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【新婚旅行編】七日目:話のお供に温かいハーブティーを
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まだ、とびきり素敵な夢を見ているような。
「はぁ……」
すっかり見慣れたホテルの一室へと帰ってきても、まだ心はあの宙に浮かぶ観客席にいるような。
だからだろう、足元までふわふわしてしまっている。まるで綿菓子のような雲の上を歩いているみたい。ちゃんと立ててはいるのだけれども、絨毯を踏みしめている感覚がない。
「はぁ……」
また、勝手に。胸の中いっぱいに満たされている温かなものが、息と一緒に口からこぼれ落ちてしまっていた。でも、今回は俺だけじゃない。隣の彼と息ぴったりに重なっていたのだ。
「ふふ」
はたと目が合った瞬間もぴったりで、おかしくなって笑ってしまったのもお揃いだった。
「へへ、なんか……ずっと、ぼーっとしちゃうね?」
「ええ、誠に素晴らしい夢を見ていたような」
「あ、分かるっ、良い意味で気が抜けちゃってるよね」
「はい、このままでは、朝までぼんやりと過ごしてしまいそうです」
そう言いつつも優秀な執事さんのスタイルがバアルさんには染み付いているのだろう。ごく自然に俺をソファーへとエスコートしてくれる。何となくくっついていたい気分な俺に、頼もしい肩を貸してくれる。
最後のショーも素晴らしかった。
花火と共に手品のように突然、宙へと現れたバアルーン様。その腕の中にはしっかりとアオニャンを抱き抱えていた。俺達の方へと手を振りながら時折見つめ合い、微笑み合う二人。幸せそうな彼らを祝福するかのように、ハートやバラやヒマワリの形をした花火が夜空に咲いていた。
やっぱり俺とバアルさんまで照れてしまったけれども、素敵な演出だったと思う。
勿論、レタリーンさんや、スヴェーンさんに子豚達。グリムさんとクロウさんや、レダさんや親衛隊の皆さんっぽいキャラクターに、お城のメイドさんや兵士さん達まで。皆さん勢揃いでショーを盛り上げてくれた。
夜なのに虹がかかり、その上を皆さんが軽やかに踊りながら歩いたり。光り輝く炎や氷を自由自在に操ってみたり。そればかりか燃え盛る炎がフェニックスやドラゴンの姿に変わったり、氷で出来たリヴァイアサンが俺達の真上に雪を降らしながら飛び回ったり。
次から次へと起こる、夢でも見ているような幻想的な光景に、瞬きをするのを忘れかけてしまうほど。いや、ほんの少しでも閉じてしまうことすら、勿体ないと感じてしまっていた。
そんなショーのフィナーレでは、俺達が灯していた明かりが使われた。ヨミーン様が指揮者のように腕を広げると、明かりだけが空へと舞い上がっていったのだ。俺達は何もしていないのに。
お城の真上へと集まっていく明かりが形作ったのは大きな花、あの日の奇跡を思い起こさせるような光の花が咲き誇り、いくつもの花火よりも眩しく夜空を照らしてからフィナーレを迎えたんだ。
最後に線香花火が消えるかのように、役目を終えた花が散っていく様は息を呑むほどにキレイだったけど、なんだかちょっぴり寂しかった。
お祭りの後のようなざわめきと、他のお客さん達の満足そうな笑顔。その中の一員として加わりながら俺達も、ホテルへと戻ってきたのだけれども。
もうちょっとだけ、この余韻に浸っていたい。楽しかったんだけれども、なんだか寂しいこの心地に。
「ね、バアル」
「はい」
「お風呂入る前にさ、少しだけ……今日撮った写真見ない?」
「……では、お供に温かいハーブティーなどいかがでしょうか?」
「うんっ」
写真係として今日も大活躍してくれたコルテも呼んで、ハーブティーの香りを楽しみながら宙へと映し出された画像を眺める。
ああ、こんなこともあったねと、この演出にはびっくりしただとか、ヨミーン様達とホントに会えて良かっただとか。思いつくままに互いに話している内に、寂しい気持ちは消えていた。残ったのは、楽しかったって気持ちだけだけだった。
