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勝負は徐々に拮抗、決着は一瞬
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ヨミ様は、よっぽどバアルさんが戦う姿を見たかったらしい。なんせ、あらかじめ謁見の間にある自分の玉座を複製して、演習場に持ち込んでおくという、気合の入りっぷりだったからだ。
青空の下、上品な輝きを放っている、金の装飾が施された真っ赤な椅子。ミスマッチなことこの上なかったが、主であるヨミ様が悠然と腰掛ければ、これはこれで絵になるな、と思えてしまうから不思議だ。
最初っから、レダさんにも、当然親衛隊に選ばれた兵士さん達にも、手合いをしてもらうということは知らされていたよう。挨拶もそこそこに模擬戦が始まり、今に至るという訳だ。
あ、今のバアルさんカッコいい……凄い速さで迫ってくる拳を、そのまま掴むとか。やっぱり足長いなぁ……馬みたいな耳と尻尾を持った兵士さんも背、高いのに……額の辺りにまで、蹴りが届いちゃってるしさ。
大丈夫だとは思っていたものの、バアルさんの前に並んだ屈強な体格をした兵士さん方に、少しだけ不安が過ぎってしまっていた。けれども、それも、今や消えつつあった。
圧倒的で、余裕綽々なバアルさんの姿によって。
しかし、盤面を占めていた白が、一気に黒へと覆るように。風向きが徐々に変わり始める。
時間が経って緊張が解れたのか、防戦一方だった兵士さん達の動きに、連携が生まれてきていたからだ。
猫のような耳と尻尾を生やした兵士さんが、そのしなやかな足で青い石造りの地面を蹴り、鋭い爪を振るう。
猛然とした攻撃を、素早く身体を反らして避けたバアルさんの動きは、想定済みだったのだろう。頭上から大きな影が、鳥の翼を生やした兵士さんが死角から舞い降り、鈍く光る鉄の足をバアルさんの頭めがけて振り下ろした。
「バアルさん!」
両腕を交差し、すんでのところで受け止めてからバアルさんは身を翻した。すかさず鋭い回し蹴りを、相手の腹部へと叩き込む。バアルさんと僅かに目が合う。
よっぽど俺は、情けない顔をしてしまっていたんだろう。こんな時でも俺を安心させてくれようと、微笑みかけてくれたんだ。
「やはり、レダが選び抜いた精鋭達だ。皆、負けず劣らずの手練れであるな。こちらも負けてはおれんぞっ、アオイ殿!」
いつの間に用意したのか「さあ、ありったけのエールを送るぞ!」と鮮やかな緑色のポンポンをヨミ様が取り出した。燃え盛る炎のように瞳を輝かせ、俺へと手渡してくる。
「へ? え? これ、俺、どうしたら……」
「コルテが掲げておるメッセージを叫びながら、振ればよい。それだけで、私達の勝利は確定する。きっとな」
ヨミ様が言った通り、目の前にはバアルさんの従者が。光沢のある緑のボディに、ガラス細工のような羽を持った、小さなハエのコルテが、針よりも細い手足で、いつものスケッチブックを掲げていた。
突然の事態に、上手く対応出来ていない頭は回らなかった。が、身体は言われたことに、素直に従っていた。そうすることで、バアルさんが勝てるならばと。
「お願い、負けないで! バアルっ!!」
野太い声援が飛び交い、鎧を纏った男達の熱気に満ちた演習場で、ポンポンを握り締めながら懸命に声を張り上げる。響いて、届いて……その後は一瞬だった。
ちゃんと見ていたハズなのに。何が起きたのか、分からなかった。
激しい攻防を繰り広げていた場面から、突然カシャンと切り替わったみたい。気がつけば、演習場の真ん中で、ぽつんとバアルさんだけが佇んでいて。彼の周りでは6人の兵士さん達が、ある方はうつ伏せに、またある方は天を仰いで倒れてしまっていたからだ。
白い手袋に覆われた手が、ジャケットの肩や腕をパンパンと軽く払う。どこからか取り出した銀の櫛で、乱れた髪を手早く整える。緑に煌めく眼差しが俺を捉えると、清潔感のある白い髭が素敵な口元がふわりと綻んだ。
「そこまで! 救護班っ、治療を頼む!」
水を打ったように皆が静まり返っている中で、よく通るレダさんの声だけが響く。
ゆっくりと、真っ直ぐに、俺に向かって歩み寄って来てくれるバアルさん。微笑みながら広げた腕の中へと、俺は一目散に飛び込んだ。
青空の下、上品な輝きを放っている、金の装飾が施された真っ赤な椅子。ミスマッチなことこの上なかったが、主であるヨミ様が悠然と腰掛ければ、これはこれで絵になるな、と思えてしまうから不思議だ。
最初っから、レダさんにも、当然親衛隊に選ばれた兵士さん達にも、手合いをしてもらうということは知らされていたよう。挨拶もそこそこに模擬戦が始まり、今に至るという訳だ。
あ、今のバアルさんカッコいい……凄い速さで迫ってくる拳を、そのまま掴むとか。やっぱり足長いなぁ……馬みたいな耳と尻尾を持った兵士さんも背、高いのに……額の辺りにまで、蹴りが届いちゃってるしさ。
大丈夫だとは思っていたものの、バアルさんの前に並んだ屈強な体格をした兵士さん方に、少しだけ不安が過ぎってしまっていた。けれども、それも、今や消えつつあった。
圧倒的で、余裕綽々なバアルさんの姿によって。
しかし、盤面を占めていた白が、一気に黒へと覆るように。風向きが徐々に変わり始める。
時間が経って緊張が解れたのか、防戦一方だった兵士さん達の動きに、連携が生まれてきていたからだ。
猫のような耳と尻尾を生やした兵士さんが、そのしなやかな足で青い石造りの地面を蹴り、鋭い爪を振るう。
猛然とした攻撃を、素早く身体を反らして避けたバアルさんの動きは、想定済みだったのだろう。頭上から大きな影が、鳥の翼を生やした兵士さんが死角から舞い降り、鈍く光る鉄の足をバアルさんの頭めがけて振り下ろした。
「バアルさん!」
両腕を交差し、すんでのところで受け止めてからバアルさんは身を翻した。すかさず鋭い回し蹴りを、相手の腹部へと叩き込む。バアルさんと僅かに目が合う。
よっぽど俺は、情けない顔をしてしまっていたんだろう。こんな時でも俺を安心させてくれようと、微笑みかけてくれたんだ。
「やはり、レダが選び抜いた精鋭達だ。皆、負けず劣らずの手練れであるな。こちらも負けてはおれんぞっ、アオイ殿!」
いつの間に用意したのか「さあ、ありったけのエールを送るぞ!」と鮮やかな緑色のポンポンをヨミ様が取り出した。燃え盛る炎のように瞳を輝かせ、俺へと手渡してくる。
「へ? え? これ、俺、どうしたら……」
「コルテが掲げておるメッセージを叫びながら、振ればよい。それだけで、私達の勝利は確定する。きっとな」
ヨミ様が言った通り、目の前にはバアルさんの従者が。光沢のある緑のボディに、ガラス細工のような羽を持った、小さなハエのコルテが、針よりも細い手足で、いつものスケッチブックを掲げていた。
突然の事態に、上手く対応出来ていない頭は回らなかった。が、身体は言われたことに、素直に従っていた。そうすることで、バアルさんが勝てるならばと。
「お願い、負けないで! バアルっ!!」
野太い声援が飛び交い、鎧を纏った男達の熱気に満ちた演習場で、ポンポンを握り締めながら懸命に声を張り上げる。響いて、届いて……その後は一瞬だった。
ちゃんと見ていたハズなのに。何が起きたのか、分からなかった。
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白い手袋に覆われた手が、ジャケットの肩や腕をパンパンと軽く払う。どこからか取り出した銀の櫛で、乱れた髪を手早く整える。緑に煌めく眼差しが俺を捉えると、清潔感のある白い髭が素敵な口元がふわりと綻んだ。
「そこまで! 救護班っ、治療を頼む!」
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ゆっくりと、真っ直ぐに、俺に向かって歩み寄って来てくれるバアルさん。微笑みながら広げた腕の中へと、俺は一目散に飛び込んだ。
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