気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件~恋人ルート~

白井のわ

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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)

気分は不完全燃焼でも

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 滑らかな感触の泡が背中に塗り広げられていく。その度にどうしても意識してしまう。しなやかな指が、大きな手のひらがゆったりと動いている様を。

 とはいえ、可愛がってくれると言ってくれていた割には、こちらの気持ちを擽ってきた割にはその手つきは優しい。俺が過剰に意識してしまわなければ、ただただ丁寧に洗ってくれようとしているだけのような。

 不完全燃焼のような気分を抱えつつも、身体の方は落ち着かない。悪戯っぽく焦らそうとしているんじゃないか、俺が落ち着いたところで不意をついてくるんじゃないかとか勝手に想像を巡らせてしまっているせいで。

「よし、背中終わり。じゃあ、次は腕に触らせてもらうね」

「は、はい」

 俺の気持ちを知ってか知らずか、ソレイユは通常運転。洗いやすいようにと俺が腕を伸ばせば、ありがとう、とさっきと変わらぬ丁寧さで泡を満遍なく肌へと塗り広げ始めた。

 楽しんでいるんだろうか。小さな鼻歌まで口ずさんでいる。何の曲かは分からないけれども、明るいリズムのいい曲だった。自然と頭の中に残りそうな。

「はい、終わり。次は左腕ね」

「あ、はい」

 新しい泡をまた手のひらで泡立ててから、俺に触れてくれる。やっぱり腕の方も何事もなく泡まみれにしてもらえていた。左の方も同じで、ソレイユの鼻歌に耳を傾けている内に終わってしまった。

 これは、ホントに普通に洗ってくれようとしているんじゃ? いや、でも、次は前だし……もしかして、その為に今までは普通にしてくれていてんじゃ。

 そんな期待に胸を高鳴らせている内に、だった。

 そっと持ち上げていた左足の先を優しく下ろしてくれてから、ソレイユが微笑んだ。何度も泡立てを繰り返したからか、手首のあたりにまで泡がついてしまっている。

「はい、終わり。大事なところは自分でお願いね」

 これで洗ってくれということだろう。泡立てたばかりのもこもこな泡を差し出される。

「……はい」

 受け取らないのもおかしいので有り難く受け取って、唯一触ってもらえなかった股間に泡を乗せていく。

 普通に終わってしまった。首とか太ももの内側まで触ってもらえたのに何にもなかった。ホントに手洗いじゃないとダメな繊細な服でも洗うみたいに優しく泡を塗ってもらえただけ。可愛がってくれるとは?

「どうしたの? シュン。何か……寂しそう、だけど……」

 心配そうに目を細めながら、ソレイユが俺の顔を覗き込むように見つめてくる。彼にしては鈍すぎる。でも、分かっている上であえてとぼけているようには見えない。ホントに気づいていないみたいだ。

「ソレイユのせいだよ……」

「オレの?」

 つい俺は拗ねたような言い方をしてしまっていた。ソレイユは悪くはないのに。勝手に期待して、ガッカリしている俺の方が。

「あ……もしかして、期待してくれてたの? 嬉しいな」

 気づいてもらえたのは嬉しい。微笑みかけてもらえたのも。でも、気恥ずかしさは込み上げてきてしまう。さっきまではなんてことなかったのに。それどころか、自分勝手なことを口走ってしまっていたのに。

 いつの間にやら泡を洗い流したソレイユが、俺の頬に触れてくれる。しっとりと濡れていてひんやりしているけれど心地いい。

 気持ちが緩んだからか、俺は素直に思っていた不満を口にしていた。

「う……だって……お、お風呂で可愛がって、くれるって……だから、触ってもらえるのかなって……」
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