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15 ファイア
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宿から少し離れた広場で、俺と魔法使いは噴水を前にベンチに腰を掛けていた。
この町の憩いの場所のようだ。
日中は子供達が駆けまわって遊んだり、恋人達がお弁当を食べたりしているのだろう。
「・・・今日は風があっていい夜ね」
「うん、そうだね。俺とアイツは今日ここに来たばかりだけど、昼間はすごい暑さで汗が止まらなかった。炎の魔人の城が近いのも影響してるんだろ?」
相槌を打ち魔人の事にふれると、魔法使いの声に真剣みが含まれる。
「そうよ。あんなに離れているのに、ここまで熱波が届くの。城まで近づけるのか疑問に思うくらいよ。あたしの氷魔法でどれだけ軽減できるか・・・」
夕食の席で最初から酒ばかり飲んでいたわけではない。
俺達はこの町に寄った目的も、雪女の涙も持っている事も話してある。
全て理解した上で、彼女達は仲間になってくれたのだ。
「城の炎は雪女の涙で消せるけど、そこにつくまでも険しい道って事だな。俺達はキミに頼るしかないからな。負担をかけるけど、よろしく頼むよ」
「まぁ、やるしかないからね。頑張ってみるわ」
「うん。代わりと言うわけではないけど、どんな魔物が出て来ても、キミの事は俺が護るから」
「・・・ふ~ん、あんたけっこうカッコイイ事言うじゃん?年下のくせに」
口の端を上げて、からかうように指先で俺をつついてくる。
「本気だよ。俺はもう誰も失いたくない」
魔法使いの目を真っ直ぐに見て、言葉を口にすると、魔法使いの口をつぐみ俺の目を真っ直ぐに見つめ返してきた。
「・・・うん。頼りにするね」
「まかせてくれ・・・」
・・・雪女・・・俺はキミを護れなかった
・・・弱い自分が嫌になる
・・・だけど、キミは俺が旅を続ける事を望んだ
・・・それは、俺にも救える命があり、救わなければならない命がある
・・・そう、キミが思ったからだろ?
・・・だから、俺は護ろうと思う
・・・魔王に脅かされる人々の生活を、命を
・・・そして仲間を
「・・・俺がキミを絶対に護る」
「・・・食事の時の話しだけど、前にいたパーティの・・・」
「あぁ、なんとなく僧侶の前で話さない方がいいかなと思ったけど、当たりだったかな?」
隣に座る魔法使いが、うん、と軽く頷いたのが分かる。
「勘が良くて助かるわ。タブーって程じゃないけど、あんまり話したくないのは事実よ」
ふーっと息を吐き、やや疲れを感じる口調に、苦労してきたんだろうと察した。
「あたし達は、これまで二つのパーティに入った事があるの。最初のパーティは、男三人と女が一人の四人組だったわ。内訳は、男二人が戦士、もう一人の男が僧侶、女が武闘家。なんでも同郷で組んだ力押しのパーティだったみたい。攻撃魔法の使い手がいないから、ちょっと旅が行き詰ってたみたいなの。それで、あたし達の噂を聞いて声をかけてきたのよ」
「へぇ、まぁ確かに僧侶の回復魔法があっても、攻撃の魔法使いがいなきゃ厳しい魔物は沢山いるよな」
「そうよ。ゴースト系なんか特にそうでしょ?ゴースト専用の武器か、魔法でなきゃ倒せないんだから。だから、あんた達二人はちょっと信じられないわ。よく魔法使いと僧侶無しで三年も旅をしてここまで来たもんだわ」
魔法使いが、呆れと感心が混じった目を向けて来る。
言われてみれば本当にそうだ。怪我をしても薬草でしのぎ、ゴーストが出れば専用武器のみでゴリ押しで勝ってきた。
「・・・よく考えれば、本当にキミの言う通りだよ。これまでの旅を考えてみると、本当にけっこうギリギリだったと思う」
「まったく、よく今まで生きてたなって感心するわ。まぁ、そんなわけで、あたし達は条件があって仲間入りしたのよ。あたし達も丁度前衛が必要だって感じてたから。男三人女三人でバランスもいいでしょ?これで旅も楽になるって期待したの。でも・・・すぐに後悔したわ」
その声色にははっきりとした落胆があった。
顔を向けると、魔法使いは俯き加減で表情が沈んでいる。
思い出すのも嫌なのだろう。
俺は魔法使いが自分で気持ちを固めて話し出すまで待つ事にした。
時計の針は0時を回っているし、朝7時にはみんなで酒場に集合の約束をしたが、友は泥酔。僧侶もあの様子だと果たして起きれるかどうか。
場合によっては、午前中は休みにした方がいいだろう。
そんな事を考えていると、魔法使いが気持ちに整理をつけ、続きを話しだした。
「・・・アタシ達が仲間になって、最初のうちは良かったわ。彼らも親切だったし、女武闘家はあたし達のお姉さんって感じで、色々気にかけてくれて。でも、良い雰囲気なのはせいぜい一ヶ月だった。結果から言うとね、男三人がみんなあの子・・・僧侶を好きになっちゃったの」
「・・・え?」
男三人、女三人のパーティで、男三人が一人の女を好きになる?
なんだそれ?
「・・・夕食の時にもちょっと話したよね?男はみんなあの子を好きになるって」
「あ、あぁ・・・そう言えば、そんな事言ってたね。でも、全員って・・・」
魔法使いは、分かってると言うように、二度三度かるく頷くと話を続けた。
「うん、まぁ当然そう思うよね。でも本当なの。今日だって、勇者が完全にメロメロだったでしょ?あの人もうあの子の夢中よ。まぁ、あの勇者は惚れるの早過ぎだけど・・・あの三人もそうだったわ。
仲間になって一週間もすると、僧侶のあの子がムードメーカーになってきて、とにかく場を明るくするの。それで誰かが悩んでると付きっ切りで相談にのるし、魔物討伐が上手くいくとベタ褒めするの。怪我をすれば献身的に回復魔法をかける。それであの見た目でしょ?・・・そりゃ惚れますよ!」
最後の、惚れますよのところだけ、わざとおどけた感じで言うが、話しを聞く限り、確かに惚れる要素だらけだ。
「あ、一応誤解のないように言っておくけど、あたしはあの子の事好きよ。一番の友達だもん。それにあの子は男を惑わす悪女でもないわ。純粋に優しいだけなの。小さい頃から一緒にいるあたしが保証するわ。ただ・・・何ていうのかな?あの子は自分の意思に関係なく、男が好きになっちゃう女の子なのよ」
魔法使いは少し困ったように首をひねり、大きく息をついた。
それは何とかしたくても、どうしようもない。十分にそれを分かっている諦めのような溜息だった。
「そっか・・・うん、信じるよ。俺も僧侶がそんな悪い人だなんて思ってないから安心して」
「・・・うん、ありがとう。それでね、最初に告白したのがちょっとチャライ戦士だったのよ。
ウェ~イって感じのチャライ男ね」
こんな感じ、と言って魔法使いは、握り拳から親指と人差し指と小指の三本だけを立てて見せた。
「まぁ、普通にフラれたわ。ごめんなさいって。次はもう一人の戦士ね、こっちは真面目な男だったわ。でもフラれたわ。印象は・・・特にないわね。なんか真面目な感じ」
聞いてて思ったが、魔法使いはけっこうな毒舌のようだ。容赦なく切り捨てている。
そして、最後の一人の話しで、苦虫を噛み潰したように眉をしかめた。
「最後の一人は男僧侶だったんだけど、あいつが一番最悪だったわ。だって、あいつ女武闘家と付き合ってたのよ。それなのに、武闘家とは別れるから俺と付き合ってくれって僧侶に迫ったのよ!さいってー!」
魔法使いは思い出しても腹が立つらしく、体から魔力が滲み出てきた。
「ほぅ・・・そりゃ、同じ男から見てもけっこうなクズだな」
「でしょ!だから私、あいつを燃やしたの!」
「・・・・・え?」
目が点になる、という言葉はこういう時に使うのだろう。
呆けた顔をしていたのか、俺が口を開けて間の抜けた返事をすると、魔法使いは笑いながら俺の背中を強く叩いた。
「あっははは!なによその顔!あんたって面白いね!だ・か・ら、あいつの事燃やしたの!こう、火魔法でボーンって!」
右手の人差し指をくるくる回し、指先に火を灯し投げるまねをして見せる。
「お、おいおい!危ないって!」
「あっはははははは!ここでやるわけないでしょ。大丈夫大丈夫!あんたって本当におもしろいわね」
そう言って一層高く笑い声を上げると、魔法使いを指先に息を吹きかけて火を消した。
心臓に悪い。この魔法使い、けっこう危ない女なのか?
