気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)

いざ、作戦会議! リミットは一時間 サイドA

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 サルファー先輩から『じゃあ、一時間後にお邪魔してもいいだろうか?』と返信がきたので『はいっ分かりました、待ってます』と返してから、俺はライと作戦を練ることに。

「ねぇ、シュン。改めて確認するけどさ……」

「うん」

「シュンは今回のお泊りで、サルファー先輩とキス以上のことをしたいってことで良いんだよね?」

「っ……」 

 心臓が大きく跳ねる。

 真っ直ぐな瞳で、直接的なことを尋ねられ、思い浮かべてしまったのだ。

 いつも俺の頭を優しく撫でてくれていた大きな手。手の甲には血管が浮き出ており、手のひらは分厚く固い。努力と鍛錬の証である剣だこが刻まれた長い指は、ゴツゴツしているのに白くて綺麗でカッコいい。

 そんな大好きな先輩の手に触れてもらえる甘いひと時を。親しい者に対する可愛がりではなく、恋人として可愛がってもらえるひと時を。

「は、はい……その、あわよくば……」

 一気に顔が熱を持ち、声を震わせてしまっていた俺の返答に、ライが小さな眉を下げる。

「もー……あわよくば、じゃ駄目だよ。意志を強くもたないと! ただでさえ、昨日はお誘い失敗しちゃってるんでしょ?」

「……そう、ですね」

 ライが続けて言い放つ。

「もう、期待して待ってるだけじゃ駄目だよ!」

 その言葉は、的確に俺の胸をブチ抜いていった。

 ……仰る通りである。先輩から、もう一度キスしてくれるんじゃないかなって、先輩からお部屋に誘ってくれるんじゃないかなって、期待して待っていた結果が何もナシだったのだから。

「進展させたいんだったら、しっかりしないと! それこそ、シュンの方からサルファー先輩を襲うくらいのつもりでいなきゃ駄目だよ!」

「襲っ!? 俺が? 先輩を? そんなの、どうやって……」

 平均値な体格の俺とマッチョで長身な先輩、見た目だけでも力の差は歴然だ。

 おまけに先輩は凄腕の剣士、鍛え方が違うのだ。仮に俺が押し倒そうと試みたところで、ビクとも動かないのがオチだろう。

 それでも、もし押し倒せるというならば、その方法を知りたいぐらいだ。

 俺の表情から、多少は興味があることを察したんだろうか。ライは茶色の瞳を輝かせながら、意気揚々と俺に提案してくる。

「押し倒すのは、体格差的に無理かもだけど……キスしたり、抱きついたりした後に上目使いで好きにして? って言えば、きっとイチコロだよ!」

 成る程。そういうアプローチなら俺でも出来るかもしれないな。昨日も一応、抱きつくことは出来たんだし。でも……

「そんなに上手くいくかな? 昨日だって、キスしかしてくれなかったのに……」

 それどころか、多分先輩は、俺が出してしまっていたサインに気づいていたハズ。もっとして欲しいなっていう我儘に。

 けれども、先輩はあからさまに話題を変えてきたのだ。お陰でお食事デートは出来たんだけどさ。

 無意識の内に自分の腕を抱きながら俯いていると、肩を掴まれる。反射的に顔を上げれば、力強く輝く茶色の瞳とかち合った。

「大丈夫だよ! むしろ先輩みたいなタイプは、こっちからガンガン行かないと! 言ったでしょ? 期待して待ってるだけじゃ駄目だって」

 そう……だな。そうだ。

 やる前からウジウジしていちゃダメだよな。ちゃんとぶつかっていかないと。

「分かった……俺、頑張るよ。相談乗ってくれてありがとう、ライ」

 俺が意を決して拳を握るとライの顔がぱあっと輝く。

「頑張ってね! シュン!」

「ああ!」

 明るい声援を背に受けて、俺はライの部屋を後にした。
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