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25 魔法使いは諦めない
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友が話し終えると、重苦しい沈黙だけが残った。
友は肩をすくめ一口水を飲んだ後、俺達を一瞥し、自分の説明に対しての言葉を待つように腕を組みそれきり黙ってしまった。
どのくらい待っただろうか。口火を切ったのは魔法使いだった。
「・・・ねぇ、あんたが雪女の言葉を大切にしてるのはよく分かったわ。でも、結果的に魔王を倒せるんなら、それはコイツと一緒じゃなくてもいいんじゃないの?」
魔法使いが友の鼻先に指を突きつける。
指差しとコイツ呼ばわりされた事は、友のプライドを刺激したようだ。
みるみる顔つきが険しくなり、友が激怒しそうになった瞬間、僧侶がカバーに入った。
「まぁまぁ勇者様、怒らないでくださいな。はい、一杯どうぞ」
そう話しながら笑顔でお酌をすると、納得できた顔ではないが、友もとりあえずの怒りは抑えたようだ。
「・・・それは、そうかもしれないが・・・」
魔法使いの言う通り、魔王を倒す事が最重要であり、それができるのであれば友と旅をする事にこだわり続ける必要はないのかもしれない。
しかし、俺には雪女がそれだけではなく、友と俺が友情を取り戻す事を願っていたのではないかとも考えていた。
「・・・ねぇ、あんたこだわり過ぎてんのよ。自分自身の考えに縛られ過ぎて、何がなんでもそうしなきゃいけないって頭になってる。てきとうにって言うのは言い方悪いかもしれないけど、もうちょっと楽に考えていいんじゃない?あんた真面目過ぎんのよ」
魔法使いの言葉が俺の胸に突き刺さる。
今まで自分をそんな風に見た事はなかったけれど、その通りかもしれない。
「・・・そう、なのかな?」
「そうよ!もうね、あんたは本当に頭固いのよ!石よ石!うぅん、鉄よ!鉄頭よ!」
魔法使いは勢いよく立ち上がると、指先を俺に突きつけて声高く言い放った。
「・・・鉄、頭?」
「そうよ、カッチカチの鉄頭よ」
言われた言葉をそのまま問い返すと、魔法使いは腕を組んで俺を見下ろしながら大きく頷いた。
「・・・ぷっ、あははははは!なにそれ面白い!」
「うふふ、確かに彼は真面目過ぎるかもしれませんね。何回水が零れても拭くのを手伝ってくれますし」
僧侶が笑い出すと、つられたように店員さんも口を押さえてクスクス笑い出した。
魔法使いも、どうだと言わんばかりに得意気な顔で俺を見ると、イスに腰を下ろした。
「・・・そっか・・・うん、キミの言う通りだよ。俺は雪女の言葉を大切に守っているつもりだったけど、彼女の言葉だけを聞いて、気持ちを考えていなかったのかもしれない・・・」
今言われた言葉だけで割り切れたわけではないけれど、少しだけ心が軽くなったような気がした。
店員さんはそんなの俺の表情をじっと見つめた後、魔法使いに顔を向けて微笑んだ。
「・・・本当に・・・あなたは彼の事を、とてもよく見ていらっしゃるんですね」
「そりゃそうよ、だってこの人さ、私が見てないとなんか危なっかしいんだもん。どこか自分の命を軽く考えてるとこあるのよ。前から思ってたけど、もうハッキリ言うわ。あんた雪女を引きずり過ぎなのよ」
魔法使いがあらためて俺を見てそう断言すると、店員さんはとても悲し気に目を伏せてうつむいた。
「ねぇ、あんたが雪女を今でも大切に想ってるのは分かるわ。あんたから聞いた話しで、雪女がとっても優しくて綺麗な心を持ってたのも分かった。でもさ、もう何年?雪女だって、あんたがこのまま死ぬまで引きずってるのを望んでると思う?忘れろなんて言わないわ。でも、そろそろ前を向いたらどう?」
魔法使いの声ははっきり届いている。
だけど、自分の気持ちに整理をつけるには、まだ少し時間がかかると思う。
だからすぐに返事はできなかった。
「・・・なんてね、偉そうに言っちゃったけど、私もまだ諦めてないから、あんたに何か言う資格はないわ」
「え?・・・なにを諦めてないの?」
返事に困り下を向いてしまうと、急に冗談めかした言い方で話す魔法使いに、顔を上げて聞き返す。
「なにって、決まってるでしょ?」
魔法使いは俺を真っ直ぐに見て、人差し指を向けてきた。
「あんたよ、あんた」
友は肩をすくめ一口水を飲んだ後、俺達を一瞥し、自分の説明に対しての言葉を待つように腕を組みそれきり黙ってしまった。
どのくらい待っただろうか。口火を切ったのは魔法使いだった。
「・・・ねぇ、あんたが雪女の言葉を大切にしてるのはよく分かったわ。でも、結果的に魔王を倒せるんなら、それはコイツと一緒じゃなくてもいいんじゃないの?」
魔法使いが友の鼻先に指を突きつける。
指差しとコイツ呼ばわりされた事は、友のプライドを刺激したようだ。
みるみる顔つきが険しくなり、友が激怒しそうになった瞬間、僧侶がカバーに入った。
「まぁまぁ勇者様、怒らないでくださいな。はい、一杯どうぞ」
そう話しながら笑顔でお酌をすると、納得できた顔ではないが、友もとりあえずの怒りは抑えたようだ。
「・・・それは、そうかもしれないが・・・」
魔法使いの言う通り、魔王を倒す事が最重要であり、それができるのであれば友と旅をする事にこだわり続ける必要はないのかもしれない。
しかし、俺には雪女がそれだけではなく、友と俺が友情を取り戻す事を願っていたのではないかとも考えていた。
「・・・ねぇ、あんたこだわり過ぎてんのよ。自分自身の考えに縛られ過ぎて、何がなんでもそうしなきゃいけないって頭になってる。てきとうにって言うのは言い方悪いかもしれないけど、もうちょっと楽に考えていいんじゃない?あんた真面目過ぎんのよ」
魔法使いの言葉が俺の胸に突き刺さる。
今まで自分をそんな風に見た事はなかったけれど、その通りかもしれない。
「・・・そう、なのかな?」
「そうよ!もうね、あんたは本当に頭固いのよ!石よ石!うぅん、鉄よ!鉄頭よ!」
魔法使いは勢いよく立ち上がると、指先を俺に突きつけて声高く言い放った。
「・・・鉄、頭?」
「そうよ、カッチカチの鉄頭よ」
言われた言葉をそのまま問い返すと、魔法使いは腕を組んで俺を見下ろしながら大きく頷いた。
「・・・ぷっ、あははははは!なにそれ面白い!」
「うふふ、確かに彼は真面目過ぎるかもしれませんね。何回水が零れても拭くのを手伝ってくれますし」
僧侶が笑い出すと、つられたように店員さんも口を押さえてクスクス笑い出した。
魔法使いも、どうだと言わんばかりに得意気な顔で俺を見ると、イスに腰を下ろした。
「・・・そっか・・・うん、キミの言う通りだよ。俺は雪女の言葉を大切に守っているつもりだったけど、彼女の言葉だけを聞いて、気持ちを考えていなかったのかもしれない・・・」
今言われた言葉だけで割り切れたわけではないけれど、少しだけ心が軽くなったような気がした。
店員さんはそんなの俺の表情をじっと見つめた後、魔法使いに顔を向けて微笑んだ。
「・・・本当に・・・あなたは彼の事を、とてもよく見ていらっしゃるんですね」
「そりゃそうよ、だってこの人さ、私が見てないとなんか危なっかしいんだもん。どこか自分の命を軽く考えてるとこあるのよ。前から思ってたけど、もうハッキリ言うわ。あんた雪女を引きずり過ぎなのよ」
魔法使いがあらためて俺を見てそう断言すると、店員さんはとても悲し気に目を伏せてうつむいた。
「ねぇ、あんたが雪女を今でも大切に想ってるのは分かるわ。あんたから聞いた話しで、雪女がとっても優しくて綺麗な心を持ってたのも分かった。でもさ、もう何年?雪女だって、あんたがこのまま死ぬまで引きずってるのを望んでると思う?忘れろなんて言わないわ。でも、そろそろ前を向いたらどう?」
魔法使いの声ははっきり届いている。
だけど、自分の気持ちに整理をつけるには、まだ少し時間がかかると思う。
だからすぐに返事はできなかった。
「・・・なんてね、偉そうに言っちゃったけど、私もまだ諦めてないから、あんたに何か言う資格はないわ」
「え?・・・なにを諦めてないの?」
返事に困り下を向いてしまうと、急に冗談めかした言い方で話す魔法使いに、顔を上げて聞き返す。
「なにって、決まってるでしょ?」
魔法使いは俺を真っ直ぐに見て、人差し指を向けてきた。
「あんたよ、あんた」
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