「はぁ……」
すっかり見慣れたホテルの一室へと帰ってきても、まだ心はあの宙に浮かぶ観客席にいるような。
だからだろう、足元までふわふわしてしまっている。まるで綿菓子のような雲の上を歩いているみたい。ちゃんと立ててはいるのだけれども、絨毯を踏みしめている感覚がない。
「はぁ……」
また、勝手に。胸の中いっぱいに満たされている温かなものが、息と一緒に口からこぼれ落ちてしまっていた。でも、今回は俺だけじゃない。隣の彼と息ぴったりに重なっていたのだ。
「ふふ」
はたと目が合った瞬間もぴったりで、おかしくなって笑ってしまったのもお揃いだった。
「へへ、なんか……ずっと、ぼーっとしちゃうね?」
「ええ、誠に素晴らしい夢を見ていたような」
「あ、分かるっ、良い意味で気が抜けちゃってるよね」
「はい、このままでは、朝までぼんやりと過ごしてしまいそうです」
そう言いつつも優秀な執事さんのスタイルがバアルさんには染み付いているのだろう。ごく自然に俺をソファーへとエスコートしてくれる。何となくくっついていたい気分な俺に、頼もしい肩を貸してくれる。
最後のショーも素晴らしかった。
花火と共に手品のように突然、宙へと現れたバアルーン様。その腕の中にはしっかりとアオニャンを抱き抱えていた。俺達の方へと手を振りながら時折見つめ合い、微笑み合う二人。幸せそうな彼らを祝福するかのように、ハートやバラやヒマワリの形をした花火が夜空に咲いていた。
やっぱり俺とバアルさんまで照れてしまったけれども、素敵な演出だったと思う。
勿論、レタリーンさんや、スヴェーンさんに子豚達。グリムさんとクロウさんや、レダさんや親衛隊の皆さんっぽいキャラクターに、お城のメイドさんや兵士さん達まで。皆さん勢揃いでショーを盛り上げてくれた。
夜なのに虹がかかり、その上を皆さんが軽やかに踊りながら歩いたり。光り輝く炎や氷を自由自在に操ってみたり。そればかりか燃え盛る炎がフェニックスやドラゴンの姿に変わったり、氷で出来たリヴァイアサンが俺達の真上に雪を降らしながら飛び回ったり。
次から次へと起こる、夢でも見ているような幻想的な光景に、瞬きをするのを忘れかけてしまうほど。いや、ほんの少しでも閉じてしまうことすら、勿体ないと感じてしまっていた。
そんなショーのフィナーレでは、俺達が灯していた明かりが使われた。ヨミーン様が指揮者のように腕を広げると、明かりだけが空へと舞い上がっていったのだ。俺達は何もしていないのに。
お城の真上へと集まっていく明かりが形作ったのは大きな花、あの日の奇跡を思い起こさせるような光の花が咲き誇り、いくつもの花火よりも眩しく夜空を照らしてからフィナーレを迎えたんだ。
最後に線香花火が消えるかのように、役目を終えた花が散っていく様は息を呑むほどにキレイだったけど、なんだかちょっぴり寂しかった。
お祭りの後のようなざわめきと、他のお客さん達の満足そうな笑顔。その中の一員として加わりながら俺達も、ホテルへと戻ってきたのだけれども。
もうちょっとだけ、この余韻に浸っていたい。楽しかったんだけれども、なんだか寂しいこの心地に。
「ね、バアル」
「はい」
「お風呂入る前にさ、少しだけ……今日撮った写真見ない?」
「……では、お供に温かいハーブティーなどいかがでしょうか?」
「うんっ」
写真係として今日も大活躍してくれたコルテも呼んで、ハーブティーの香りを楽しみながら宙へと映し出された画像を眺める。
ああ、こんなこともあったねと、この演出にはびっくりしただとか、ヨミーン様達とホントに会えて良かっただとか。思いつくままに互いに話している内に、寂しい気持ちは消えていた。残ったのは、楽しかったって気持ちだけだけだった。
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