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02 四年前のあの子
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「うむ・・・良い豆だ。やはりここのコーヒーは違う」
「・・・おい、そんな事はどうでもいいんだよ。俺と話しすんだろ?お前の主張をしてみろよ」
食後のコーヒーを一口含むと、友は俺に話しを急かしてくる。
変わらないな。お前はこういう時、いつもテーブルを指でトントンと突く。
この酒場は俺達がよく来る馴染みの酒場だ。
普段は店の人も気さくに声をかけてくれるのだが、今日は俺と友のただならぬ雰囲気を察してか、必要以上には近づいて来る様子はない。
「その癖、何度も言うがやめた方がいい。印象が悪いぞ」
友の指を見ながらそう告げると、友は拳で少し強くテーブルを叩いた。
「たくっ!だったら、さっさと話しをしろよ!お前待ちなんだよ!」
友の目の前に置かれたカップから、コーヒーが零れる。
叩いた衝撃のせいだ。
「ふぅ・・・いつもながらせっかちだな」
そう言葉をかけながら、俺は酒を運んでいる女性店員さんを呼び止め、台拭きを借りる。
さっきと同じ店員さんだ。二度もすまないと頭を下げると、笑顔で、大丈夫です。と言葉を返してくれた。
とても感じが良い。
そう言えばこの女性店員さんは、俺が初めてこの酒場を訪れた時から、親し気に挨拶をしてくれた。
客と店員という立ち位置はあったが、俺はどこかこの女性店員さんにそれ以上の親しみを感じていた。
俺がテーブルを拭いている間、友はやはり苛立ちで足を揺すっている。
堪え性がないのもいつもの事だ。
「なぁ、こうして二人でコーヒーを飲むと、思い出さないか?」
「あん?なにをだ?」
敵意むき出しの目だ。
いつからだろう。友が俺をこんな目で見るようになったのは・・・いや、分かっている。
抑えてはいるが、俺も心の底では同じ目を向けているからな。
表に出すか出さないかの違いだ。
「・・・俺達が二人で村を旅立った日の事だ。朝、村長が俺達を家に呼んで、コーヒーを淹れてくれたじゃないか?あの日、俺達は誓いあっただろ?二人で力を合わせて必ず魔王を倒すって」
今から五年前、俺と友は魔王を倒すため故郷を旅立った。
俺は戦士。そして友は勇者だったらしい。
何を根拠に?村長がそう言ったからだ。
村長はすごい人らしい。なにがすごいのかは俺も分からないが、大人達はみんな村長はすごいと言っていた。
そう言い聞かされて育ったものだから、村長を疑う事はなかった。
すごい村長がそう言うのだから、そうなのだろう。
友との二人旅は、最初はうまくやれていた。
友がどう思っていたかは分からないが、少なくとも俺はそう思っている。
「・・・あぁ、そうだったな・・・んで?それがどうした?それは俺も覚えてる。けどよ、色々変わってくんだよ。分かんだろ?ずっと昔のままじゃいられねんだよ」
「俺はずっと変わらないものもあると思ってる」
「・・・あぁ、そうかよ」
友は俺から目を反らし、中身が半分ほどに減ったコーヒーに口をつけた。
すっかり冷めているようで、友は一息に飲み干し喉をうならせた。
「・・・あの子の事はお前だけのせいじゃない」
「・・・・・あの子って誰だよ?」
友は俺から目を逸らし、分からないふりをして問い返してきた。
「四年前、俺達が旅を始めて一年経った頃に訪れた村の、あの女の子の事だよ。」
「・・・おい、なんで今その話をするんだ?」
友の声色には、明確な怒気が含まれていた。
迂闊な返事をすれば、この場で殴り倒されかねないだろう。
「お前との旅を振り返りたいんだよ。お前にとっては忌々しい過去かもしれない。いや、俺にとっても辛い記憶だ。だが、俺達は一度これまでの道を辿る必要があるんじゃないか?」
「・・・ふん、勝手にしろ。だが、俺は何も言う事はないからな!」
吐き捨てるようにそう言い放つと、友は俺から顔を背け頬杖をついた。
本当に頑なに心を閉ざしてしまっている。
関係は冷え切っている。
だが、魔王討伐という目的のため、俺はこれからも友と行動しなければならない。
どれだけ拒絶されてもだ。そして俺にはそうしなければならない理由もあるんだ。
・・・彼女にとっては深い意味のない言葉だったかもしれない。
・・・だけど俺には彼女との大切な約束なんだ。
「思えば、あの時だったんだろうな。俺とお前の関係に亀裂が入ってしまったのは・・・」
友は何も言わずに黙っている。
だが、言葉を挟まないという事は、話は聞いてくれるようだ。
俺はあの日の記憶をたどりながら言葉を続けた。
「・・・おい、そんな事はどうでもいいんだよ。俺と話しすんだろ?お前の主張をしてみろよ」
食後のコーヒーを一口含むと、友は俺に話しを急かしてくる。
変わらないな。お前はこういう時、いつもテーブルを指でトントンと突く。
この酒場は俺達がよく来る馴染みの酒場だ。
普段は店の人も気さくに声をかけてくれるのだが、今日は俺と友のただならぬ雰囲気を察してか、必要以上には近づいて来る様子はない。
「その癖、何度も言うがやめた方がいい。印象が悪いぞ」
友の指を見ながらそう告げると、友は拳で少し強くテーブルを叩いた。
「たくっ!だったら、さっさと話しをしろよ!お前待ちなんだよ!」
友の目の前に置かれたカップから、コーヒーが零れる。
叩いた衝撃のせいだ。
「ふぅ・・・いつもながらせっかちだな」
そう言葉をかけながら、俺は酒を運んでいる女性店員さんを呼び止め、台拭きを借りる。
さっきと同じ店員さんだ。二度もすまないと頭を下げると、笑顔で、大丈夫です。と言葉を返してくれた。
とても感じが良い。
そう言えばこの女性店員さんは、俺が初めてこの酒場を訪れた時から、親し気に挨拶をしてくれた。
客と店員という立ち位置はあったが、俺はどこかこの女性店員さんにそれ以上の親しみを感じていた。
俺がテーブルを拭いている間、友はやはり苛立ちで足を揺すっている。
堪え性がないのもいつもの事だ。
「なぁ、こうして二人でコーヒーを飲むと、思い出さないか?」
「あん?なにをだ?」
敵意むき出しの目だ。
いつからだろう。友が俺をこんな目で見るようになったのは・・・いや、分かっている。
抑えてはいるが、俺も心の底では同じ目を向けているからな。
表に出すか出さないかの違いだ。
「・・・俺達が二人で村を旅立った日の事だ。朝、村長が俺達を家に呼んで、コーヒーを淹れてくれたじゃないか?あの日、俺達は誓いあっただろ?二人で力を合わせて必ず魔王を倒すって」
今から五年前、俺と友は魔王を倒すため故郷を旅立った。
俺は戦士。そして友は勇者だったらしい。
何を根拠に?村長がそう言ったからだ。
村長はすごい人らしい。なにがすごいのかは俺も分からないが、大人達はみんな村長はすごいと言っていた。
そう言い聞かされて育ったものだから、村長を疑う事はなかった。
すごい村長がそう言うのだから、そうなのだろう。
友との二人旅は、最初はうまくやれていた。
友がどう思っていたかは分からないが、少なくとも俺はそう思っている。
「・・・あぁ、そうだったな・・・んで?それがどうした?それは俺も覚えてる。けどよ、色々変わってくんだよ。分かんだろ?ずっと昔のままじゃいられねんだよ」
「俺はずっと変わらないものもあると思ってる」
「・・・あぁ、そうかよ」
友は俺から目を反らし、中身が半分ほどに減ったコーヒーに口をつけた。
すっかり冷めているようで、友は一息に飲み干し喉をうならせた。
「・・・あの子の事はお前だけのせいじゃない」
「・・・・・あの子って誰だよ?」
友は俺から目を逸らし、分からないふりをして問い返してきた。
「四年前、俺達が旅を始めて一年経った頃に訪れた村の、あの女の子の事だよ。」
「・・・おい、なんで今その話をするんだ?」
友の声色には、明確な怒気が含まれていた。
迂闊な返事をすれば、この場で殴り倒されかねないだろう。
「お前との旅を振り返りたいんだよ。お前にとっては忌々しい過去かもしれない。いや、俺にとっても辛い記憶だ。だが、俺達は一度これまでの道を辿る必要があるんじゃないか?」
「・・・ふん、勝手にしろ。だが、俺は何も言う事はないからな!」
吐き捨てるようにそう言い放つと、友は俺から顔を背け頬杖をついた。
本当に頑なに心を閉ざしてしまっている。
関係は冷え切っている。
だが、魔王討伐という目的のため、俺はこれからも友と行動しなければならない。
どれだけ拒絶されてもだ。そして俺にはそうしなければならない理由もあるんだ。
・・・彼女にとっては深い意味のない言葉だったかもしれない。
・・・だけど俺には彼女との大切な約束なんだ。
「思えば、あの時だったんだろうな。俺とお前の関係に亀裂が入ってしまったのは・・・」
友は何も言わずに黙っている。
だが、言葉を挟まないという事は、話は聞いてくれるようだ。
俺はあの日の記憶をたどりながら言葉を続けた。
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