493 / 1,566
でなければ、出会えなかった
しおりを挟む
「……浄化の炎は神の手から離れても、穢れを集め、燃やし尽くします。こうして穢れを一箇所に、地の果てへと集めることに成功したのです」
「スゴいですね、バアルさん達の神様って……」
いや、神様なんだから、当たり前だろうけど。
月並みな感想しか出てこない自分にツッコんでいると、バアルさんが「ええ、凄いのです」とご満悦そうに口の端を持ち上げ、触覚を弾ませた。かわいい。
俺が表情筋を溶かしている間にも、お話は続いていく。
「罪ある魂達から、私達の祖先を引き離す為の対策も致しました。まず神は、地の果てに至るまでの道中、地中深くへと業火の炎を宿しました。そして、天の神に頼みました。魂達を落とす場所を、業火の炎が吹き出す大地のみにしてもらったのです」
地面から炎が……ということは、あの時……俺がこの世界に落ちてきた時に見た炎が、業火の炎だったのか。
「じゃあ……俺が、最初にバアルさんと出会えた場所って」
「はい。地の果てに至るまでの道……私達は、裁きの大地と呼んでおります」
「裁きの……大地……」
……言い得て妙ってヤツだ。
いまだに脳裏にこびりついている光景。顔や姿も判別出来ない程に、真っ赤な炎によって燃やされ続けている人々。
そして、耳に残っている悲鳴。赦しを請う叫びがそこかしこから聞こえていたあの地は、そう呼ばれるにふさわしい場所だった。
「私達が誤って招いた貴方様は、全く罪に染まっておりませんでした。ですが、はるか昔からの約束により、魂が落ちる場所は決まっていたのでございます」
「それで、俺もあそこに……」
「はい……申し訳ご」
「ほい、ストップ」
悲しく歪みかけていた唇に、軽く人差し指を当てて塞ぐ。
「もう、ナシですよ。多分、いや、きっと……あの日の全部は、俺がバアルさんと会う為に必要なことだったんですから」
でなければ、出会えなかった。
俺とバアルさんの行く道が交わることも、手を取り共に歩んでいくことも出来なかったんだから。
「アオイ……」
吸い寄せられるみたいに、距離を詰めてきた唇を受け入れる。
掻き抱くように俺の背を抱き寄せ、夢中で求めてくれる彼に俺も応えた。引き締まった首に腕を絡めて、自分から柔らかい体温に押しつける。
じゃれ合うような触れ合いの合間に、尋ねてみる。
「ん……ふふ……それで、お話は終わりですか?」
細められていた瞳が、はたと見開いた。
「っ……失礼致しました……もう少々、続きがございます」
名残惜しそうに俺を離すと、少し顔を背けて咳払い。再び俺を見つめた眼差しには、まだほんのりと照れが残っていた。
「……しばらくは平和な時が続きました。ですが、年月を重ねていく程増えていく穢れに、神は不安を抱いておりました。そこで、決心なされたのでございます」
言葉を切り、軽く息を吸ってから続ける。
「御自身の生命力全てを魔力に変え、浄化の炎を燃やし続けることを」
「自分自身が、炎になったってこと……ですか」
「そのお考えで宜しいかと。ですが、その為には器となっている身体が邪魔でした」
あ、この流れって。
「そこで、また自分の身体で?」
「はい。民を増やしたのは勿論でございますが、とある者には御自身の力の一部を、時を操る力を与えました」
「え……それって、バアルさんと同じ……」
「はい」
予感は的中した。けれども、まさか彼のルーツを知れるとは。
びっくりした顔が、よっぽど変だったんだろうか。バアルさんがクスクス笑い始めた。堪えきれないって感じで。
「失礼……幼いヨミ様にこちらのお話をした際も、今の貴方様のように瞳を輝かせておりました故」
ひとしきり笑ってから、バアルさんは胸に手を当て頭を下げた。
なんだ、思い出し笑いだったのか。別に、謝らなくてもいいのにな。
「あ……えっと、すみません」
何となく釣られて頭を下げると、よしよしと撫でてもらえた。
「いえ、私自身も大変光栄に存じております」
そう言って、目尻のシワを深めたバアルさんの表情は、どこか誇らしげに見えた。
「スゴいですね、バアルさん達の神様って……」
いや、神様なんだから、当たり前だろうけど。
月並みな感想しか出てこない自分にツッコんでいると、バアルさんが「ええ、凄いのです」とご満悦そうに口の端を持ち上げ、触覚を弾ませた。かわいい。
俺が表情筋を溶かしている間にも、お話は続いていく。
