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【新婚旅行編】七日目:さあ、最高のフィナーレを始めようではないか!!
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テーマパークの象徴である青い石造りのお城は、爽やかな日差しが水平線の向こうへと隠れていってしまっても、穏やかな夜に飲み込まれることなく淡い光を放ち続けている。テーマパークの中心で見守っているかのように、お城の周りを優しく照らしている。
神秘的な輝きを放っているお城をぐるりと囲むように作られているのは特設の観客席。夜空に溶け込むように宙に浮かんでいて、頭上で煌めいている星の数ほどに数多ある座席は、すでにお客さん達で埋め尽くされていた。
恐らくは、今日こちらに訪れた人のほとんどが参加しているであろう、夢のような一日の最後を華々しく飾るショー。その幕が今、上がろうとしていた。
「ご機嫌よう、親愛なる我らが民よ」
まさに鶴の一声。どこからともなく通りの良い声が響いただけで、ショーを心待ちにしていた皆さんのざわめきが収まっていく。
会場に居る皆さん全員が息を潜めているような沈黙の最中、高鳴る自分の心音だけしか聞こえなくなっていた頃、眩いスポットライトがお城のバルコニーへと当てられた。
光の中に浮かんだのは見覚えのあるシルエット。さっきまでは居なかったハズの人影が、自身の姿を覆い隠すように纏っていたマントを翻す。優しい風に遊ばれてふわりと靡く布地は、満天の星空を切り取ったかのような。スポットライトの明かりを受けて、キラキラと神秘的な煌めきを振り撒いている。
靡くマントからようやく姿を現したのは、スタイルのいい長身。艷やかな彼の長髪も、大きく広がった羽もまた夜空のように黒かった。
「ヨミーン様……っ」
誰が発したのか。親愛なる俺達の王様を呼んだ声を切っ掛けに、夜を吹き飛ばすような明るい歓声が、拍手が会場内で次々と起こり始める。
お城の上の方には、いつの間にか映像が表示されていた。淡い光の中にリアルタイムで映し出されているのは、バルコニーに立つヨミーン様を拡大したもの。真っ赤な瞳を不敵に細め、威厳たっぷりの笑みを浮かべている彼の隣には、サターン様のお姿も。
まるでヨミーン様を見守っているように優しく微笑んで、大柄な身体に見合う大きな手を俺達に向かって振っていた。
サターン様の方へと一度微笑みかけてから、ヨミーン様がしなやかな腕を上げる。それを合図に再び静まり返った会場に向かって、ヨミーン様が語りかけ始めた。
「私達の愛する民よ、どうか力を貸して欲しい! そなたらが宿す魂の輝きを、私達に見せて欲しいのだ!」
一体何をすればいいのか。分からずにヨミーン様を見つめていると、集中するかのように彼は目を閉じた。すると、彼の指先に彼の瞳と同じ真っ赤な輝きが集まり始める。
指先に灯ったのは星のような煌めき。一番星の様に眩しく、いくつもの光の筋を放っている赤を夜空へと向かって掲げながら、ヨミーン様が再び呼びかける。
「さぁ、そなたらも共に!」
見惚れていたからか多少の時差はあったものの、応えるようにぽつ、ぽつと。一度灯り始めれば光は、波紋が広がっていくかのように次々と会場内を埋め尽くしていく。誰も彼もが色の異なる輝きを指先に灯していく。
この術だったら俺でも。張り切って魔力を指先に集中させようとしたものの、あまり光が集まらない。その間にも周囲は、色とりどりで鮮やかな光達が満天の星空のように煌めきつつある。
早くしなきゃと焦れば焦るほど上手く光を灯せない。すっかり空回りしかけていた俺の手に、ひと回り大きな手が重なった。思わず隣を見上げれば、柔らかく微笑んだ緑の瞳とかち合う。
「バアル……」
「大丈夫ですよ、アオイ……落ち着いて、私の呼吸に合わせて下さい」
「……はいっ」
バアルさんのお陰で落ち着きを取り戻せた俺は、彼と息を合わせて一緒に一つの明かりを灯した。やった、と見合わせた俺達の笑顔を照らす星に似た輝きは、時間と共に彼の瞳の緑にも、俺のオレンジにも変わっていく。
無事に俺達が明かりを灯せてほどなくして、他のお客さん達ももれなく光を灯せたのだろう。ヨミーン様が満足そうな声を上げた。
「よいぞ! 流石私達の愛する民だ! その調子で私達を応援して欲しい! 共に、楽しもう!」
ヨミーン様が、俺達が座る観客席をぐるりと見回してから、サターン様と目配せをする。サターン様もまた、太い指に灯していた赤い光をヨミーン様の明かりに寄り添うようにして掲げていた。
「さあ、最高のフィナーレを始めようではないか!!」
ヨミーン様の宣言に合わせて、いくつもの花火が天に向かって光の線を描いていく、夜空に大輪の花を咲かせていく。華々しい音と共に最後のショーが今、始まった。
神秘的な輝きを放っているお城をぐるりと囲むように作られているのは特設の観客席。夜空に溶け込むように宙に浮かんでいて、頭上で煌めいている星の数ほどに数多ある座席は、すでにお客さん達で埋め尽くされていた。
恐らくは、今日こちらに訪れた人のほとんどが参加しているであろう、夢のような一日の最後を華々しく飾るショー。その幕が今、上がろうとしていた。
「ご機嫌よう、親愛なる我らが民よ」
まさに鶴の一声。どこからともなく通りの良い声が響いただけで、ショーを心待ちにしていた皆さんのざわめきが収まっていく。
会場に居る皆さん全員が息を潜めているような沈黙の最中、高鳴る自分の心音だけしか聞こえなくなっていた頃、眩いスポットライトがお城のバルコニーへと当てられた。
光の中に浮かんだのは見覚えのあるシルエット。さっきまでは居なかったハズの人影が、自身の姿を覆い隠すように纏っていたマントを翻す。優しい風に遊ばれてふわりと靡く布地は、満天の星空を切り取ったかのような。スポットライトの明かりを受けて、キラキラと神秘的な煌めきを振り撒いている。
靡くマントからようやく姿を現したのは、スタイルのいい長身。艷やかな彼の長髪も、大きく広がった羽もまた夜空のように黒かった。
「ヨミーン様……っ」
誰が発したのか。親愛なる俺達の王様を呼んだ声を切っ掛けに、夜を吹き飛ばすような明るい歓声が、拍手が会場内で次々と起こり始める。
お城の上の方には、いつの間にか映像が表示されていた。淡い光の中にリアルタイムで映し出されているのは、バルコニーに立つヨミーン様を拡大したもの。真っ赤な瞳を不敵に細め、威厳たっぷりの笑みを浮かべている彼の隣には、サターン様のお姿も。
まるでヨミーン様を見守っているように優しく微笑んで、大柄な身体に見合う大きな手を俺達に向かって振っていた。
サターン様の方へと一度微笑みかけてから、ヨミーン様がしなやかな腕を上げる。それを合図に再び静まり返った会場に向かって、ヨミーン様が語りかけ始めた。
「私達の愛する民よ、どうか力を貸して欲しい! そなたらが宿す魂の輝きを、私達に見せて欲しいのだ!」
一体何をすればいいのか。分からずにヨミーン様を見つめていると、集中するかのように彼は目を閉じた。すると、彼の指先に彼の瞳と同じ真っ赤な輝きが集まり始める。
指先に灯ったのは星のような煌めき。一番星の様に眩しく、いくつもの光の筋を放っている赤を夜空へと向かって掲げながら、ヨミーン様が再び呼びかける。
「さぁ、そなたらも共に!」
見惚れていたからか多少の時差はあったものの、応えるようにぽつ、ぽつと。一度灯り始めれば光は、波紋が広がっていくかのように次々と会場内を埋め尽くしていく。誰も彼もが色の異なる輝きを指先に灯していく。
この術だったら俺でも。張り切って魔力を指先に集中させようとしたものの、あまり光が集まらない。その間にも周囲は、色とりどりで鮮やかな光達が満天の星空のように煌めきつつある。
早くしなきゃと焦れば焦るほど上手く光を灯せない。すっかり空回りしかけていた俺の手に、ひと回り大きな手が重なった。思わず隣を見上げれば、柔らかく微笑んだ緑の瞳とかち合う。
「バアル……」
「大丈夫ですよ、アオイ……落ち着いて、私の呼吸に合わせて下さい」
「……はいっ」
バアルさんのお陰で落ち着きを取り戻せた俺は、彼と息を合わせて一緒に一つの明かりを灯した。やった、と見合わせた俺達の笑顔を照らす星に似た輝きは、時間と共に彼の瞳の緑にも、俺のオレンジにも変わっていく。
無事に俺達が明かりを灯せてほどなくして、他のお客さん達ももれなく光を灯せたのだろう。ヨミーン様が満足そうな声を上げた。
「よいぞ! 流石私達の愛する民だ! その調子で私達を応援して欲しい! 共に、楽しもう!」
ヨミーン様が、俺達が座る観客席をぐるりと見回してから、サターン様と目配せをする。サターン様もまた、太い指に灯していた赤い光をヨミーン様の明かりに寄り添うようにして掲げていた。
「さあ、最高のフィナーレを始めようではないか!!」
ヨミーン様の宣言に合わせて、いくつもの花火が天に向かって光の線を描いていく、夜空に大輪の花を咲かせていく。華々しい音と共に最後のショーが今、始まった。
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