気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)

ゆ、ゆゆゆ誘惑って……そんなの、ど、どうしたらいいんだよ……

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「と大見得を切ったものの、一週間でもう心が折れそう……と」

 テーブルの上に突っ伏して、うなだれている俺に向かって相談内容を繰り返す声。少し高めの可愛らしい声が、苦笑を漏らす。

「だってぇ……相変わらず軽いスキンシップとキスだけだし……会えるのも放課後だけだしさ。もっとこうさぁ、なんかあってもいいじゃん……」

 もごもごと愚痴る俺を、茶色の髪の青年、ライが琥珀色の瞳で眺めている。

 今日も、いっぱいキスはしてもらえたけど……それ以上の進展はなかった。成果無しってヤツだ。

 凹んだ俺は、同じ学生寮に住む友人。ライに慰めてもらいに彼の部屋を訪れた訳で。

 ライには唯一俺と先生の関係を話している。だから、時々こうして話を聞いてもらったり、相談にのってもらってしているんだ。

 先生からも、ライ君だったら口が堅いだろうし大丈夫だね、と太鼓判をもらい済みだ。

「もういっそ、素直にエッチしたいって言っちゃえばいいのに」

「……そんなストレートに言えたら苦労しないよ」

 ライって、やっぱり結構大人っていうか、堂々としてるよな。見た目は元主人公らしく、守ってあげたくなるような小柄で、屈託のない笑顔がスゴく可愛らしいのにさ。

 ライが、あっけらかんと口にした、直接的な単語に頬が熱くなってしまう。思わず顔を背けてしまっていた。

 よっぽど変な顔になっているんだろうか。テーブルの向かいから、クスクス笑う声が聞こえた。

「でも……実際問題シュンの方から積極的にアプローチしていかないと、先生からは手を出しづらいんじゃない?」

「それって……俺が、先生の生徒だから?」

「うん。それに年の差もあるんだし……」

 ライの言う通りだ。実際、俺が相談する前は、卒業するまで待つつもりだったみたいだしなぁ……それに、校長先生の手前もあるよな……

 ますます肩が、ズンと重くなっていく。再びテーブルと仲良しこよしになっていた俺の頭上で、明るい声が上がる。

「あっ! そうだ!」

 パチンと小さな手を合わせたライの表情も明るい。まさに、良いことを思いついたって感じだ。

 声を弾ませ、満面の笑みを浮かべるライ。彼が放った提案は、周囲に花が舞っていそうな雰囲気からは、かけ離れたものだった。

「誘惑して、手を出さざるを得ない状況に追い込んだら?」

「ゲホッ」

 思わずむせてしまった俺とは違い、ライは何とも思っていないご様子だ。呑気な声で、大丈夫? と心配してくれるくらいだからな。

「ゆ、ゆゆゆ誘惑って……そんなの、ど、どうしたらいいんだよ……」

 何も思いつかないんだけど!?

 え? 雄っぱい見せるとか? いや、俺、先生みたいにムチムチじゃないし。つんつるてんだし。

 っていうか、俺が嬉しいだけじゃん、それ。先生の好みなんて知らないんだけど……

 ぐるぐる頭を回している俺に、救いの一声。ライが、俺の手を強く握り締める。

「おねだりすればいいんだよ! 今日は帰りたくない、先生の部屋に泊めて? って」

 成る程……それくらいなら俺でも出来そう。しかも、先生を俺の部屋に招くよりは、まだ問題はなさそうだ。でも……

「そんな我が儘言って、先生に嫌われたりしないかな……?」

 優しい先生を困らせたくない。ましてや、嫌われてしまったら……

 うじうじと弱音を吐く俺に対して、ライは自信満々で即答する。

「先生、シュンにべた惚れだから、それくらい我が儘の内に入らないと思うよ? むしろ喜んでくれるんじゃない?」

「……そう、かな……」

 だったら、スゴく嬉しいけれど。

「と、に、か、く! このままじゃ、きっと卒業するまで進展しないよ? 先生と、もっとイチャイチャしたいんじゃなかったの?」

「……したいです」

「だったら頑張らないと! 明日は金曜日だよ! 上手くいけば土日の間、先生と一緒に過ごせるかもよ?」

 休日に先生と二人きり……想像しただけで頬がだらしなく緩みそうになってしまう。

「決まったみたいだね! よーし……じゃあ先生をその気にさせるためにも、今から作戦会議しよう!」

 親身になって、当事者である俺以上に意気込みを見せてくれるライ。優しくて頼もしい友人に感謝しつつ、明日に向けて俺達の作戦会議が始まった。
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