「罪ある魂達から、私達の祖先を引き離す為の対策も致しました。まず神は、地の果てに至るまでの道中、地中深くへと業火の炎を宿しました。そして、天の神に頼みました。魂達を落とす場所を、業火の炎が吹き出す大地のみにしてもらったのです」
地面から炎が……ということは、あの時……俺がこの世界に落ちてきた時に見た炎が、業火の炎だったのか。
「じゃあ……俺が、最初にバアルさんと出会えた場所って」
「はい。地の果てに至るまでの道……私達は、裁きの大地と呼んでおります」
「裁きの……大地……」
……言い得て妙ってヤツだ。
いまだに脳裏にこびりついている光景。顔や姿も判別出来ない程に、真っ赤な炎によって燃やされ続けている人々。
そして、耳に残っている悲鳴。赦しを請う叫びがそこかしこから聞こえていたあの地は、そう呼ばれるにふさわしい場所だった。
「私達が誤って招いた貴方様は、全く罪に染まっておりませんでした。ですが、はるか昔からの約束により、魂が落ちる場所は決まっていたのでございます」
「それで、俺もあそこに……」
「はい……申し訳ご」
「ほい、ストップ」
悲しく歪みかけていた唇に、軽く人差し指を当てて塞ぐ。
「もう、ナシですよ。多分、いや、きっと……あの日の全部は、俺がバアルさんと会う為に必要なことだったんですから」
でなければ、出会えなかった。
俺とバアルさんの行く道が交わることも、手を取り共に歩んでいくことも出来なかったんだから。
「アオイ……」
吸い寄せられるみたいに、距離を詰めてきた唇を受け入れる。
掻き抱くように俺の背を抱き寄せ、夢中で求めてくれる彼に俺も応えた。引き締まった首に腕を絡めて、自分から柔らかい体温に押しつける。
じゃれ合うような触れ合いの合間に、尋ねてみる。
「ん……ふふ……それで、お話は終わりですか?」
細められていた瞳が、はたと見開いた。
「っ……失礼致しました……もう少々、続きがございます」
名残惜しそうに俺を離すと、少し顔を背けて咳払い。再び俺を見つめた眼差しには、まだほんのりと照れが残っていた。
「……しばらくは平和な時が続きました。ですが、年月を重ねていく程増えていく穢れに、神は不安を抱いておりました。そこで、決心なされたのでございます」
言葉を切り、軽く息を吸ってから続ける。
「御自身の生命力全てを魔力に変え、浄化の炎を燃やし続けることを」
「自分自身が、炎になったってこと……ですか」
「そのお考えで宜しいかと。ですが、その為には器となっている身体が邪魔でした」
あ、この流れって。
「そこで、また自分の身体で?」
「はい。民を増やしたのは勿論でございますが、とある者には御自身の力の一部を、時を操る力を与えました」
「え……それって、バアルさんと同じ……」
「はい」
予感は的中した。けれども、まさか彼のルーツを知れるとは。
びっくりした顔が、よっぽど変だったんだろうか。バアルさんがクスクス笑い始めた。堪えきれないって感じで。
「失礼……幼いヨミ様にこちらのお話をした際も、今の貴方様のように瞳を輝かせておりました故」
ひとしきり笑ってから、バアルさんは胸に手を当て頭を下げた。
なんだ、思い出し笑いだったのか。別に、謝らなくてもいいのにな。
「あ……えっと、すみません」
何となく釣られて頭を下げると、よしよしと撫でてもらえた。
「いえ、私自身も大変光栄に存じております」
そう言って、目尻のシワを深めたバアルさんの表情は、どこか誇らしげに見えた。
73
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
余命僅かの悪役令息に転生したけど、攻略対象者達が何やら離してくれない
上総啓
BL
ある日トラックに轢かれて死んだ成瀬は、前世のめり込んでいたBLゲームの悪役令息フェリアルに転生した。
フェリアルはゲーム内の悪役として15歳で断罪される運命。
前世で周囲からの愛情に恵まれなかった成瀬は、今世でも誰にも愛されない事実に絶望し、転生直後にゲーム通りの人生を受け入れようと諦観する。
声すら発さず、家族に対しても無反応を貫き人形のように接するフェリアル。そんなフェリアルに周囲の過保護と溺愛は予想外に増していき、いつの間にかゲームのシナリオとズレた展開が巻き起こっていく。
気付けば兄達は勿論、妖艶な魔塔主や最恐の暗殺者、次期大公に皇太子…ゲームの攻略対象者達がフェリアルに執着するようになり…――?
周囲の愛に疎い悪役令息の無自覚総愛されライフ。
※最終的に固定カプ
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる