俺と友と追放と

理太郎

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07 雪に閉ざされた村で ②

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「あ・・・こんばんは」

「こんばんは。お兄さん他所の人ね?」

突然だった。
村はずれの森に足を踏み入れた時、雪女が突然俺の前に現れた。

一瞬警戒したが、雪女は全く俺を警戒する素振りを見せない。自分から姿を見せたのだし当然かもしれないが、あまりに無防備に立つ雪女を見て、俺の口から出た最初の一言はなぜか挨拶だった。


なぜ彼女が俺の前に現れたのか?
ハッキリとした理由は教えてくれなかったが、気まぐれや暇つぶしとか、深い理由はなかったのだと思う。


俺は切り株に積もった雪をどかし、自分が座る場所を確保する。
友は家に帰っているだろうか?今ではすっかり別行動が当たり前になってしまった。

村の方へ目をむけると、沢山の明かりが目に入る。
もう夕飯の時間だから、ここで俺が話していても誰かに見られる事はないだろう。
夜の森に足を運ぶもの好きなんて、そうはいないだろうからな。


「お兄さん、私を探してたでしょ?私とお話ししたいの?」

「うん、そうだよ。キミが噂の雪女さんでしょ?昨日の今日で会えるとは思わなかったけどね」

俺の言葉のどこが面白いのか分からないが、雪女はとても楽しそうにクスクスと笑ってこちらを見ている。

「お兄さん面白いわね。村の人は私を見ると、怯えた目を向けるだけなのに」

「あぁ・・・それはしかたないかもね。人間って、自分達と違う存在をなかなか受け入れる事ができないみたいだからさ」

「お兄さんも人間でしょ?」

「人間だよ」

「お兄さんは私が怖くないの?」

「・・・そうだね。会うまでは雪女ってどんな感じかな?って思ってたけど、実際あってみて、なんて言うか・・・体温の低い人?みたいな感じかな。まったく怖くないね」

そう言うと、雪女は一瞬きょとんとした後、心底面白いというように声をあげて笑った。


雪はしとしと降り続ける。

樹々に、岩に、地面に積もった雪が、月の光に反射して薄く輝いて見える。

そんな幻想的な世界で、口元に手を当て笑顔を見せてくれた彼女はとても美しく・・・俺の心を奪った。



「お兄さんが嫌でなければ、またお話ししましょう」




次の日から、俺と雪女の密会が始まった。

密会と言っても、ただお互いの話しをしているだけだ。
そして、俺が話し役で彼女が聞き役という形が多い。

俺の生まれ育った村の事や、これまでしてきた旅の話し、あまり面白いものではないと思ったが、森から出た事の無い彼女にとっては、平凡な村の話しも輝いていて、俺の旅は大冒険に聞こえたようだ。

まぁ確かに、三本角の鬼の話しだけは、大冒険と言ってもいいのかもしれない。

トラウマのようなこの話しは、最初聞かせるつもりはなかったのだが、つい口が滑ってしまった。
いや、本心では聞いてほしかったのだ。俺も傷を吐き出したかったんだ。


ポツリポツリと話し始め、だんだんと早口になっていった。
俺もそうとう溜め込んでいたようだ。
言い訳を混ぜて話している自分に嫌気もさすが、心のうちを吐き出し始めると、途中で止める事はできなかった。

最後まで話し終えると、俺は幻滅されただろうと思った。
こんなグチグチしている男なんかと、一緒にいたくないだろう。


気まずくなって目を伏せ黙ってしまった俺の手に、雪女の両手が乗せられる。

「冷たくてごめんなさいね。でも、温かくなくても、誰かの手に包まれるって落ち着くでしょ?」

そう言って彼女は俺の手を取ってくれた。

「・・・お、俺は・・・」

「お兄さん・・・辛かったんだね」

友と気まずくなって一年、俺は自分で思っているよりずっと、気持ちを押し殺してしまっていたようだ。

雪女は俺が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。

胸の冷たさは不思議なくらいに俺の気持ちを温かくしてくれて、その日の夜、俺は一年ぶりに落ち着いて眠りにつく事ができた。


俺はただ彼女と一緒にいるだけで楽しかった。

彼女がどう思い、何を考えて俺と会ってくれているのか・・・本心は分からないが、少なくとも嫌いな男と会うはずはないだろう。

だから、ちょっとは好感を持ってくれているとは思いたい。
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