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折角のお土産なんだから、笑顔で受け取ってもらえるようにしないと
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ショーウインドウ越しには見たことのない長さのバームクーヘンが三本、串に刺さってゆったりと回っていた。くるくるこんがりきつね色になっていく。
なんだか無性にワクワクしちゃうよな。普段お目にかかることのない、調理工程を見れるのってさ。
お店の前ですでに、俺の期待は高まりまくっていた。だが、上がりに上がったハードルをあっさり超えていってしまったんだ。
扉を開くと同時に俺達を出迎えてくれた、食欲をそそる芳醇なバターの匂いと甘い香りが。ショーケースに並ぶ、色とりどりの鮮やかなバームクーヘンが。
「わぁ……どれも美味しそうですね」
単純過ぎて繋がってしまっているんだろうか。だらしなく緩んだ俺の口からは、頭の中にぽやんと浮かんだ率直な感想が、ぽろりと漏れてしまっていた。
それから、またしてもすっかり抜け落ちてしまっていた。くすくすと小さく笑う声にようやく気づく有様だ。白いうさぎの耳を揺らし、優しく微笑む女性の店員さんの存在と、数組のお客さん方に。
「ええ、とても。こちらのセットなどいかがでしょうか? お店で作られている全てのお味を、楽しめるようでございますよ」
よしよしと頭を撫でて慰めてくれた彼が、ホール型のバームクーヘンが並ぶ隣を指し示す。
贈答用の箱には、スティック状になったバームクーヘンがいくつも収まっていた。
真っ白な砂糖を外側にたっぷり纏ったプレーン、焦げ茶のキャラメルに、黒のチョコレート。華やかなピンクが可愛らしいイチゴに、鮮やかな緑がキレイなピスタチオ、紫色が素敵なブルーベリーと全六種類が楽しめるお得なセットだ。
金貨一枚と手頃な価格の六本入りの他に、ニ枚の十二本、三枚の十八本入りがあるようだ。因みに、金貨は俺がいた現世で言うところの千円だ。
俺のお財布に大変お優しい。なんせホール型の分は一つのお味で金貨三枚だからなぁ。
「いいですねっ! ……ヨミ様のは、お好きな味のホールにして……こっちのはグリムさんとクロウさん、レダさんに親衛隊の皆さんの分と……あ、サタン様もこちらの方がいいですかね? 色んな味が楽しめますし」
バアルさんのご意見も伺おうとケースから視線を移す。
……何か俺は変なことを言ったんだろうか? 少し見上げた先にある、淡い光を帯びた緑の瞳はきょとんと瞬いていた。
「えっと……バアルさん?」
「ふふ、失礼致しました」
やっぱり無意識の内にやらかしたんだろう。くすくすと笑われてしまった。
清潔感漂う白い髭が似合う口元が綻ぶ様は、色っぽくて男らしい。目尻を下げ、花が咲いたように微笑む彼に胸の奥がきゅっと高鳴った。
「貴方様は誠にお優しい御方ですね……自分のことよりも、皆様のことを第一にお考えになられるのですから」
よく分からないが、ラッキーだ。
また、よしよしと頭を撫でてもらえただけじゃない。優しい体温にぎゅっと密着してしまった。腰に回された筋肉質な腕から抱き寄せてもらえて。
「っ……あ、ありがとう、ございます」
「いえ、因みにヨミ様が一番お好きなお味はプレーンですが……こちらのセットも追加でご購入された方が宜しいかと存じます」
笑みを深くした彼のしなやかな指が順々に指し示していく。雪に覆われた切り株のように、白い砂糖をたっぷり被ったホールのバームクーヘン。それから皆さん方へのお土産予定であるお得なセットを。
「分かりました。やっぱり色んな味があったほうがいいですもんね」
「それもございます。ですが、それ以上に寂しがられてしまいます」
「へ?」
「何故、私の分だけ父上や皆とお揃いではないのか? と……」
大変不敬だとは分かっていても、つい吹き出してしまっていた。軽く咳払いをしてから囁いた彼の声が、現地獄の主である御方の声そっくりだったってのもある。
あるんだが、それ以上に浮かんでしまったんだ。麗しいご尊顔をしょんぼり歪め、力なく羽を縮めた可愛らしいお姿が。容易に想像出来てしまったんだ。
「ふふっ……それはいけませんね。折角のお土産なんだから、笑顔で受け取ってもらえるようにしないと」
「ええ、左様でございます」
声を潜めてくすくすと、瞳を細める彼と笑い合う。改めて店員さんへと注文をお願いすると、待っていましたとばかりにとびきりの笑顔を向けられてしまった。
なんだか無性にワクワクしちゃうよな。普段お目にかかることのない、調理工程を見れるのってさ。
お店の前ですでに、俺の期待は高まりまくっていた。だが、上がりに上がったハードルをあっさり超えていってしまったんだ。
扉を開くと同時に俺達を出迎えてくれた、食欲をそそる芳醇なバターの匂いと甘い香りが。ショーケースに並ぶ、色とりどりの鮮やかなバームクーヘンが。
「わぁ……どれも美味しそうですね」
単純過ぎて繋がってしまっているんだろうか。だらしなく緩んだ俺の口からは、頭の中にぽやんと浮かんだ率直な感想が、ぽろりと漏れてしまっていた。
それから、またしてもすっかり抜け落ちてしまっていた。くすくすと小さく笑う声にようやく気づく有様だ。白いうさぎの耳を揺らし、優しく微笑む女性の店員さんの存在と、数組のお客さん方に。
「ええ、とても。こちらのセットなどいかがでしょうか? お店で作られている全てのお味を、楽しめるようでございますよ」
よしよしと頭を撫でて慰めてくれた彼が、ホール型のバームクーヘンが並ぶ隣を指し示す。
贈答用の箱には、スティック状になったバームクーヘンがいくつも収まっていた。
真っ白な砂糖を外側にたっぷり纏ったプレーン、焦げ茶のキャラメルに、黒のチョコレート。華やかなピンクが可愛らしいイチゴに、鮮やかな緑がキレイなピスタチオ、紫色が素敵なブルーベリーと全六種類が楽しめるお得なセットだ。
金貨一枚と手頃な価格の六本入りの他に、ニ枚の十二本、三枚の十八本入りがあるようだ。因みに、金貨は俺がいた現世で言うところの千円だ。
俺のお財布に大変お優しい。なんせホール型の分は一つのお味で金貨三枚だからなぁ。
「いいですねっ! ……ヨミ様のは、お好きな味のホールにして……こっちのはグリムさんとクロウさん、レダさんに親衛隊の皆さんの分と……あ、サタン様もこちらの方がいいですかね? 色んな味が楽しめますし」
バアルさんのご意見も伺おうとケースから視線を移す。
……何か俺は変なことを言ったんだろうか? 少し見上げた先にある、淡い光を帯びた緑の瞳はきょとんと瞬いていた。
「えっと……バアルさん?」
「ふふ、失礼致しました」
やっぱり無意識の内にやらかしたんだろう。くすくすと笑われてしまった。
清潔感漂う白い髭が似合う口元が綻ぶ様は、色っぽくて男らしい。目尻を下げ、花が咲いたように微笑む彼に胸の奥がきゅっと高鳴った。
「貴方様は誠にお優しい御方ですね……自分のことよりも、皆様のことを第一にお考えになられるのですから」
よく分からないが、ラッキーだ。
また、よしよしと頭を撫でてもらえただけじゃない。優しい体温にぎゅっと密着してしまった。腰に回された筋肉質な腕から抱き寄せてもらえて。
「っ……あ、ありがとう、ございます」
「いえ、因みにヨミ様が一番お好きなお味はプレーンですが……こちらのセットも追加でご購入された方が宜しいかと存じます」
笑みを深くした彼のしなやかな指が順々に指し示していく。雪に覆われた切り株のように、白い砂糖をたっぷり被ったホールのバームクーヘン。それから皆さん方へのお土産予定であるお得なセットを。
「分かりました。やっぱり色んな味があったほうがいいですもんね」
「それもございます。ですが、それ以上に寂しがられてしまいます」
「へ?」
「何故、私の分だけ父上や皆とお揃いではないのか? と……」
大変不敬だとは分かっていても、つい吹き出してしまっていた。軽く咳払いをしてから囁いた彼の声が、現地獄の主である御方の声そっくりだったってのもある。
あるんだが、それ以上に浮かんでしまったんだ。麗しいご尊顔をしょんぼり歪め、力なく羽を縮めた可愛らしいお姿が。容易に想像出来てしまったんだ。
「ふふっ……それはいけませんね。折角のお土産なんだから、笑顔で受け取ってもらえるようにしないと」
「ええ、左様でございます」
声を潜めてくすくすと、瞳を細める彼と笑い合う。改めて店員さんへと注文をお願いすると、待っていましたとばかりにとびきりの笑顔を向けられてしまった。
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