7 / 30
07 雪に閉ざされた村で ②
しおりを挟む
「あ・・・こんばんは」
「こんばんは。お兄さん他所の人ね?」
突然だった。
村はずれの森に足を踏み入れた時、雪女が突然俺の前に現れた。
一瞬警戒したが、雪女は全く俺を警戒する素振りを見せない。自分から姿を見せたのだし当然かもしれないが、あまりに無防備に立つ雪女を見て、俺の口から出た最初の一言はなぜか挨拶だった。
なぜ彼女が俺の前に現れたのか?
ハッキリとした理由は教えてくれなかったが、気まぐれや暇つぶしとか、深い理由はなかったのだと思う。
俺は切り株に積もった雪をどかし、自分が座る場所を確保する。
友は家に帰っているだろうか?今ではすっかり別行動が当たり前になってしまった。
村の方へ目をむけると、沢山の明かりが目に入る。
もう夕飯の時間だから、ここで俺が話していても誰かに見られる事はないだろう。
夜の森に足を運ぶもの好きなんて、そうはいないだろうからな。
「お兄さん、私を探してたでしょ?私とお話ししたいの?」
「うん、そうだよ。キミが噂の雪女さんでしょ?昨日の今日で会えるとは思わなかったけどね」
俺の言葉のどこが面白いのか分からないが、雪女はとても楽しそうにクスクスと笑ってこちらを見ている。
「お兄さん面白いわね。村の人は私を見ると、怯えた目を向けるだけなのに」
「あぁ・・・それはしかたないかもね。人間って、自分達と違う存在をなかなか受け入れる事ができないみたいだからさ」
「お兄さんも人間でしょ?」
「人間だよ」
「お兄さんは私が怖くないの?」
「・・・そうだね。会うまでは雪女ってどんな感じかな?って思ってたけど、実際あってみて、なんて言うか・・・体温の低い人?みたいな感じかな。まったく怖くないね」
そう言うと、雪女は一瞬きょとんとした後、心底面白いというように声をあげて笑った。
雪はしとしと降り続ける。
樹々に、岩に、地面に積もった雪が、月の光に反射して薄く輝いて見える。
そんな幻想的な世界で、口元に手を当て笑顔を見せてくれた彼女はとても美しく・・・俺の心を奪った。
「お兄さんが嫌でなければ、またお話ししましょう」
次の日から、俺と雪女の密会が始まった。
密会と言っても、ただお互いの話しをしているだけだ。
そして、俺が話し役で彼女が聞き役という形が多い。
俺の生まれ育った村の事や、これまでしてきた旅の話し、あまり面白いものではないと思ったが、森から出た事の無い彼女にとっては、平凡な村の話しも輝いていて、俺の旅は大冒険に聞こえたようだ。
まぁ確かに、三本角の鬼の話しだけは、大冒険と言ってもいいのかもしれない。
トラウマのようなこの話しは、最初聞かせるつもりはなかったのだが、つい口が滑ってしまった。
いや、本心では聞いてほしかったのだ。俺も傷を吐き出したかったんだ。
ポツリポツリと話し始め、だんだんと早口になっていった。
俺もそうとう溜め込んでいたようだ。
言い訳を混ぜて話している自分に嫌気もさすが、心のうちを吐き出し始めると、途中で止める事はできなかった。
最後まで話し終えると、俺は幻滅されただろうと思った。
こんなグチグチしている男なんかと、一緒にいたくないだろう。
気まずくなって目を伏せ黙ってしまった俺の手に、雪女の両手が乗せられる。
「冷たくてごめんなさいね。でも、温かくなくても、誰かの手に包まれるって落ち着くでしょ?」
そう言って彼女は俺の手を取ってくれた。
「・・・お、俺は・・・」
「お兄さん・・・辛かったんだね」
友と気まずくなって一年、俺は自分で思っているよりずっと、気持ちを押し殺してしまっていたようだ。
雪女は俺が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。
胸の冷たさは不思議なくらいに俺の気持ちを温かくしてくれて、その日の夜、俺は一年ぶりに落ち着いて眠りにつく事ができた。
俺はただ彼女と一緒にいるだけで楽しかった。
彼女がどう思い、何を考えて俺と会ってくれているのか・・・本心は分からないが、少なくとも嫌いな男と会うはずはないだろう。
だから、ちょっとは好感を持ってくれているとは思いたい。
「こんばんは。お兄さん他所の人ね?」
突然だった。
村はずれの森に足を踏み入れた時、雪女が突然俺の前に現れた。
一瞬警戒したが、雪女は全く俺を警戒する素振りを見せない。自分から姿を見せたのだし当然かもしれないが、あまりに無防備に立つ雪女を見て、俺の口から出た最初の一言はなぜか挨拶だった。
なぜ彼女が俺の前に現れたのか?
ハッキリとした理由は教えてくれなかったが、気まぐれや暇つぶしとか、深い理由はなかったのだと思う。
俺は切り株に積もった雪をどかし、自分が座る場所を確保する。
友は家に帰っているだろうか?今ではすっかり別行動が当たり前になってしまった。
村の方へ目をむけると、沢山の明かりが目に入る。
もう夕飯の時間だから、ここで俺が話していても誰かに見られる事はないだろう。
夜の森に足を運ぶもの好きなんて、そうはいないだろうからな。
「お兄さん、私を探してたでしょ?私とお話ししたいの?」
「うん、そうだよ。キミが噂の雪女さんでしょ?昨日の今日で会えるとは思わなかったけどね」
俺の言葉のどこが面白いのか分からないが、雪女はとても楽しそうにクスクスと笑ってこちらを見ている。
「お兄さん面白いわね。村の人は私を見ると、怯えた目を向けるだけなのに」
「あぁ・・・それはしかたないかもね。人間って、自分達と違う存在をなかなか受け入れる事ができないみたいだからさ」
「お兄さんも人間でしょ?」
「人間だよ」
「お兄さんは私が怖くないの?」
「・・・そうだね。会うまでは雪女ってどんな感じかな?って思ってたけど、実際あってみて、なんて言うか・・・体温の低い人?みたいな感じかな。まったく怖くないね」
そう言うと、雪女は一瞬きょとんとした後、心底面白いというように声をあげて笑った。
雪はしとしと降り続ける。
樹々に、岩に、地面に積もった雪が、月の光に反射して薄く輝いて見える。
そんな幻想的な世界で、口元に手を当て笑顔を見せてくれた彼女はとても美しく・・・俺の心を奪った。
「お兄さんが嫌でなければ、またお話ししましょう」
次の日から、俺と雪女の密会が始まった。
密会と言っても、ただお互いの話しをしているだけだ。
そして、俺が話し役で彼女が聞き役という形が多い。
俺の生まれ育った村の事や、これまでしてきた旅の話し、あまり面白いものではないと思ったが、森から出た事の無い彼女にとっては、平凡な村の話しも輝いていて、俺の旅は大冒険に聞こえたようだ。
まぁ確かに、三本角の鬼の話しだけは、大冒険と言ってもいいのかもしれない。
トラウマのようなこの話しは、最初聞かせるつもりはなかったのだが、つい口が滑ってしまった。
いや、本心では聞いてほしかったのだ。俺も傷を吐き出したかったんだ。
ポツリポツリと話し始め、だんだんと早口になっていった。
俺もそうとう溜め込んでいたようだ。
言い訳を混ぜて話している自分に嫌気もさすが、心のうちを吐き出し始めると、途中で止める事はできなかった。
最後まで話し終えると、俺は幻滅されただろうと思った。
こんなグチグチしている男なんかと、一緒にいたくないだろう。
気まずくなって目を伏せ黙ってしまった俺の手に、雪女の両手が乗せられる。
「冷たくてごめんなさいね。でも、温かくなくても、誰かの手に包まれるって落ち着くでしょ?」
そう言って彼女は俺の手を取ってくれた。
「・・・お、俺は・・・」
「お兄さん・・・辛かったんだね」
友と気まずくなって一年、俺は自分で思っているよりずっと、気持ちを押し殺してしまっていたようだ。
雪女は俺が泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。
胸の冷たさは不思議なくらいに俺の気持ちを温かくしてくれて、その日の夜、俺は一年ぶりに落ち着いて眠りにつく事ができた。
俺はただ彼女と一緒にいるだけで楽しかった。
彼女がどう思い、何を考えて俺と会ってくれているのか・・・本心は分からないが、少なくとも嫌いな男と会うはずはないだろう。
だから、ちょっとは好感を持ってくれているとは思いたい。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる