907 / 1,566
【新婚旅行編】七日目:最後の仕上げをご一緒に
しおりを挟む
バアルさんと一緒にのんびり。広い浴槽に四肢を伸ばして寛いで、全身が十分に癒された風呂上がり。
ルーティンのスキンケアも、バアルさんの触角と羽のお手入れのお手伝いも終えた後は、待ちかねていたお楽しみの時間。その主役は、大きな手によってテーブルの上へと静かに置かれた。
今晩一緒に飲もうねと約束していた、ノンアルコールワインのボトル。ラベルに描かれたお城と大きな星は、シャンデリアの明かりの元でもキラキラしている。
文房具屋で見かけて、珍しいな、こんな色もあるんだなって思った銀とか金色の絵の具。それらに含まれていたキラキラのような、もしくは宝石を砕いて塗料に混ぜたような。
それらで描かれたように煌めいているラベルの絵は、そのキレイさと物珍しさについつい眺めていたくなってしまう。まだ開けてもいないのに、早くもワクワク感が込み上げてきてしまう。
よっぽど分かりやすく顔にも出してしまっていたのだろう。
「ふふ、少々お待ち下さい」
ワインばかりを見つめてしまっていた俺を見て、バアルが微笑んだ。目尻のシワを深めながらボトルをそっと手にとって、慣れた様子で栓を開け始める。
彼が手にしていたのは、どこかで見かけた便利グッズのような。これさえあれば缶切りにでも、ハサミにでもドライバーにでも何でもなりますっ、とそんな謳い文句でも書かれていそうな、用途によって使う場所が変わる器具だった。
先ずはナイフのように尖った部分を、キャップがあるであろう先へとあてがっていた。たおやかな手が流れるように動く様を見ている内に、プラスチックっぽいフィルムがするりと外された。その下から、映画や漫画でよく見るコルク栓が顔を出す。
「やっぱりスゴく手際がいいね……カッコいい」
「ありがとうございます、お褒めに預かり光栄です」
バアルは視線だけをこちらへと向けてから、柔らかく微笑んだ。深くなった目尻のシワが、口角と一緒に僅かに上がった整えられたお髭がカッコいい。期待感以外の高鳴りが追加されてしまった。
視線を手元へと戻したバアルが次に使おうとしているのはバネのような、ぐるぐると螺旋状になっている金属の棒部分のようだ。その尖った先端をコルクの真ん中へと指してから、ハンドルのような部分をネジを回すようにぐるぐるぐる。
もうすぐ抜けるのかな? 抜けそうだよな?
その瞬間を見逃すまいと、ワインのキャップ部分に注目しているとバアルさんから手招きされた。
「なに、なに? どうしたの?」
「折角ですので、最後の仕上げをご一緒にと。いかがでしょうか?」
「っ、やりたい! やってみたいですっ!」
「では、此方へ」
誘われるがままにワインの前へと、バアルさんの前へと立つ。何だか二人羽織をしているかのよう。後ろから長く引き締まった腕が伸びてきて、俺の手を恭しく取った。そのまま、このように持つと良いですよ、とボトルの持ち方を教えてくれた。
「テコの要領でコルク栓を引き抜いていきます。先ずは、此方のフックを瓶の口へと引っかけてみて下さい」
「はいっ」
整えられた指先が指し示しているフックとやらの先を、手探りで瓶の口の凸凹へと引っかけようと試みる。分からずにガチャガチャとやってしまっていたものの、わりとすぐに手応えを感じた。
ルーティンのスキンケアも、バアルさんの触角と羽のお手入れのお手伝いも終えた後は、待ちかねていたお楽しみの時間。その主役は、大きな手によってテーブルの上へと静かに置かれた。
今晩一緒に飲もうねと約束していた、ノンアルコールワインのボトル。ラベルに描かれたお城と大きな星は、シャンデリアの明かりの元でもキラキラしている。
文房具屋で見かけて、珍しいな、こんな色もあるんだなって思った銀とか金色の絵の具。それらに含まれていたキラキラのような、もしくは宝石を砕いて塗料に混ぜたような。
それらで描かれたように煌めいているラベルの絵は、そのキレイさと物珍しさについつい眺めていたくなってしまう。まだ開けてもいないのに、早くもワクワク感が込み上げてきてしまう。
よっぽど分かりやすく顔にも出してしまっていたのだろう。
「ふふ、少々お待ち下さい」
ワインばかりを見つめてしまっていた俺を見て、バアルが微笑んだ。目尻のシワを深めながらボトルをそっと手にとって、慣れた様子で栓を開け始める。
彼が手にしていたのは、どこかで見かけた便利グッズのような。これさえあれば缶切りにでも、ハサミにでもドライバーにでも何でもなりますっ、とそんな謳い文句でも書かれていそうな、用途によって使う場所が変わる器具だった。
先ずはナイフのように尖った部分を、キャップがあるであろう先へとあてがっていた。たおやかな手が流れるように動く様を見ている内に、プラスチックっぽいフィルムがするりと外された。その下から、映画や漫画でよく見るコルク栓が顔を出す。
「やっぱりスゴく手際がいいね……カッコいい」
「ありがとうございます、お褒めに預かり光栄です」
バアルは視線だけをこちらへと向けてから、柔らかく微笑んだ。深くなった目尻のシワが、口角と一緒に僅かに上がった整えられたお髭がカッコいい。期待感以外の高鳴りが追加されてしまった。
視線を手元へと戻したバアルが次に使おうとしているのはバネのような、ぐるぐると螺旋状になっている金属の棒部分のようだ。その尖った先端をコルクの真ん中へと指してから、ハンドルのような部分をネジを回すようにぐるぐるぐる。
もうすぐ抜けるのかな? 抜けそうだよな?
その瞬間を見逃すまいと、ワインのキャップ部分に注目しているとバアルさんから手招きされた。
「なに、なに? どうしたの?」
「折角ですので、最後の仕上げをご一緒にと。いかがでしょうか?」
「っ、やりたい! やってみたいですっ!」
「では、此方へ」
誘われるがままにワインの前へと、バアルさんの前へと立つ。何だか二人羽織をしているかのよう。後ろから長く引き締まった腕が伸びてきて、俺の手を恭しく取った。そのまま、このように持つと良いですよ、とボトルの持ち方を教えてくれた。
「テコの要領でコルク栓を引き抜いていきます。先ずは、此方のフックを瓶の口へと引っかけてみて下さい」
「はいっ」
整えられた指先が指し示しているフックとやらの先を、手探りで瓶の口の凸凹へと引っかけようと試みる。分からずにガチャガチャとやってしまっていたものの、わりとすぐに手応えを感じた。
9
あなたにおすすめの小説
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります
ナナメ
BL
8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。
家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。
思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー
ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!
魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。
※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。
※表紙はAI作成です
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
応援ありがとうございます!
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~
白黒 キリン
ファンタジー
前世で重度の病人だった少年が、普人と変わらないくらい貧弱な身体に生まれた竜人族の少年ヤーウェルトとして転生する。ひたすらにマイペースに前世で諦めていたささやかな幸せを噛み締め、面倒くさい奴に絡まれたら鋼の精神力と図太い神経と植物の力を借りて圧倒し、面倒事に巻き込まれたら頼れる家族や仲間と植物の力を借りて撃破して、時に周囲を振り回しながら生きていく。
タイトルロゴは美風慶伍 様作で副題無し版です。
小説家になろうでも公開しています。
https://ncode.syosetu.com/n5715cb/
カクヨムでも公開してします。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887026500
●現状あれこれ
・2021/02/21 完結
・2020/12/16 累計1000000ポイント達成
・2020/12/15 300話達成
・2020/10/05 お気に入り700達成
・2020/09/02 累計ポイント900000達成
・2020/04/26 累計ポイント800000達成
・2019/11/16 累計ポイント700000達成
・2019/10/12 200話達成
・2019/08/25 お気に入り登録者数600達成
・2019/06/08 累計ポイント600000達成
・2019/04/20 累計ポイント550000達成
・2019/02/14 累計ポイント500000達成
・2019/02/04 ブックマーク500達成
転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった
angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。
『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。
生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。
「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め
現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。
完結しました。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる