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16 抱擁
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話しの区切りがついたと思い、ベンチから腰を上げると、魔法使いが俺の袖を掴んでひき止めた。
「ちょっと、どこ行くのよ?もう一つのパーティの話しはいいの?」
あ、そう言えば前に二つのパーティに入ってたって言ってたな。
体中の毛を燃やしたってのが、あまりに衝撃的ですっかり忘れてたよ。
俺がベンチに座り直すと、魔法使いは一呼吸置いて話し始めた。
「それでね、二つ目のパーティなんだけど・・・実は先週抜けたばっかりなの」
「え、先週?そんなに最近なのか?」
驚いて声が少し高くなった。
先週抜けたばかりで、今日俺達とパーティを組んでくれたとは思わなかった。
話しの流れから、先週ぬけたパーティも僧侶の男がらみだと思うが、それでよく俺達と組んでくれたものだ。
「そりゃ、驚くよね。あんたが何を考えてるかもだいたい分かるわ。ぬけた原因はやっぱりあの子がらみよ。そのパーティは男二人と女二人の四人組だったの。ちなみに、それぞれカップルが出来てたからあたし達がパーティ入りを決めたって理由もあるわ」
なるほど、すでにカップルが出来上がっているなら、自分達に色目を使ってくる可能性は低い。
前のパーティには浮気僧侶がいたから絶対という事はないだろうが、それでも女二人のところに自分達が入れば、男二人に女四人。発言力は女性陣の方が強くなるだろうし、そうそうおかしな真似もできないだろう。
そういう考えもあったのかもしれない。
俺の考えている事を見透かすように、魔法使いは言葉を続けた。
「女四人になるわけでしょ?だからやりやすいかもって思ったの。それにこの町でトップレベルのパーティだったのよ。男戦士と男武闘家、女魔法使いと女僧侶、典型的なバランスの良いパーティだったし、でもね・・・ちょっと不思議に思ってもいたのよ。僧侶と魔法使いがすでにいるでしょ?なんで同じ職業のあたし達を誘って来たのかって」
魔法使いの疑問は最もだ。
俺も、確かにそうだ。と強く同意した。
「結論から言うとね、あの男二人は、パーティ内でハーレムを作りたかったのよ。仲間に入って2週間目くらいかな、あたし達も慣れて気心が知れてきた頃よ。部屋で一人で休んでいると、僧侶が勢いよくドアを開けてあたしに、助けてって抱き着いてきたの。怖がって震えてたわ。どうしたの?って聞くと、男戦士と武闘家の二人に、同時に迫られたらしいわ。それで、やんわり断っていたら肩を掴まれたから、無我夢中で逃げて来たって・・・」
魔法使いはその時の事を思い出し、またも怒りで体中から魔力が滲み出た。
無理もないけど、ちょっと危険だ。
俺は落ち着かせるように、トントンと軽く背中を叩いた。
「あ・・・悪いわね、思い出してもムカついちゃって・・・」
「いや、当然だと思うよ。でも、ここでは危ないから魔力は抑えような」
「・・・うん」
魔法使いは胸に手を当て、気持ちを落ち着かせるように何度か深呼吸をする。
にじみ出た魔力が消えると、話しの続きを始めた。
「・・・それでね、あたし男二人に文句を言いに行ったのよ。そしたらあいつらヘラヘラ笑ってさ・・・何て言ったと思う?あたしが焼きもち妬いてるって言うのよ!僧侶の後で可愛がってやるから怒るなよって!馬鹿にしてんじゃないわよッツ!」
たった今抑え込んだ魔力が爆発寸前まで高まった。
魔法使いの体から、とてつもない魔力がほとばしり、俺の体にビリビリと響くような強い魔力がぶつけられる。
木製のベンチが軋みだし、足元の石畳に亀裂が入る。
広場を囲む樹々は強烈な魔力の波動によって、今にもヘシ折れそうな程後ろに曲げられミシミシと音を立てている。
「なんであたしがあんたらに焼きもちやくのよ!?うぬぼれてんじゃないわよ!ばぁぁぁーーーーかッツ!」
「おい!落ち着け!これ以上は危険だ!ここを破壊する気か!?」
「全身の毛を燃やすだけじゃ甘かったわ!やっぱり今からでも男の象徴を踏み潰してやるッツ!」
俺の声が全く聞こえず興奮する魔法使いに、どうしていいか分からなかった俺は、とっさに魔法使いを抱きしめていた。
「落ち着け!分かってるから!キミはとても可愛いしすごく魅力的だ!そんな馬鹿共のたわごとなんか無視でいい!見る目が無いクズだ!考えるだけ時間の無駄だ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、はい」
暴走した魔法使いの魔力は、風船がしぼんだかのように一瞬で治まった。
俺は、ほっと息を付いて辺りを見回す。
揺さぶられた木からは、辺りを埋め尽くす程の葉が落ちている。
これはまだいい。幸い木はへし折れてない。
落ち葉だけなら、俺と魔法使いの二人で頑張って掃除すればいいだけだ。
だが、石畳は広場全体に亀裂を入れており、俺達が座っているベンチは、真っ二つになりそうな程、破損していた。
これはだめだ。どうしようもない。
真夜中だが、町長に報告に行って謝ってくるしかない。
「・・・あ、あのね、そ、その・・・あんたの気持ちは良く分かったわ・・・で、でもあたし達今日あったばかりでしょ?だ、だからもう少し時間かけてもいいかなって・・・そのね、嫌じゃないけど、嫌じゃないんだけど恥ずかしいから、そろそろ離して・・・」
魔法使いが腕の中でもぞもぞと身を捻っていたので、俺はまだ魔法使いを抱きしめたままだった事を思い出し、慌ててその体を離した。
ごにょごにょと何か言っていたようだが、俺はこの時、あれほど強い魔力を浴びせられた事による緊張感と、メチャクチャになってしまった広場を見て、今後の事へ頭をフル回転させていたのでほとんど聞こえていなかった。
俺は生涯雪女だけと心に決めている。
雪女は亡くなっている。それは理解しているが、俺はどうしても雪女を忘れる事ができない。
そんな気持ちなのに魔法使いを抱きしめてしまった。これは浮気になるのだろうか?
いや、雪女はきっと、いつまでも自分の事を引きずってないで新しい恋をしなさい。
そんな事を言いそうだ。
だけど、これが俺の正直の気持ちだ。
一生思い出と生きていく。
寂しい人生かもしれない。だけどそれでいい。
心に雪女がいるのに、他の女性と付き合うような器用なまねは俺にはできない。
俺は心の中で緊急事態だったから。と言い訳をして謝っておいた。
「ちょっと、どこ行くのよ?もう一つのパーティの話しはいいの?」
あ、そう言えば前に二つのパーティに入ってたって言ってたな。
体中の毛を燃やしたってのが、あまりに衝撃的ですっかり忘れてたよ。
俺がベンチに座り直すと、魔法使いは一呼吸置いて話し始めた。
「それでね、二つ目のパーティなんだけど・・・実は先週抜けたばっかりなの」
「え、先週?そんなに最近なのか?」
驚いて声が少し高くなった。
先週抜けたばかりで、今日俺達とパーティを組んでくれたとは思わなかった。
話しの流れから、先週ぬけたパーティも僧侶の男がらみだと思うが、それでよく俺達と組んでくれたものだ。
「そりゃ、驚くよね。あんたが何を考えてるかもだいたい分かるわ。ぬけた原因はやっぱりあの子がらみよ。そのパーティは男二人と女二人の四人組だったの。ちなみに、それぞれカップルが出来てたからあたし達がパーティ入りを決めたって理由もあるわ」
なるほど、すでにカップルが出来上がっているなら、自分達に色目を使ってくる可能性は低い。
前のパーティには浮気僧侶がいたから絶対という事はないだろうが、それでも女二人のところに自分達が入れば、男二人に女四人。発言力は女性陣の方が強くなるだろうし、そうそうおかしな真似もできないだろう。
そういう考えもあったのかもしれない。
俺の考えている事を見透かすように、魔法使いは言葉を続けた。
「女四人になるわけでしょ?だからやりやすいかもって思ったの。それにこの町でトップレベルのパーティだったのよ。男戦士と男武闘家、女魔法使いと女僧侶、典型的なバランスの良いパーティだったし、でもね・・・ちょっと不思議に思ってもいたのよ。僧侶と魔法使いがすでにいるでしょ?なんで同じ職業のあたし達を誘って来たのかって」
魔法使いの疑問は最もだ。
俺も、確かにそうだ。と強く同意した。
「結論から言うとね、あの男二人は、パーティ内でハーレムを作りたかったのよ。仲間に入って2週間目くらいかな、あたし達も慣れて気心が知れてきた頃よ。部屋で一人で休んでいると、僧侶が勢いよくドアを開けてあたしに、助けてって抱き着いてきたの。怖がって震えてたわ。どうしたの?って聞くと、男戦士と武闘家の二人に、同時に迫られたらしいわ。それで、やんわり断っていたら肩を掴まれたから、無我夢中で逃げて来たって・・・」
魔法使いはその時の事を思い出し、またも怒りで体中から魔力が滲み出た。
無理もないけど、ちょっと危険だ。
俺は落ち着かせるように、トントンと軽く背中を叩いた。
「あ・・・悪いわね、思い出してもムカついちゃって・・・」
「いや、当然だと思うよ。でも、ここでは危ないから魔力は抑えような」
「・・・うん」
魔法使いは胸に手を当て、気持ちを落ち着かせるように何度か深呼吸をする。
にじみ出た魔力が消えると、話しの続きを始めた。
「・・・それでね、あたし男二人に文句を言いに行ったのよ。そしたらあいつらヘラヘラ笑ってさ・・・何て言ったと思う?あたしが焼きもち妬いてるって言うのよ!僧侶の後で可愛がってやるから怒るなよって!馬鹿にしてんじゃないわよッツ!」
たった今抑え込んだ魔力が爆発寸前まで高まった。
魔法使いの体から、とてつもない魔力がほとばしり、俺の体にビリビリと響くような強い魔力がぶつけられる。
木製のベンチが軋みだし、足元の石畳に亀裂が入る。
広場を囲む樹々は強烈な魔力の波動によって、今にもヘシ折れそうな程後ろに曲げられミシミシと音を立てている。
「なんであたしがあんたらに焼きもちやくのよ!?うぬぼれてんじゃないわよ!ばぁぁぁーーーーかッツ!」
「おい!落ち着け!これ以上は危険だ!ここを破壊する気か!?」
「全身の毛を燃やすだけじゃ甘かったわ!やっぱり今からでも男の象徴を踏み潰してやるッツ!」
俺の声が全く聞こえず興奮する魔法使いに、どうしていいか分からなかった俺は、とっさに魔法使いを抱きしめていた。
「落ち着け!分かってるから!キミはとても可愛いしすごく魅力的だ!そんな馬鹿共のたわごとなんか無視でいい!見る目が無いクズだ!考えるだけ時間の無駄だ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、はい」
暴走した魔法使いの魔力は、風船がしぼんだかのように一瞬で治まった。
俺は、ほっと息を付いて辺りを見回す。
揺さぶられた木からは、辺りを埋め尽くす程の葉が落ちている。
これはまだいい。幸い木はへし折れてない。
落ち葉だけなら、俺と魔法使いの二人で頑張って掃除すればいいだけだ。
だが、石畳は広場全体に亀裂を入れており、俺達が座っているベンチは、真っ二つになりそうな程、破損していた。
これはだめだ。どうしようもない。
真夜中だが、町長に報告に行って謝ってくるしかない。
「・・・あ、あのね、そ、その・・・あんたの気持ちは良く分かったわ・・・で、でもあたし達今日あったばかりでしょ?だ、だからもう少し時間かけてもいいかなって・・・そのね、嫌じゃないけど、嫌じゃないんだけど恥ずかしいから、そろそろ離して・・・」
魔法使いが腕の中でもぞもぞと身を捻っていたので、俺はまだ魔法使いを抱きしめたままだった事を思い出し、慌ててその体を離した。
ごにょごにょと何か言っていたようだが、俺はこの時、あれほど強い魔力を浴びせられた事による緊張感と、メチャクチャになってしまった広場を見て、今後の事へ頭をフル回転させていたのでほとんど聞こえていなかった。
俺は生涯雪女だけと心に決めている。
雪女は亡くなっている。それは理解しているが、俺はどうしても雪女を忘れる事ができない。
そんな気持ちなのに魔法使いを抱きしめてしまった。これは浮気になるのだろうか?
いや、雪女はきっと、いつまでも自分の事を引きずってないで新しい恋をしなさい。
そんな事を言いそうだ。
だけど、これが俺の正直の気持ちだ。
一生思い出と生きていく。
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