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【新婚旅行編】七日目:でしたら結構、引き続き、ご満足頂けるまで私めの身体に触れて下さい
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俺の顔をしているってのに、中身がバアルさんだからだろう。あふれる大人の男の余裕が、心惹かれる素敵な魅力が隠し切れていない。不覚にもときめいてしまう。
どこからどう見たって俺なのにっ!! 顔も、姿も、声も、全部俺でしかないのにっ!!
「おや、おかしなことを仰る……私のアオイは、いついかなる時もカッコいい御方でございますよ?」
そういうことじゃあ、ないんだけれども。自分の顔に対して抱くべきじゃあない愛しさを感じてしまっているもんだから、困っているんだけれども。
俺の葛藤を知る由もない彼は、またしてもそんな顔も出来たんだってツッコミたくなるくらいにキレイな笑顔を浮かべている。
でも、目の奥は笑ってはいない。本人である俺に対しても、そのことに関しては絶対に文句は言わせないっていう並々ならぬ強い圧を感じる。
「ぐ、っ……ぅ……」
お陰様で、ますます心音がはしゃいでしまう。喜びが止めどなくあふれてくるだけじゃない。ちょっぴり強引なそのお気持ちにも、心がスキップを踏んでしまう。自己肯定感が爆上がりしそう。
「そう、ですね……バアルが、好きになってくれた俺は、か、カッコいいです……ありがとう、ございます……」
「いえ、当然のことを申し上げたまででございますので」
俺自身が俺のカッコよさを否定しなければ、それでいいのだろう。バアルさんは、すぐに不思議な圧を収めてくれた。
柔らかく微笑んでくれて、よく出来ましたね、偉いですよ、と頭を撫でてくれた。
優しい手つきが心地よくて、自然と自分から頭を擦り寄せてしまう。すっかりのんびり寛いでしまっていると、バアルさんがはたと思い出したかのように尋ねてきた。心配そうに瞳を細めながら。
「ところでアオイ、どこか御身体に違和感はございませんか?」
「へ? 身体、ですか?」
「ええ。入れ替わってしまう前、術が発動した際に流れてきた魔力によって、暫しの間、気を失ってしまわれていたでしょう?」
「ああ、はい。確かに、急に眠くなっちゃったっていうか、目の前が真っ暗になったっていうか……でも、別に今はどうともないですよ?」
寧ろ調子がいいくらい。身体は羽のように軽いし、力は有り余るくらいにみなぎっている。
今なら、軽いジャンプ一つであの天井のシャンデリアに余裕でタッチ出来そうだし、残像が見えるくらい速く動けそう。普段は両手で抱えないといけないくらいに重たい荷物でも、片手で楽々持ち運べそうだ。
流石、バアルさんの身体。俺とは鍛え方が違うもんなぁ。
改めて逞しい二の腕を、芸術品のような肉体美に惚れ惚れしてしまっていると俺が……いや、バアルさんが安心したように細い肩を下げた。
「左様でございましたか……でしたら結構、引き続き、ご満足頂けるまで私めの身体に触れて下さい」
「ちょ……っ」
言い方……っ!! 言い方が、何だかいかがわしいっていうか、すんごく申し訳なくなっちゃうんですけど?
いや、でも、バアルのことをそっちのけにしちゃって、うっきうきで触っちゃっていたのは事実だしなぁ。バアルは俺のことを心配してくれていたってのに。
「ん? ……あれ?」
浮かれていた気持ちが落ち着いてきたからだろうか。今更になって気がついた。見間違いだろうかと、目を閉じてみても変わらない。
どこからどう見たって俺なのにっ!! 顔も、姿も、声も、全部俺でしかないのにっ!!
「おや、おかしなことを仰る……私のアオイは、いついかなる時もカッコいい御方でございますよ?」
そういうことじゃあ、ないんだけれども。自分の顔に対して抱くべきじゃあない愛しさを感じてしまっているもんだから、困っているんだけれども。
俺の葛藤を知る由もない彼は、またしてもそんな顔も出来たんだってツッコミたくなるくらいにキレイな笑顔を浮かべている。
でも、目の奥は笑ってはいない。本人である俺に対しても、そのことに関しては絶対に文句は言わせないっていう並々ならぬ強い圧を感じる。
「ぐ、っ……ぅ……」
お陰様で、ますます心音がはしゃいでしまう。喜びが止めどなくあふれてくるだけじゃない。ちょっぴり強引なそのお気持ちにも、心がスキップを踏んでしまう。自己肯定感が爆上がりしそう。
「そう、ですね……バアルが、好きになってくれた俺は、か、カッコいいです……ありがとう、ございます……」
「いえ、当然のことを申し上げたまででございますので」
俺自身が俺のカッコよさを否定しなければ、それでいいのだろう。バアルさんは、すぐに不思議な圧を収めてくれた。
柔らかく微笑んでくれて、よく出来ましたね、偉いですよ、と頭を撫でてくれた。
優しい手つきが心地よくて、自然と自分から頭を擦り寄せてしまう。すっかりのんびり寛いでしまっていると、バアルさんがはたと思い出したかのように尋ねてきた。心配そうに瞳を細めながら。
「ところでアオイ、どこか御身体に違和感はございませんか?」
「へ? 身体、ですか?」
「ええ。入れ替わってしまう前、術が発動した際に流れてきた魔力によって、暫しの間、気を失ってしまわれていたでしょう?」
「ああ、はい。確かに、急に眠くなっちゃったっていうか、目の前が真っ暗になったっていうか……でも、別に今はどうともないですよ?」
寧ろ調子がいいくらい。身体は羽のように軽いし、力は有り余るくらいにみなぎっている。
今なら、軽いジャンプ一つであの天井のシャンデリアに余裕でタッチ出来そうだし、残像が見えるくらい速く動けそう。普段は両手で抱えないといけないくらいに重たい荷物でも、片手で楽々持ち運べそうだ。
流石、バアルさんの身体。俺とは鍛え方が違うもんなぁ。
改めて逞しい二の腕を、芸術品のような肉体美に惚れ惚れしてしまっていると俺が……いや、バアルさんが安心したように細い肩を下げた。
「左様でございましたか……でしたら結構、引き続き、ご満足頂けるまで私めの身体に触れて下さい」
「ちょ……っ」
言い方……っ!! 言い方が、何だかいかがわしいっていうか、すんごく申し訳なくなっちゃうんですけど?
いや、でも、バアルのことをそっちのけにしちゃって、うっきうきで触っちゃっていたのは事実だしなぁ。バアルは俺のことを心配してくれていたってのに。
「ん? ……あれ?」
浮かれていた気持ちが落ち着いてきたからだろうか。今更になって気がついた。見間違いだろうかと、目を閉じてみても変わらない。
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