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【新婚旅行編】二日目:元より私のせいでございます故
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しなやかな指が、俺の目尻を撫でていく。輪郭をなぞっていくように頬を、そして辿り着いた顎を丁重に持ち上げた。緩やかなラインを描きながら、桜色の唇が交わしてくれる。
「は、ん……ん、ふ、んっ……」
指先で顎裏を撫でてくれながら、何度も、何度も。甘く食んでもらえると、唇がジンと疼いてしまう。目の奥が熱くなって、頭の中がふわふわしてしまう。
俺から余裕を奪い、心地よさを与えてくれるそれは、いつもと変わらない。変わらないハズなんだけど。
……気のせい、かな……なんか、いつも以上に熱くなっているような。特に喉の辺りがぽかぽかしてきて。
「ふぁ……ん、もう……?」
止めちゃうの? してくれないの?
離れてしまった彼に尋ねようとしていたけれども遮られた。人差し指にちょんと口をつつかれて。
反射的に口を引き結ぶと、柔らかな指先が離れていってしまう。かと思えば、喉仏に触れてきた。労るように撫でてくれながら、見つめてくる瞳には僅かに心配の色が見て取れた。
「……喉の調子は、いかがでしょうか?」
「え……? あ……」
元に戻ってるかも。なくなってるかも。奥の方がイガイガしているっていうか、ちょっとした不快感も。
「あー、あー……スゴい、治ってる……ありがとうございますっ」
試しに声を出して見れば、さっきの掠れ具合がウソのよう。今だったら部屋中に響くくらいに思いっきり歌えそうだ。そんなに得意じゃないけどさ。
「いえ、元より私のせいでございます故……」
額を擦り寄せてくる彼は、すっかりしょんぼり。凛々しい眉は八の字に、形の良い唇はへの字になってしまっている。
「そんな……バアルさんのせいじゃ」
「いえ、私が至らないばかりに……愛らしく乱れる貴方様に年甲斐もなく昂ってしまい、衝動のままに幾度となく求めてしまいました……」
「ふぇ……」
「そればかりか、縋るように私の名を呼んで下さる貴方様の健気さに心を奪われ……もっと呼んで欲しいなどと独りよがりの考えのまま、鈴の音のように可憐な貴方様の声を枯らすほどに鳴かせてしま」
「おわーっ! もう大丈夫ですっ! 大丈夫ですからっ!」
饒舌な口を手で覆えば、一応止まってはくれた。不満げに細められている眼差しから、ビシビシと伝わってきてはいるけれども。まだ、言い足りないのですが、ってさ。というか、そもそも。
「……お互い様でしょう? 俺も、その……いっぱい求めちゃいましたし……バアルさんのこと……」
彫りの深い顔を包み込むように頬へと手を添える。滑らかな肌を、優しい目元を撫でていると、丸くなっていた瞳が細められていく。目尻に刻まれているシワが深くなっていく。
「……アオイ」
大きな手が俺の手に重ねられた。甘えるように擦り寄ってくれるシャープな鼻が、ちょっぴり擽ったい。
「ん、ふふ……それで、どういった術をかけてくれていたんですか?」
「新たにかけてはおりませんよ」
「へ? で、でも、さっきまで俺の喉、すっごくぽかぽかしてましたけど?」
弱っている部分にピンポイントできた温かさは、あっさりと治った早さは、術によるものとしか。
「自然治癒の術の効果が高まったからでしょう。その為に、少々魔力の流れを繋げさせて頂きました故」
「魔力を……」
そこまでヒントを出してもらえて、ようやくピンときた。
「ああっ、俺が、バアルさんの魔力を利用させてもらった時と同じってことですね?」
流れを繋げれば、国一番の術士である彼の魔力を一時的にお借りすることが出来る。以前の俺は、贅沢な使い方を、バアルさんを押し倒してみたいっていう自分の我が儘を叶える為に使わせてもらったのだけど。
そういえば、自然治癒の術は、魔力の強さに応じて効果が高まるんだったな。だから、患者さんの魔力が弱い場合は、繋げながら術を施すことで効果を高めるんだって。
大きな手が、よしよしと俺の頭を褒めてくれる。緩やかに口角を持ち上げる様は、御自身のことのように嬉しそうで、それでいて得意気に見えた。
「はい。流石、私の妻は理解がお早くいらっしゃる。将来有望でございますね。我が国が誇る術士になられる日も、そう遠くはないでしょう」
「褒め過ぎですよ……でも、頑張りますね。期待に応えられるように」
「ええ、楽しみにしております。貴方様の夫としても、魔術の師としても……」
頭を撫でてくれていた手が、ゆるりと頬まで下りてくる。優しく添えてくれたまま、僅かに空いていた俺達の距離を再び埋めてくれた。
「は、ん……ん、ふ、んっ……」
指先で顎裏を撫でてくれながら、何度も、何度も。甘く食んでもらえると、唇がジンと疼いてしまう。目の奥が熱くなって、頭の中がふわふわしてしまう。
俺から余裕を奪い、心地よさを与えてくれるそれは、いつもと変わらない。変わらないハズなんだけど。
……気のせい、かな……なんか、いつも以上に熱くなっているような。特に喉の辺りがぽかぽかしてきて。
「ふぁ……ん、もう……?」
止めちゃうの? してくれないの?