「・・・あ、もしかして引いちゃった?」
顔を覗き込み、ズバリ聞いてくる魔法使いに驚いて、少し顔を後ろに引くと、魔法使いは少し残念そうに眉を下げた。
「・・・そっかぁ~、うん、そりゃ引くよね。あたしっていつもこうなんだよね。ごめん、ちょっと一人で盛り上がっちゃって・・・あんたなら大丈夫かなって思ったんだ・・・」
「・・・いや、急に顔近づけてくるからびっくりしただけで、別に引いてなんかないよ。だから、そのくらいで落ち込むなよ」
思ったより勢いで行動するようなタイプのようで、確かに驚きはしたけれど
魔法使いは、本当?と、まだ少し疑うように目を向けてくるが、俺が目を見てしっかり頷くと、安心したように笑ってくれた。
「良かったぁ~、いやぁ、これから一緒に旅をするのに、いきなりマズったかなって思ったよ」
「ははは、そんな事ないよ。それで・・・燃やしたって・・・殺したって事?」
少し緊張した声でそう聞くと、魔法使いは軽い感じで笑いながら、顔の前で手を振った。
「え?いやいやいや、そこまでしないよ!体中の毛を燃やしたくらいで勘弁して上げたよ」
「・・・お、おう」
想像すると結構気の毒に思えた。それと同時に、魔法使いは怒らせないようにしようと決めた。
「えっと、話の続きだけど・・・それでどうなったの?」
変な空気になりそうだったので、とりあえず話しの続きを促すと、魔法使いは思い出すように手を叩いた。
「あ、そうそう!大変だったのよ。あの子が告られたの女武闘家にそっこーばれて、最初は浮気僧侶が責められてたんだけど、やっぱり良い気はしなかったんだろうね。あたし達にも冷たくなってさ・・・居づらくなったからさっさとパーティ抜けたの」
惚れられた僧侶はなにも悪くない。
だが、自分の彼氏の心を奪ったと見られるのは、やむを得ないのかもしれない。
頭で分かっていても、気持ちは理屈ではないのだろう。
「ま、それでやられっぱなしはムカつくし、浮気しようと誘ってきたアイツには、ちょっとくらい罰がないとって思って、別れ際に燃やしてきたのよ」
イタズラが見つかって、てへ!ごめん!みたいな顔で言ってるけど、人を燃やしてきたとサラリと口にしてるのは、なかなか恐怖だ。
魔法使いには逆らわないようにしよう。
この町の憩いの場所のようだ。
日中は子供達が駆けまわって遊んだり、恋人達がお弁当を食べたりしているのだろう。
「・・・今日は風があっていい夜ね」
「うん、そうだね。俺とアイツは今日ここに来たばかりだけど、昼間はすごい暑さで汗が止まらなかった。炎の魔人の城が近いのも影響してるんだろ?」
相槌を打ち魔人の事にふれると、魔法使いの声に真剣みが含まれる。
「そうよ。あんなに離れているのに、ここまで熱波が届くの。城まで近づけるのか疑問に思うくらいよ。あたしの氷魔法でどれだけ軽減できるか・・・」
夕食の席で最初から酒ばかり飲んでいたわけではない。
俺達はこの町に寄った目的も、雪女の涙も持っている事も話してある。
全て理解した上で、彼女達は仲間になってくれたのだ。
「城の炎は雪女の涙で消せるけど、そこにつくまでも険しい道って事だな。俺達はキミに頼るしかないからな。負担をかけるけど、よろしく頼むよ」
「まぁ、やるしかないからね。頑張ってみるわ」
「うん。代わりと言うわけではないけど、どんな魔物が出て来ても、キミの事は俺が護るから」
「・・・ふ~ん、あんたけっこうカッコイイ事言うじゃん?年下のくせに」
口の端を上げて、からかうように指先で俺をつついてくる。
「本気だよ。俺はもう誰も失いたくない」
魔法使いの目を真っ直ぐに見て、言葉を口にすると、魔法使いの口をつぐみ俺の目を真っ直ぐに見つめ返してきた。
「・・・うん。頼りにするね」
「まかせてくれ・・・」
・・・雪女・・・俺はキミを護れなかった
・・・弱い自分が嫌になる
・・・だけど、キミは俺が旅を続ける事を望んだ
・・・それは、俺にも救える命があり、救わなければならない命がある
・・・そう、キミが思ったからだろ?
・・・だから、俺は護ろうと思う
・・・魔王に脅かされる人々の生活を、命を
・・・そして仲間を
「・・・俺がキミを絶対に護る」
「・・・食事の時の話しだけど、前にいたパーティの・・・」
「あぁ、なんとなく僧侶の前で話さない方がいいかなと思ったけど、当たりだったかな?」
隣に座る魔法使いが、うん、と軽く頷いたのが分かる。
「勘が良くて助かるわ。タブーって程じゃないけど、あんまり話したくないのは事実よ」
ふーっと息を吐き、やや疲れを感じる口調に、苦労してきたんだろうと察した。
「あたし達は、これまで二つのパーティに入った事があるの。最初のパーティは、男三人と女が一人の四人組だったわ。内訳は、男二人が戦士、もう一人の男が僧侶、女が武闘家。なんでも同郷で組んだ力押しのパーティだったみたい。攻撃魔法の使い手がいないから、ちょっと旅が行き詰ってたみたいなの。それで、あたし達の噂を聞いて声をかけてきたのよ」
「へぇ、まぁ確かに僧侶の回復魔法があっても、攻撃の魔法使いがいなきゃ厳しい魔物は沢山いるよな」
「そうよ。ゴースト系なんか特にそうでしょ?ゴースト専用の武器か、魔法でなきゃ倒せないんだから。だから、あんた達二人はちょっと信じられないわ。よく魔法使いと僧侶無しで三年も旅をしてここまで来たもんだわ」
魔法使いが、呆れと感心が混じった目を向けて来る。
言われてみれば本当にそうだ。怪我をしても薬草でしのぎ、ゴーストが出れば専用武器のみでゴリ押しで勝ってきた。
「・・・よく考えれば、本当にキミの言う通りだよ。これまでの旅を考えてみると、本当にけっこうギリギリだったと思う」
「まったく、よく今まで生きてたなって感心するわ。まぁ、そんなわけで、あたし達は条件があって仲間入りしたのよ。あたし達も丁度前衛が必要だって感じてたから。男三人女三人でバランスもいいでしょ?これで旅も楽になるって期待したの。でも・・・すぐに後悔したわ」
その声色にははっきりとした落胆があった。
顔を向けると、魔法使いは俯き加減で表情が沈んでいる。
思い出すのも嫌なのだろう。
俺は魔法使いが自分で気持ちを固めて話し出すまで待つ事にした。
時計の針は0時を回っているし、朝7時にはみんなで酒場に集合の約束をしたが、友は泥酔。僧侶もあの様子だと果たして起きれるかどうか。
場合によっては、午前中は休みにした方がいいだろう。
そんな事を考えていると、魔法使いが気持ちに整理をつけ、続きを話しだした。
「・・・アタシ達が仲間になって、最初のうちは良かったわ。彼らも親切だったし、女武闘家はあたし達のお姉さんって感じで、色々気にかけてくれて。でも、良い雰囲気なのはせいぜい一ヶ月だった。結果から言うとね、男三人がみんなあの子・・・僧侶を好きになっちゃったの」
「・・・え?」
男三人、女三人のパーティで、男三人が一人の女を好きになる?
なんだそれ?
「・・・夕食の時にもちょっと話したよね?男はみんなあの子を好きになるって」
「あ、あぁ・・・そう言えば、そんな事言ってたね。でも、全員って・・・」
魔法使いは、分かってると言うように、二度三度かるく頷くと話を続けた。
「うん、まぁ当然そう思うよね。でも本当なの。今日だって、勇者が完全にメロメロだったでしょ?あの人もうあの子の夢中よ。まぁ、あの勇者は惚れるの早過ぎだけど・・・あの三人もそうだったわ。
仲間になって一週間もすると、僧侶のあの子がムードメーカーになってきて、とにかく場を明るくするの。それで誰かが悩んでると付きっ切りで相談にのるし、魔物討伐が上手くいくとベタ褒めするの。怪我をすれば献身的に回復魔法をかける。それであの見た目でしょ?・・・そりゃ惚れますよ!」
最後の、惚れますよのところだけ、わざとおどけた感じで言うが、話しを聞く限り、確かに惚れる要素だらけだ。
「あ、一応誤解のないように言っておくけど、あたしはあの子の事好きよ。一番の友達だもん。それにあの子は男を惑わす悪女でもないわ。純粋に優しいだけなの。小さい頃から一緒にいるあたしが保証するわ。ただ・・・何ていうのかな?あの子は自分の意思に関係なく、男が好きになっちゃう女の子なのよ」
魔法使いは少し困ったように首をひねり、大きく息をついた。
それは何とかしたくても、どうしようもない。十分にそれを分かっている諦めのような溜息だった。
「そっか・・・うん、信じるよ。俺も僧侶がそんな悪い人だなんて思ってないから安心して」
「・・・うん、ありがとう。それでね、最初に告白したのがちょっとチャライ戦士だったのよ。
ウェ~イって感じのチャライ男ね」
こんな感じ、と言って魔法使いは、握り拳から親指と人差し指と小指の三本だけを立てて見せた。
「まぁ、普通にフラれたわ。ごめんなさいって。次はもう一人の戦士ね、こっちは真面目な男だったわ。でもフラれたわ。印象は・・・特にないわね。なんか真面目な感じ」
聞いてて思ったが、魔法使いはけっこうな毒舌のようだ。容赦なく切り捨てている。
そして、最後の一人の話しで、苦虫を噛み潰したように眉をしかめた。
「最後の一人は男僧侶だったんだけど、あいつが一番最悪だったわ。だって、あいつ女武闘家と付き合ってたのよ。それなのに、武闘家とは別れるから俺と付き合ってくれって僧侶に迫ったのよ!さいってー!」
魔法使いは思い出しても腹が立つらしく、体から魔力が滲み出てきた。
「ほぅ・・・そりゃ、同じ男から見てもけっこうなクズだな」
「でしょ!だから私、あいつを燃やしたの!」
「・・・・・え?」
目が点になる、という言葉はこういう時に使うのだろう。
呆けた顔をしていたのか、俺が口を開けて間の抜けた返事をすると、魔法使いは笑いながら俺の背中を強く叩いた。
「あっははは!なによその顔!あんたって面白いね!だ・か・ら、あいつの事燃やしたの!こう、火魔法でボーンって!」
右手の人差し指をくるくる回し、指先に火を灯し投げるまねをして見せる。
「お、おいおい!危ないって!」
「あっはははははは!ここでやるわけないでしょ。大丈夫大丈夫!あんたって本当におもしろいわね」
そう言って一層高く笑い声を上げると、魔法使いを指先に息を吹きかけて火を消した。
心臓に悪い。この魔法使い、けっこう危ない女なのか?
「・・・あ、もしかして引いちゃった?」
顔を覗き込み、ズバリ聞いてくる魔法使いに驚いて、少し顔を後ろに引くと、魔法使いは少し残念そうに眉を下げた。
「・・・そっかぁ~、うん、そりゃ引くよね。あたしっていつもこうなんだよね。ごめん、ちょっと一人で盛り上がっちゃって・・・あんたなら大丈夫かなって思ったんだ・・・」
「・・・いや、急に顔近づけてくるからびっくりしただけで、別に引いてなんかないよ。だから、そのくらいで落ち込むなよ」
思ったより勢いで行動するようなタイプのようで、確かに驚きはしたけれど
魔法使いは、本当?と、まだ少し疑うように目を向けてくるが、俺が目を見てしっかり頷くと、安心したように笑ってくれた。
「良かったぁ~、いやぁ、これから一緒に旅をするのに、いきなりマズったかなって思ったよ」
「ははは、そんな事ないよ。それで・・・燃やしたって・・・殺したって事?」
少し緊張した声でそう聞くと、魔法使いは軽い感じで笑いながら、顔の前で手を振った。
「え?いやいやいや、そこまでしないよ!体中の毛を燃やしたくらいで勘弁して上げたよ」
「・・・お、おう」
想像すると結構気の毒に思えた。それと同時に、魔法使いは怒らせないようにしようと決めた。
「えっと、話の続きだけど・・・それでどうなったの?」
変な空気になりそうだったので、とりあえず話しの続きを促すと、魔法使いは思い出すように手を叩いた。
「あ、そうそう!大変だったのよ。あの子が告られたの女武闘家にそっこーばれて、最初は浮気僧侶が責められてたんだけど、やっぱり良い気はしなかったんだろうね。あたし達にも冷たくなってさ・・・居づらくなったからさっさとパーティ抜けたの」
惚れられた僧侶はなにも悪くない。
だが、自分の彼氏の心を奪ったと見られるのは、やむを得ないのかもしれない。
頭で分かっていても、気持ちは理屈ではないのだろう。
「ま、それでやられっぱなしはムカつくし、浮気しようと誘ってきたアイツには、ちょっとくらい罰がないとって思って、別れ際に燃やしてきたのよ」
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