【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

文字の大きさ
622 / 1,566

【新婚旅行編】一日目:そろそろ涼みに参りましょうか?

しおりを挟む
 弾むようなリズムに合わせてステップを踏めば、それに合わせて波紋が広がり飛沫が舞う。彼の長い腕にフォローしてもらいながら、ターンを決めてもキラキラと。

 なんだか、イルカにでもなった気分だ。尾ひれで水面を歩く彼らのように、海の上を自由自在に踊り回ったり、ジャンプしたり出来るんだからな。そりゃあ、高さは限られているけれども。

 腑抜けていた俺の手足がちゃんと戻った後、俺達は手を繋いだまま、一緒に海面をバシャバシャさせてみたり。悠々と泳いでいる魚達を眺めながら、のんびり散歩してみたりと。あらかた楽しんだ後に「折角ですから、一曲踊ってみませんか?」と誘われたのが、そもそもの。

 何処でも呼んだら必ず現れてくれるバアルさんの従者、小さなハエのコルテは、南エリアにおいても例外ではなく。メタリックな緑のボディを輝かせ、硝子細工のような羽をはためかせながら、普段のようにヴァイオリンを奏でてくれた。

 もはやダンスホールと化している、透き通った青に俺達の影が映っている。くるくる回って、穏やかな波に合わせてゆらゆら揺れて。締めの音が鳴った瞬間、ピタリと止まった。

「ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ……楽しかったです」

「コルテもありがとう」

 頭上で舞いながら、俺達についてきてくれていた緑の粒。コルテが、小さな羽をぴるぴると鳴らしながら下りてくる。

 目の前まできたところで、ピカピカ瞬きながら宙にハートの軌跡を描いてから、現れた時のようにポンッと消えてしまった。

「帰っちゃった……」

 魔宝石よりも美しい、彼の瞳がゆるりと細められる。それに合わせて深くなる目尻のシワが色っぽい。

「彼なりに気を遣ってくれているのでしょう。新婚旅行ですから」

「っ……」

 息を呑むと同時に、大げさなくらいに肩を跳ねさせてしまっていた。全く、心臓に悪いったらありゃしない。

「ところでアオイ、暑くはございませんか?」

 はい、お陰様で。

 ついつい出かかっていた言葉を、すんでのところで飲み込んだ。しなやかな指先が、いつの間にやら頬に張り付いていた髪を耳へとかけてくれる。

「海の上に立っておりますから、お足元の方は涼しくはございます。ですが、日差しによる照り返しが強いでしょう?」

「確かに暑いですね」

 その言葉を待ってましたと言わんばかり。

「では、そろそろ涼みに参りましょうか? 丁度いい準備運動になったでしょうし」

「そう、ですね?」

 浜辺近くの高い木の下にでも、日陰にでも、行くんだろうか? でも、じゃあ準備運動って? 

 疑問は浮かんだものの、涼しいところに行けるのならば大歓迎だ。

 頷いた俺を見て、微笑んだバアルさんが繋いでいた手を引き、もう片方で腰を抱き寄せてきた。思いっきり。

「う、わっ……バアルさっ」

 勢いのまま倒れていく。彼の腕の中に抱かれたまま、俺達を支えてくれていた海面に向かって。

 大きな飛沫の音がした。俺の全身をひんやりとした膜が包みこんでいった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~

結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】  愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。 ──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──  長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。  番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。  どんな美人になっているんだろう。  だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。  ──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。  ──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!  ──ごめんみんな、俺逃げる!  逃げる銀狐の行く末は……。  そして逃げる銀狐に竜は……。  白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...