お家の大精霊さんのまったり異世界暮らし

観測オニーちゃん

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第一章 気まぐれな白き虎

015話 報酬

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 カラレデスが完全に消滅した後公園に充満していた瘴気を浄化し優達四人は療養所へと戻ることにした。

 療養所ではすでに石化が解けた人々が目を覚ましており優を発見するや否やお礼を言うために優の元に群がってきた。ダンとジン、ウォルトはと言うと優をおいてハウザーがいる医務室に移動していた。恐らく状況報告しに行ったのだろう。

「あのう」

 群衆の中から見覚えのある白虎獣人の子供が声をかけてきた。

「……どうぞ」

 そしてルイ君は尻尾を握り頭を下げケモ耳と尻尾を優に見せると「一思いにやってくれ!」といった。

「いや千切らないよ!」

「え?千切らないの?」

「千切らないよ。……モフるけど」

「だって母さんが」

 ルイはチラリとマリアさんの方を見ると「ウフフ」と微笑んでいた。

 ルイは揶揄われていたことに気づき赤面する。

そして「もう知らん!」と言い残しどこかへ走って行ってしまった。

 あ~モフモフが!
 僕のモフモフが遠のいていく~。

 するとマリアさんが優に近づき謝罪する。

「ごめんなさいね。ちょっと揶揄いたくなっちゃって」

「なんて、教えたんですか?」

「ルイの耳と尻尾をあげなきゃ私とダンが蝋人形にされるって」

「僕は悪魔でも閣下でもなく精霊なんですけど?なんで揶揄ったんですか?」

 あれなら、普通にモフらせてくれそうだったのに……

「最近、一段と悪ガキさに磨きがかかってきてね。店の果物を盗むは家の外壁に落書きするはで手がつけられなくて。最近ではご近所さんの息子さんに噛み付いたり(物理的な意味で)……まぁ、今回は私がいけないわね」

「大人気なかったわ」と反省するマリアさんを見て優は子育ての大変さを垣間見た。

 でも、ご両親のため耳と尻尾を千切りられに僕の元へ来たのは子供でありながら中々に漢気があるのではないか?

「ルイ君は良い子だと思いますよ。ちょっとモフりに行ってきますね」

 そして、優は《転移》を使いルイ君の元へ移動した。

 
 ◇◇◇◇◇
 
 給仕室では毎日1100食以上の料理が作られている。
 食種に関しても幅広く一般食や糖尿病食などの治療食だけでなく、出産をされた方の産後食、咀嚼や嚥下が難しい方に対するキザミ食・ミキサー食まで幅広く対応していた。

 そして今回、配膳車には一般食が並べ置かれておりルイは幾分後には配膳されるであろうステーキ定食一食分を抜き取った。

「病院食なのにステーキって豪勢だね?」

 海外では別段珍しいものではないらしいけど元日本人である優からしたら驚きであった。

「うにゃ?!」

 そして、急に後ろから声をかけられたルイは驚きのあまりお盆をひっくり返してしまった。

「おっと!」

 しかし、優は床に料理が散乱する前に《修復》の魔法を使用しルイの手元にステーキ定食を戻した。

「あ、あぶねー。てか、何しに来たんだよ」

「モフりに来ました。それよりもまだ夕飯には少し早いと思うけど配膳されるまで待てなかったの?」

「腹が減ったからな」

「果物を盗むのも同じ理由?」

「あぁその通りだ」

 こやつ……筋金入りの悪ガキやな。

「壁に落書きしたのはなぜ?」

「そこに白い壁があったからさ」

 そこに山があったからみたいなノリやめい。

「近所の子に噛み付いたのは?」

「我が友を傷つけたから。それにアイツ最近調子に乗ってたからな。大商人の息子だかなんだか知らないが威張り散らかしやがって。だからぶっ飛ばしてやったのさ」

 なるほど。気性の荒さはダンさんに似たのかな?それとも獣人の子ってみんなこうなのか?

「てか、お前には関係ないだろ?」

「気になっただけだよ。それじゃあ、モフらしてもらって良い?」

 しかし、ルイはフンッと笑い「嫌だね」と答えた。

「なんでよ。ちぎられるのは良くてモフられるのは嫌なの?」

 おかしくない?と反論するが「気分が変わった」といって聞く耳を持たない。

「ふっ、所詮ガキンチョか。世界の道理を弁えていない」

「何?」
 
 お前もガキだろ?とルイは反論しようとしたが優が精霊であることを考慮し見かけ通りの年齢ではないことを瞬時に判断したため一応黙ることにした。

「この世界はね、ギブアンドテイクで成り立っているのだよ」

 そこでルイは反論する。
 
「ありえないな。俺はリンゴを盗んだんだぜ?お金を払ってない」

「じゃあ、誰かが払ってくれたんじゃない?何故マリアさんがそのことを知っているんだろうね?」

 ルイはそれに気がついたのかかなり気まずそうな表情を浮かべる。

「この世には無償の愛ってのが存在する。ご両親が君を叱るのもそれに該当するのだろうね」

 まぁ、親として当然のことだろうけど僕はルイ君の親じゃないからな。

「でも実際は無償なんてものは存在しない。無償の愛を受けたならば無償の愛で返すそれが暗黙の了解ってやつさ」

 それ無償じゃなくね?と思うかもしれないがその通り。言わば貸し借りなしね。対等でいようねって話だ。

 「だから君は僕に何をくれる?」と優はルイ君に催促する。

「……わかったよ。触らせてやるよ」

 ルイは観念したのか耳と尻尾を差し出した。

「うむ。くるしゅうないぞ」

 その後めちゃくちゃモフった。
 
 
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