170 / 645
マッチョな先輩と恋人同士になった件(サルファールート)
★ 俺だって我慢していたのに、無理なんかしていないのに
しおりを挟む
俺の疑問に答えるように、先輩は話し始める。頼もしく盛り上がった肩を縮め、高い背を屈めながら。
「いや……その……湯上がりの君がとても色っぽくて……色々と思い出してしまってな……」
色っぽい……? 俺が……?
嬉しさと困惑が同時にやってきて、俺は固まってしまっていた。その間にも先輩は、指先で赤い頬を掻きながら続ける。
「君にバレてしまう前に何とか浴室に駆け込んで、シャワーを浴びて気持ちを鎮めたんだが……君の顔を見ると、その……ムラムラしてまうというか……」
俺を見ると……ムラムラする? 先輩が?
先輩の追撃、もとい答え合わせは、なおも続く。
やれ「だから、出来るだけ顔を見ないように目線を下げていたんだが……そうすると、今度は君の無防備な首元が見えてしまって……余計に気持ちが昂ってしまってな……」とか。
やれ「煩悩を払う為に瞑想も試みたんだが、君の笑顔ばかりが浮かんでしまって……」だとか。
目が合わなかったのも、上の空だったのも、気持ちを鎮める為だったと。無理をさせてしまった俺に、これ以上の無理をさせぬよう堪えていたんだと言うのだ。
だったら、一言、言ってくれればいいじゃないか。そう俺が思うよりも、口にするよりも先に言われてしまった「君は優しいから……俺が白状すれば、無理をしてでも応えてくれようとするだろう?」と。
黙ったままの俺を見て、先輩が微笑む。困っているような、嬉しそうな笑顔だった。
「そういう訳でな……こんな状態で君とベッドを共にしようもんなら、俺は絶対に手を出してしまう……だから」
言葉よりも先に、俺は行動していた。分厚い胸板に飛び込んで、広い背中を抱き締めていた。
「っ……シュン、俺の話を聞いていただろう? 今の俺は」
「……いいですよ。それに、無理なんかしてないです」
少し見上げた先にある先輩の顔は、耳まで真っ赤っ赤だった。
俺を抱き締め返そうとして、けれども我慢しようとしていたんだろう。中途半端に上がった両手が、ぷるぷると震えている。
「……俺も、先輩に……してもらえたの、思い出してましたし……またして欲しいなって……思ってましたから……」
「……シュン」
「……我慢しようとしてたのも、一緒です」
黄色い瞳を瞬かせて「そうか」と小さく呟いた唇に、緩やかな笑みが形作られていく。筋肉で盛り上がった腕が俺を抱き締める。
交わした、触れるだけのキスが合図だったみたい。飢えた獣が獲物の喉笛に噛みつくように、先輩は俺の首元に吸いついてきた。
「……あっ……ん、んっ」
唇で軽く食んだり、俺の肌をふやかすように丹念に舌で舐めたり。また、キスマークを付けてくれるつもりなんだろうか。
柔い先輩の唇が触れてくれる度に、熱く濡れた舌が這う度に、俺の身体は電気でも走ってるみたいにビクビク跳ねた。早くも俺の身体は、思考は、心地のいい波に飲まれようとしていた。
ふと、視界の端にベッドが映る。どうせなら、あそこで普通の恋人同士らしく、先輩と。
「ふ、ぁ……せんぱ……ベッド……」
「……分かった」
言葉足らずな訴えだったのに、先輩は察してくれたらしい。首元から顔を離すと力の入らない俺を軽々と抱き抱えてくれた。
ゆっくりと先輩が俺をベッドへと横たえてくれる。背中に触れたシーツは、服越しなのにひんやりしていて気持ちがいい。
軋む音がして、先輩が俺に覆い被さってくる。逞しい太ももが俺の身体を跨いで、大きな両の手のひらが顔を挟むように置かれた。
俺を見下ろす先輩には、普段の爽やかさはない。見たことのない、雄の顔をした先輩が、そこにはいた。
ギラつく黄色の瞳が、俺を捉えて離さない。荒い吐息を漏らす唇から、白い歯と赤い舌が覗いていた。
もう、逃げられそうにない。そもそも逃げようとも思わないけど。
「いや……その……湯上がりの君がとても色っぽくて……色々と思い出してしまってな……」
色っぽい……? 俺が……?
嬉しさと困惑が同時にやってきて、俺は固まってしまっていた。その間にも先輩は、指先で赤い頬を掻きながら続ける。
「君にバレてしまう前に何とか浴室に駆け込んで、シャワーを浴びて気持ちを鎮めたんだが……君の顔を見ると、その……ムラムラしてまうというか……」
俺を見ると……ムラムラする? 先輩が?
先輩の追撃、もとい答え合わせは、なおも続く。
やれ「だから、出来るだけ顔を見ないように目線を下げていたんだが……そうすると、今度は君の無防備な首元が見えてしまって……余計に気持ちが昂ってしまってな……」とか。
やれ「煩悩を払う為に瞑想も試みたんだが、君の笑顔ばかりが浮かんでしまって……」だとか。
目が合わなかったのも、上の空だったのも、気持ちを鎮める為だったと。無理をさせてしまった俺に、これ以上の無理をさせぬよう堪えていたんだと言うのだ。
だったら、一言、言ってくれればいいじゃないか。そう俺が思うよりも、口にするよりも先に言われてしまった「君は優しいから……俺が白状すれば、無理をしてでも応えてくれようとするだろう?」と。
黙ったままの俺を見て、先輩が微笑む。困っているような、嬉しそうな笑顔だった。
「そういう訳でな……こんな状態で君とベッドを共にしようもんなら、俺は絶対に手を出してしまう……だから」
言葉よりも先に、俺は行動していた。分厚い胸板に飛び込んで、広い背中を抱き締めていた。
「っ……シュン、俺の話を聞いていただろう? 今の俺は」
「……いいですよ。それに、無理なんかしてないです」
少し見上げた先にある先輩の顔は、耳まで真っ赤っ赤だった。
俺を抱き締め返そうとして、けれども我慢しようとしていたんだろう。中途半端に上がった両手が、ぷるぷると震えている。
「……俺も、先輩に……してもらえたの、思い出してましたし……またして欲しいなって……思ってましたから……」
「……シュン」
「……我慢しようとしてたのも、一緒です」
黄色い瞳を瞬かせて「そうか」と小さく呟いた唇に、緩やかな笑みが形作られていく。筋肉で盛り上がった腕が俺を抱き締める。
交わした、触れるだけのキスが合図だったみたい。飢えた獣が獲物の喉笛に噛みつくように、先輩は俺の首元に吸いついてきた。
「……あっ……ん、んっ」
唇で軽く食んだり、俺の肌をふやかすように丹念に舌で舐めたり。また、キスマークを付けてくれるつもりなんだろうか。
柔い先輩の唇が触れてくれる度に、熱く濡れた舌が這う度に、俺の身体は電気でも走ってるみたいにビクビク跳ねた。早くも俺の身体は、思考は、心地のいい波に飲まれようとしていた。
ふと、視界の端にベッドが映る。どうせなら、あそこで普通の恋人同士らしく、先輩と。
「ふ、ぁ……せんぱ……ベッド……」
「……分かった」
言葉足らずな訴えだったのに、先輩は察してくれたらしい。首元から顔を離すと力の入らない俺を軽々と抱き抱えてくれた。
ゆっくりと先輩が俺をベッドへと横たえてくれる。背中に触れたシーツは、服越しなのにひんやりしていて気持ちがいい。
軋む音がして、先輩が俺に覆い被さってくる。逞しい太ももが俺の身体を跨いで、大きな両の手のひらが顔を挟むように置かれた。
俺を見下ろす先輩には、普段の爽やかさはない。見たことのない、雄の顔をした先輩が、そこにはいた。
ギラつく黄色の瞳が、俺を捉えて離さない。荒い吐息を漏らす唇から、白い歯と赤い舌が覗いていた。
もう、逃げられそうにない。そもそも逃げようとも思わないけど。
0
あなたにおすすめの小説
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う
ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。
次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた
オチ決定しました〜☺️
※印はR18です(際どいやつもつけてます)
毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します
メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目
凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日)
訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎
11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる