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第一章 気まぐれな白き虎
017話 気まぐれな白き虎
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しんしんと雪が降る中、白銀に覆われた世界で1匹の獣が身じろいだ。その少女からそっぽを向く様にそっと。
「貴方に頼みたいことがあるの」
ほら来た!と言わんばかりに耳をぺたんと畳む。しかし、完全に音を遮断しているわけではない。煩わしい音を極力聴かない様にするための単なる悪あがきの様なものだ。
「私は先程あの村で邪神の眷属を封印しました。本当は完全に消滅させたかったのですが私と奴はあまりに相性が悪かった」
まるで痴話喧嘩の様な話だが聖獣としての性なのか聴かざるを得なかった。
「村の守護神として崇められている貴方に、封印の守護をお願いしたいのです」
やはり、面倒ごとかと深いため息を吐く。
『はぁ。奴らが勝手に崇めているだけだ』
まるで自分には関係のない話だと頼みを断った。しかしその少女は彼の貢物であろう酒をぶん取り一気に呷る。
『ッ!我の酒だぞ!』
「村人達にはこれから私を崇める様に言っておきますのでこの貢物は全部私のものってことで良いですね?」
少女は貢物である大根やら干し肉を喰らい始める。
『はぁ。分かった。気が向いたら守護することを約束しよう』
「気が向いたらですか?」
少女はぷくーっと頬を膨らませ明らかに不服という表情をした。しかし、獣も馬鹿ではない。あの封印はそう簡単には解かれることはないと見抜いていた。解かれるとしたらこの世界の寿命が尽きる時。または何かしらの要因で世界が滅ぶその日までは心配することはないとその獣は考えていた。
『あぁ。だから我の酒を飲むな!それ、我の干し肉!それ我の大根!』
その獣も負けじと少女と一緒に貢物を喰らい合う。
そして月日は流れ、その時が訪れる。
あれから数千年の時が経ち、村も街へと発展し白き獣の存在も、封印のことも忘れ去るには十分な時間が経過している。
今日もいつもの如く平和な1日がやってくると住民達は信じていた。
しかし、悲劇は唐突に訪れる。
その街は一夜にして黒い瘴気の霧に閉ざされた。
住民は皆石化し、活気のあった町は一瞬にして静寂に包まれたのだ。
幸いだったのがそれが唐突過ぎて住民達は自身が石化したことに関して気がついていないことだろう。
街を覆う瘴気の中に最早生命の輝きというものがなかった。そんな中、変わり果てた街中を悠然と闊歩する白き獣が居た。
太々しくも堂々と霧の中を歩き進め、瘴気の発生源らしき場所にて香箱座りをする。
獣はそっと目を閉じ、あの日の…今では顔さえ朧げな少女の姿を思い出しながら深い眠りについた。
空からは雪がしんしんと降り、世界は白銀に覆われる。住民は季節外れの雪に慌てて颯爽と家へ帰って言った。
「ねぇ、お母さん。猫さんがいるよ?」
「あら、こんなオブジェここにあったかしら?」
そして、いつしかオブジェの周りには子が集まり【白猫平和公園】と呼称される様になったという。
「貴方に頼みたいことがあるの」
ほら来た!と言わんばかりに耳をぺたんと畳む。しかし、完全に音を遮断しているわけではない。煩わしい音を極力聴かない様にするための単なる悪あがきの様なものだ。
「私は先程あの村で邪神の眷属を封印しました。本当は完全に消滅させたかったのですが私と奴はあまりに相性が悪かった」
まるで痴話喧嘩の様な話だが聖獣としての性なのか聴かざるを得なかった。
「村の守護神として崇められている貴方に、封印の守護をお願いしたいのです」
やはり、面倒ごとかと深いため息を吐く。
『はぁ。奴らが勝手に崇めているだけだ』
まるで自分には関係のない話だと頼みを断った。しかしその少女は彼の貢物であろう酒をぶん取り一気に呷る。
『ッ!我の酒だぞ!』
「村人達にはこれから私を崇める様に言っておきますのでこの貢物は全部私のものってことで良いですね?」
少女は貢物である大根やら干し肉を喰らい始める。
『はぁ。分かった。気が向いたら守護することを約束しよう』
「気が向いたらですか?」
少女はぷくーっと頬を膨らませ明らかに不服という表情をした。しかし、獣も馬鹿ではない。あの封印はそう簡単には解かれることはないと見抜いていた。解かれるとしたらこの世界の寿命が尽きる時。または何かしらの要因で世界が滅ぶその日までは心配することはないとその獣は考えていた。
『あぁ。だから我の酒を飲むな!それ、我の干し肉!それ我の大根!』
その獣も負けじと少女と一緒に貢物を喰らい合う。
そして月日は流れ、その時が訪れる。
あれから数千年の時が経ち、村も街へと発展し白き獣の存在も、封印のことも忘れ去るには十分な時間が経過している。
今日もいつもの如く平和な1日がやってくると住民達は信じていた。
しかし、悲劇は唐突に訪れる。
その街は一夜にして黒い瘴気の霧に閉ざされた。
住民は皆石化し、活気のあった町は一瞬にして静寂に包まれたのだ。
幸いだったのがそれが唐突過ぎて住民達は自身が石化したことに関して気がついていないことだろう。
街を覆う瘴気の中に最早生命の輝きというものがなかった。そんな中、変わり果てた街中を悠然と闊歩する白き獣が居た。
太々しくも堂々と霧の中を歩き進め、瘴気の発生源らしき場所にて香箱座りをする。
獣はそっと目を閉じ、あの日の…今では顔さえ朧げな少女の姿を思い出しながら深い眠りについた。
空からは雪がしんしんと降り、世界は白銀に覆われる。住民は季節外れの雪に慌てて颯爽と家へ帰って言った。
「ねぇ、お母さん。猫さんがいるよ?」
「あら、こんなオブジェここにあったかしら?」
そして、いつしかオブジェの周りには子が集まり【白猫平和公園】と呼称される様になったという。
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