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【新婚旅行編】一日目:そろそろ涼みに参りましょうか?
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弾むようなリズムに合わせてステップを踏めば、それに合わせて波紋が広がり飛沫が舞う。彼の長い腕にフォローしてもらいながら、ターンを決めてもキラキラと。
なんだか、イルカにでもなった気分だ。尾ひれで水面を歩く彼らのように、海の上を自由自在に踊り回ったり、ジャンプしたり出来るんだからな。そりゃあ、高さは限られているけれども。
腑抜けていた俺の手足がちゃんと戻った後、俺達は手を繋いだまま、一緒に海面をバシャバシャさせてみたり。悠々と泳いでいる魚達を眺めながら、のんびり散歩してみたりと。あらかた楽しんだ後に「折角ですから、一曲踊ってみませんか?」と誘われたのが、そもそもの。
何処でも呼んだら必ず現れてくれるバアルさんの従者、小さなハエのコルテは、南エリアにおいても例外ではなく。メタリックな緑のボディを輝かせ、硝子細工のような羽をはためかせながら、普段のようにヴァイオリンを奏でてくれた。
もはやダンスホールと化している、透き通った青に俺達の影が映っている。くるくる回って、穏やかな波に合わせてゆらゆら揺れて。締めの音が鳴った瞬間、ピタリと止まった。
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ……楽しかったです」
「コルテもありがとう」
頭上で舞いながら、俺達についてきてくれていた緑の粒。コルテが、小さな羽をぴるぴると鳴らしながら下りてくる。
目の前まできたところで、ピカピカ瞬きながら宙にハートの軌跡を描いてから、現れた時のようにポンッと消えてしまった。
「帰っちゃった……」
魔宝石よりも美しい、彼の瞳がゆるりと細められる。それに合わせて深くなる目尻のシワが色っぽい。
「彼なりに気を遣ってくれているのでしょう。新婚旅行ですから」
「っ……」
息を呑むと同時に、大げさなくらいに肩を跳ねさせてしまっていた。全く、心臓に悪いったらありゃしない。
「ところでアオイ、暑くはございませんか?」
はい、お陰様で。
ついつい出かかっていた言葉を、すんでのところで飲み込んだ。しなやかな指先が、いつの間にやら頬に張り付いていた髪を耳へとかけてくれる。
「海の上に立っておりますから、お足元の方は涼しくはございます。ですが、日差しによる照り返しが強いでしょう?」
「確かに暑いですね」
その言葉を待ってましたと言わんばかり。
「では、そろそろ涼みに参りましょうか? 丁度いい準備運動になったでしょうし」
「そう、ですね?」
浜辺近くの高い木の下にでも、日陰にでも、行くんだろうか? でも、じゃあ準備運動って?
疑問は浮かんだものの、涼しいところに行けるのならば大歓迎だ。
頷いた俺を見て、微笑んだバアルさんが繋いでいた手を引き、もう片方で腰を抱き寄せてきた。思いっきり。
「う、わっ……バアルさっ」
勢いのまま倒れていく。彼の腕の中に抱かれたまま、俺達を支えてくれていた海面に向かって。
大きな飛沫の音がした。俺の全身をひんやりとした膜が包みこんでいった。
なんだか、イルカにでもなった気分だ。尾ひれで水面を歩く彼らのように、海の上を自由自在に踊り回ったり、ジャンプしたり出来るんだからな。そりゃあ、高さは限られているけれども。
腑抜けていた俺の手足がちゃんと戻った後、俺達は手を繋いだまま、一緒に海面をバシャバシャさせてみたり。悠々と泳いでいる魚達を眺めながら、のんびり散歩してみたりと。あらかた楽しんだ後に「折角ですから、一曲踊ってみませんか?」と誘われたのが、そもそもの。
何処でも呼んだら必ず現れてくれるバアルさんの従者、小さなハエのコルテは、南エリアにおいても例外ではなく。メタリックな緑のボディを輝かせ、硝子細工のような羽をはためかせながら、普段のようにヴァイオリンを奏でてくれた。
もはやダンスホールと化している、透き通った青に俺達の影が映っている。くるくる回って、穏やかな波に合わせてゆらゆら揺れて。締めの音が鳴った瞬間、ピタリと止まった。
「ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ……楽しかったです」
「コルテもありがとう」
頭上で舞いながら、俺達についてきてくれていた緑の粒。コルテが、小さな羽をぴるぴると鳴らしながら下りてくる。
目の前まできたところで、ピカピカ瞬きながら宙にハートの軌跡を描いてから、現れた時のようにポンッと消えてしまった。
「帰っちゃった……」
魔宝石よりも美しい、彼の瞳がゆるりと細められる。それに合わせて深くなる目尻のシワが色っぽい。
「彼なりに気を遣ってくれているのでしょう。新婚旅行ですから」
「っ……」
息を呑むと同時に、大げさなくらいに肩を跳ねさせてしまっていた。全く、心臓に悪いったらありゃしない。
「ところでアオイ、暑くはございませんか?」
はい、お陰様で。
ついつい出かかっていた言葉を、すんでのところで飲み込んだ。しなやかな指先が、いつの間にやら頬に張り付いていた髪を耳へとかけてくれる。
「海の上に立っておりますから、お足元の方は涼しくはございます。ですが、日差しによる照り返しが強いでしょう?」
「確かに暑いですね」
その言葉を待ってましたと言わんばかり。
「では、そろそろ涼みに参りましょうか? 丁度いい準備運動になったでしょうし」
「そう、ですね?」
浜辺近くの高い木の下にでも、日陰にでも、行くんだろうか? でも、じゃあ準備運動って?
疑問は浮かんだものの、涼しいところに行けるのならば大歓迎だ。
頷いた俺を見て、微笑んだバアルさんが繋いでいた手を引き、もう片方で腰を抱き寄せてきた。思いっきり。
「う、わっ……バアルさっ」
勢いのまま倒れていく。彼の腕の中に抱かれたまま、俺達を支えてくれていた海面に向かって。
大きな飛沫の音がした。俺の全身をひんやりとした膜が包みこんでいった。
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