離れてしまった彼に尋ねようとしていたけれども遮られた。人差し指にちょんと口をつつかれて。
反射的に口を引き結ぶと、柔らかな指先が離れていってしまう。かと思えば、喉仏に触れてきた。労るように撫でてくれながら、見つめてくる瞳には僅かに心配の色が見て取れた。
「……喉の調子は、いかがでしょうか?」
「え……? あ……」
元に戻ってるかも。なくなってるかも。奥の方がイガイガしているっていうか、ちょっとした不快感も。
「あー、あー……スゴい、治ってる……ありがとうございますっ」
試しに声を出して見れば、さっきの掠れ具合がウソのよう。今だったら部屋中に響くくらいに思いっきり歌えそうだ。そんなに得意じゃないけどさ。
「いえ、元より私のせいでございます故……」
額を擦り寄せてくる彼は、すっかりしょんぼり。凛々しい眉は八の字に、形の良い唇はへの字になってしまっている。
「そんな……バアルさんのせいじゃ」
「いえ、私が至らないばかりに……愛らしく乱れる貴方様に年甲斐もなく昂ってしまい、衝動のままに幾度となく求めてしまいました……」
「ふぇ……」
「そればかりか、縋るように私の名を呼んで下さる貴方様の健気さに心を奪われ……もっと呼んで欲しいなどと独りよがりの考えのまま、鈴の音のように可憐な貴方様の声を枯らすほどに鳴かせてしま」
「おわーっ! もう大丈夫ですっ! 大丈夫ですからっ!」
饒舌な口を手で覆えば、一応止まってはくれた。不満げに細められている眼差しから、ビシビシと伝わってきてはいるけれども。まだ、言い足りないのですが、ってさ。というか、そもそも。
「……お互い様でしょう? 俺も、その……いっぱい求めちゃいましたし……バアルさんのこと……」
彫りの深い顔を包み込むように頬へと手を添える。滑らかな肌を、優しい目元を撫でていると、丸くなっていた瞳が細められていく。目尻に刻まれているシワが深くなっていく。
「……アオイ」
大きな手が俺の手に重ねられた。甘えるように擦り寄ってくれるシャープな鼻が、ちょっぴり擽ったい。
「ん、ふふ……それで、どういった術をかけてくれていたんですか?」
「新たにかけてはおりませんよ」
「へ? で、でも、さっきまで俺の喉、すっごくぽかぽかしてましたけど?」
弱っている部分にピンポイントできた温かさは、あっさりと治った早さは、術によるものとしか。
「自然治癒の術の効果が高まったからでしょう。その為に、少々魔力の流れを繋げさせて頂きました故」
「魔力を……」
そこまでヒントを出してもらえて、ようやくピンときた。
「ああっ、俺が、バアルさんの魔力を利用させてもらった時と同じってことですね?」
流れを繋げれば、国一番の術士である彼の魔力を一時的にお借りすることが出来る。以前の俺は、贅沢な使い方を、バアルさんを押し倒してみたいっていう自分の我が儘を叶える為に使わせてもらったのだけど。
そういえば、自然治癒の術は、魔力の強さに応じて効果が高まるんだったな。だから、患者さんの魔力が弱い場合は、繋げながら術を施すことで効果を高めるんだって。
大きな手が、よしよしと俺の頭を褒めてくれる。緩やかに口角を持ち上げる様は、御自身のことのように嬉しそうで、それでいて得意気に見えた。
「はい。流石、私の妻は理解がお早くいらっしゃる。将来有望でございますね。我が国が誇る術士になられる日も、そう遠くはないでしょう」
「褒め過ぎですよ……でも、頑張りますね。期待に応えられるように」
「ええ、楽しみにしております。貴方様の夫としても、魔術の師としても……」
頭を撫でてくれていた手が、ゆるりと頬まで下りてくる。優しく添えてくれたまま、僅かに空いていた俺達の距離を再び埋めてくれた。
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