をつかれ顔から泥に投げ落とされた事が、アルバレスの怒りの導線に火を付けた。
顔にへばりついた泥を乱暴に払うと、頬を引くつかせて大股で距離を詰めてきた。
リンジーとの身長差35センチ、体の厚みにいたっては一回り二回りどころではない。
これほどの巨体に詰め寄られれば、並大抵の精神では戦意を喪失してしまうだろう。
しかしリンジーは一歩も引く事なく、自分を見下ろす巨躯の男を見上げて睨み返す。
「叩き潰してやる。俺の前に立った事を後悔して死にな」
「こっちのセリフよ。よくも人の親をいたぶってくれたわね・・・・・」
僅か数十センチの距離で睨みあうリンジーとアルバレス。
冷たい空気がピリピリと張り詰めていく。
いかなる攻撃も通用しないアルバレスは、無敵と言ってもよかった。
目の前の銀灰色の髪をした女戦士が何をしようと、全て受けきる自信もある。拳を一発叩き込めば終わらせられる。それは間違いない。だからさっさとそうするべきなのだ。
しかし・・・・・なぜか動く事ができなかった。
・・・なんだ?
この女・・・俺よりずっと小さいこの女に、なぜ身構える必要がある?
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これまでのアルバレスならば、あれこれ考えるよりもまずは手を出していただろう。
鋼鉄の体は一切の攻撃を通さないのだから、反撃など気にする必要もない。
何も悩む必要などないはずなのに、なぜか動けなかった。
・・・いったいなぜ?
その理由はすぐに分かった。
「許さない」
リンジーの桜色の唇から小さく発せられた言葉を耳にした時、アルバレスの背筋にゾクリと走ったもの、
それは紛れもない恐怖だった。
殺気
自分よりもはるかに小さき者から発せられた本物の殺気が、アルバレスを圧倒したのだ。
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